Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷ヒッチハイクガイド

2014/11/04 15:06:19
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「幻想郷ヒッチハイクガイド」

 人には価値観の相違というものが存在する。ある人物にとって素晴らしいものでも、もうある人物にとっては吐き気を催す害悪でしかない。人類はこの価値観の相違を巡り、いい加減マンネリ化してるとしか思えない数千年にも及ぶ闘争を繰り広げている。未だにこの相違を解決してくれそうな天才も、技術も存在せず、これからも登場しないように思えた。これも生意気にも知恵を付け、木から降りて文明社会なぞ作り上げた先祖のせいである。喜びのあまり骨を空に放りあげようとしている先祖の頭をかち割れば、少しはマシな未来が待っているのではないか。タイムマシンが発明されたらしてみたい事ベスト3に是非入れたいものである。ああ、早く出来ないかなタイムマシン。人類の希望タイムマシン。

「いい加減にしてくれませんかね。」

突如、人類の未来の希望に関する高尚な脳内議論を邪魔する無粋な声がした。実に無粋だ。

「一体何の話かしら。」

議論を邪魔され、不機嫌になった少女は答えた。大の字に寝そべったまま。

「私はここでモラトリアムを満喫してるの。人類の未来という利益性の欠片もない壮大なテーマに学生にだけ与えられた時間と精神力を以て、応えようとしているの。果たして人類は何処へ向かうのか。資本主義体制の終焉は何を齎すのか。貴方は大学職員なのにこの健全な学生の自発的探究心を否定するつもりかしら。あそこにいる学祖も泣いているに違いないわ。」

少女は祈るように手を組み上げた。なお近くに見える学祖の銅像には目を向けようとはしない。

「なるほど。確かに建学の精神には学生の自主性が挙げられていますね。 宇佐見蓮子さん。貴方は実にその点はこの大学の学生に相応しい。この行動自体もある筋の教授なら貴方を褒め称えるでしょう。昔の私たちみたいだと。ですが本学は協調性もその建学の精神にしています。少なくとも解体工事現場のブルドーザーの前で寝そべるのような反社会的行動は建学の精神に反します。」

顔をヒクつかせながら大学職員の男は答えた。今にも顔に着いてる眼鏡を叩き割りそうなオーラを出している。取り巻きの作業員達も少女をダイナマイトで発破しそうな顔だ。人間怖い。

「なら建学の精神なんて知らない。私はここから離れない。」

自分が積み上げてきた論理をあっさりと放り投げ、 宇佐見蓮子と呼ばれた少女はうずくまった。

「退きなさい。警察を呼びますよ!」
「やだ!」

ついに双方が平静を装うのを止めたのか、罵倒を開始した。価値観の相違で。

「大体なんで我が秘封倶楽部の部室があるこの校舎を解体するのよ。そんな話聞いたことないわ。それと新校舎へのサークル割り当て申請が既に終了しているってどういう事よ。ここが解体されたら一体何処に行けばいいのよ。流浪の民になれというの。さては貴方、我が秘封倶楽部を潰そうと目論む政府の手先ね。ああ、学費に釣られて国公立を選択した私が馬鹿だった。既に政府の手がこんな近くまで来ているなんて!」

「3ヶ月前からこの校舎の解体と新校舎の建設、それに伴うサークルの部室割り当ては告知されていましたよ。一体3ヵ月の猶予期間に貴方は何をしていたのですか。学業に集中していたようには見えませんでしたがね。」

「告知?告知というのは大学事務室棟のダンボールで塞がれた3階廊下の掲示板にある紙ペラを指すのかしら。あんな埃臭くて、誰も近づかないような所にこんな重要なお知らせがあると思うわけないじゃない。伝える気あるわけ?それとも伝えたくないわけ?」

「告知は告知です。告知をしたという事実が重要です。官報と同じです。」

「言ったわね?官報と同程度にしか知らせる気がなかったと言ったわね?」

国立印刷局への謂れ無き誹謗中傷を口にした後に蓮子は言った。

「とにかく私はここを動かない。壊したいなら私ごと壊しなさい。才色兼備で文武両道、大学の新星たる 宇佐見蓮子ごと壊しなさい!」

その悲鳴と同時にブルドーザーのエンジンが始動した。





一人の少女が死地に赴いてる頃、その少女の相棒は大学近くのパブにいた。

「今日世界が崩壊するの。」

金髪のその少女は流暢な日本語で店主に話しかける。まるで「今日はいい天気ですね。お昼は何にしましょう?」と言ってるかのような緊張感の無い声である。

「そうですか。ついに恐怖の大魔王でも襲来するんですかな。」

店主はコップを拭きながら馴れたように言葉を返す。彼の関心は専らテレビに映ってる昨日の野球のリプレイにあるようである。また虎のチームが負けたらしい。

「そうね。そんな感じかしらね。あ、カシスオレンジのお替りをお願いできるかしら。この世界のは特に美味しいわ。」

近所の変な学生が昼間からアルコールを摂取してる事を除けば、実に静かな正午である。店主はそう考えた。だからその平穏を壊さないようにする為に少女の次の申し出も快諾した。

「アルコールをテイクアウト出来ないかしら。お代は幾らでも払うわ。もう使えないかもしれないけど。」





少女はまだ粘っていた。目と鼻には塩辛い水滴が着いていた。ここまで来るともはや憐憫すら感じる。彼女は脳内でこの場で吐くのに最も格好良いと思える言葉を抽出し、叫んだ。

「ここにはダンケルクは無い。固守か、死よ!」

ブルドーザーが前進の動きを見せると蓮子は死守すると誓った最終防衛線から30メートル後退した。彼女は転進だと自分に説明した。

「蓮子、今暇かしら?」

寝そべってる蓮子にマエリベリー・ハーン、通称メリーは覗き込むように尋ねた。2つのジョッキと、・・・タオルを持って。蓮子は来たのが赤軍でない事に感謝しつつ、非難を込めた視線を親友に向ける。

「我々の聖地を守る為の、謂わば聖戦の遂行を暇があると表現する辞書がこの世にあるのかしら、メリー?」

「つまり忙しいのね?」

親友の突然見せた悲しい表情に慌てて、蓮子が弁解する。

「この校舎が無くなれば、私達の居場所は無くなるの。根無し草になっちゃうのよ。だからここを動くわけには行かないの。」

「じゃあ蓮子の代わりがいればいいのね?」

「はい?」

メリーは「何かまた変なのが来たな」と陰鬱な表情になっている大学職員に、実に聞き取りやすい日本語で話しかける。

「すいませんが蓮子の代わりに寝そべってくれませんか。」

蓮子と大学職員が発言の意図を理解しかねている表情でメリーを睨む。

「メ、メリー?それじゃ何の解決にもならないじゃない。」

「時間がないんです。」

メリーは職員の目が自分に向いてるのを確認するとウィンクした。職員はそのウィンクから何を汲み取ったのか。それを二つ返事で了承した。寝そべる体制を取る。

「さぁ代役も出来たわ。いつものカフェテラスに行きましょう。あ、ちゃんとジョッキのカシスオレンジ飲んでね。」

「・・・たまに貴方の考えてる事がわからなくなるけど、今日のは最大級だわ。お願いだから説明して頂戴。」

「駄目よ。考えるより感じるの。そのほうが楽だわ。」

カフェテラスに着くと周りの学生が白い目を向ける中で、蓮子はカシスオレンジを一気飲みした。飲み終わった後に「カシスサイダーが良かった」と愚痴った。

「今日世界が滅亡するの。」

メリーはもの哀しげに呟くように言った。蓮子はアルコールでハイになった頭を再起動しながら、親友に答えた。

「その気持ち悪い目でまた何か見たのね。もし神様が見えたなら、人類の審判は早めに頼むと伝えて。あと新しい部室も欲しいと。パルテノン宮殿くらいのを寄越すようにと。」

「実に悲しむべき事だわ。ここも楽しかった。55点くらいの評価を与えてもいいくらい素晴らしい世界だったわ。」

「それって褒めてるの?単位取得すら難しそうな点数よねそれ。」

「蓮子。今何時かわかるかしら?」

「最近イカしたデジタル時計あげたじゃない。それ使ってよ。」

メリーの手首にある蓮子の自画像が貼り込まれた「イカしたデジタル時計」を指差す。

「いいから。あなたの取り柄もあと数十分で無くなるんだから今のうちに使うべきだわ。」

「日本標準時13時12分23秒。昼時ね。これでいい?」

「時刻なんて幻想だわ。昼時なんてのは二重に幻想だわ。」

「今割と本気で傷ついたんだけど、私。」

「本当に残念だわ。」

メリーはタオルを握り締めながらそう言った。そう今日世界は滅亡するのだ。でもタオルがあれば大丈夫である。





 世界で最も日常を噛み締めてる北米航空宇宙防衛司令部の衛星追跡スクリーンが突如「不審な目標」を捉えた。これらが既知の自然活動や人為的なシグネチャーを有さないと判断したバトルスタッフは金色の電話を外した。

最終的に合衆国大統領は「何か来ました」との詳細な報告を受け取った。彼が何が来たかを理解したのはこの5分後である。それは「船」だった。あらゆる物理法則が遠慮したのかと思える程の巨大な船だった。

明らかに地球外生命体のもので待ち望んでたファーストコンタクトの到来である。世界中の人間がコンタクトを取ろうと試みたが、コンタクトは向こうから来た。

「こちらは銀河超空間土木建設課月支所の綿月依姫です。周知の事とは思いますが地球は銀河外縁部開発計画に基づき、取り壊しが決定致しています。誠に遺憾ですがあと2分で地球の取り壊しが完了します。どうかご理解とご協力を願います。」

地球側からあらゆる言語で罵声が飛ぶ。集約すると「そんなの聞いてないぞゴラ」である。依姫という担当者は呆れながらそれに答える。

「立ち退きの通知は金星出張所に400万年前にしたわよ。ちゃんと立ち退く為の知恵も与えたでしょ?何まだ火星にさえ行けてない?骨を空に放り上げた頃から進化してないじゃない。今まで何してたのよ。」

罵声が命乞いに変わる。そんな事知った事ではないと依姫は吐き捨てる。

「こちらも月支所の廃止、解体。アルファ・ケンタウリ出張所への統合で忙しいのです。まだこの期に及んでも異議申し立てがあるなら出張所まで破壊後に文書で申し出てください。認められたら補償くらい出ますよ。」

また罵声に変わると今度こそ呆れ返ったように呟いた。

「破壊光線発射。」

こうして世界は滅亡した。
初めましてWATAKOU8010です。普段はニコニコ動画で作品を公開しています。Twitterでネタを呟いていたら無性に書きたくなり、人生初のSS制作を行いました。誤字脱字、文法上の間違い等至らぬ点はあるかと思いますが、宜しくご指摘頂けますようにお願い申し上げます。今回の制作でアルコールを飲みながらなら4時間で書き上げる事が可能である事を理解しました。私にとっては偉大なる一歩です。
WATAKOU8010
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コメント



0.510簡易評価
3.80名前が無い程度の能力削除
銀河ヒッチハイクガイドは確かに面白いけど、多分わかってくれる人は少ないと思われ
4.60名前が無い程度の能力削除
勢いは良かったです。
誤字報告 宇佐美→宇佐見
6.10名前が無い程度の能力削除
本気で書いてもつまらないから飲んでもいない酒を飲んだことにして誤魔化したような作品でした。
7.30名前が無い程度の能力削除
タオルの在処がわからないような感じでした
9.70絶望を司る程度の能力削除
一体何がどうなっているんだ……w
11.70名前が無い程度の能力削除
元ネタは分かりませんが面白いですな
15.60奇声を発する程度の能力削除
勢いだけは良かったです
20.60名前が無い程度の能力削除
銀河ヒッチハイクガイドを秘封でやるとは好きかも・・・
23.無評価ナナシン削除
依姫コノヤロー