Coolier - 新生・東方創想話

優しい悪夢の処方箋2

2014/11/02 12:44:16
最終更新
サイズ
59.62KB
ページ数
1
閲覧数
1477
評価数
3/20
POINT
1110
Rate
10.81

分類タグ

 
 貴方、化粧が上手なのね。
 と、そう言われたとき、私は果たして素直に喜ぶべきだったのだろうか? もちろん、純粋に技量を褒められているのだから喜べる面もあるような気もするけれど、その技術が何に用いられているかを考えれば、素直に喜ぶこともできないのではあるまいか。
 いや、はっきり言って本当に褒められているかどうか、暗に化粧しなきゃ見れたもんじゃないわね、と皮肉られているかどうかを疑うべきであるような気がするのだけれど、いかがでしょうか雲の向こうのお天道様。
 ざあざあと、雨が博麗神社の屋根を叩く音に紛れてしまいそうなさりげなさでそう言われ、私はそんな思いを胸に葛籠と薬箱を行き来する手を止めて博麗霊夢の顔をまじまじと見た。

「なによ?」
「いや、えっと、貴方こそいきなりなに?」
「なにって、普段してないのに妙に達者な化粧の腕を褒めてるんだけど。ほら、褒められたんだから耳振って喜びなさいよ」
「や、別に兎は嬉しくても耳振ったりはしないわよ? ……って違う、何で化粧してるの解るのよ?」

 どうやら本当に褒められていたらしいけど、さっくり見破られたのであまり褒められた気がしない。けど、本当になんで気付いたのだろう。国宝クラスの代物であろう姫様の紅と白粉を使った偽装メイクは今まで回った家々では突っ込まれなかったのに。
 ……と言ってもまぁ無駄か。こういう時の霊夢の返事は一つしかない。すなわち、

「勘よ」
「はぁ、だと思った。いい加減貴方の勘って滅茶苦茶よね、一体なんなのよそれ?」
「知らないわよ。ふと解っちゃうんだからしょうがないでしょう?」

 ずずず、と得も言われぬ自然な仕草で霊夢は茶をすする。
 そんな霊夢を見てたまに思う、霊夢も実は師匠と同じ天才の類いで彼女が言ってる事が解らない私の方がアホなんじゃあるまいかと。霊夢なら私が千年かかっても届かない気がする遠い月に、簡単に追い付いてしまうのではないかと……師匠に弟子入りする霊夢なんて想像つかないけど。

「それで? なんで今日は化粧なんてしてるのよ」
「なんでって、別に普通にするでしょう化粧ぐらい。私だってこれでも女の子よ、一応」
「あのね、本当にそれが理由ならもっといっつもしてるでしょうが、下手な嘘付くな。っていうか、私から見ればあんただって立派に年増の婆さんよ、女の子はないわ」
「ぐふっ……と、年増、婆さん……」

 悪夢のことを隠しておきたかった私の嘘を、霊夢が一切の容赦なく切り捨てる。いやそれよりも……確かに、確かに人間の霊夢に比べたらちょっと年はとってるけど、とってるけど!! 私だっててゐや師匠に比べたらまだまだ若いわよ!!
 嘘を見抜かれた事を放り投げ、私はそう主張すべく心に活を入れて霊夢の瞳を真正面から見据える。けれども、その闘志も霊夢の磨いた鏡のような目を見てしまうと水をかけられたかのように萎んでしまう。
 私が思うに博麗霊夢には悪意がない、その代わりに善意もない。彼女の言動は全て、人を傷つける為でもなく、慰める為でもなく、状況に則して博麗霊夢はこうすべしと判じただけのものなのだと私は思う。
 だから私は、霊夢と話すことが苦手だ。だって、霊夢の言葉はどれも私に関係なく、ただ私が放った言葉に反応して返されているだけなのだから。例え話しているのが私じゃなくても、話した文字が一緒ならきっと誰に対しても霊夢は同じ答えを返す。そんなのは虚しすぎる。言い方は悪いが、月にある自動機械を相手にしているような気分になる。だから私は二の句が継げず、再び霊夢の顔をまじまじ見るだけに終始する。口を開けない、解らない。何を言えば霊夢と"会話"ができるのか、私には解らない。

「だから、なんなのよその目は?」
「ううん、なんでもない。化粧はちょっと、目のクマを隠すのにしてるだけよ。昨日夢見が悪くて良く眠れなかったから」
「ふぅん、夢見がねぇ……」

 胡蝶夢丸ナイトメアを飲んだから。その事を隠して半分だけ本当のことを話す。今度は嘘はつかない、霊夢に嘘をついても結局自分が虚しくなるだけだから。そんな諦め混じりの答えを聞いて霊夢は再びお茶を一口啜り、湯呑みをコトリと茶托の上に置く。

「夢見と言えば、あんたのところの黒い薬ってまだ売ってるの? 前に二錠も飲まされて恐ろしく嫌な夢見たんだけど」

 そして、何の気なしにさらりとそう言った。
 それを聞いて私は、最初あまりのさりげなさに聞き流し、次いでその言葉の意味を理解して目を剥いた。

「二錠!? それ本当なの霊夢!?」
「わ!? ちょ、なんなのよいきなり!? 近いわよ顔が、顔が近いってちょっと!?」

 食って掛かる私をどこからか取り出した大幣で押しやって霊夢は抵抗する。
 大幣が伝える退魔アイテム特有のピリピリした痛みで、少しばかり熱くなっていた私は我に返る。熱くなったってしょうがない冷静に話を聞けばいいでしょうにと。
 しかし、熱くなってしまうのも仕方ない。なにせ霊夢の前に二十人以上に話を聞いたのに、結局胡蝶夢丸ナイトメアを二錠飲んだという人はいなかったのだから。……このへん流石に不自然な気もするのだけれど、事実そうなのだから仕方がない。だから私が少々熱くなってしまうのも仕方な……いや待て待て、それならなおのこと熱くなってはいけない、拒否されないように、慎重に霊夢から話を聞き出さねば。
 乱れ気味の頭でどうにか思考を纏めた私は、気を静める為に一度深呼吸をする。

「ふぅ、はぁ……うん、悪かったわね霊夢。あの薬を二錠飲んだ人って中々いなかったから、つい興奮しちゃったわ」
「な、なんでそんな事で興奮するのよあんたは。なに? 悪夢マニアなのあんた?」

 霊夢は珍しく動揺を露にして、どこか躊躇うように聞いてくる。
 その霊夢の言葉に私は苦笑する。私がその言葉をナズーリンに言ったとき、彼女がそんな奴は居ないだろうと言ったのを思い出したから。
 違う、違うわよナズーリン。悪夢に憑かれて惹かれる奴は確かに居る。命蓮寺の住職さんがそうかは知らないけど、少なくともここに一人居るのだから。
 私はそんな苦笑の意味を、言葉で以って塗り替える。霊夢に悟られぬよう、別の意味に誤解させるように。

「違うわよ、そんなヘンテコな奴いるわけないでしょう? 私が興奮しちゃったのは、これでようやく役目が果たせるからよ。胡蝶夢丸ナイトメアを二錠飲んだ時の具合について調べたかったんだけど、貴方の他に飲んだって人が居なかったから困ってたのよ」
「調べてた? なんでよ? って聞くまでもないか、永琳に頼まれたからよね」
「ま、そんなところね。だから、できればどんな夢を見たか教えて欲しいのだけれど」

 素知らぬ顔で霊夢に頷き返し、今度は意気込み過ぎないように自分を落ち着かせて霊夢に訊ねる。私とて伊達にてゐとやり合っていない。霊夢の不可思議な勘さえ働かなければ、この程度の嘘でバレるようなヘマはしない。だから霊夢は本当に、ただ私が師匠に頼まれただけだと思っているはずなのだ。
 ……だから、だからいいでしょう霊夢? お願いだから早く聞かせて、貴方の悪夢を、私に、早く。
 砂漠で水を求めるような焦がれを、笑顔で必死に押し隠して私は霊夢の言葉を待つ。そんな私の内心を知らずに霊夢は難しい顔でうむむと唸って思案する。これもまた霊夢にしては珍しい。やはり駄目だろうか。一錠でも話すことを戸惑う悪夢を見せるのだから、それが二錠なら……。
 そう考えて、痺れを切らした私がとうとう能力を使おうか、でも霊夢に効き目は薄そうだし、などと真剣に悩み始めたころで、霊夢が眉根に寄った皺を伸ばし溜息一つついて口を開いた。

「仕方ない、話してあげるわ。その代わり、この薬ちょっとは負けなさいよ?」
「解った、もうタダでいいわこの薬。だから早く話して」
「随分気前いいわね? まぁ、正直それぐらいしてくれないと話す気にはならないんだけど」

 霊夢は即答する私に訝しげな顔を見せつつも、詮索はせず再びお茶に手を伸ばし口を湿らす。
 そして、とうとうようやく霊夢は語り始めた。

「そうねぇ、あれは確か……弾幕ごっこだか飲み比べだかで魔理沙に負けた時、罰ゲームであの薬飲むことになったのよね、うん」
「罰ゲームって……うちの薬をそんなのに使わないで欲しいんだけど」
「や、他の薬はともかく、あの薬は他に使いようがないでしょうが。どう考えたってジョークグッズの類でしょ、あれ」
「むぅ、そう言われると……確かに返す言葉がないけど」

 薬師の弟子としてはごく当然の主張を、霊夢は苦笑して軽く受け流す。
 少し悔しいが、霊夢の言ってることも最もだったので私は思わず霊夢に同意してしまう。そしてそう、それもまた謎の一つではあるのだ。師匠がどういう目的で胡蝶夢丸ナイトメアを作ったのか、それも正直良く解らない。スリリングな夢を見たい人や、悪夢を縁起物だと思っている人向けと謳ってこそいるが……そういう夢を望んでいる人は通常の胡蝶夢丸を飲んでもそういう夢見るはずなのだ。通常版の作用は精確に言うなら飲んだ人の望みに沿った、あるいは不安や不満を解消させるような夢を見せるという物なのだから。
 例えば、日頃抑圧されたストレスを抱えている人ならジェットコースターに乗る夢を見て思い切り絶叫する事もあるだろうし、悪夢を望んでいる人には怪奇映画のような感覚でちょっとしたホラーを提供することだってあるのだ。服用者当人からすればそれが"楽しい夢"に当たるのだからそうなって当然なのである。
 まぁ、その分夢の中に求めるものや、不安が少ない人相手だと上手く働かないというデメリットもあるのだが……とにかく、先に言った用途なら胡蝶夢丸レギュラータイプが十分に果たしているのだ。にも関わらず師匠は何故わざわざあんな不気味な薬を作ったのか? ナズーリンや早苗は結構本気で悪夢に悩んでいたみたいだし一体……?

「ちょっと、聞いてる? あんた?」
「え、ああ、ごめんごめん。それで? どんな夢みたの?」
「……言っとくけど、二度は話さないからね」

 つい思考に没頭してしまった所を霊夢に呼び起こされ、私は慌てて居住まいを正す。ズズズとお茶を飲む霊夢は見るからに不機嫌そうで、ここでへそを曲げられやっぱ話すのやめたわ、などと言われた日には私は落胆のあまり一気に百歳分くらい老けこんでしまうかもしれない。それは頂けない、ただでさえ婆さん呼ばわりされたばかりなのに。
 そんな私の不安をよそに、霊夢は空になった湯呑みに急須から新しくお茶を注ぎつつ話し始めた。

「あれは結局……どこだったのかしらね? 夢にそんな事言ってもしょうがないんでしょうけど」
「……どこ?」
「ええ、あの薬を飲んで、そのまま寝入って……気が付いたら妙な場所にいたわ。夕暮れの空に、四角い柱をでっかくしたような灰色の建物が千年物の大樹でも追っつかないような高さでどーんと何本も何本も建ってて、地面は変に硬い、黒い何かで覆われていたわ。そこを幻想郷中の人間を集めたのかってぐらい沢山の人がせかせか早足で歩いてるの」
「…………」

 それは、それは多分……『外』だ。霊夢の話を聞いて私はそう直感した。永遠亭に逃げ込んで以来一度も『外』に出たことはなかったが、それでも本やら何やらで『外』の風景は多少知っているし、なにより私とて月に住んでいた玉兎なのである。霊夢の知らない科学技術についてもそれなりに知っていた。だから想像できた。ビルの立ち並ぶアスファルトの地面に、霊夢が立っている姿が。

「夢だからなんでしょうけど、周りを歩いてる人は誰も私に気付いてないみたいだったわ……ていうか、一回まともにぶつかったのにそのまますり抜けて行っちゃったしね」

 霊夢が語りだした思わぬ夢に呆然としている私に、霊夢は変わらず訥々と語り続ける。その顔は苦笑気味だった。神社の境内で馬鹿騒ぎしている妖怪達を遠くから見ている時の顔。

「それでまぁ、いきなり訳わかんない場所に放り出されて私も戸惑ってね。とりあえず空飛んでどこだか確かめようとしたんだけど……」
「ぜんぜん知らない場所だった、よね?」

 言葉の先をなんとなく察して私がそう言うと、霊夢は苦笑顔のまま首を横に振った。

「解らなくなってたわ。空の飛び方が」
「……はい?」
「そんな不思議そうな顔されてもねぇ。人間ってのは元々飛べない生き物でしょうに」
「ん、うん、そう言われればそうだけど……」

 恐らく霊夢の言う通り、相当に不思議そうな顔をしているであろう私は、口の中で空気を転がして必死に言葉を探す。この言い知れぬ違和感を言葉にするにはどうすればいいのか? 私は悩みながら口を開く。

「そりゃ……人間は飛べない生き物かもしれないけど」
「うん?」
「ええと、博麗霊夢は飛べる生き物でしょ? 違うの?」

 そうして戸惑いながら絞り出した言葉は、意図せずわりと酷い物になってしまっていたが、まず間違いなく私の本心を表していた。というか、幻想郷に住まう者なら間違いなく私と同じようなことを言ってしまうはずである。
 博麗霊夢は空を飛ぶ。それはもはや鳥が飛ぶのと同じくらい私達にとっては当たり前のことである。今の私は多分、生まれて初めてペンギンが鳥類であると言われた幼子のような気持ちなのではなかろうか。
 それに多分、

「そうねぇ……飛べないっていうのは私も初めての経験だったから、そう言われても仕方ないわね」

 自嘲めいて言う霊夢の言う通り。
 霊夢の"空を飛ぶ程度の能力"というのは、その気になればこの世の理からすら飛び離れ、弾幕を夢のようにすり抜けてしまうことすら可能な、人間どころか妖怪ですら過ぎたると言えるような規格外の能力である。そんな代物が修行やら何やら努力の類で身に付くとは到底思えない。となれば、霊夢は恐らくその能力をこの世に生まれ落ちた時すでに手にしていたはずなのである。それは取りも直さず、博麗霊夢の生涯には空を飛べないという時期がなかったことを意味する。

「だから何て言うか……目が見えなくなっちゃった人とかあんな気持ちなのかしらね? いえ、多分それより混乱してわね私は。妖怪退治なんてやってるからそういう怪我をすることはあるかもって思ってたけど……」

 空を飛べなくなるんじゃないかって思ったことなんて、一度も無かったもの。
 霊夢は雨天の空に目をやってお茶をすする。相も変わらず無駄に見事なその仕草を見つつ私は霊夢が言う空を飛べない気持ちを想像してみる。私にも生まれついての能力、"狂気を操る程度の能力"がある。けれどこの能力は玉兎なら誰でも持っている力で、なによりこの能力は使えなくなるというケースがあることが月では広く知られている。一番解りやすくかつエグい例を挙げると、能力の核となる両目が潰れると使えなくなるという事例がある。故に、能力を失うことを覚悟する事は出来るのだ。そこの所を考えると……
 湯呑みを置いて浅くなった茶の水面に視線を落とす霊夢に、私は意識を戻す。解らない、やっぱり私には霊夢が解らない。有り得ぬはずの能力喪失を夢という形で突きつけられて、霊夢は何を思うのか? 私には解らな……

「私はっ!!」
「……ッ」

 茶托に置いた湯呑みを握ったまま叫んだ霊夢に驚いて、私は肩を跳ねさせた。そしてどうやら霊夢自身、自分が出した声にびっくりしたのか驚いた顔をしていた。どうやら意図せぬ内に出てしまった言葉らしい。

「れ、霊夢……?」
「……ごめん、なんでもないわ。それで飛べなくなって、目が覚めて。夢はそれで終わりよ。薬の料金代わりになるかしら? この話」
「え、ええ……」

 目を閉じて、また開ける。そんな単純な動作であっという間にいつも通りのふてぶてしい貫禄を取り戻した霊夢は、そう言って話を切った。
 霊夢が再び湯呑みを口に運びコクコクと中身を嚥下する。話はそれで終わり、霊夢は言外にそう語っていた。
 ……けれど、

「ねぇ霊夢」
「……なによ?」
「夢、それで終わりじゃないでしょ?」
「―――ッ」

 霊夢が固まった。ただし……

「なん……」
「だって、震えてるよ」

 手。
 いつもなら淀みなく流れるような動きだから殊更に目立った。
 霊夢の手が微かに、僅かに、けれど湯呑みの中に波面を描く程度に揺れていた。
 それだけでは霊夢が嘘をついていると気付けなかったかもしれない。けれど私にはもう一つ根拠があった。それは、

(師匠の薬は絶対のはず。なのに夢の中身がナズーリンや早苗とほとんど変わらない)

 胡蝶夢丸ナイトメア注意書きに曰く、二錠で怖い悪夢が見られます。
 師匠がそう謳っているのに霊夢の夢には確たる恐怖がない。何度でも言うが師匠の薬は絶対なのだ。となれば……ナズーリン達と変わらない夢を語った霊夢が嘘をついているとしか思えない。
 ……霊夢は無言である。果たして彼女は気付いているのだろうか? こちらの言葉にすぐに応えられない。それがすでに博麗霊夢のいつも通りではないことに。
 その無言は、肯定の言葉と同じくらいに雄弁な空白であることに。

「ねぇ」
「……ッ、な」

 私は口を閉ざした霊夢ににじり寄る。
 目線を、外してなどやらない。手を床に付け、四足で身体を支え、霊夢の目を見つめたままゆっくりと距離を詰める。そうして私が近寄ると霊夢の目に動揺の波が広がる。滅多に見られない霊夢の動じた波長を見て、私の鼓動が奇妙に弾む。

「れ、鈴仙……?」

 霊夢が微かに震えた声を出す。その声の震えが、怯えを元にしている事に気付いて、私の胸が更に高鳴る。

「ちょうだい?」

 もう我慢出来なかった。演技も小細工もない、ただひたすらに目に力を込め霊夢に悪夢を差し出すよう懇願する、強制する。
 空を飛ぶ程度の能力を持つ霊夢に、私の能力は通じないのかも知れない。けれどそんなことはどうでもいい、今はとにかくこの欲が、博麗霊夢すら怖じさせる程の煮えた焦がれが届けばそれでいい。
 
「っ……」
 
 私は更に霊夢に近づく。霊夢は顔を引き攣らせて背を反らし、後ろに手をついて微かに間を開ける。
 変なの、逃げたいのなら立って逃げればいいのに。正座してたから、足が痺れたのかな? いや、それでも霊夢なら飛んで逃げれば……ああ、

「もしかして、わすれちゃったの?」
「……ッ」

 空の、飛び方を。
 だとしたら、それはなんて素敵なことなんだろう。悪夢が現実になるなんて。それじゃ、それじゃまるで……
 私は霊夢の頬に手を伸ばす。触れる。

「ねぇ……」
「……っ」
「おしえてよ。ずるいよ? あなただけ、あなたひとりだけ……」

 悪夢を本当のことにするなんて、そんなのは"ずるい"。それは私の……
 霊夢の頬に触れた手を辿るように、顔を寄せる。誰かに背を押されれば唇が触れてしまいそうな距離で霊夢の瞳を覗きこむ。
 そこには大写しになった私が爛々と目を輝かせ、口を三日月のように細く細く歪めて笑って……

『レイ……ザザッ……は、その……ザザザ……ちゃうの?』 
「……ッ」

 一瞬脳裏に映った、私と同じように笑う誰か。一秒だけのノイズと砂嵐。
 唐突に現れ、そして過ぎ去ったそれに私は一気に熱を奪われた。霊夢の瞳に映る私の顔は先程の凶相が嘘のように消え去り、呆然としていた。
 ……と、

「いや……」
「……!! ごめんっ、ちょっと待って今……」
「待って!!」
「れい、む……?」
「待って……お願いだから……」

 正気に返って慌てて離れようとした私の手を霊夢は掴んだ。今朝の姫様のように、今朝の姫様よりずっと強い力で、必死に。まるで……

「置いて行かないで……」

 迷子になった、子供のように。
 そこで私はようやく思い出す。博麗霊夢は、強くて、公平で、度胸が座ってて、そして、

 ――本当に、まだ小さな子供なのだと。

 ……この子が月の自動機械? やっぱりアホだ、私は。
 壊れてしまいそうな危うさで涙を零す霊夢を見て、私はそう思った。

「うん、大丈夫。置いて行かないから、大丈夫だから」
「ほんとう……?」
「ええ、本当。大丈夫、私は……」

 そう言って、私は急に小さくなってしまったように見える霊夢を抱きしめた。
 身体が自然に動いた。まるで……

『……セン、だいじ……ら。レ……は、……しが……』

 どこかで誰かに、こうして貰ったことがあるみたいに。全く記憶にはないけれど。
 私は震える霊夢の背を撫でて、出来るだけ柔らかな声で囁く。私は……

「『ここに居るから』」

 ――私の声と、後ろの誰かの声が重なった。

「……ッ」

 私は霊夢を抱いたまま首だけで振り向く。その先には誰も、誰も、誰も……
 ――博麗神社の庭に、ぴしゃぴしゃと雨だけが注いでいた。













………………

…………

……














 ぱちぱちと算盤を弾くのは嫌いじゃなかったりする。てゐのように儲けがどうこうじゃなく、単に珠が竹の芯を通ってぶつかる、小気味良い音が好きなのだ。
 そんな訳で、自室の文机で在庫を計算する私の指は軽やかに動く。好みの音を出すためにぱちぱちと、好みの節を出すためにぱちぱちと。そうして気が付けば計算が終わっているのは、我ながら中々の長所ではあるまいか?

「ふぅ、オッケー問題なし。これなら師匠が帰ってくるまで在庫は持ちそうね、良かった良かった」

 後ろに手を付いて背を逸らし、ついでに首まで思い切り逸らす。丸い木枠の窓から夜気が吹き込み、月が逆さになって私の目に映った。
 私はなんとなく月を逆さに見たまま手を抜いて、どたりと畳の上に寝転ぶ。
 ……どうにも調子が狂っている気がした。

「うーん、結局霊夢の後は誰にも聞けなかったなー」

 悪夢への焦がれは間違いなくある。私の胸の真ん中で今もまだ燻っている。けれど……やっぱり聞けなかった。震えていた霊夢のことを思い出してしまうから。

「あんな霊夢、初めて見た」

 か弱いとか、弱々しいとか、そんな言葉が霊夢に当てはまる日が来ようとは思っていなかった。
 ……いや、

(そもそもそれが私の思い込み、ね。人間で、子供で……そんな子に心のやわいとこがないって方がおかしいわよね)

 私は寝転んだまま左の肩に手を当てる。
 寝間着の白襦袢に着替えているので意味はないけれど、あの時服を濡らした涙の温度を私は確かに覚えていた。
 
(置いて行かれる……か。それが霊夢の悪夢の形なのね)

 嗚咽混じりに霊夢が零した言葉は散り散りだったけれど、それでも繋いで察するに、彼女は夢の中で見たらしい。『外』の街で立ち竦む霊夢を見下ろす、私たち妖怪の姿を。空を行く雁の群れのように夕暮れの向こうに消えていく私たちの姿を。そんな私たちを空の飛び方を忘れた霊夢は追えなかった。幻想を忘れた霊夢は、消えていく私たちを見送ることしか出来なかった。そうして最後に同じ人間であるはずの魔理沙にすら置いていかれ、霊夢は一人取り残された。見たこともない街で、書割のようにうすっぺらな人ごみの中で、たった一人……

 ――たった、一人。

 その事を自覚して初めて手に汗が滲んでいることに気が付いた。身体の芯が奇妙に冷えている事に気が付いた。
 足元がふらつく、書割の足音がいやに耳に付く、コツコツと、コツコツと、夕暮れ空に硬い音が木霊する。靴音が、地面を砕いている音に聞こえてくる。だってほら、もう足の感覚がまるでない。自分は今立っているのか、飛んでいるのかまで解らなく……
 ――ポンと、肩に手を置かれた。振り返ると自分が立っていた。書割のようなうすっぺらな笑顔を浮かべて。そして……

『タッテイルニ、キマッテルジャナイ、ダッテアナタハトベナインダカラ』

 パンと、
 瞑った目蓋の上に落とした手はやっぱり汗をかいていた。不思議な感覚だった。霊夢の夢を、聞いただけで体験したような気分。ただの妄想とは思えない強いリアリティ。
 あるいはそれは、私が師匠の弟子で夢の裏側まで想像してしまうからかもしれない。霊夢の夢には一つだけ不思議な点がある。全体的に不思議ではあるのだけれど特に不可解な点が。
 ……霊夢は一体どこで『外』の事を知ったのか? 幾らでも答えを想像出来る点ではある、外来人を送り返した時にちょろりと垣間見たのかもしれない。『外』の品を扱う古道具屋で、写真でも見たのかもしれない。師匠の薬の力なのかもしれない。けれど、そのどれよりも私の頭にこびりついて離れないのは……

「……あの子の親って、見たことないのよね」

 多分、誰も見たことがないのではなかろうか。それを誰も気にしないのは、やっぱり霊夢の浮世離れした雰囲気のせいだろう。巫女として生まれ、巫女として生きる。ものぐさで太平楽で、でもそれだけは自然にこなす、博麗の巫女という概念が生み落としたような少女。
 けれどそんなはずはない。彼女は人の子で、妖怪の間にあっても人間で。なら彼女にも歴とした二親がいるはずなのだ。……なのに誰も知らない、霊夢の系譜の一つ上。この閉ざされた幻想郷で、誰も知らない霊夢の家族。
 霊夢の能力は強い、桁外れと言っていい。あれだけの力なら『外』でも浮かぶことぐらいは簡単なはず。そしてそれはあまりにも致命的だ。常識という概念が支配する世界で、あんまりにも生きにくい。
 ……彼女の周りの人間にとっても。
 だから私は考えてしまう。博麗霊夢という少女は、もしかしたら一度置いて行かれたことがあるのではと。だから彼女は固執するのではないだろうか、たった一つだけ、他の全てから浮いている彼女が、博麗の巫女というたった一つだけに、たった一つの居場所に。

「まぁ、全部私の想像なんだけどね。結局」

 そもそも、この想像が正しいとしたら、一体どうやって霊夢は幻想郷に来たのだろうか。全く以て馬鹿馬鹿しい話だった。
 けれど……私の想像が正しいのか、間違っているのか、結局霊夢には聞けていない。聞けるはずもなかった。
 正しくても間違っていても、彼女がそれを知っていても知らなくても、聞くべきではないと思った。私は彼女の悪夢を暴いて、無思慮に傷を開いてしまったのだから。私がやったことといえば霊夢が泣き止むまで抱いて、背中を撫でたぐらいのものだった。
 それは助けになったのだろうか? なったと思いたい。泣き止んで顔を上げた霊夢はいつも通りのふてぶてしさで、泣いたらなんかスッキリしたわ、と照れもせずに笑っていたから。幻想郷の住人を惹きつけてやまない、いつもの笑顔で。
 霊夢の笑顔を思い出し、私は身を起こしてこりこりと頭をかいた。むぅ、なんで私の方が照れてるんだろう。おのれ博麗の巫女め、泣いたり笑ったり回想の中ですらフリーダムだ。
 
「はぁ、寝ましょうか。明日も早いし」

 妙に脱力してしまった私は布団を敷いて、足を掛け布団に突っ込み長座で座る。
 そして……思わず首を傾げてしまう。私の手に乗っている胡蝶夢丸ナイトメアは、いつ取ってきたんだっけ? しかも二錠。

「……ふむ」

 他意はないけれど、こうなるとやはり考えてしまう。この薬を飲むという可能性について。
 参考になるケースが霊夢しかないから断言は出来ないのだけれど……いや、霊夢だからこそ言える。胡蝶夢丸ナイトメアを二錠飲むことは、明らかに危険だ。
 悪い意味になってしまうけれど流石は師匠の薬と言うべきか、はっきり言って霊夢をあそこまで取り乱させることが出来るものを、私はこの丸薬以外に知らない。"あの"霊夢を取り乱させた、その一事だけでこの真っ黒な丸薬の危険度は跳ね上がる。もし、霊夢以外が飲んだらと、想像して息を呑んでしまうぐらいには。
 けど……私はもう一度息を呑む。紛れも無い期待で胸を焦がして。

「九割勘だけど……胡蝶夢丸ナイトメアの二錠の効果は、悪夢を、恐怖を、一錠より"直接的に"見せること。間違いない、きっと……間違いない」

 一錠飲んだ時の悪夢めいたサイケデリックな諧謔。あれは一種のフィルターなのではないかと思う。薬を飲んだ者を、恐怖で押し潰さない為のオブラート。
 きっと一錠と二錠で見る夢の根っこは同じなのだ。薄皮一枚の保護膜が掛かっているかいないかの違いだけで。そしてそれは、その違いはあまりにも……私の望み通りに過ぎる。

「私は、見たい」

 ううん、会いたい。もっと直接、生々しく、それが悪夢であっても夢でしか会えない'    'に。
 何より私が彼女の名前を思い出せないのは、一錠だけのフィルターのせいなのかもしれないのだから。いや、こうなればもう飲むしかない。だって私は気付いてしまった。霊夢の悪夢を聞いて、私も思い出してしまった。

「ふふ……」

 口元が何故だか笑みを浮かべる。おかしい、絶対におかしい。笑みというのは、あの頃のことはもう"親の顔すら思い出せない"ことに気付いて浮かべるものではないはずなのに。
 黒い丸薬の目玉模様が私を見つめる。引力に近い何かが私を捉える。抗えない、抗う理由がない。気付けばもう、私はこの薬を飲む以外の選択肢を失くしてしまっている。そして……私は薬を飲んだ。悪夢を求めて、悪夢のように黒い目玉を二つ含んで。
 コロリと転がった甘さを飲み干し、私の頭が枕に落ちる。意識を失う瞬間、兎と目が合った。天井の兎はいつになく嬉しそうに笑っていた。
 ……暗転。













………………

…………

……














 うーさぎ、うさぎ、なーにをきいてー、はーねーる、たきびの、はーぜるおーと、きいてー、はーねーる♪
 うーさぎ、うさぎ、なーにをきいてー、はーねーる、たきびの、はーぜるおーと、きいてー、はーねーる♪
 うーさぎ、うさぎ、なーんのためー、













………………

…………

……














「レイセン、ちょっとレイセン」
「ふまっ?」
「アンタはもう、ほんとにもう、この状況で寝れるってどんな神経してるのよもう~」
「えーと……あれ、私寝てたの?」
「……殴りたい。このおとぼけさんを心行くまでグーで殴りたい。だけど耐えて、耐えるのよ私。じゃないと蜂の巣になるわ。ふふ、ふふふ」
「ああ、そっか。また的当てしなきゃいけないんだっけ。うんうん、思い出したわ。'    '、ありがとう」
「……」

 何か妙な夢を見ていた気がするけれど、身体を絞られるような暑さで私は今がどういう状況かを思い出す。
 ……というか、本気で暑い。月の気候は涼しく乾いているのだが、上から被った迷彩用のシートが熱を篭らせる。こういう所をこそハイテク技術でどうにかすべきだと思うのだけれど、前線の、それも玉兎の意見など聞いてくれる人は上にはいない。だから私はこうして地面に伏して、蒸しウサギになるしかないのである。

「レイセン、来たわよ」
「ん、了解。どれどれっと」

 迷彩パターンの野戦服に身を包んだ'    'が、双眼鏡を覗いて私に告げる。彼女も私と同じ迷彩シートを被っているので汗だくである。
 私はそんな'    'が指示した方角を支脚で支えられたライフルに乗ったスコープで覗き込む。勇壮な軍馬に跨った武人と、歩兵銃を抱えて共をする兎達。行進を続ける軍列の中で、一際目立つ朱色の大鎧を身に付けた髭を蓄えた人物、ブリーフィングで頭に叩きこまされた顔写真と朱色の鎧の髭面が、スコープの向こうで一致する。行列の中央に居る彼こそは……私の"的"である。あとなんか大将だか将軍だかのお偉いさんらしい。死ぬほどどうでもいい情報であるが。
 私はそんな由無しごとを考えつつ、'    'が報告する風向きや湿度を聞いてスコープのレティクルを……って違う違う、向こうじゃ風はそう吹いてないよ。しっかりしてよね、もう。私は苦笑しながらレティクルを修正する。良し、いい感じ。これなら当たる。せっかくだからヘッドショットとか狙ってみようかな、うん。

「うーさぎ、うさぎ、なーにをきいてー、はーねーる……」
「……ッ」

 私が鼻歌混じりで照準を合わせると、何故か'    'が怯えたような顔をして私を見る。
 緊張しているのかな? いい加減解っても良さそうなものだけど、この程度の的当て私にとっては朝飯前だって。うん、変に'    'を怖がらせても可哀想だし、さっさと撃っちゃおう。それ、ぱーん。
 歌を途中で区切って、私はあっさりと引き金を引く。銃弾は私のイメージ通り、少々右に傾いだアーチを描いて髭面の頭を吹き飛ばした。ちゃんと兜の隙間を通したから一溜まりもない。血飛沫が隣で話していた人に振りかかり……お、あの人確か準優先の的だった気がする。撃っとこ撃っとこ、それぱーん、ついでにもひとつ……

「レイセンっ!!」
「ん? どうしたの'    '、大きな声出して。それじゃ見つか……りはしないとは、まぁ思うけど」
「……最優先目標を狙撃したら撤収優先でしょ。それ以上は必要ないわ」
「そうだっけ? うん、それじゃ帰ろっか、暑いしねー」
「……」

 私は鬱陶しかった迷彩シートと頬の下にあったライフルを担いで走り出し、'    'も地面に置いていたバックパックを背負って丘の森の中を奥へと進む。
 その途中で'    'がポケットから無線機を取り出した。私がどうしたのと聞くと、あれは影武者かもしれないから無線盗聴、と答えた。そういえば向こうの暗号を一部解読したってブリーフィングで言っていたような気がする。それで今回の的当てを行うことになったとかどうとか。私はなんとなく耳を澄ませて無線の内容を聞く。天地が引っくり返ったような大騒ぎに紛れて一言二言聞き取れた。

『本当だって!! 私もこいつもレーダーの反応を見逃してなんかいないって!!』
『ふざけんな!! じゃあ敵は2km先の森から火薬銃で狙撃して来たってのか!? 出来るわけないだろそんな事!!』

 ……毎回思うんだけど、そんなに驚くことかな、それ?
 まぁいいか、また勘違いしてくれてるみたいだから逃げるのは楽だし。私は'    'と一緒に無線の先が言うニkm先の更に向こう、三km先の森の中をホームに向けて駆けて行った。













………………

…………

……














 ――月人同士の闘争、いわゆる月面戦争が起こるのはそう珍しいことではないらしい。
 老衰から遠ざかり無尽の時を持て余す高貴な暇人達は、時折計ったように角を突き合わせ、袂を分かって領地と命を奪い合う。
 しかし、穢れを恐れる彼らは己の手を汚す事を極度に嫌った。それ故に辿り着いたシステムが私たち玉兎を使ってのウォーゲームである。玉兎に最新の兵器を持たせ、駒のように使って知略を競い、大将たる月人を落とす。月人はもちろん玉兎に殺されるほど柔ではないが、彼ら自身が作った兵器を用いれば、それは別だったのだ。大将の首狙いの戦争なら玉兎の消費量も最低限で済むのだし。
 まぁ、死ぬのが嫌で月まで飛んできてしまった御仁達であるので、肝心要の土壇場ではそんなことも忘れて無双することもあるらしいが。だからこそ……














………………

…………

……















「素晴らしい戦果だ、レイセン曹長。お前の腕は、またしても巨大な勝利を私にもたらした」
「はぁ」
「……はぁ?」
「こ、光栄であります連隊長!! レイセン曹長は、その、任務で疲れておりまして……ちょっとほら、レイセン」
「あ、有難う御座います。連隊長」
「……まぁいい、結果は出ているのだから。ふふ、お前が居ると本当に消耗が少ない。敵もまさかお前のような兎が居るとは夢にも思わなかっただろうな」
「はぁ」

 私を流し目で見る軍服姿の赤髪蒼眼の連隊長さんは、妙にのっぺりとした顔をしていて、私はそれに気を取られ間の抜けた返事をしてしまう。再び'    'が肘で脇腹を突っついてくるが、それも気にならないほどの違和感である。
 おかしいな、連隊長さんは結構な美人だったと思ったのにこんな書割みたいな人だったかな?
 私は妙な違和感を紛らわせる為、立派な部屋の内装に目を逸らす。ホコリ一つ落ちていない鏡のような床、磨き抜かれた飴色の机、額縁の中にずらりと並んだ勲章や楯の輝き。さっきまで蒸し暑い森に居たのが嘘のように思える部屋だった。

「その楯が気になるか?」
「へ? ああ、はい。その……凄く立派ですよね」
「ふふ、さすが敏腕スナイパーだな。兎のくせにいい目利きをしている」
「……はぁ」

 隣の'    'が放つ無言のプレッシャーを感じて言った咄嗟の言い訳を聞いて、書割の連隊長さんは恍惚として偶々見ていた銀色の楯の来歴を語り始める。
 どこどこという領地でこうしただの、なになにという偉い御仁に貰っただのいう話を自然に聞き流して、私は記憶を辿っていた。あの楯には何か引っかかるものがあった。なんだったかな、どこかで見たことがあったような……

「そうだ、依姫様が金色の似たようなの見せてくれ……ぴぃ!?」

 ガァン!! と私の顔の横を通りすぎた銃弾が壁に穴を開けた。連隊長さんが拳銃を抜いて、こちらをロクに見もせず撃った弾だった。
 私は突然の発砲に身を固まらせ、'    'が私の前に飛び出した。

「れ、連隊長!! レイセンは本当にちょっと疲れてまして、ここ数日緊張で眠れてもいなくて、その、あの……」
「……レイセン曹長、綿月家は月人の中でも一目置かれる名家だ。その家の者の名を、兎風情が口に出すなど烏滸がましい……二度と、その名を、口に、するな」
「は、はい……」
「解ればいい。今回の手柄に免じて、懲罰は免除する。下がれ」
「「はっ、失礼します!!」」

 この時ばかりは綺麗に声を揃え、私と'    'は少しだけ早足で部屋を出た。扉を閉める直前、あんな夢想家がなぜ私より……と聞こえた気がして振り返ろうとしたが、手を引っ張られて振り向けなかった。パタンと扉が閉まって乾いた音を立てる。
 
「はぁ……終わった終わった。いやー連隊長さんは話が長いねー。私足が……わっ!?」

 私は'    'に手を引かれ、廊下をほとんど全力疾走で引き回された。
 そうして辿り着いたのは設計ミスとしか思えない廊下の行き止まり、通称『密談止まり』、ここに誰か居る気配がしたら余程のことがない限り近寄らないのがこの基地の暗黙の了解である。そこで'    'は……

「このっ、馬鹿ーー!!」
「あだっ!?」

 私の頭を思い切りひっぱたいた、グーで。あの草原で遊んだ頃から何年も経った今、その威力は格段に増していた。い、痛ひ。

「アンタはっ……解ってんの!? アンタさっき冗談でなく死にかけたのよ!? アンタが今頭蓋骨に脳みそ収められてんのは、アンタがたまたま便利な駒だからってだけなのよ!?」
「それ、たまたまって言わなんでもないですっ!?」

 再び振りかぶられた'    'のげんこつを見て、私は背を伸ばして敬礼した。
 おかしい、階級は私の方が上なのに。しかしお怒りモードな'    'の迫力の前では、一つ違いの階級差などあまりに虚しい盾だった。

「連隊長が領主様を嫌ってることぐらい、アンタだって知ってるでしょうに。まったく」
「え、そうなの? ああ、だから怒ってたんだ。なっとくなっとく」
「……多分、今、ようやく、この基地でそれを知らないのが一人も居なくなったわ。ほんとに、アンタはなんだってそんなに……」
「あはは、世情に疎くてすいません。でもいいじゃない。私は的当てだけやってればいいんだから。ほら、私はその為にお父さん達に売られ……?」

 ……あれ? そうだったっけ? 私はそんなの覚えて……

『……ザザ……見ろ、連隊長様はレイセンを寄越せばこんなに……ザザザ……』
『でも、あの子は戦場に……ザザ……主人も違うのに……ザザザ……』
『黙っていれば……ザザザ……ばれな……どうせ的当てしか芸の無い……ザザザ……』
『あの子も……ザザザ……その方が……幸せ……』
『そうだ……ザザ……これもあいつの……ザザザ……』

『『レイセン、お前は今日から戦用の兎になるんだ。辛いがこれもお前の為だ』』

 細い戸の隙間から盗み聞いた声。作ったような悲しみで濡らした声。二つがノイズと共に聞こえ私は思い出した。
 ……ああ、そういえばそうだった。私は、そう言われてここに来たんだった。付いてきてくれた'    'と一緒に。
 うーん、調子に乗って村の的当て大会で優勝してしまったからなぁ、仕方ないか。私は的当てしか能のない鈍亀だったのだし、私のヘマで何度薬搗きの仕事をダメにしてしまったことか。だから、私がここに来たのは私の為なんだ。一番得意な"的当て"が仕事なんだから。誰も彼も万々歳……

「レイセン」
「ん? どしたの? 暗い顔して」
「アンタは的当てって…………どう思ってるの?」
「どうって、的当ては的当てだけど?」
「そうじゃなくて……解ってる? アンタが撃ってるのは……」
「的だよ」
「……ッ」
「私は的当てが得意だから的当てしてるんだよ? なら撃ってるのだって的に決まってるじゃない。でしょ?」
「レイ、セン……」
 
 私は首を傾げて'    'に訊く。決まりきっていることを尋ねる'    'を怪訝に思いながら。
 訊かれた'    'は、私から少しだけ目を逸らし、悩むように唇を噛んで、そしてキッと真っ直ぐにこちらを見た。

「レイセン、あのね、アンタが撃ってるのは……」
「曹長!!」
「……ッ!!」

 何かを言いかけた'    'が驚いて振り向いた。私も目を丸くしてそちらを見た。
 私達に声を掛けたのは肩で息をしている……階級章を見るに伍長さんかな?

「良かった、見つけた……お話中申し訳ありません。ですが連隊長が至急出頭するようにと」
「へ? あれでも、さっき呼ばれたばっかりだよ、私?」
「あ、いえ、申し訳ありません。私も詳細は聞いておらず……とにかくすぐ来るようにとのことでした」
「んー、まぁいっか。解った、すぐ行くね」
「はい。あ、軍曹、申し訳ありません。貴方にも別口で招集がかかっています」
「なんですって?」

 自然に私に付いてこようとしていた'    'が素っ頓狂な声を上げた。
 私もびっくりして伍長さんを見た。的当ての成績が良かったので気付いたら結構偉くなっていた私だけれど、指揮とかその辺はさっぱりで'    'に任せっきりだったから、私と'    'はいつもセットで扱われていたのに。私はパチパチと瞬きするぐらいだったけど、'    'はひどく焦った感じで伍長さんを問い詰める。

「どういうことよ? 同じ班で分隊の私達をわざわざ分けたっていうの? 連隊長が直々に?」
「い、いえ、私は本当に何も聞いてませんので。ただお二人を呼び出せと言われただけで」
「だからってもうちょっと何かないの? それだけじゃ本当に何も解らないじゃない」
「ですから、何も解らないのは私も同じなんでぇぇええ!?」
「わぁわぁやめなよ。伍長さん苦しそうだよ。ねぇ'    'ってば!!」
 
 とうとう襟首掴んで伍長さんを揺さぶり始めた'    'を私は慌てて止める。
 毎度思うのだけれど、こんな可愛らしい顔つきであの怪力は、一種の詐欺のような気がする。

「わ、私なら大丈夫だから。ねっ、また的当てするだけだろうし。それより早く行かないと」
「……」

 伍長さんを吊り上げていた手を放し、'    'は何とも言い難い顔でこちらを見た。
 けれど、どうしてもと言うなら……その顔は泣き出しそうな顔に見えた。どうしてかは、解らないけど。
 
「そう、ね。とにかく今は行かないとね。でもレイセン、これが終わったらちょっと顔貸しなさい。話があるから」
「う、うん、解った」

 最後にそう言い置いて、'    'は伍長さんに連れられて去っていった。
 ……さて、私も連隊長さんの所に行かな

「ふぅむ、これが噂の『密談止まり』とやらか、初めて来るが……なるほど悪くないネーミングだな」
「れ、連隊長!? どどうしてこんな所に……」
「どうしてもこうしても、お前が遅いからに決まってるじゃないかレイセン曹長。いや、これは私が待ちきれなかっただけか、ふふ」
「はぁ……?」

 私は楽しそうに笑う連隊長さんの姿に首を傾げる。いつも陰鬱そうな連隊長さんのこんな姿を、初めて見た。
 そして……

「任務だ、曹長。これをこなせば昇進だぞ? 励めよ兎」

 連隊長さんは笑った。楽しそうに楽しそうに、その髪のように紅色に。













………………

…………

……















『ジ……ザザザ……レイ、いっ……ダメ……ザザザ……』













………………

…………

……













 ポツリと伏せた夜の森。いやに上機嫌な連隊長さんに見送られた私はライフルを構えて一人暇を持て余していた。
 いつもなら'    'か、そうでなくても誰か一人は観測手が居るのだが、今日はどういう訳か一人での任務となっていた。任務の内容は単純至極。スコープの向こうの草原、あそこを誰も通すな。つまりあの草原を通る者全てが的という訳である。曇り空の夜闇が難儀ではあったが、動く影はどうにか見えるので平気なはず。つまり目下のところ私の最大の敵はこの退屈であるということだ。
 さて、私はこの最大の敵をどうやっつけるべきか? ……まぁ、とりあえずは的について考えてみよう。暇だし。
 今回の任務で変わったところのもう一つが、的についてだった。私の的はいつも一つか二つで、そのどれもがお偉いさんだった。それもそのはずで、そうでなければ私の的当ては意味がない。月の兵器というのはもはや行き過ぎなくらい強力な物で、それは何故かというと攻撃用の兵器を防ぐ防御用の兵器も行き過ぎなくらい強力だからである。強いミサイルを作った、それを防ぐ迎撃用のミサイルが出来た。強い粒子砲が出来た、それを防ぐエネルギーシールドが出来た。全てを粒子レベルで分解する扇が出来た、それを防ぐ粒子の結びつきを強くする芭蕉扇が出来た。先を行っては追いつかれのイタチごっこで、月人達は次々と強力な兵器を製造してきたのである。
 そしてそこに……私の的当てが付け込む隙が出来た。万夫不当の月人を防御用の兵器の上から叩くには、どうしても巨大なエネルギーが必要になる。それを感知して防御用の兵器は起動する、防御用の兵器も巨大なエネルギーを使うので、つけっ放しには出来ない。その感知用レーダーがステルス込みで感知できる距離は凡そ2km、その外から叩き込まれる反応極小の火薬銃から放たれる緋緋色金製の弾丸。これを防ぐことが出来る用心を敷いている月人というのはほぼいない。だからこその必中必殺、不用心の上から大将という的だけを一発で撃ち抜く。不用心が用心に変わる前に、消耗を最小限に一発で戦争を終わらせる。それが私の的当ての真価。
 ……というのが連隊長の小難しい話を'    'が翻訳してくれた内容である。要するに私の的当てすっげーという話であるらしい。同じ事を'    'に言ったら頭を叩かれたけど。
 ……むぅ、話が逸れまくった気がする。ともあれ私の的は基本的にお偉いさんで、それ以外は撃つべきではないのである。私の的当ては相手が不用心だからこそ効果があるのであって、用心されて、要するに私の的当てが知られてしまえば意味がなくなる。だからそれまでは見せるべきではない……のに、今回の的当てはどうやらお偉いさんではないっぽいのだ。それが何個ぐらいになるかは知らないけど、草原を通る的を全て撃てなどという命令は、どう考えたってお偉いさん狙いのピンポイントではない。それなら私の的当てを見せるのは悪手のはずなのに、どうして……

(……まぁいっか。考えても仕方ないし、私は的当てだけやってればいいんだから。撃つべし撃つべし、それだけそれだけ)

 小難しい思考に早々に飽きた私は、それが暇潰しであることも忘れてスコープを覗き込む。
 草原に向けたその先にはまだ暗い闇しかなく……なんか動いた。

「えっ、ちょ、待った待った」

 私は慌てて姿勢を正す。改めて見れば黒色に塗り潰された人型の輪郭がこちらに向かって走ってきていた。夜闇が思いのほか深く、気付くのが遅れてしまった。二、三人取りこぼしてしまったかもしれない、まずいまずい。
 私は即座に狙いを付けて引き金を引く。夜闇で顔を塗り潰された人型が倒れた。けれど人型の数は多く、次々とこちらに向けて走ってくる。私はそれに照準を合わせて引き金を引き続ける。十人射ったところで弾が切れる。リロードする。また十人射つ。リロードする……うん、今日は随分調子がいい。なんでだろう、こんなに暗いのに……ああ違う、暗いからか。ここまで暗いと的の顔が見えないから……ん?

(顔が見えないと、何が違うんだろ? 何も変わらないはずなのに)

 ふと湧いて出た疑問に心捕らわれながら私の手は的当てを続ける。ただの一発足りとも外しはしない、こうなるともう私がライフルを撃っているのか、私がライフルの照準器になっているのか解らなくなる。本当に調子のいい時にだけ訪れる集中力の極地。だから、私は気付くのが遅れた。外して横に置いていた通信機の呼び出し音に。ピーピー鳴っているそれを私は最初無視した。走ってくる人型の数は本当に多くて構ってられなかったから。けれど、あんまりにもしつこく呼び出すものだから私は人型が疎らになったのを見切って通信機のスイッチを入れた。それだけやってすぐに私はライフルを構え……

『レイセン!! 撃ってるのアンタなんでしょ!? 今すぐ撃つのやめなさい、それは……』

 ――すぅっと雲が切れて光が注ぐ。青い星の、夜の光が。

『村のみんなよ!! レイセンッ!!』

 バァンと銃声がなった。無線機のスイッチを入れる前と同じ様に、人型は倒れた。
 無線機から聞こえた'    'の声を聞いて、私は内心首を傾げた。おかしなことを言う、私が撃っているのはただの的なんだから、村のみんなのはずがないのに。
 確かに……
 
「うーさぎ、うさぎ、なーにをきいてー……」

 ――確かに、雲が切れて見えた顔はお母さんによく似ていたけど。私は引き金を引いてから、そう気付いた。
 …………うん、次を撃とう次を。と、思った時にはすでに私は引き金を引いていた。もう私には狙うという作業さえ必要ない、当たれと思えばただそれだけで目と手が勝手に的当てをする。あとは……歌だ。

「……なーにをきいてー、はーねーる、たきびーのーはーぜるおーと……」

 この歌を謡うと、頭の中が真っ白になる。余計なあれこれが全部全部消えてなくなる。
 ……的? それは一体何のことを言っているの? まさかそんなことで誤魔化せ ……削除。
 ……解っているの? 私は今、知らなかったとはいえ実の母を ……削除。
 ……今撃った人だって、私は知ってる。隣の家に住んで ……削除。
 ……ずっと前から私はとっくに殺人 ……削除削除削除削除削除削除削除。

「……黙れ」

 頭の中でがなり立てる声に私はとうとう言葉で答えた。
 知るか知るか知るか、今更、今更そんなこと言われたって私にどうしろって言うんだ。私はもう撃ってしまったんだ。決めてしまったんだ。
 無理やり空っぽにした思考の隙間に想起が流れ込む。
 臆病でノロマな私は、初めての時に撃てなかった。スコープの先の的はどう見たって生きていて、的当てをするのとは訳が違って。狙いは付けられても、引き金が引けなかった。隣の'    'に何を言われても指が凍りついたように動かなかった。
 だから、戦争が始まってしまった。元々寡兵だった私達はどんどん押されていった。スコープの先で、仲間がみるみるうちに死んでいった。その死に様を、私のよすぎる目は生々しく映して、必死で引き金を引こうとして、それでも引けなくて、訳も解らず涙が出て。そうしている内に私達も敵に見つかった。
 思うに、彼らは逃亡者だったのだろう。私達が居た場所は戦場から離れていたから、逃げ出してきたんだと思う。
 彼ら五人の敵兵は初め私達の姿を見て驚き、次いで下卑た怖気が走るような笑みを浮かべた。それを見て、私よりも先に'    'が動いた。敵の一人を撃ち、けれど他の奴らに撃たれた。血溜まりに沈む'    'に、肩を撃たれた一人が怒声を上げて伸し掛かり、服を裂いて、可愛らしい顔がドロリと舐められて……私は自分も押し倒されるのを感じながらそちらの方ばかり見ていた。どうしてそんなことができるのだろう? 彼女に、明るくて、強くて、いつも私を助けてくれた優しい'    'に、どうして、どうして。
 ビリリと音がして私の服も引き裂かれた。私はようやく私を抑える敵を見上げた。敵は嗤っていた、嘲るように愉しむように。私はもう一度'    'の方を見た。血に濡れた足を割り開かれ、聞いたことのない苦しそうな声を上げて、それでも敵はやっぱり嗤って嗤って嗤って……

 ――こんな風に嗤える奴らは、敵じゃなくて"的"でしょう?

 ガン、ガン、ガン!!
 私は撃つ。私が撃つのは的なのだから、躊躇う理由なんて一つもない。私はこれしか取り柄がなくて売られた、役立たずの兎なのだから。それさえも出来なければ、私はどこに行けばいい? だから撃つ。撃たないと、また捨てられてしまう。ああけど……村のみんなはあんな風に嗤ってたっけ?

「ケハッ、ヒ……」

 息が上手く出来ない。狙いがブレてきた。グラグラと違和感が私の腹の中で転がり出す。それに重なって身体が揺れる。
 邪魔だ、この感情は的当ての邪魔だ。こんなに苦しいのなら、こんなに辛いのなら、いっそ機械にでも生まれてくれば良かった。そうすれば何も悩まずに引き金を引けたのに。
 どうせ私は撃つことしか出来ないんだから、心なんて要らなかったのに。そんなものがあるからほら、

「お父、さん……」

 引き金を引く指が止まった。スコープの先に居るのは私を売った、けれどもうたった一人になってしまった私の家族だった。
 引き金に掛かった指が震える。撃たないと、ここで撃たないと、また私は撃てなくなってしまう。あの日'    'を酷い目に遭わせ、仲間を見殺しにした臆病な私に戻ってしまう。視界がボヤけていく、意味も解らず涙がボロボロ落ちる。歯の根が合わずカチカチと音を鳴らす。私の中の誰かが声を荒げる。見ろと、何かに追われるように逃げる父の姿を、撃ってしまった的の姿を。
 やめて欲しいと思う、許して欲しいと願う、けどその誰かは叫ぶのをやめず私のよすぎる目は見てしまう。倒れた者の姿を、暗がりでも映える鮮やかな命の赤を、血の……色を。

「もう、無理……」

 ガシャンと音を立てて転がったのは、手の中にあったライフルだった。身体の一部のように扱えていたのが嘘のように、その金属の色は冷たかった。
 限界だった。見てしまえば、もう目は逸らせなかった。必死で目を背けていたのに、撃った後の死体は絶対に目にしないようにしていたのに、だから私が撃つ時は死体の確認役が隣に居たのに。

「うぅ、うあ」

 馬鹿じゃないのか私は。的だからどうしたって言うんだ。生きている人を……殺していることにはかわりないのに。臆病だというのなら今の私の方がよっぽど臆病だ。取り返しの付かないことから目を逸らして、都合の良いように思い込んで。そのせいで母親まで殺してしまって、臆病で、愚かで、間抜けで……私は、私は……

「あ、あああああああああああ!!」
『レイセン!! 聞きな……待って、待ってレイセン!! 私も今そっちに……』

 私は自分でもよく解らない叫びを上げて、スコープの向こうに転がるように走り出した。通信機の向こうで'    'が何か叫んでいたけど、私はそれが聞こえないふりをした。
 そうだ、私は知らんぷりが得意だった。今の今までずっと知らないふりをしてきた。私の的は私と同じように生きているんだと、友達がいて、家族がいて……売られた私よりずっとずっと大事な命なんだと。
 ……私が、生きたかったら。撃たなければ、生きられなかったから。誤魔化して。
 木々で擦り傷を作り、土で身体を汚して私は走った。走って、走って、そして……

「……ッ」

 森が晴れたところにある草原は、もはやこの世の光景とは思えなかった。死体が累々と広がって、その全部に兎の耳が生えていた。私はおそるおそるその内の一人を抱き起こした。重い身体に付いた顔は、やっぱり私が知っている顔だった。

「わた、しが……」

 私が、これをやったのだ。
 これまで縋っていたモノがただの幻想だと、現実が私を責め立てる。抱えた冷たい身体が、見知った顔が、血の匂いが、味が……現実はこちらなのだと私に突き付ける。
 背骨から身体が崩れてしまいそうなほど震えた。もう誤魔化せなかった、私は……今日まで多くの人を撃ち殺してきた殺人者なのだと。それに知らぬふりをしてきた卑怯者なのだと。
 私は震える手で、せめてもの償いに抱えた人の目を閉じさせ……

「お前がっ!!」
「きゃあ!! ぐ、つぅ……」

 頭に衝撃が走り、次に目を開けた時、私は誰かに手を抑えられのしかかられていた。どうやら後ろから頭を殴られ数秒気絶していたらしい。
 私の上に乗った迷彩服の誰かは、憎悪に満ちた目で私を見下ろす。

「お前が、お前がやったんだな!? こんなことはお前にしか出来ない。そうだろうレイセン!? この……」
「あ、あ……」

 ……違う。誰かなんていうのは誤魔化しだ。私はこれが誰かを知っている。けど、けど……

「親不孝者がっ!! 誰が、誰が役立たずになったお前を育ててやったと……!!」

 これぐらいは、知らないふりをさせてよ、お父さん……
 怒声共に頬を殴られた。殴ったのは怒りで顔を真っ赤に染め、目端を憎悪で痙攣させた父だった。
 私は呆然として父を……かつて父だった人を見上げる。まるで悪夢のような光景だった。ただ、殴られた頬の熱だけが、これが現実だと主張していた。

「この親殺しがっ!! 何故こんなことが出来る!? お前は私達が、私に育てられて、何故……!?」
「な、ぜ……?」
 
 そこで初めて、自失していた私に感情が湧いた。それは怒りだった。理不尽だ。ここに居る誰かが生きていて、私に殴りかかるならそれはいい。例え殺されても文句は言えない。けど、他の誰に責められても、貴方にだけは責められる筋合いはないのに。私を、私をこんな風にしたのは…… 
 父が腰に差していたナイフを抜いた。振りかぶられたそれを見て、私が覚えたのはやっぱり圧倒的な怒り。こいつにだけは、こいつにだけは殺されたくなかった。絶対に、断じて。だから……
 ――やってみたら、それは意外と簡単だった。ナイフが振り下ろされ、私の顔の横に突き刺さる。外しようのない距離で外れたナイフを、彼は呆然として見ていた。そして……

「お前、その目は……」

 視界が赤く光っていた。血を垂らしたような世界で、波長の塊が何かを喋った。
 初めて使った能力は、確かに彼の波長に干渉して幻の私を見せたのだ。それに気付いて彼は真っ赤だった顔を更にドス黒い色に染め上げた。

「親に能力を使ったのか!? この悪魔がぁぐ!?」

 再びナイフを振り上げた彼がひしゃげた顔して視界の向こうに流れていった。向かって左に消えていった彼を目で追って、私はパチパチと瞬きをした。
 明らかに形がおかしくなった頬を押さえて転がる彼に、人影が近付いていった。それは……

「途中からしか聞こえなかったけど、二つだけ言わせて貰うわね。一つ、レイセンは悪魔なんかじゃない。二つ、もしそれでもレイセンが悪魔になったとしたら……」
「ひ、やめ……」
「それはアンタのせいでしょうが!!!」

 引きつった顔で制止した彼を再び殴り飛ばした'    'だった。
 
「こうなるのは!! レイセンを兵士なんかにしたらこうなるなんてのは解ってたことでしょうが!! こんな優しい子が、犯されかけても人の為にしか撃てないような子が!! 戦場に出されてまともでいられる訳ないでしょうが!! なんで親なのにそれぐらい解らないのよ!?」

 誰が見ても解る激昂の波長を放つ'    'は、両頬が砕けた彼の襟首を掴んで叫ぶ。
 長い付き合いだけど、彼女がここまで怒っているのを初めて見た。

「し、知るか知るか知るか!! 撃ったのは私じゃない、そいつだろう!? 何故私のせいになる、そいつが悪いんだ!! そいつが!! そいつだけが!!」
「この……ッ、レイセン?」

 再び振りかぶった'    'の手を、私は押さえて止めた。見るに堪えなかったかったから、もはや殺意と言っていい波長を放つ'    'も、あんまりにも卑屈で……私に良く似た波長を放つ彼も。この人も、知らないふりをしているだけなのだ。私がこうなったのは自分のせいでもあるということから、目を背けているだけなのだ。

「もういいよ、'    '。それより、村のみんなの事、どうにかしないと」
「レイセン……」

 どこかで見た泣き出しそうな顔を浮かべた'    'は、こちらに振り返ったまま彼の襟首を掴んだ手を放した。
 尻餅を付いた彼は、ひぃと短く鳴いて転がるように慌てて逃げていく。こちらを振り返りもせず、全てから目を背けて。きっと彼は的ではなくても敵なのだろう。でも私は彼をどうしようとも思わなかった。私と"彼"は、それでも結局親子なのだ。それも多分、かなりよく似た。

「それ、じゃ……皆を、どうしよっか。このままって、訳にはいかないし……」
「レイセン……」
「ここに埋めるのも、悪いし……どこか、お墓……」
「レイセンッ」

 跪いて見知った人を抱えようとした私を"    "が抱きしめた。その抱擁は温かくて、抱えた誰かよりずっとずっと温かくて。

「ダメ、だよ。そんなことしたら、私、泣いちゃうから。私が、泣いていい訳ないのに。私は、泣いちゃダメなのに」
「いいの、アンタは泣いていいのよレイセン。大丈夫、大丈夫だから」
「ダメ、いい訳ない。私が、私が殺したのに……」

 泣きたいのは私に撃たれた彼らのはずだから。私が泣いていいはずがない。
 けど、けれど……

「うあ……ああああああああああ!!」
「ん、大丈夫、大丈夫だから、レイセン」

 やめられるはずがなかった。私が殺して、みんなみんな居なくなったのに。泣くのをやめられるはずが。
 居なくなったってしまったのだ。一緒に遊んだあの子が、頭を撫でてくれたおじさんが……私の、母が。私が何も考えなかったせいで。
 ……私に渡された弾はいつもの緋緋色金製じゃなかった。解ったはずだった、撃たされるのが月人じゃなく玉兎だと。解ったはずだった、周りをよく見ればここが私の故郷の側だと。解ったはずだった。思考を止めなければ、スコープの向こうが、ここが……'    'と遊んだ、あの草原だったと。
 解っても任務をやめることは出来なかったかもしれない、けど、少なくとも解ることは出来たはずだったのだ。少なくとも、それだけは。
 
「みんな、みんな居なくなって……私が、私が……ッ」
「大丈夫、大丈夫よレイセン、私はアンタの側に居るから。私はずっと……」

 むせび泣く私を抱いて'    'はあっちも泣き出しそうな顔で、それでも無理やり微笑んだ。私の側で、私の隣で……

「ここに居るから」

 私は泣いていた。ずっとずっと泣いていた。涙が枯れ果……

『何もしないんだ?』

 涙が、止まった。……居るはずがない。
 誰も、誰も居るはずがない。この時、この場所に、私達以外が居るはずがない。私はそれを"覚えている"。それだけは、覚えている。
 なのに……

『そのままじゃどうなるか知っているのに、あんたは何もしないんだ? ううん、そっか、そうだったね。あんたは……』

 何も考えられない。頭が真っ白になったまま、操り人形のように首が動く。ギリギリと、ギリギリと、後ろに向けて。

『忘れたんだよね。ずっと、ずっと一緒に居たのに私が……』

 そうして振り返った先では……

『どうして、死なないといけなかったのか』

 目を爛々と光らせて、口を細く細く三日月のように引き裂いて、見覚えのある笑みが咲いていた。







………………

…………

……













 ジザザザ、と砂嵐のノイズが聞こえた。古いフィルムリールを回したみたいな荒れた光景。
 その中で、私は歩いていた。幽鬼のように、木偶のように、深い森の中をただただふらふらと歩いていた。

『ああ、そっ……ザザッ……なんだそう……ジザザ……』

 足が止まった。唐突に、何の前触れもなく、彷徨っていた私が足を止めた。
 足を止めた私は、空を見上げ、目玉が零れそうなほど目蓋を見開いて、狂ったように叫んだ。

『……が……ジザザ……レ……ザザ……セン……ザザザッ……んだ!!』

 空を見上げて、叫んで叫んで叫び続けた。
 そして……

『……き、は?』

 ぶつりと糸を切られたように倒れ伏した。
 それを見下ろして、私は思う。あれは、生きているのだろうか? 倒れた私は生きているのだろうか?
 私が生きている以上、『私』も生きていなければおかしい。それは解っている。けど、それでも……

 ――何故だろう、私には倒れている『私』が死体のようにしか見えなかった。













………………

…………

……









「鈴仙、鈴仙ってば!! ちょっと待ちなって!!」

 頭がきりきり、目眩も少し、何故か私を呼び止めるてゐの声も薄紙を隔てたようにボヤけている。なのに、足を動かそうという意志だけははっきりと実行できる。
 身体と意識が別々になったような不思議な感覚だった。身体は明確に不調を訴えているのに、それが全く意識に影響を与えない。プログラムだけがはっきりと残っている壊れたロボットのようだった。そして……その異常が全く気にならない。当たり前だ、あの頃のことを忘れる、今もまだ忘れていることに比べれば頭痛や目眩なんて異常の内に入らない。
 すらすらと足だけが淀みなく動く、他の一切の淀みを無視して。そうしていつも通り葛籠を背負って、永遠亭を出ようとしたところで、

「なにか用? てゐ」
「あんたねぇ、ようやく口開いて……もう少し言い方ってもんがあると思わない?」

 戸口の前で通せんぼをしているてゐに、ようやく意識が向いた。
 ……本当に、ようやくだった。そういえばさっきから居たっけと、今初めて気付いた。そんな感覚だった。
 そうしてようやく意識に上ったてゐは、何とも珍しく酷く焦ったような顔をしていた。何だかんだでいつも飄々としているてゐのこんな顔は、久しくお目にかかっていない。
 それに気付いてチリチリと胸の底を苛立ちが焦がした。そんなに焦っているなら、どうして私の邪魔をするのか。ごく自然に、けれど危険なほどドス黒く。私はその苛立ちに押されるまま口を開く。

「とにかく、そこどいて貰えない? お互い暇じゃないみたいだし、遊んでる場合じゃないでしょ?」
「……っ」

 おや、本当に珍しい。
 私はてゐを静かに見つめながらそんなことを思った。どんなに文句を言っても右から左に聞き流すてゐが、みるみる内に顔を引き攣らせていく。本当に、てゐの"怯えた顔"なんて久しぶりに見た。まぁそれ自体はどうでもいいけれど……てゐが何故か怯えているのは都合がいい。とにかく今は、

「早く、退いてよ」
「れい、せん……? あんた……」

 荒げず、静かに、けれど退かないならただじゃ済まさないという意志を込めて声を出す。そういえば、これも随分久しぶりのことのような気がする。誰かを殺すつもりで行動するなんてことは。
 …………何かおかしい気がするけど、まぁどうでもいい。そんなことは、今前に進むことに比べればどうでもいい些事である。それよりも大切なのは、てゐが結局、全然退いてくれないということだろうか。私の意志は伝わっているはずなのだけれど。
 と、そんな風に訝しげに思ったところでてゐに変化があった。震えていた口をキッと一文字に引き結んで私の目を真っ向から見返した。その目には、もういつものてゐらしい強い光が戻っていた。

「鈴仙、姫様からの命令を伝えるからちゃんと聞いてなよ。あんたは今日はお休み、っていうか外出禁止。家で一日……ううん、姫様が帰ってくるまで大人しくしときな」
「姫様から? なんで?」

 私は首を傾げててゐに尋ねる。姫様は昨日きちんと誤魔化しておいたのに、どうしてそんな命令をされるのだろう?
 そんな私の疑問の言葉を聞いて、てゐは何か重りを突然肩に乗せられたかのように顔をしかめた。そっか、そんなにかと小さくぼやく。

「鈴仙、あんた気付いてないみたいだけど、本当に酷い顔してるよ。死装束着せたら仏さんに間違えられる」
「……?」
 
 てゐの言葉を聞いて自分の頬に手を這わす。
 日頃それなり以上の瑞々しさを保っていると自負できる肌はカサカサにささくれ、その感触はまるで砂のようだった。
 だけど、

「知ってるけど?」
「は?」
「だから、知ってるわよ。私が昨日よりよっぽど具合悪そうだ、なんて。昨日姫様に注意されたんだから気を付けるのは当たり前でしょう? けど"それがどうかしたの?"」
「な……」

 だからお化粧してるんじゃない。ちょっと誤魔化せてないけどね。
 そう言って笑うと、てゐが後退って戸口にぶつかり音を立てた。
 ふむ、こうも立て続けにてゐを驚かせるのは気分がいい。頭痛が少し弱まった気さえする。

「言いたいことはそれだけ? なら早く退いてよ。じゃないと、行けないじゃない」

 悪夢を尋ねに。
 どうにかその言葉を飲み込んだ。危ない危ない、ここで口を滑らせててゐに疑われる訳にはいかない。師匠は未だに行方不明だけれど、てゐがイナバ達を総動員すれば今日明日中には間違いなく見つけてしまう。それはうまくない。
 ……ああ、そっか。なら

「鈴仙?」
「ん? ああ、ごめん。なに?」
「うん、どうにもあんたを止めるのは無理そうだからさ、今日のところは諦めるよ。その代わり、姫様が帰ってきたら大人しくしてたって言っといてよ?」

 てゐはそう言って肩をすくめると、ぴょんと跳ねて戸の前から退いた。それから明後日の方を向いて、さっさと行けと言わんばかりにシッシッと手を振った。
 いきなりのてゐの変心に呆気に取られたが、まぁ退いてくれるなら何でもいいので、私はてゐに礼を言って框をまたぎ……そのまま振り向き護身用のナイフを抜き払った。逆手で掲げたナイフに音のない重い手応え。どこから取り出したのやら、振り下ろした杵を受けられ、てゐが驚きで目を見開く。
 一方で私の頭は極めて平静だった。私はまず杵を受け止めたナイフを手放した。力の行き場を失っててゐの身体がほんの少し前に泳ぐ。その隙を突いて、開いた両手がてゐの腕と頭を掴み、引き込み、足を払い……"体重を乗せて顔面を地面へと叩きつけた"。頭が砕けたかと思うような音を立てて、てゐの身体から一瞬完全に力が消える。そして消えた力がどうにか戻った頃には、すでに私の腕がてゐの首に後ろから巻き付いていた。
 懐かしい感覚だった。勝手に動く身体に思考を委ね、結果だけを受け止めるこの感覚。どうして忘れていたのだろう。これを身に付ける為に私はあんなにも苦しい訓練に打ち込んでいたのに。私はてゐのほそっこい首を締めながら感慨にふける。
 ふむ、それにしても、

「らしくなかったね。てゐが私にトラップ三昧だったのって、格闘じゃ勝てなさそうだって解ってたからでしょ? なんで今日はダイレクトアタック?」
「……ッ」
「ん? それぐらいは私もちゃんと気付いてたよ。あれ? さっき気付いたんだっけ?」

 もがきながらそれでも驚いた顔をしたてゐ。それを横目に見ながら私も首を傾げた。
 ずっと前から気付いてたんだっけ? じゃないとおかしい。私ならそれぐらいは見抜けて当然……あれ、だけど見抜けて当然だって気付いたのは今日起きてからで……いや、それはまだ思い出してなかったっけ?

「私は、私が気付かないとおかしくて、だけど気付けない私に私は気付いてなくて……私? 私私私私……」

 頭の中で私の文字が踊って溶ける。
 ああ駄目だ。'   'のことを忘れ、母親を撃ち殺したことを忘れ、とうとう私は自分自身のことすら見失っている。
 私はまだ正気を保っているのだろうか? とっくの昔に悪夢の狂気に取り込まれてしまっているのではないのだろうか? 私という字と一緒に自信という字も溶け落ちる。
 駄目だ。このままでは駄目だ。今まだ正気であったとしても、このままでは遠からず私はイカレてしまうだろう。それを防ぐためには、私自身を保つためには……やっぱり悪夢を求めるしかない。かつての自分に出会える、あの夢を。だから……

「ねぇ、てゐ」

 私はギリリと腕の力を強めててゐに囁く。弱々しく私の腕を掴むてゐは、もうとっくに虫の息だった。
 
「私の能力ってね、むりやり目を開いて視線さえ通せば相手に意識がなくても……ううん、いっそない方が通じやすいんだ。気絶とか、強制的なのだとなお良し」

 それを聞いて、腕の中のてゐの抵抗がほんの少し強まる。
 私が何を言おうとしているのか気付いたのだろう。だから、私は思ったことをそのまま口にした。

「安心していいよ、てゐ。貴女が目を覚ました時には、私のことは引き止めたことになってるから。それを確かめようとも思わないから。だから……」

 おやすみなさい。
 私が言うと同時にてゐの手がぱたりと落ちた。









愛ってなんだ、躊躇わないことさ。狂気ってなんだ、躊躇わないことさ。ならば愛と狂気は紙一重。
月の兎は悪夢の果てに何を見るのか、宜しければ最後まで見届けて下さい。

追伸:てゐはとりあえず死んではいませんのでご安心をw

14/11/04 コメント返信しました。御評価並びにコメントどうも有り難う御座いました。

>>1様
おお、結構変なルート突っ走ってるつもりだったんで、キャラだけでもそう言って頂けると助かります。
コメント有難う御座いました。

>>5様
いやいや、躊躇わない愛って普通に怖いっすよ。宇宙デカ様w
暗くなった先で沈むのか、光明を見るのか。ご期待下さい。
ツッコミ有難う御座いました。
森秋一
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.810簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
キャラがらしくてよかったです
5.100名前が無い程度の能力削除
ギャバ○「んなわけねーべさ」

暗くなる作品ですね!大好きです!!
18.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしかったです。