Coolier - 新生・東方創想話

秘封的徒歩帰宅

2014/11/02 10:51:55
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ねえねえ、メリー知ってる?」
私が喫茶店で珈琲を飲んでいると蓮子は目をキラキラさせながら私に話を振ってきた。
「知ってるから言わないでいいわよ」
蓮子は少し寂しそうであった。
「そんなこと言わないで聞いてよー。なんでもこの大学にすごい教授が居るらしいわよ」
私の答えを無視して蓮子は楽しそうに話し始めた。
「へぇー。それじゃあ私は次の講義に行くわね」
私が席をたとうとすると蓮子が服の裾を掴んだ。
「えっ、あ、ちょっと待ってよー。そもそも今日取ってる講義もう無いでしょ」
「急に帝王学の講義を受けたくなったのよ」
「メリーのいじわるー!」
蓮子は河豚のように頬を膨らませた。喜怒哀楽の激しいことである。仕方なく私は椅子に座り直した。
「で、そのすごい教授ってなんなの?」
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました!」
何故か蓮子は得意気である。
「やっぱり帝王学の講義に行くわ」
「なんなんなの!?メリーはそんなに帝王になりたいの!?夜の帝王なの!!?」
少なくとも夜の帝王にはなろうと思ってない。
「御託はいいからとっとと本題を話してちょうだい」
蓮子はしゅんとしている。
「岡崎教授っていう新任の人がいるの知ってる?」
勿論知っている。いつも真っ赤な服を着ていて、とても若い教授である。
「噂なんだけどね、どうやらあの教授十五歳らしいのよ!」
「うん」
「それに助手の方はなんと十六歳らしいわ!!」
「うん」
「うん!」
……は? 勿体ぶってそれだけ?蓮子はこちらの反応を楽しそうに伺っている。
「あのさぁ蓮子、この科学世紀に飛び級なんて日常茶飯事よ。とびっきりの神童なんだって言うことはわかるけど、そこまで騒ぎ立てる事じゃないわ」
チッチッチと蓮子が下を鳴らしながら人差し指を振る。なんと古典的なサインだろうか。
「メリーさん、メリーさん、マエリベリー・ハーンさん。甘いわ、ええ、コーンポタージュくらい甘いわ」
蓮子の表現方に若干の苛つきを覚えながらもここは淑女的に耐えた。
「教授が年の話をしてからいろんな子たちが野次馬的に質問しに行ったらしいのよ。『どんな学生時代だったの?』とか『どんな扱い受けてきたの?』とかね。そんな質問に答える中、教授がポロッとあることを言ったらしいわ」
蓮子が如何にも『聞きたい?聞きたい?』的な顔をしながらこちらを見る。私は視線を目の前の珈琲カップに移した。
「どうせ話すんだから早く言いなさいな」
「ぶーぶー、メリーは語り手を盛り上げる心意気が欠如しているわ。これだから日本人はダメなのよ。外国人をみて見なさい、みんな『ワオ!!ジョン、それは本当か!?』みたいな反応をくれるわよ」
「じゃあね蓮子、今迄程々に楽しかったわ」
私が席をたとうとすると蓮子がまた服の裾を掴んできた。
「悪かったわ、私が悪かった。だから私の話を聞いて」
蓮子は涙目になっていた。私は仕方なく席に着く。
「秘封倶楽部最大の危機だったわ…… それでね、教授は『私達の居た世界では普通のことよ』って言ったんだって!」
『私達の居た世界』か、確かに聞き捨てならないことを言っている。
「それで更に聞いたら『十一歳で大学を卒業して十三歳で院を卒業する』って言ったらしいのよ」
確かに蓮子が勿体ぶって話すのもわかるくらいの特ダネではある。蓮子にとって違う世界に行くことは半ば叶わぬ夢となっていたが、ここに来て夢の方から現実に転がり込んできたのだ。この好機を逃す手はない。しかし、一つの問題がある。
「確かにそれは凄い話だけど、所詮うわさ話でしょ? そんなのを真に受けてワクワクするのはあんまりよろしくないと思うわ」
蓮子は何も言えずにいる。そんな蓮子を無視して私は立ち上がる。
「じゃあとりあえず行きましょうか」
「行くってどこへ?」
不思議そうな顔をしている蓮子を尻目に私はサッサと店を出る。
「そりゃ勿論、岡崎研究室よ」

「メリーがノックしなさいよ」
岡崎研究室の前まで来たが、蓮子はモジモジしていた。
「嫌よ、蓮子がしなさいよ。同じ物理科の先生だし、面識あるんでしょ?」
「あー、いや、そうだけどさー、ねー、なんだかねー」
蓮子は『へへっ』って笑うばっかりで一向にノックしようとしない。仕方なく私がドアをノックした。
コンコン。
「あのー、岡崎教授いらっしゃいますかー」
パーティションの向こうから金髪の女の子がヒョコっと顔を出した。
「ご主人さまー、客だぜー」
ご主人様?もしかして岡崎教授のことだろうか。こんな幼気な少女になんて呼ばせ方しているのだろう。
「あー今手が離せないから対応しといて」
彼女は明らかに嫌そうな顔をしたが、大人しくこちらにやってきた。
「今日はどういったご用件で? レポートの提出ならもう〆たぜ」
恐らく彼女が噂の助手だろう。どう見ても私達よりも年下である。金色の髪に青と白のセーラー服、岡崎教授も奇抜な格好のイメージがあるが、この子も十分奇抜である。
「岡崎教授にお話を伺いたくて来ました」
「ご主人さまー、これ私が対応できる案件じゃないぜー」
「かわりに貴女が伺いなさい。今だけ貴女が岡崎教授よ」
塩対応もいいところである。
「というわけで、私が岡崎教授だぜ。なんでも聞いいてくれ」
流石にどう対応していいのか困った。
「えーっとですね、風のうわさでお二人がなんか別の世界から来たとかどうとか言うのを聞いたんですけど……」
「ここで話すのもなんだから中に入りな」
私が岡崎教授(仮)の後を追って研究室に入ろうとしたが、蓮子が着いてきていなかった。付近にも居なかったので少し辺りを見渡すと三メートルほど向こうから小さく手を振っていた。
「ほら、蓮子も来て!」
私は全力で動かまいとする蓮子を引っ張り研究室に押し入れた。
「あ、宇佐見じゃん、レポート出てないからこのままじゃ単位無いぜ」
蓮子は部屋に入ってから五秒で意気消沈していた。
「で、その話をどこで聞いたんだい?」
岡崎教授(仮)は真剣な目付きになった。が、私も蓮子からの又聞きなので情報源はよく知らない。
「なんでも岡崎教授がそんなことを匂わせる発言をしたとか……?」
「ちょっとご主人さま! 私達のいた世界のこと話しちゃったんですか!?」
パーティションの向こうに居るであろう岡崎教授(本物)に向かって強い口調で(仮)が叫ぶ。
「話したような気もするし、話してない気もするわ。全ては幻想の中ね」
そんなことを言いながら真っ赤な服に真っ赤の靴、真っ赤な髪の岡崎教授(本物)がこっちに来た。手には真っ赤な苺が詰まったパックが握られている。ものすごいキャラ付けである。
「はじめまして、私が岡崎夢美よ。こっちは助手のちゆり。あ、ちゆりの岡崎教授期間終了ね」
「マエリベリー・ハーンと言います。こっちは多分ご存知だと思いますが、宇佐見蓮子です。今ちょっとショックで心を病んでいるのでそっとしてあげてください」
「あらあら、頑張って学外単位を取ることね。私の講義は必修だけど。それで、私達のいた世界について知りたいの? そうねー、主食はうどんでねー」
「いや、そういうことを知りたいんじゃなくて……」
「え、じゃあ重力定数とかそういうちょっとマニアックなこと知りたい系?」
「そもそも私物理学科じゃないんで、そういうことにあんまり興味ないです。じゃなくてですね、お二人は本当に別の世界から来たんですか?」
「そうよ」
今更否定はしないだろうと思ったが、あっさり一言で認められてしまった。
「どうやって来たのか教えてください!」
「珍しいところに興味をもつのね。そんなに別の世界に興味があるの?」
多分本当に興味が有るのは蓮子だろう。私は別の世界……とまでは言えないが、特殊な世界を知っている。
「興味があるっていうか、もっと知りたいっていうか……。幻想郷って知ってますか?」
「あー、ちょっと前に行ってきたわ」
知らないことを前提に話そうとしたら予想斜め上を往く回答が帰ってきた。
「えーっと、じゃあ話は早いです。蓮子がどうしても幻想郷に行ってみたいらしくて……」「じゃあ行ってみる?」
魂の抜け殻と化していた蓮子がピクッと動く。
「丁度幻想郷で取りたいデータが有ったのよ。そのデータを取ってきてくれるなら送ってあげてもいいし、なんなら単位も上げるわ」
「ありがとうございます!!ありがとうございます!!岡崎教授愛してます!!!苺っすか!?苺の差し入れとか合ったほうがいいっすか!?すぐ買ってきます!!ありがとうございます!!」
蓮子はひゃっほーいとか言いながら研究室を飛び出した。
「彼女、躁鬱病なのかしらね?」
岡崎教授がつぶやく。
「近いものはあると思います」
そんな二言のやりとりをしている間に蓮子は帰ってきた。
「これっす!その辺に生えてた蛇苺っす!!合成品じゃないから多分美味しいと思うっす!!あとペプシの苺ミルク味も買ってきたんで冷蔵庫入れとくっす!!」
研究室に居た三人共苦笑いであった。
「じゃあ一応明日行けるように準備だけはしとくから、本当に行くならまた来て」
「ありがとうございます。では、失礼します」

「いやー今日はいい日だね。そう思わないメリー?」
蓮子はこの上なく上機嫌だった。
「蓮子、ほんとに行くの?」
私は蓮子が幻想郷に行くのに賛成できなかった。
「当たり前じゃない。単位もゲットして、長年の夢だった幻想郷に一緒に行けるのよ。これを断る理由はないわ」
「幻想郷ってそんないいものじゃないわよ。自然がいっぱいあるばっかりだし、安全な環境でのうのうと生きてきた現代人には過酷すぎるわ。野生動物いっぱいだし、人喰い妖怪いっぱいだし」
私が賛成出来ないのは本当にそんな理由なのだろうか。
「大丈夫よ、岡崎教授達だって向こうでデータ取ってこれたんだから、私達にだって出来るわ」
 いや違う、私が賛成出来ないのはもっと私的な理由だ。
「それに、いくらなんでも生徒を死ぬ可能性のあるような所に送ったりなんかしないわよ」
 このままだと私のアイデンティティが無くなってしまう。私無しで幻想郷に自由に行けるようになられたら、私はただ変なものが見えて変なことを言ってる電波少女になりかねない。
「私とまた行けばいいじゃない?ね?」
「いやー、メリーと行くのも悪くないんだけどさ、メリーといっしょに行くと私、自由に動けないメリーの背後霊みたいになっちゃうじゃん。ものにも触れないし、見ること以外何も出来ないのはちょっとモヤモヤするわ」
「つまりは長年付き添った私よりも若いあの教授を選ぶのね……。いいわ、そんなにあの若い子がいいなら何処へでも一人で行くといいわ!!」
蓮子がきょとんとしている。でも悪いのは私を捨てた蓮子なんだから!
「いやいや、一人で行っても何も面白く無いじゃない?」

「だって私はメリーと一緒に幻想郷を見たいの。手を繋いで歩いたり、川で水掛けあったり、一緒に妖怪から走って逃げてみたりさ。でもそれがしたくても現状じゃ難しいじゃん? だから、岡崎教授のはそういった夢を叶えられるんじゃないかなって思ったの」


「ま、まぁ、蓮子がそういう考えなら、一緒に行こうかしら」



「いらっしゃい、準備出来てるわよ」
何やら研究室に公衆電話ボックスのような物が置いてあった。
「じゃあこれに入ってね。勿論ふたりとも一緒にね」
蓮子と体が密着する。シャンプーのいい香り。いや、シャンプー自体は私も蓮子も共用で使っているから同じ香りなのだか、蓮子の匂いと混ざって素晴らしいハーモニーを生み出している。
「ちょっとメリー大丈夫?息荒いわよ?」
「ええ、平気よ、なんでもないわ」
準備が完了したようでちゆりが岡崎教授にサインを送る。
「じゃあいってらっしゃい!Have a nice day!」
次の瞬間辺りは森になっていた。心地いい開放感である。
開放感?
私達が入っていた公衆ボックスはそこになかった。
「ねえ、メリーちょっと嫌な予感がするんだけど」
「奇遇ね、私もよ」


「ここから徒歩で帰るのかぁ」
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コメント



0.290簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
ああ、すばらしくぶっ飛んでおられる
2.70名前が無い程度の能力削除
発想は好きなんだけど会話と次の文が一緒で一寸読みにくいかも
後、もし連載ならプロローグ一寸急ぎすぎる感もある
一番最初の「って抜けてるのかな?
ちなみに岡崎教授は18歳でちゆりは15歳なはずです
今後に期待です
3.10名前が無い程度の能力削除
期待出来るトコが全く無い。
4.40非現実世界に棲む者削除
続く・・・のか?
その辺がはっきりしないのでこの点数とさせていただきます。
6.60奇声を発する程度の能力削除
んん?
9.60名前が無い程度の能力削除
5秒で意気消沈した蓮子にクスリと来ました。
全体的に面白いと思ったんですが、1話完結なら不完全燃焼でモヤっとします。
あと、岡崎教授の世界なら秘封倶楽部の2人は13歳以下になります(順当に行くと大学院を13歳で卒業する世界なので)
13.100南条削除
面白かったです
さらっと同居アピールしてるメリーがお茶目でした
投げやりな教授もよかったです
14.80名前が無い程度の能力削除
秘封ちゅっちゅ
15.100kad削除
キャラがみんなイキイキしてて面白かったです、ごちそうさまでした。旧作のキャラも勉強していきたいと思いました。