Coolier - 新生・東方創想話

寂しい時~ Imperishable Night

2014/09/27 04:06:22
最終更新
サイズ
12.94KB
ページ数
4
閲覧数
2766
評価数
2/10
POINT
540
Rate
10.27

分類タグ


てゐと鈴仙 全くもって面倒だ



 第一印象は関わりたくないだった。本人は隠しているつもりかも知らないが、性格や相性以前にこいつとは一緒にいるべきじゃないと直感が告げていた。こいつは不幸な生き方をしている。そしてその不幸は周りに伝染していく。所属するならここが一番いいと思ったのに、こんなやつを受け入れるとは、結構な誤算だった。



「こらーっ!てゐー!どこにいるのー?私の布団燃やしたのあんたでしょー!」



 関わりたくないのなら追い出すのが一番なのだが、それが出来るほど永遠亭において私には力がない。かと言って私が出て行くのは惜しい。極力関わらないにしても同じ組織に所属する以上限界がある。



「どこー?てゐー、いるんでしょー!」



 いろいろ考えた結果、仕方なく救ってやることにした。こいつが不幸でなくなれば少なくても周りには伝染しないだろう。後から来たくせに私に迷惑をかけるなんて許していいはずがない。



「てゐー!どこに、ひぃっ!今何か……ちょっとてゐー!いるんでしょ!早く出てきなさーい!今なら怒らないから!」



 私の能力は人間にしか効かないので、鈴仙の頑固な性格も相まって当初の予定よりも随分と苦労した。何度ももう諦めて食事に毒混ぜた方が手っ取り早いんじゃないか、嫌がらせして追い出したほうが楽なんじゃないかと考えたが、そのたびに我慢して根気よく鈴仙の面倒を見た。



「お願い、早く出てきてー!兎は寂しいと死んじゃうんだぞー!」



 途中からはこっちも意地になっていたかもしれない。手を差し伸べるたびに拒絶し、それどころかひどい時には怪我までした。だが私の努力の甲斐もあって今では満月の日も一人で眠れるようになったし、最近ではお月見も出来るようになった。これでやっと鈴仙の面倒から開放されたのだ。随分と長くかかったものだ。



「てゐー!どこにって、えっ?ちょっ、きゃー!」



 私を探して竹林を彷徨っていた鈴仙が落とし穴に落ちた。すかさず私は穴の外から網を投げて鈴仙の動きを封じる。



「ちょ、こらってゐ!なに、きゃー!」
「……あんなんだった鈴仙ちゃんも今ではこの通り、元気になりました。めでたしめでたし」
「誰に喋ってるのよ!何もめでたくない!」



 残念ながらその通り、何もめでたくないのだ。私の直感どおりこの兎はやっぱり私に不幸を運んできた。まったくもって迷惑な話だ。私は自分さえ幸せならそれでいいのだ。だから他人との過度な干渉は邪魔だった。……私は何も愛でたくないというのに。



「全く……馬鹿みたい……」
「うるさいわね!私は兎よ!」



 鈴仙が一人で眠れるようになったというのに、今度は私が鈴仙を求めている。少しずつ独り立ちする鈴仙を、今度は私が必要としている。どうすればいいのか分からず、構って欲しくて仕方なく穴に落とす。よもや私がこんな奴のせいでここまでダメになろうとは思いもよらなかった。



「もう、てゐ~!助けにきてよ~!」
「……しょうがないな~鈴仙ちゃんは」
「えっ?ちょっと待って!」



 鈴仙の胸に向かってまっすぐに飛び込んでいく。今はこんな形でしか鈴仙に触れることが出来ないから。
大幅に予定の変わった風神録。
今とても困っている地霊殿。
早く書きたい星蓮船。
このシリーズじゃなくて別で一本の作品にした方がいい気がしてきた神霊廟。
……そもそもタイトル詐欺なのではと思い始めている今日このごろ。
なんだっていい!もうすぐ去年のリベンジだ!

なによりやっと時間ができて作品を書くのが楽しくて仕方ない今日このごろ。
福哭傀のクロ
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.350簡易評価
2.90絶望を司る程度の能力削除
大丈夫タイトル詐欺には(私的には)なってないと思う!
6.100赤鬼削除
・輝夜と妹紅

特に輝夜パートに漂う雰囲気が淫靡で魅力的でした。
妹紅に対する執着心や独占欲とは裏腹に、彼女の気持ちを知りつつも自分からは手を差し出そうとしない、
また妹紅が望んでも「仲間」になってやる気はない、というのが残酷であり我がままでもあり、やはり輝夜は「姫」なのだなという気がしました。

一方で妹紅の方は自分自身の気持ちをある程度把握しつつも、今までの生き方を変える勇気が持てずに踏み出せない、という辺りが
身に纏う炎の激しさに反して非常に弱弱しく、こちらも輝夜とは違った意味で「姫」であり少女らしさを感じさせます。

現状では妹紅の方が圧倒的に「弱い」二人の関係ですが、今後どうなっていくのでしょう。
輝夜は独占欲や執着心を持っているように見えていつ妹紅に飽きて放りだしてもおかしくないような酷薄さを感じさせますし、
逆に妹紅は新たな生き方へと一歩踏み出してしまうと、輝夜への執着心を抑えきれなくなりそうな危うさを感じさせます。
「妹紅のことは全て分かっている」が故に彼女を愛でているような節のある輝夜が、その想像の範疇から妹紅が外れたときどんな行動を取るのか。
そんな風に、二人の未来をあれこれと想像してみたくなるお話でした。

・てゐと鈴仙

私は何も愛でたくない、という辺り、てゐも自分の本心や弱さを他人に明かせない、臆病な少女なのでしょう。
だからこそ逆に、愛情を抱いていなかった鈴仙に対してはいくらでも献身的になって救ってやれたというのに、
今度はそのせいで自分が情に囚われてしまった、というのが何とも皮肉でおかしみのある状況です。

てゐ自身の臆病さに加えて、鈴仙の方からも「私を救ってくれたひと」として認識されているような状態で、ますます本心を明かしにくいのでしょうか。
こちらも、自分は救われてばかりの「弱い」立場だと思っているであろう鈴仙が、てゐの気持ちを知ったときにどうなるのかを見てみたくなるお話でした。

今回の二篇、作者さんに対比させる意図があったのかどうかは分かりませんが、
私には「どちらかが『上位』に立っている二人の関係」という意味で共通しているものがあるように感じられました。
それでいて前者は下位である妹紅の方がより強く深刻な執着心を持ち、後者は上位であるてゐの方がより強く深刻な執着心を持っている、というように見えるのが興味深かったです。

では、読ませて頂きましてありがとうございました。
9.無評価福哭傀のクロ削除
絶望さん
いつもありがとうございます。そう言っていただけるとありがたいです。しかし次2作はもっとタイトル詐欺っぽくなりそうかも……。がんばろう……絶望さんから満点取れるように頑張ろう!

赤鬼さん
……コメント欄見てびっくりしました。長文感想、とても嬉しいです。いや本当に有難うございます。むしろ私はこの作品にここまで読み込んでくれてしっかりとした感想を書いてくださる赤鬼さんの作品を読んでみたいです。

・かぐもこ
何なんでしょうかね。私は妖艶なキャラが好きなんでしょうかね。輝夜と妹紅で何故殺し合いが成り立つのかを考えた結論が輝夜も望んでいるからでした。何の因果か自分が渡した蓬莱の薬は思ってもない形で帰ってきた、珍品とか好きそうな輝夜がこれを見逃しはしないだろうし、かと言って仲間はなにか違う気がするといった感じで今回は書いてみました。

輝夜は強く意識しましたが、実は妹紅は『姫』をあまり意識して書いてません。でもそういう見方もあるかと関心しました。

そして意外な所で『姫』がキーワードのなっていたのか。今書いてる作品の影響かもしれません。拡大解釈すれば幻想郷に姫っていっぱいいるもんね!

今後は勿論皆さんのご想像にお任せします。なんだかんだで輝夜は妹紅を捨てはしなさそうだし、妹紅も元人間と考えると1000年以上の執着も容易に帰れるものではないと思います。しかしこの二人の未来って実は結構脆いんじゃないかとも思います。


・てゐれーせん
鈴仙を救ったのは打算オンリーです(少なくてもてゐの中では)。あくまで自分が不幸にならないためです。だから本当になんでもやります。永琳や輝夜から睨まれない限りでは。そして鈴仙が満月でも静かに眠れるようになったある日、無意識に鈴仙の部屋の前に立っていて気付くんです。これが何か分からないほどてゐ鈍くないので、こんな風になってしまった自分とそのことに今になってやっと気付いた自分、そして傷心という大チャンスをひたすら逃し続けてきた自分を愚か評するって感じですかね。

鈴仙の方は自分を助けてくれた恩人だけど、捻くれた困った人くらいの認識ですかね。こっちは全然気付いてないんじゃないでしょうか。鈴仙は良くも悪くも月の狂気に囚われ続けているような気がします(月の価値観とか)。この二人は……うーん、てゐが思いを告げるイメージも鈴仙がてゐに気付くイメージも湧かない……。誰かの助けがあれば普通にうまくいきそうですが。


『上位』というのはともかく『囚われてる』というのは意識して書きました。まぁこのメンツで書くと輝夜、そしててゐが上位に来るイメージが強いですが。輝夜は妹紅の炎に、妹紅は輝夜の恨みに、鈴仙は月に、てゐは鈴仙への気持ちに。そして一番囚われてそうなのが永琳なんですけどね。





感想は長い短いはともかく書いてくれるだけで十分有難いです。ただ長いとそれに対する返信も長くなります。嬉々として書いてしまうので!そして書いた作品は少なくても10日くらいは毎日新しい感想来てないか見てます。……私もあまり他の作者様の感想を書けてないのですがね。書かな……