Coolier - 新生・東方創想話

紅魔黙示禄

2003/11/27 02:51:30
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先もの注意
シリアス+ダーク、ところによりほのぼのといった感じなので
少しでもダーク系が苦手な人はご注意くださいませ




今日は雨だった
メイド長が私の部屋を掃除していて、その間私は外を眺めている
それがいつもの風景
普段は鬱陶しい日の光も、雨からくる闇よりは幾分気が楽だなと思った
時は夕刻を過ぎたが、空の暗さは変わらなかった


「咲夜、今日は二人分の食事の用意をお願い」

「あら、今日はずいぶんと食欲がおありなのですね」

意外そうに咲夜は微笑みながら答えた
ふっと自嘲の笑みを浮かべながら返す

「違うわよ、たまにはフランドールと一緒にと思ってね」

「あ・・・それは申し訳ございません」

「別に謝ることじゃないでしょう」

急に気が落ちる咲夜
椅子に深く腰掛け、もう一度カーテンの隙間から外を見やる
暗い陰鬱なまでの空気が硝子越しに伝わってくる
雨はまだヤマナイ━━━━━━

「それではすぐにご用意いたしますので、先に地下室のほうにいらしてください」

咲夜の言葉にはっとして意識が戻される

「大丈夫よ、ここで待つわ」

「しかし・・・」

「なるべくあの娘の前にあなたは出したくないの、わかって頂戴」

「・・・はい」

そういって咲夜は部屋を出ていく
一人になった部屋は静寂に包まれた
咲夜のことだ
食事の用意など一瞬でできる、しかしそれを咲夜はしないだろう
多分彼女なりに時間を与えてくれようとしている
再び陰鬱な時間を味わうように、扉に背を向け窓辺にもたれて外を見る

「自分には何もできないって今ごろ悔やんでいるでしょうね、咲夜は」

「正解、ちょっとだけ涙目になってたわ・・・本当に心配性ね、咲夜は」

不意に背後から聞こえる声がした
振り向きもせず、驚きもせず言葉を返す

「・・・で、なんの用かしら、パチェ」

「一応雨はやまないようにしておいた、私はそれを言いにきただけ」

「気を使わせちゃったかしら」

「自然雨に手を加えただけよ、それに・・・長い付き合いなんだし気にしないで」

振り向くとパチュリーは少し照れたようにそっぽを向く
こういう時に友人がいるというのはありがたいと思った
いくらか気持ちが落ち着いてきたところで扉が叩かれる

「失礼します、お食事の用意が整いました・・・っとパチュリー様もおいででしたか」

咲夜が食事片手に入ってくる
目に泣いたような形跡はない
たぶん・・・時間を操ってわからなくしたのだろう
咲夜は一通り料理の説明をし、それを目の前に運んでくる

「それじゃ私はそろそろ書斎に戻るわね」

パチュリーが扉に手をかけて、とまった

「そういえば咲夜、昨日本の整理手伝ってくれるって言ってたよね」

「・・・え・・・あ」

「というわけで借りていくわ、レミィ」

そう言って出ていった
咲夜はお辞儀をして慌ててそれに付いていく
パタンと閉じられる扉を見ながら、料理から昇る湯気を空で遊ぶ
なんだかんだでパチュリーも心配性だなと思っておかしくなった

「それじゃあ、私もそろそろ・・・」

誰にともなくつぶやき、二人分の食事ののったトレイを持ち上げた


カツン・・・カツン

無機質な足音が壁に響く

カツン・・・カツン・・・カツン

まるで時が止まっていくかのような錯覚すら覚える

カツン・・・カツン・・・カツン・・・カツン・・・カツン

ぐらりと空気が淀み、歪み、廻る
並の悪魔ではここまで進むことすら困難であろう


スッと重く閉じられた扉の前に立つ
鮮やかなまでに描かれた結界の呪に、扉の向こうの空気がさらに隔てられていた
そしてその呪を祓うかの如く手を伸ばす

トントントン・・・

「入るわよ、フランドール」

返事はない
返ってきた例もない
億劫なく扉を開け、中に入る
灯りはついているが、少し薄暗い
もっともレミリア達の視界には何の障害もないが・・・

「・・・お姉様?」

そこでやっと声が返ってくる
備え付けられているベッドにもたれかかるように、床に座っていた
玩具と称されるもう生命のない塊が辺りに散らばっている

「ええ、今日は久しぶりに一緒に食事をしようと思って」

そういって持っていたトレイを見せる
フランドールの顔が少し和らいだ
座り込んだままこちらに手を伸ばしてくる
レミリアはそれに習い、近づいた
そして手を取ろうとした瞬間にそれは唐突にやってくる

ゴゥ・・・!

食事をのせたトレイは腕ごと吹き飛び、宙を舞う
気が付いた時には、レミリアは自身の血に染まっていた
苦痛に顔が歪むが、それすらも許さないという様に次の衝撃がくる
残った腕が軋みだし、ゴリゴリ曲がっていき、ついには捻じ切れ地に落ちた

「フランドール、落ち着きなさい」

「あは、あははははは!!!」

笑い出した悪魔を見据えながら、歯を食いしばり言い放つ
今度は肩のあたりが弾けとんだ
血が波紋を広げ、衣服を汚す

「お姉様、遊ぼ」

そういって初めて立ち上がり、その紅い、紅い瞳をさらに輝かせる
極上の笑みを浮かべつつ、フランドールの体は震えていた

「フランドール・・・怖くない、怖くないから」

「・・・・・・」

もはや抱く腕はないが、そっと身体に抱き寄せる
フランドールもそれに答えるかのように抱擁を交わし、震える唇で耳元に囁く


「495年の波紋」




轟音と振動は書斎にもとどいた

「・・・!!!」

「咲夜、レミィなら大丈夫」

本を片付けながら呑気に・・・というわけではないがパチュリーが咲夜をたしなめる
思わず落としてしまった本を拾いながら、咲夜は言葉を返す

「パチュリー様が何を根拠にそう言われるかが私にはわかりません・・・もしも、もしものことがあれば!」

「レミィは妹様のお姉さんだから、だから大丈夫なのよ」

それに今咲夜が行ってもどうにもならないわとパチュリーは言い加える

「咲夜は一人っ子?」

「え、はい・・・まぁ」

何を急にと言わんばかりに返す咲夜
その反応を見てパチュリーは微笑む

「もし、貴女にも兄弟がいればわかったのかもしれないわね」

そう言いながらパチュリーはまた黙々と本の整理に戻った

(そうよね・・・レミィ)



轟々と渦が巻き、そして次第に収まっていく
ありったけの魔力が放出された中に二人の少女の影が映っていた

「やっと落ち着いたかしら?」

「う・・・うん・・・ごめんなさいお姉様・・・私また」

「大丈夫よ、もう治ってるし」

そういって吹き飛んだはずの腕を見せる
手を握って開いて、特に異常はないようだ

「あなたは私を壊せやしない、そういう運命なのよ」

そっと抱き寄せる・・・今度は腕がある分強く

「お姉様・・・うぅ」

「ほら、泣かないの・・・それに食事が冷めちゃうわ、速く食べましょう」

「でもそれもさっき私が・・・」

ふふっと笑ってフランドールの頭をなでる
そっと床を指差し、フランドールの視線を向かせた
視線の先にあるものを見て、フランドールの顔に笑顔が戻る

「どう足掻いても中身がこぼれない運命、なんてね・・・さ、食べましょう」

「うん!」



部屋に戻ると咲夜が扉の前で待っていた
服に付いた血を見るや蒼白した顔で抱きつかれたが
特に怪我がないとわかるとほっとしたようだった
実際は腕が吹き飛んだり捻じ切れたりと咲夜真っ青な展開だったわけだが・・・
咲夜が落ち着くのを見計らって話し掛ける

「咲夜、ちょっと聞いてほしい」

「なんでございましょう、お嬢様」

「私はフランドールの今の現状を維持するのが精一杯なの」

「・・・はい」

「このままだとたぶん・・・いえ、あの娘は一生あの状態だわ」

咲夜は黙ってしまう
つまり死ぬまで私たちも同じ事を続けなければならないのだと、それを感じたのだろう
私自身それは苦痛ではない
しかし狂い続けるフランドールを見ることこそ耐えられなかった

「それでね、そろそろ陽射しがきつくなってくる時期だし、館からかなりの距離を霧で包んで見ようと思うの」

「しかし・・・そうなると他に力を持つ悪魔たちを刺激することになりかねません」

「それでいいのよ」

「はぁ・・・」

咲夜にしては察しが悪い
いたずらを思いついたような顔で私は話しつづける

「少なくともスカーレットデビルの名前を聞いて畏怖するような小物には用はない」

「・・・なるほど」

「もっと私並みに力があって・・・心が強い、そういう何かが必要なの」

「その為の撒き餌と言うわけですね・・・」

「ふふふ、そういうこと・・・日差しもカットできるし一石二鳥よ、パチェにも相談してみるわ」

そこまでいうと咲夜もやっと笑顔になった

「わかりました、私も及ばずながらお手伝いいたします」

「館周辺の警備をよりいっそう厳しくするようにお願いするわ」

「はい、了解しました」


咲夜とそんな会話を交わし、部屋に戻る

窓から外を眺める
もう雨はやんでいて、雲間からは満月が覗く
月を見上げ、祈るようにレミリアは自身に掛けるように呟いた


(フランドール、私があなたの運命を壊してあげる・・・あなたのお姉様が・・・)




もうすぐ自分が作り出した運命の終末がくる
そしてその運命の歯車が壊されるのはフランドールだけではなかった
その事にレミリアが気づくのは、もう少し先の話である



                         

 



                                   そして東方紅魔郷へ・・・
紅魔黙示禄いかがでしたでしょうか

東方紅魔郷開始前のレミリアサイドのショートストーリーです
一応テーマは姉妹愛です・・・物理的に痛そうな姉妹愛だ(;´д`)
霧をかけた事にこんな裏があったらどうだろうという妄想です、ええ妄想です
かつ自分設定炸裂してます
咲夜さんは一人っ子です、兄弟姉妹は認めません、ええ認めません
パチュリーには実は弟か妹がいます、ええいますとも←いいかげんしつこい
もーいろいろつっこむところ多すぎだけど気にしない!!

・・・あとレミリア、痛い思いさせて本当にごめんね(;´д`)人
鷲雁
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コメント



0.1350簡易評価
1.40すけなり削除
割とすんなり内容を食すことが出来ました。<br>
このSSのような感じで紅魔郷が始まったんだと思っても違和感ないですね
2.40ななすぃ削除
…よい! かっこいいレミリアに惚れます。後、危なげな妹様も良い~。
なるほど、そう考えますか……。