Coolier - 新生・東方創想話

風邪を引いたら

2003/10/17 20:26:05
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「風邪ね、完璧なまでに」
「………そう」
 瀟洒な従者はベッドの中で溜め息をついた。

 今朝から、どうも体がだるいし寒気がすると思っていたので、図書館の魔女に診てもらったのだが、結果は予想していた通りだった。
「最近咲夜は忙しかったものね。疲れが溜まってたんじゃないかしら」
「…はあ。もうちょっと丈夫な体だと思ってたんだけど…」
「いくら丈夫でも、引く時は引くものよ」
 病弱なパチュリーの言葉には、妙な説得力がある。
「まあ診た所そんなに重い訳じゃなさそうだし、2、3日もすれば治ると思うわ」
「…私が寝ている間、屋敷の管理はどうしようかしら…」
「大丈夫よ。これでもあなたがここで働く前から、何とかなっていたんだから。今はゆっくり休んで早く治す事だけ考えればいいのよ」
「……分かったわ」
 少し不安だったが、今の体調ではどうしようもなかった。咲夜はパチュリーの言う通り、ゆっくり休んで風邪の治療に専念する事にした。


  *  *  *  


 そして、次の日。
「……で? その時にうつされちまったのか?」
 パチュリーの部屋に、黒い魔法使いの笑い声が木霊した。
「…笑い事じゃないわよ…」
 パチュリーはベッドから上半身を起こしたまま、憮然とした顔で魔理沙を睨む。
「くっくっくっ……いや、悪い悪い」
「……ホントに悪いと思ってるの?」
「ああ、まあな」
 あまり説得力は無かった。
「…まあ、私も油断してたわ。こんなに簡単にうつるなんて、思ってもみなかった」
「そうかそうか………………で、大丈夫なのか?」
 不意に魔理沙がパチュリーの顔を覗き込む。
「え? え、ええ。まあ、そんなに酷い訳じゃないわ」
「…そうか。で? 何でそんなに顔が赤いんだ?」
 パチュリーの顔は、いつもより赤かった。
「……熱のせいよ」
「…そうか?」
「そうよ」
 ぷい、と顔を逸らすパチュリー。
「ふーん。…まあいいか。で、だ。今日来たのは他でもない」
「…何? 本なら好きなだけ借りていっていいわよ」
「あーいや。それもあるんだが、今日は見舞いに来たんだ」
「え……?」
「だからさ、な」
 どん、と何かが机に置かれる。それは、一升瓶だった。
「……何これ……お酒?」
「ああ、そうだ」
「病人になんてもの飲ませる気?」
「勿論そのまま飲めなんて言わないぜ」
 魔理沙は一升瓶を持ち、立ち上がる。
「台所、借りるぜ」
「え…? 何するつもり?」
「卵酒、作ってやるよ。結構効くぜ?」
 そう言って、微笑む。
「あ………」
「じゃあ、行ってくるぜ。ちょっと待ってろよ」
 そのまま、魔理沙は部屋を出ていった。
「………魔理沙………ありがとう」
 パチュリーは、小さな声でそう呟いた。


  *  *  *  


 その頃。
「咲夜、体の具合はどう?」
「あ…お嬢様」
 咲夜の部屋を、レミリアが訪れていた。
「申し訳ありません、お嬢様。このような事になってしまって……」
「何を言っているのよ。あなたが謝る必要はないわ」
 言いながら、ベッド脇の椅子に座る。
「はい、これ」
 レミリアが、ポケットから何かを取り出した。
「これは…? 林檎?」
「咲夜、お腹空いてるかなと思ってね。食べる?」
 にこっと笑うレミリア。
「あ、あ、はい。頂きます。ありがとうございます」
 慌ててお辞儀をする咲夜。
「ふふっ、じゃあ咲夜、果物ナイフあるかしら?」
「は、はい。あの戸棚の中にあります」
「分かったわ」

 しゃりしゃりと皮を剥く音が響く。
「本当に申し訳ありません…メイドが主人にこのような事をしてもらうなどと」
「だから、いいのよ。あなたを働かせ過ぎたこちらにも非はあるわ」
「しかし……」
「しかしも案山子も無いわ。今はゆっくり休みなさい。これは主人命令よ」
「うっ」
 それを出されると、メイドは従うしかない。
「咲夜には、早く治ってほしいものね………………痛ッ」
「お嬢様!?」
 咲夜は血相を変え、レミリアの指を見た。左手の親指が少し切れ、血が滲んでいる。
「…やっちゃった」
「大丈夫ですか、お嬢様!? 早く止血を…」
「落ち着いて、咲夜。これくらい、舐めればすぐに治るわ」
「ですが…」
 この程度の傷は、吸血鬼にとっては蚊に刺されるよりも軽い事なのだが、それでもおろおろする咲夜を見て、レミリアはある事を思いついた。
「それじゃあ…咲夜が舐めてくれる…?」
「えっ……」
 くす、と微笑みながら指を咲夜の前に差し出すレミリア。
「止血して、くれるんでしょ?」
「あ…え、はあ…」
「ほら………早く」
 レミリアが、一瞬見せた妖艶な笑み。咲夜の躊躇いを奪うには、充分過ぎる代物。
「………はい………」
 レミリアの指を、おずおずと舌に近づける咲夜。そして―――

「―――冗談よ」
 すい、と指を引っ込め、ハンカチで血を拭うレミリア。傷口は既に塞がっていた。
「………あ」
 自分がからかわれていた事に気付き、顔を赤らめる咲夜。
「お、お嬢様。お戯れを……」
「ふふ、ごめんなさいね」
 本当に楽しそうに、レミリアは笑っていた。
「でも…」
「?」
「咲夜はこんな状態でも、私の心配をしてくれるのね」
「あ、え、ええ…それはそうですが…」
「だから、今度は私が心配する番だわ」
 え、と言う前に、咲夜の前には綺麗に剥かれた林檎があった。
「はい、どうぞ」
「あ………い、頂きます」
 一口、食べる。甘酸っぱく、爽やかな歯応え。
「……美味しいです、お嬢様」
「そう、良かったわ」

 嬉しそうなレミリアの顔を見て、たまには風邪を引くのもいいかもしれない、と咲夜は思った。


  *  *  *


 一方、パチュリーの部屋では。
「…美味しい」
「そうか、そりゃ良かった」
 パチュリーは、魔理沙の作った卵酒を飲んでいた。
「でも、魔理沙」
「何だ?」
「どうしてキッチンに向かった時よりお酒の瓶が増えているの?」
 魔理沙が持っている瓶の数は、2本。それが、魔理沙の横に置いてある。
「やっぱりここに置いてある酒は美味いな」
「どうして飲んでるのよ」
 既に魔理沙は飲み始めていた。と言うより、卵酒に使った酒の入っていた瓶は、もうとっくに空になっていた。
「気にするな。酒の1本や2本減ったって、大した事ないだろ?」
「全く……あなたがお酒を飲む必要は無いと思うんだけど?」
「風邪がうつらないように、アルコールで体を暖めておく。予防の基本だ」
「聞いた事ないわ」
「あながち嘘じゃないぜ」
 そう言いながら、酒をあおる。
「飲みすぎよ」
「平気だぜ」
「目が据わってるわ」
「気のせいだぜ」
 ちなみに、酔っ払いの『大丈夫』は大丈夫ではない場合が多い。
「今日は私がいるから安心して休むがいい」
「あなたの方が心配だわ」


  *  *  *


 次の日の朝。
「………」
 咲夜は、眩しさで目が覚めた。
「……風邪、治ったみたい」
 一昨日の様な体の不調は感じられない。むしろゆっくり休んだ分、体調は普段よりいいのかもしれない。
「今日からでも仕事に復帰出来そうね」
 ベッドから起き上がり、背伸びをする。ふう、と深呼吸をして、メイド服に着替える。
「さて、行こうかしら」
 咲夜の一日は、まだまだ始まったばかりだった。


  *  *  *


 その頃、パチュリーの部屋では。
「………う………痛ぁ………」
 魔理沙は、頭痛で目が覚めた。
「っ………飲み過ぎたかな………?」
 頭を振る。どうやら二日酔いの様だ。しかも、飲んだ後の記憶が無い。
「その上裸……? 参ったぜ……」
 失敗した。まさか記憶を無くす程飲んだなんて、今までそんな事―――少しあった気もする。
「……っと。とりあえずパチュリーに気付かれる前に服を着ないとな」
 こんな姿、誰にも見られたくはない。未だに晴れない頭を押さえながら、急いで辺りを探る。
 がさごそがさごさ。むに。
「………………………………むに?」
 何やら、手に柔らかい感触。もう一度、それを触ってみる。
 むに。むにむにむにむにむにむにむに。
「……これわ」
 中々の面白い感触に思わず何回も触っていると、急に『それ』が、もぞもぞと動いた。
「うわっ!」
「んあ………どうしたの……? 魔理沙……?」
 驚いた魔理沙が慌てて周りを見ると、そこはパチュリーのベッドだった。
「なっ…!? 何で私がパチュリーのベッドで寝てるんだ…!?」
 状況が呑み込めない魔理沙。更に、もぞもぞと起き上がったパチュリーの姿を見て、絶句した。
「…おはよう、魔理沙」
「………なっ………なっ………何で、何でお前まで裸で寝てるんだ……!?」
 パチュリーは、生まれたままの姿で魔理沙と向かい合っていた。
「え……何って………………ぽっ」
「何で顔を赤らめるんだ!?」
「風邪の時は汗を沢山かくのがいいって、あれ本当だったのね……」
「え………?」
「でも魔理沙……私は病人だったのよ? …もうちょっと優しくしてくれたって良かったじゃない…」
「何の話だっ!?」
「でも………嬉しかった」
「私が何をした!?」
「魔理沙………ありがとう」
 パチュリーが魔理沙に抱きつく。
「わー! だから何をしたんだよー!!」
「照れなくってもいいのに…」
「私は潔白だー!! 無実だー!! 既成事実だー!!」
 ベッドの上でじたばたしていると、部屋の扉がノックされた。
『パチュリー、聞いたわ。風邪の具合はどう?』
 声の主は、咲夜。
「うわ!? な、何でもない! 何でもないぜ!!」
『…パチュリー? 誰かいるの?』
「誰もいない! いないぞ!!」
『今開けるわ!』
 ガチャッ

「………………………………あ」
「………………………………………………………………」
「………………………………ぽっ」

「………………………………いや」
「………………………………………………………………」
「………………………………ぽぽっ」

「………………………………これわ」
「………………………………うふふ」
「………………………………………………………………今日はお赤飯ね(ぼそっ)」
 バタン

「あ………ああ………………」
 手を伸ばすが、時すでに遅し。ドアは無情にも閉められてしまった。
「咲夜ったら…気が早いんだから………」
「………うぐっ」
 最早返答する気力も無い魔理沙。何だか悲しくないのに涙が出てきた。
「ねえ魔理沙………」
「………?」
「新婚旅行……どこがいい?」

「まだ言うかああああああああああっっっっ!!!!」


 その日。朝靄に包まれた紅魔館から、一人の少女の叫び声が響いたという―――
ぐっは(吐血)やっちまいました。パチュリー暴走。
風邪に関する知識がかなり適当です。間違ってる箇所があるかもしれません。
記憶を無くす程お酒を飲むのは止めましょう。既成事実を作られかねません。魔理沙みたいに……(爆

てかこの作品って、レミ×咲? パチュ×魔理?

ああもうホントごめんなさい………
謎のザコ
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コメント



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1.50尻尾削除
('A`*)もうだめ、拙者我慢のGENKAI
2.50ユウ削除
ひ、ひとごろし・・・
3.50ななしぃ削除
萌え尽きた……
4.50よっち削除
やっぱパチュ×魔理は良い~
5.50もち削除
臆岼臆岼(・@D)
6.50玉響削除
久々の魔理パチェで思う存分(´Д`*)ハァハァさせていただきました…
7.50すけなり削除
あははは、いいぞ魔理沙・バチュリー(笑
8.無評価noname削除
ごちそうさまでした(*´д`)
9.40KUNI削除
「既成事実だ」じゃないだろう。(笑)
10.40暖かいかき氷削除
読みやすく面白くそして………萌
11.50珠笠削除
先生! 動揺する魔理沙の鎖骨あたりに「の」の字をかきつつ上目使いで見上げるパチュリーが脳内に! うおおおぉぉぉぉ!!
12.無評価unkown削除
ハアハア、ごちそうさまでした
13.40名前が全くない程度の能力削除
キャラのイメージが多少異なりますが、イイできだと思います。
23.80ななしさん削除
なんつーかなんつーか俺も混ぜt(レイジィトリリトン
92.100時空や空間を翔る程度の能力削除
お酒の行きよいとは・・・・・・
諦めたまえ。
94.80名前が無い程度の能力削除
これは萌え死する
116.100名前が無い程度の能力削除
萌え尽きますた。。。。