Coolier - 新生・東方創想話

式神の風呂

2003/10/14 19:20:53
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「ただいま~藍様~」
「ああ、おかえり橙」
 夕焼けに染まるマヨイガ。その中の一軒に、式神の足音が響く。
「あーお腹空いた…。ねえ藍様、ご飯まだ?」
「今作ろうかと思っていた所だ。ちょっと待っててくれ」
「はーい」
 藍は立ち上がり、台所に向かう…前に橙に歩み寄る。
「…? 何? 藍様…」
「橙、随分服が汚れているな…それに」
 橙の身体に鼻を近付け、ふんふんと匂いを嗅ぐ。
「最近、風呂に入ってないな?」
「え…そ、そんな事」
「誤魔化すな。私には分かる」
「…う」
 ふう、と溜め息をつく藍。
「…しょうがない奴だな。よし、飯の前に一緒に風呂に入るぞ」
「え~! 私、水は苦手…」
「風呂は水じゃなくてお湯だ」
「同じですよぅ…」
「問答無用。汚いまんまじゃマヨイガの皆に笑われる」
「でも…」
 むんず、と藍が橙の首根っこを掴む。
「さあ、行くぞ。これは主人命令だ」
「うにゃ~! 藍様の横暴~! テンコー!」
「誰がテンコーかっ!」
 そして、橙はずるずると引きずられていった。


「うにゃ~…熱い……」
「ほら、肩まで浸かる」
「うううう~」
 湯船の中で身をよじらせる橙。肩を掴んで抑える藍。
「ふう…いい湯だ」
「……うう……」
「何だ…そんなに苦手か…?」
「う~だってぇ…」
「…全く。ほら、次は身体を洗うぞ」
「え…にゃっ!?」
 橙は、藍に湯船から引っ張り出された。


「う゛にゃあああ~…目にしみるぅ…」
「こら、頭を振るな。泡が飛び散る」
 ごしごしと頭を洗われ、すっかり縮こまる橙。
 ざばあーっ!
「わぷっ…! けほけほ」
 頭からお湯をかぶり、泡を落とす。
「ほら、綺麗になった」
「うー………」
「…そんなにむくれるな」
「む~……」
 すっかりむくれる橙に、藍はやれやれと首を振る。
「橙。お前なんだってそんなに風呂が嫌いなんだ? 汚いのが好きなのか?」
「…違うよ、藍様。私は藍様と一緒に入るのが嫌なの」
「え……? 橙、私の事―――嫌いなのか?」
 思わぬ橙の返事に、うろたえる藍。
「ち、違うよ。藍様の事は大好きだよ? ただ…その……」
 そのまま言いよどむ橙。
「ん…? 何だ? 橙…」
 橙の顔を見る。すると、橙の視線が藍の胸にいっている。そして、自分の胸と比べる様な眼差し。
「…藍様、いいなあ…。私なんかとは、全然違う…」
「なっ……何だ、そんな事か…」
 視線の意味に気付いた藍は少し頬を赤らめながら、安堵の息をつく。
「私にとってはそんな事じゃないよ…」
 しゅんとする橙。
「こ、こら、橙。お前だってあともう少し成長すれば、私ぐらいにはなる筈だ。だから、そんな目で見ないでくれ………」
「…本当?」
「あ、ああ。大体私も橙ぐらいの歳の頃はそれくらいだった様な記憶が」
 …実は無いのだが、これ以上視線で責められるのは勘弁して貰いたかった藍は、咄嗟にそんな事を言った。
「…へえ…それじゃあ…私もいつか、藍様みたいになれるかな…?」
「ああ。お前だったら、きっと立派な式神になれるさ」
「…藍様。何か違う気が」
「気にするな」
 強引に話をはぐらかす。それでも橙は藍の身体を見て何かを言いたそうだったので、何を聞かれても適当にはぐらかしてやろうと藍は思った。

「………でもいいなあ、藍様。いっぱい生えてて………」

「ああ、そうだな。私はお前と違っていっぱい生えてて――――――え?」
 今何か、とてつもない事を聞いた様な。
「ちぇ、橙? お前、今、な、何て言った?」
「…え? ほら、藍様っていっぱい生えてるでしょ? だから、私もそうなったらいいなあって……」
「なっ、ななななな、何ぃーーー!?」
 思わず大声を上げる。
「きゃっ…藍様、どうしたの?」
「あ、い、いや、何だ。橙、そりゃ、私は、お前と違っていっぱい生えてるかもしれんが、何だ、その…あんまり羨ましがられても、その、困る。………って言うか、恥ずかしい」
「え……何で? ふさふさしてて、とっても綺麗なのに……」
「!? ふ、ふさふさって…私、そんなに………剛毛………?」
 橙の言葉にショックを受ける藍。

「え……? 藍様、どうしたの…? 藍様って、自分の尻尾、そんなに嫌い…?」

「――――――へ?」
 また何か、とてつもない事を聞いた様な。
「し………尻尾………?」
「うん。尻尾がいっぱい生えてるのは、妖力が強いからだって紫様に聞いたの。だから、いつか私も藍様みたいにいっぱい尻尾が生えてる様になりたいなあって……」
「あ……そ、そう。そうなの……うん、橙ならいつか、なれるよ、きっと、うん。は、はは、ははははははは………」
 思わず乾いた声で笑う藍。その顔は、疲れきっている様に見えた。
「………?」
 橙は、そんな藍の様子をただ不思議そうに見ていた………


「は~…いい湯だ」
「ふう~…うにゃあ~…」
 再度湯船に浸かる二人(匹?)。ざば、とお湯が溢れる。
「…な、橙。慣れれば風呂はいいもんだろ?」
「………うん」
「だから今度からはちゃんと毎日風呂に入るように」
「え~…」
「毎日風呂に入らないと私の様な立派な式神にはなれんぞ?」
 ふふん、と鼻を鳴らす藍。
「…嘘だあ」
 ジト目で反論する橙。
「ま、それはともかく。そろそろ上がるか?」
「え…?」
「ほら、まだ飯を食べてないだろ? お前お腹空いてるんじゃなかったのか?」
「あ……うん」
「そういう事。さあ、上がって上がって―――」

「あ~! 二人共お風呂にいたのね~!? 私も入る~!」

 そう能天気な声を上げて風呂場に闖入したのは、式神の主人。
「なっ…紫様、ちょ…この湯船には三人も入りません! お待ち下さい!」
「えー? いいじゃない、藍ったら、ケチね」
「そういう問題では―――」
「―――えい」
「――――――あ」

 ざばーーーーーーーーーっ………………



「ふう………あら、いい月ね。良く見えるわ」
「それは当然。何たって、西行寺家特製の露天風呂ですもの」
「羨ましいわね、藍」
「そういう問題ではありません、紫様」
 ここは白玉楼にある露天風呂。そこにいるのはその白玉楼の主人、幽々子…だけではなく、紫と藍と橙の姿。
「そんなに怒らないでよ、藍」
「風呂を壊されたら誰だって怒ります!」
「だから謝ってるじゃない、ね?」
「…全く…」

 あの後。紫が無理矢理入った湯船は、あっさりと崩壊した。という訳で現在、顔見知りの西行寺家にお風呂を借りている状態である。

「それにね、ほら。あんなにお風呂が嫌いだった橙がとっても嬉しそう。良かったじゃない?」
「……それは、そうですけど」
 言いながら、橙の方を見る。橙は、向こうの方で楽しそうに泳いでいた。
「こらーっ! 湯船で泳ぐなって言っただろーっ!」
「きゃははははーーーっ!」
 聞いていない。
「全く……ん?」
 不意に、紫の顔が間近に迫った。
「うわっ!? 紫様!?」
「ほら、藍。お風呂場ではリラックスリラックス♪」
 そう言って、にこっと笑う。
「あ…は、はあ…」
「ここがどこだろうが、同じお風呂。そんなにカリカリしないで、ゆっくり身体を休めなきゃ、ね?」
「……はい」
 そのまま、紫はそそくさと幽々子の所へ行ってしまった。

「…リラックス、か」
 ふっ、と空を見上げる。頭上には、金色に輝く大きな満月。
「…ま、たまにはこういうのもいいか…」

 藍は微笑みながら、湯船に波打つ波紋に身を委ねた………
「城」では御座いません(何が?

なんか紫嬢のキャラがおかしい気がする…
謎のザコ
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コメント



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1.50無銘削除
君は私を萌やし殺す気かね!? 最高。
2.40すけなり削除
紫様は百面相なので大丈夫です、きっと(違  ともあれ、藍が良い雰囲気っすよ
3.50使削除
マターリした雰囲気がとてもいいですね。ビバ、お風呂。
66.60名前が無い程度の能力削除
題に釣られますた^^^
藍はやはり巨乳ですよねわかりまs(ry
風呂とか素敵すぐるw
藍の尻尾にもふもふされ隊