Coolier - 新生・東方創想話

魔理沙という名の幻想 ~ And Then There Were No Marisa.

2014/08/10 23:58:35
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魔導書編 ~ The Grimoire of Marisa.
記憶編 ~ Marisa's Lifes in Wonderland.
幻編 ~ You ain't seen Marisa, never!
編 ~ Does the Proprium Dream of Genuine Marisa?
魔理沙という名の幻想 ~ And Then There Were No Marisa.
霊夢という名の存在 ~ Marisa Leaving the People's Vision with Reimu.



「香霖! お茶!」
 魔理沙が香霖堂に飛び込み、後から霊夢も姿を現した。香霖堂の中には香霖と神綺が居た。香霖は飛び込んできた二人を一瞥してから飲み物を用意しに奥へ行った。残った神綺は微笑みを浮かべて頭を下げた。
「こんにちは、霊夢さん、魔理沙さん」
 魔理沙はそれが神綺である事に気が付いて、一瞬身を引きかけたが踏みとどまると、快活な笑顔を浮かべて神綺に手を差し出した。
「よう、こんにちは。どうしたんだよ、今日は」
「アリスちゃんの様子を見に」
 何事も無く握手をした魔理沙は何もされなかった事に安堵しながら後ろに下がった。にこにこと笑っている神綺に魔理沙は上目遣いに気まずそうな視線を向ける。
「ちょっと過保護じゃないか? あいつももう大人だぜ?」
「最近物騒ですもの」
 神綺が笑顔のままそう言った。その笑みに気圧されて魔理沙は一歩後ろに下がる。
「まあ、そうだな。物騒だもんな」
「ええ、とっても物騒。可愛いアリスちゃんに何かあったら大変でしょう? 私、悲しくてどうにかなっちゃうかもしれないわ」
 魔理沙は笑顔の固まったまま何も言えなくなる。そんな魔理沙を気にした風も無く、神綺は霊夢と話し始めた。魔理沙がおどおどとして二人の間に入れず息苦しさを感じていると、やがてココアを入れた香霖が戻ってきた。
「それで二人共今日は何をしてきたんだい? 随分服が汚れているけど」
「反逆者を懲らしめに行ってきたんだぜ!」
 魔理沙が急いで香霖の話題に乗る。
 そうすると霊夢が神綺と話すのを止めて不機嫌そうに話題に入ってきた。
「結局逃げられたけどね」
 香霖がおやおやと言いながら肩を竦める。
「博麗の巫女がそんなので大丈夫なのかな?」
 霊夢が仏頂面でココアに口を付けた。
「別に、あんなの捕まえる必要無いし」
「どうして? 反逆者なんだろう?」
「大した事してないのよ。何で反逆者なんて呼ばれているのかも分からない。単にこの世界はおかしいって喚いていただけ。誰も相手にしていない」
 不機嫌そうな霊夢に代わって魔理沙が言った。
「それでも色色危険な道具を盗んでいったから追っかけてたって訳だな」
「道具? それは僕としては気になるけど。何にせよ二人から逃げるって事は随分と強いみたいだね、その反逆者は」
「道具がだぜ。その道具が弾幕勝負には滅法強い。まあ、結局最後は藍が来て弾幕勝負を投げ捨てて捕まえてたけどな。とんだ徒労だぜ」
 魔理沙は弾幕勝負しなくても良いなら私が捕まえていたけどなと笑いながら一息にココアを飲み干した。香霖が空のカップにココアを注ぐ。
「それはお疲れ様」
「別に反逆者との勝負は疲れてないけどさ。むしろ負けて不機嫌な霊夢を宥める方が面倒だったぜ。未だに怒っているし」
 悪かったわね、と霊夢が噛み付いてきたので、魔理沙は怖い怖いと笑いながら身を退いた。それを見て香霖も笑う。
 三人が笑う中、一人だけ会話に加わらなかった神綺が立ち上がって鞄を持った。
「それではそろそろ」
「あ、これは失礼」
「じゃあね」
「またな」
 魔理沙が別れの挨拶をすると、神綺がドアの前で立ち止まった。三人に背を向けドアを開けもせずに立ち尽くす。どうしたんだろうと三人が訝っていると、やがて背を向けたまま呟く様に言った。
「私達は魔界に住む事にします」
 霊夢が不思議そうに問う。
「しますって、あんたは魔界の住人でしょう」
「ここは物騒ですから」
 神綺はゆっくりと長い息を吐いてからもう一度言った。
「私達は魔界に住む事にします。幻想郷にはもう、来ません。私達とあなた達はあまりにも違いすぎる」
 低く怒りの滲んだ声音に魔理沙は体を震わせたが、頭にアリスの顔が思い浮かんで立ち上がった。
「じゃあ、アリスはどうするんだよ! あいつ、一人ぼっちになっちまうじゃねえか」
 神綺が頭だけで振り返り、魔理沙の事を睨みつけた。その射殺す様な視線に魔理沙は言葉を失い椅子に倒れこむ。
 神綺は扉に向き直り、開けた。
「アリスちゃんは勿論連れて行くわよ。こんな醜い場所に置いていく訳が無いでしょう?」
 霊夢が慌てて後を追う。
「ちょっと待ちなさいよ! あんた本気で」
 だが途中で足が止まった。
 笑顔の神綺が振り返って、霊夢に向かって腕を突き出していた。
「まさか私に敵うだなんて思っていないわよね、霊夢?」
 霊夢が拳を握りこんで神綺の事を睨みつけた。だが神綺は表情を変えず、静かに語る。
「力で治めようとすれば、より強い力に覆される。あなたじゃ魔界を治める事なんて出来ないわ。例え八雲紫でもね」
 霊夢が言い返せずに唇を引き結ぶ。霊夢が動かない事を確かめた神綺は踵を返す。
「さようなら、幻想郷。もう会う事は無いでしょう」
 そうして神綺は姿を消した。
 魔理沙が強硬な神綺の態度に呆然として俯いていると、突然ぎゃりぎゃりぎゃりと耳障りな音が聞こえた。霊夢がドアの表面に爪を立て、木で出来たドアの表面を抉っていた。
「霊夢?」
 霊夢の異常な態度に、魔理沙は息を呑む。
 霊夢ははっとした様子で振り返り、笑みを浮かべた。
「何言ってんのかしらね。信じられないわ、あいつ」
「え? ああ、そうだな」
 霊夢の言う通り、神綺の言葉が信じられない。
 本当に二度と幻想郷に来る事は無いのだろうか。
 魔理沙は両手を絡めてうなだれた。神綺が出て行くのは絶対に自分の所為だ。神綺の言っていた物騒というのは紛れも無く自分を指している。こんな凶悪な奴と一緒に居たくないからアリスを連れて出てく気なのだ。
「本当に信じられないわ」
 霊夢の言葉に、何だか罪悪感を覚えて、魔理沙は反論した。
「神綺の気持ちも分からなくは無いぜ」
 とはいえ、物騒なのは自分だけで、幻想郷全体が物騒な訳じゃない。ならば幻想郷から出て行くのはお門違いな気がした。自分一人が罰を受けて消えればそれで事足りる話だ。
 そんな事を考えている魔理沙に、霊夢は正気を疑う様な目を向けた。
「本気で言っているの? あいつは、幻想郷を醜いって言ったのよ?」
 醜い?
 確かにそんな事を言っていた気もするけど。
「こんなに美しい世界は無いわ。それを醜いだなんて。頭がおかしいんじゃないの?」
「いや、でも」
 突然幻想郷を褒めそやし始めた霊夢に戸惑った。どうして幻想郷が醜いと言った位で霊夢が怒るのか分からない。霊夢の異常な様子に戸惑っていると突然香霖が肩に手を置いたので、魔理沙は驚いて飛び上がった。
「脅かすなよ、香霖」
「もう日が暮れる。帰る時間だ」
「何で?」
 別に日が暮れたからと言って帰る道理は無い。霊夢と一緒に夜まで香霖堂に居座る事も、一晩泊まる事も何度かあった。それなのにどうして今日に限って日が暮れたら帰らなくてはいけないのか。
 疑問に思ったが、訳の分からない理由で憤慨している霊夢と一緒に居るのも怖いので、魔理沙はわかったぜと言ってココアを飲み干し、箒を掴んだ。まだ愚痴を言っている霊夢から逃げる様に外へ出て、もう既に日の暮れた赤焼空を見上げ箒にまたがった。だが飛び立てなかった。空が何だかいつもより赤く見えた。まるで血を塗り固めた様な赤黒さが不気味だった。
 怖いから霊夢と一緒に帰ろうかと思ったが、さっきの変な霊夢も怖い。どうしようか悩んだ結果、空の重苦しい赤に耐え切れなくなって店の中に戻ろうとした時、店の中からくぐもった話し声が聞こえてきた。
「魔界をどうする気ですか?」
 そんな質問の後に、答えが聞こえた。
「何もしないわよ。何かしそうに見える?」
「ええ。今日の反逆者はどうしたんですか?」
「神隠しにあったの」
 八雲紫だ。変な霊夢よりも垂れ込める夕焼けよりも、尚恐ろしい存在がドアの向こうに居る。魔理沙は足音を立てない様にゆっくりと扉から離れて家へと逃げ帰った。

 家に辿り着くと大声で名前を呼ばれた。
「まーりーさー!」
 魔理沙の家の前に立っていたフランが嬉しそうな顔で走ってきた。出掛けている間、玄関先で待っていたらしい。自分を待っていくてくれた事が嬉しくて魔理沙は両腕を広げてフランを迎えた。
「おお! フラン! 遊びに来てくれたのか!」
 魔理沙の胸にフランが飛び込む。二人で抱きしめ合いながらくるくると回る。
「今日はこいし達と一緒じゃないのか?」
 以前は魔理沙としか遊ばなかったフランだが、最近は他の友達が出来て外を遊び回っている。魔理沙の何気ない問いにフランは何故かそわそわと落ち着かなげに辺りを見回して、何かを見つけた様子で手を上げた。
「お姉様!」
「え?」
 魔理沙が驚いてフランの手を振る方角を見ると、咲夜を伴ったレミリアが立っていた。
 魔理沙の胸の中でフランが嬉しそうに語る。
「今日はお姉様と来たの! お姉様も魔理沙に会いたいって」
 突然の珍客に言葉が出ないで居る魔理沙にレミリアが言った。
「久しぶりね、魔理沙」
 魔理沙という言葉を聞いて、魔理沙の混乱が解けた。自分でも驚く程頭の中が冷静になる。
「どうしたんだよ、今日は」
「様子を見に。その子がいつもあんたにお世話になっているって聞いたから」
 レミリアの口調は感情が篭っておらず冷え冷えとしていた。まるで魔理沙に等会いたくなかった様子で、魔理沙は胸が締め付けられる様な思いになりつつも、気丈に笑顔を浮かべてフランを力一杯抱きしめた。
「そりゃあ、可愛いフランが来てくれるんだから、嬉しいに決まっているさ」
 フランも満面の笑みで魔理沙を抱きしめ返した。二人は見つめ合って、人間を超えた膂力で抱きしめ合う。フランが自分と同じだけの力を持っている事が、魔理沙には何だか嬉しかった。
「まあ、中に入れよ。咲夜みたいに上手じゃ無いが、紅茶の一つ位は淹れられるんだ」
 それまで無表情を貫いていたレミリアが笑って吹き出した。
「そう言えば、前は酷かったわね」
 魔理沙が不機嫌そうな顔で、内心レミリアが笑ってくれた事を喜びつつ、玄関へ向かう。
「あの時はまだ初めてだったからだ。あれから上手くなったんだぜ。まあ、期待してろよ」
 三人を招き入れた魔理沙は早速紅茶を淹れる。以前レミリアが来た時は、魔理沙もこの家に住み始めて新たな生活を踏み出したばかりだったから、まだ淹れ方も良く分からなくて、お茶っ葉にお湯を掛けてカップに注いだだけの、色付きお湯にしかならなかったが、今は違う。勉強して、美味しい紅茶を淹れられる様になった。咲夜やかつての魔理沙程は上手くないけれど、十分進歩した筈だ。
 新しい自分になって、新しい生活を送って、色色な事が出来なくちゃいけなくて、色色な事を知らなくちゃいけなくなった。その結果、魔理沙は沢山の事が出来る様になって、沢山の事を知った。紅茶の淹れ方もその一つ。何も知らなかった頃は、咲夜が紅茶を淹れるところなんか見ても何も感じないし何も思わなかったが、今になってみれば咲夜の行為の一つ一つに意味があったんだと理解している。
 それは何にしても同じで、個性豊かな草花の種類を知らなければ草むらが雑草の塊にしか見えない様に、幾つもの顔を持つ月の形を知らなければ月が一つしか無いと考える様に、知らない人は何も見えないが、知っていればそれが見える。けれどその反対に、知らない人が何も考えずに突き進んでいけるところを、知っている人は花畑を伐採出来ず月の満ち欠けに行動を制限される。
 きっと今、咲夜が紅茶を淹れるところを見ていたら、紅茶を淹れる自信を無くしてしまうかもしれない。それでもまた見てみたいと思う。咲夜が紅茶を淹れているところを。あの頃の様に。
 魔理沙は咲夜にお願いしてみようかと悩んでみたが、怖くて踏み切れず、結局自分で淹れてふるまう事にした。あの頃からどれだけ成長してもらったか見てもらう良い機会だと自分を納得させた。
「あら、本当。随分美味しくなったわね」
 魔理沙の淹れた紅茶を飲むなり、レミリアがそう呟いたので、魔理沙は嬉しくなって拳を握った。何故かフランが自慢気に胸を張る。
「そうだよ! 魔理沙のは凄く美味しいんだよ!」
 だが魔理沙を褒めた後に、いたずらっぽい笑みを咲夜に向けた。
「まあ、咲夜の紅茶に比べたら劣るけどね」
 ありがとうございますと咲夜が頭を下げた。褒められたというのにその表情には苦悩が入り交じっている。
「まあ、咲夜のお茶に比べたらなぁ」
 魔理沙は自分で自分の紅茶を飲んだ。美味しい。だが物足りない。今目指しているのは、咲夜が淹れてくれた味だ。真似よう真似ようとしてきたが、特に香りがまるで違う。紅魔館で味わっていた頃の、あのお茶とはまるで違う。とはいえ、幾ら目指したところで無駄な事は魔理沙自身気が付いていた。目指しているのは、咲夜の淹れる紅魔館の紅茶。それは幾ら味を真似ても香りを真似ても器を真似ても辿り着けない場所にある。
「美鈴は、来ないのか?」
 分かっていて、魔理沙は聞いた。
 案の定、レミリアが答えた。
「美鈴は、まだ少し体調が悪くて寝込んでいるわ」
 魔理沙は苦しくなった胸に手を当てつつ、冗談を言った。
「じゃあ侵入し放題だな」
「元から侵入し放題じゃない」
 また込み上げてくる涙を魔理沙は必死で堪えた。
 そう。魔理沙はいつだって簡単に紅魔館に入ってこられた。魔理沙に侵入される度に、美鈴がレミリアに怒られているのを見てドジだなぁとフランは笑っていた。それが美鈴の計らいで、魔理沙をフランに会わせる為だったなんて夢にも思っていなかった。魔理沙になって色色と考える事が増えて、見えてきた事がある。それはとても悲しくて、知りたくなかった事で、けれど知らなかった事を嫌悪する様な、やるせない真実だった。
「また来なさいよ。最近、あんた、家に侵入してないでしょ? いっつもずけずけ侵入してきて物を盗っていくあんたが来ないから、きっと張り合いがなくて美鈴の体調が崩れたに違いないわ。あんたが来れば美鈴もパチュリーも喜ぶから」
 とても魅力的な提案だった。今すぐにでも飛んでいきたい気分に駆られた。けれどしてはならない事だと分かっていた。もしも紅魔館にもう一度足を踏み入れれば、この家に一人っきりで住む事の、あまりの寂しさと悲しさに耐えられなくなってしまう。それが分かっていたから、魔理沙は決して紅魔館に近寄ろうとはしなかった。
「考えておくぜ」
 それから魔理沙は気になっていた紅魔館の近況を聞いた。以前とあまり変わりは無い生活で、強いて言えば美鈴が寝込んで心配な位だと言っていた。
 それを聞いて魔理沙は安堵する。
 もしも自分の所為で何か食い違いが起こっていたらどうしようかと不安に思っていたがその心配は杞憂だった様だ。安堵した魔理沙の口からふとフランに対しての質問が漏れた。
「お姉様の事、好き?」
 それは自分でも意識していなかった言葉で、言った瞬間はっとして口を押さえた。フランはそれに気が付かず、心の底から嬉しそうに笑った。
「大好き!」
「そっか」
 フランの答えに魔理沙は胸を押さえた。嬉しいのか悲しいのか悔しいのか寂しいのか自分でも良く分からなかった。
「お姉様、優しくて、格好良くて、大好き! 屋敷のみんなもね、みんな私に良くしてくれて。私、ずっと閉じ込められてたけど、お姉様のお陰で外に出られた。だからお姉様も紅魔館も大好き!」
 フランの笑顔に胸をつかれて、魔理沙は涙を見せない様に、フランを深く抱きしめた。
「そっか。フランは良い子だな」
 魔理沙の声は震えていた。
 フランが照れくさそうな笑い声を漏らす。
「あ、魔理沙。後ね」
「何?」
「魔理沙の事も大好きだからね!」
「ありがとな」
 良い子だ。私なんかよりもずっと。そんな事を考えて、魔理沙はフランの金色の髪を撫でた。優しくて可愛くて良い子だ。自分なんかよりもよっぽどお姉様の妹であるフランに相応しい。この子がフランなら後悔も心配も無い。フランは以前よりもずっとフランらしい。このフランが居れば紅魔館だっていずれ元気になる。後は魔理沙が魔理沙らしくあれば、何もかも上手く行く。その為に頑張らなくちゃいけない。こうしていれば世界は上手く回るんだから。
 そんな決意を抱いてもう一度強くフランを抱きしめた瞬間、別の誰かに抱きしめられた。レミリアかと思って魔理沙は顔を上げ、思わず口を滑らせる。
「お姉様?」
 そうして自分を抱きしめてくる者の顔を見て、拍子抜けした声を出した。
「何だ、こいしか。どうしたんだよ」
 フランの友達であるこいしは魔理沙とフランを抱きしめながら言った。
「私もフランが好き」
「私もだよ、こいし!」
 フランが魔理沙の腕の中で身じろいでこいしに抱きついた。抱きつかれたこいしは苦しそうな顔をしながら魔理沙に顔を向けた。
「魔理沙も好き」
「そりゃどうも。ところで、人の家に勝手に入ってきちゃいけないってこの前も言わなかったか?」
 こいしが不思議そうな顔をする。
「勝手じゃないよ。だって魔理沙が中に入れよって言ってくれたもん」
 そんな事言っただろうかと考えて、レミリア達に向かってそういった事を思い出した。どうやら気が付かなかっただけでこいしは初めから居たらしい。
「フラン、こいしが居るなら居るって言ってくれよ」
「私、知らないよ。今日はお姉様と来たんだから。信じて!」
 魔理沙がこいしに顔を向けると。辺りを見回していたこいしが言った。
「私もフランと一緒じゃないよ。お姉ちゃんと一緒に居たから」
「じゃあ、肝心のさとりは何処に居るんだ?」
「それが大分前にはぐれちゃったから探してたの。魔理沙、知らない?」
「知らない」
 すると丁度良く玄関のドアが叩かれた。さとりの声も聞こえてくる。
「魔理沙、悪いけど開けてくれる?」
 タイミングが良くねえかとぼやきながら、魔理沙はさとりを出迎えた。
「聞き込みしてたら、この家から心の声が聞こえてね」
「便利な事で」
「そんな事無い。あなた達がこいしに気が付いたから初めてこの家に居るって分かったのよ?」
「私がもっと早く気が付いていれば、もっと早く心の声が聞こえたって事か? 悪かったな。とりあえず座れよ。お茶出すから」
 魔理沙がお茶を淹れて持って行くと、フランとこいしが盛り上がっていた。
どうしたんだと魔理沙が問いかけると、紅魔館の周りに綺麗な花の咲く草原や猫の顔に見える岩があるらしく、それを見に行くんだと言った。魔理沙は驚いて目を見開き、そして安らかな微笑みを浮かべた。魔理沙はそんな物が紅魔館の周りにあるだなんて知らなかった。それどころか紅魔館の周りを詳しく見た事も無かった。魔理沙はそんな事も知らなかった自分を心の底から嫌悪して、それを決して表には出さず、フランとこいしに笑いかけた。
「それは素敵だな」
 フランが大きく頷いた。
「魔理沙も行こう!」
 その笑顔を見ている内に苦しくなった。まっすぐと自分を見つめてくるフランの目は一体どれだけ光り輝く素敵な物を見ているんだろう。自分とは違う物を見ているフランに対して悔しい気持ちを抱いた。
 魔理沙は服の裾を握りしめて、静かに首を横に振る。
 自分の心が少しずつ黒ずんでいく。じわりじわりと闇を迎えようとしている。星が煌めき涼風の吹く素晴らしい夜の闇ではなく、地の底の穴蔵の更に下の、この世で最も深い場所にあるどろりと粘液質で悪臭の漂うおぞましい闇が、自分の心を侵食していく。そんな気がして、魔理沙は怖くなった。
 自分が魔理沙になった時の事を思い出す。その日自分が何をしてしまったのかを思い出す。それと同じ事を目の前の、レミリアの妹であるフランにしてしまいそうで、魔理沙は込み上げる恐ろしさに耐えながら、窓を開けて外を見た。
「もう随分と暗くなってきた。良い子は寝る時間だぜ」
「ええ! もっと魔理沙と居たい!」
 魔理沙は窓枠を握りしめてから、ゆっくりと振り返った。
「またいつでも会えるさ」
 また、と言って二度と会えなくなった者が居た。魔理沙はふと、以前はその者の事ばかり考えていたのに最近ではあまり思い出さなくなっている自分に気が付いた。理由は明白だ。自分がその者の存在を塗り潰してしまったからに他ならない。塗り潰された者は次第に周りの記憶から消え、最後には埋まり切って誰からも顧みられなくなる。例えどれだけ大好きで大切に思おうと、時は必ず降り積もる。
「じゃあ、またね、魔理沙」
「ああ、じゃあな」
 フランとこいしが口口に別れの挨拶をして外へと飛び出した。その後にレミリアと咲夜も続く。と、部屋を出る直前でレミリアが立ち止まった。
「ねえ」
 レミリアの独り言かと思ったが、一呼吸置いてから自分を呼びかけたのだと気が付いた。
「どうかしたのか?」
 レミリアは感情の抜け落ちた顔でじっと魔理沙を見つめた後、言葉を選びながら呟いた。
「生活は、どう? 楽しい?」
 その瞬間、魔理沙の腹の底から言い知れない熱が込み上げてきた。その衝動は一気に頭頂まで駆け上り、魔理沙を責め苛んだ。喉の奥から熱い空気がこみ上げる。それを吐き出せば泣いてしまいそうで、飲み込もうとしたが駄目だった。息を吐き出した魔理沙が眦に涙の感触を覚える。堰が切れると思った瞬間、外からレミリアを呼ぶフランの声が聞こえた。レミリアを呼ぶ邪気も屈託も無い明るい声を聞いた途端に、魔理沙の中の衝動が霧散した。自分でも驚く位に心を凍らせた魔理沙は口の端を持ち上げた。
「フランやこいし、霊夢とか沢山の友達と会うのは楽しいし、魔法の研究だって面白い。毎日気ままに生きているし、自分のしたい様に生きていられる。これで楽しくない訳があるか? 何より私は魔理沙だぜ? いつだって人生を謳歌している。毎日が楽しくて仕方無いぜ」
 レミリアは表情を緩めて溜息を吐くと、それもそうねと言って去っていった。一瞬、咲夜が逡巡する様にレミリアと魔理沙を交互に見たが、すぐにレミリアの後に続いた。
 塗り潰された存在は消えていく。それは自分もまた同じ。外からフランの嬉しそうな声とそれに答えるレミリアの声が聞こえる。そこに自分の入る余地は無い。自分の中の魔理沙がそうである様に、自分も皆の中から消えていく。それを思うと、魔理沙は胸を掻き毟りたくなった。自分が皆から忘れられ、そこに余所者が入ってきて、自分の代わりを務めるなんて、嫌で嫌で仕方が無い。出来る事なら今すぐ外へ飛び出して、お姉様と叫んでレミリアの胸に飛び込み、紅魔館へ帰って皆と一緒に暮らしたかった。
 けれど出来無い。かつての自分であれば何も考えずにそれが出来たかもしれないが、今の自分では出来無い。魔理沙になった自分は、外の世界に自分達の住む居場所は無く幻想郷が最後の拠り所なんだという噂を知っている。幻想郷で暮らす為にはルールがあってそれを破れば、今日追った者の様に反逆者の汚名を着せられ幻想郷中から追い立てられ、最後は式に捕まってしまう事を知っている。そして今自分がこうして魔理沙として過ごす事がその破ってはならないルールの一つである事を知っている。それを破って紅魔館に戻れば、皆に迷惑が及んでしまう事を知っている。
 何もかも知っている。余計な事を知りすぎた。それ等が鎖の様に巻きつき食い込んで、魔理沙は動けない。例えどれだけ苦しく思い涙を流しても逃れられない。
 どれだけ助けを求めても助けてくれる者は居ないだろう事を知っていた。霊夢も魔理沙もアリスもレミリアも咲夜も美鈴もパチュリーもフランも、みんなそれぞれ自分の役割を全うしなくてはいけない。それは幻想郷中の誰もが同じ。皆が我慢しながら己の役を演じている。だから助けを求めたって無駄なのだ。誰もが同じなんだから、自分だけが苦しいなんて事は認められない。辛いと泣き言を言う事は、つまり幻想郷のルールを脅かす反逆者で、役を放棄する事は幻想郷の中で生きる事を放棄する事と同じである。
 だから、窓の外に向かって一声助けを求めるだけの簡単な行為が、今の魔理沙には出来無い。それは紅魔館を破滅させる事と同じだから。多くの事を知った魔理沙は多くの事が出来なくなって、自分の幸せを求める事すら出来無くなった。
 救いを求めて紅魔館を破滅させるか。自分が耐えて紅魔館が平穏で居るか。
 選べる二つの選択肢が前にある。
 どちらを選べば良いかは明白だ。
「それはどうでしょう?」
 突然傍から話しかけられて魔理沙は驚いて飛び上がった。
「まだ居たのか?」
「ちょっとね。一言言っておこうとか」
 魔理沙の顔が青ざめる。さとりは心が読める。当然今の悩みも聞いていただろう。もしも反逆者扱いされて、幻想郷を統治する式に告げ口されたら。
「ああ、それは大丈夫。地上の幻想郷と地下の幻想郷は違います。むしろ同じ物だと思わないで下さい。不愉快です」
「何が違うんだ?」
「私は心を読むさとりですから。何よりも心を大切にします。計算ばかりが上手で、滑らかに動く構造ばかりを尊ぶ式と同じにしないで下さい。私の統治の下では、心の底から不満を持つ者は出て来ない」
 まあ規模の問題でもありますがとさとりは笑う。どうやらさとりなりの冗談らしいと分かったが、いまいち笑い所が分からなかった。さとりは恥ずかしそうに顔を赤らめつつも、真面目な顔で話を続ける。
「フランドール・スカーレットさん、あなたの考えは間違っています」
「どうして? いや、私は、魔理沙だぜ」
 もしかしたら試しているのかもしれないと考えて魔理沙は自分の役柄を告げた。それを無視してさとりは続ける。
「おかしいと思いませんか? 誰かが居なくなったらその者の代わりを別の誰かが務める。それはまあ分かります。けれどそれがたった一人、博麗霊夢という名の少女が望む世界を作る為に行われているんですよ? こんな馬鹿な話ありません。この幻想郷に住まう全ての者を不幸にしてたった一人の満足する世界を作るなんて、それではみんな部品と同じではありませんか」
「でも霊夢は幻想郷を保つ為に必要な存在だぜ。だったら仕方が無い事だろう」
「どうして? 確かに博麗霊夢が居なくなれば幻想郷の歯車が決定的に狂うかもしれない。けれどそれが何ですか? 大切な者達との生活を捨てるなんていう最大限に不幸な事をしてまで防がなくちゃいけない事なんですか?」
 何でこんな事を言うんだろう? と魔理沙は嫌な気分になった。誰もそんな事はしたくない。紅魔館でずっと暮らしていたい。けれど望むままに動いては不都合が生じる。だから我慢して、必要な事をやっている。
「はっきり言って、あなたは馬鹿です。いえ、あなただけじゃなく、幻想郷中みんな。あなたのお姉さんだってそうです」
「は?」
「あなたのお姉さんはあなたと同じ位に馬鹿です。いえ、それ以上の、幻想郷一の馬鹿者です」
「お姉様を馬鹿にするな!」
 思わず激昂して、魔理沙は壁を叩いた。家全体が大きく揺れた。
「馬鹿です。少なくとも私なら妹を見捨てるなんてしない。絶対に。大切な家族を失う位なら死んだ方がマシだ! と思っているからです。それをあなたのお姉さんはあっさりと幻想郷のルールを飲んで、あれだけ強大な力を持ちながら誰かの言いなりになって妹を見捨てた。これが馬鹿者でなくて何と言いますか?」
 魔理沙は言い返そうとして、涙で言葉が詰まってしまった。
 魔理沙には分かっている。きっとレミリアが沢山考えて一番良いと思ったからこうしているんだと。幻想郷から出たらレミリア達は生きていけない。外の世界はもう妖怪が住める様な場所ではなく、幻想郷が最後の拠り所だから、レミリアは仕方無く幻想郷のルールに従った。幻想郷のルールの下でなら、少なくとも生きていける。たった一人差し出すだけで他のみんなが安心して暮らしていける。差し出された魔理沙だって別に死ぬ訳じゃない。それどころか憧れいてた大好きな魔理沙と同じ存在になれたのだから、それもまた別の幸せの形だ。失ったのは家族という形だけ。それだって、もしも家族である事に固執して幻想郷から追い出されたら、待っているのは全員の死。結局、家族という関係は失われる。少なくとも生きていれば、家族という立場は失っても会って話をする事が出来る。だったら生きていた方がずっと良い。
 魔理沙は信じている。きっとレミリアが苦悩してくれた事を。魔理沙になった次の日、新しいフランを連れてきたレミリアは暗い顔をして掠れる声でごめんなさいと言ったのだから。レミリアはそれが何に対しての謝罪なのかはっきりと言わなかったが、きっと苦しんで考えぬいて、その上でこの決断を出し、それでも罪悪感に囚われているのだと、魔理沙になって色色な事を知った魔理沙は想像出来た。
 それを責める事なんて出来無いし、魔理沙は納得している。これが一番良い方法なんだと。だから自分が苦しくても、今まで耐えてきたし、これからも耐えて行こうと考えていた。
「お姉様は馬鹿じゃない」
 零れた涙を拭ってさとりを睨む。
 けれどそういった理屈とは別に、紛れも無い事実がある。結局、どれだけ理屈を並び立てようと、レミリアに見捨てられた事は厳然たる事実だ。それはどうあがいても覆らない。その事実はいつだって魔理沙を苛んでくる。時折無性に泣きたくなる事がある。大声を上げながら暴れだしたくなる時がある。
「お姉様がそう決めたんだから、私は」
「仕方無い?」
「そうだよ! 仕方無いじゃん! だって私達はこの幻想郷の外に出たら死んじゃうんだよ? 外は妖怪の生きられない世界なんでしょ? だったら我慢するしか無いじゃん! 私は、確かにお姉様や紅魔館のみんなと離れるのは辛いけど、それ以上に、みんなが消えちゃう事の方がもっと嫌! 私は例え自分がどれだけ不幸になってもみんなが幸せで居てくれるのならそれで良いの!」
 魔理沙の悲痛な叫びを聞いたさとりは薄っすらと笑った。
「かつて似た様な思考をした者が居ましたよ。いえ、珍しい思考じゃありませんが。特にあなたと同じ立場で全く同じ事を考えた方が居ましてね。つまりは初めて魔理沙代役になった者なんですが」
「それって」
「その方はねぇ、最後まで、後悔はしていない、満足している、自分は正しいって信じていましたよ」
「じゃあ! 私だって」
「でもね、信じるって別に、そんな立派な、絶対的な事じゃないんですよ。もっと言えば騙そうとすれば騙せるんですよ、自分なんて、簡単に」
 どういう事だか良く分からない。
「嘘っていうのは理屈なんですよ。計算と言っても良いですね。適切な場を用意して、適切な刺激を与えれば、必ず騙せます。私の様に相手の反応を読み取って適切な刺激を与えられたり、あの式の様に場を整えるのが上手ければ、他人を騙すなんて造作も無い。けれど私達以上に巧みな嘘吐きが居ます。この幻想郷中に沢山ね。分かりますか?」
 騙そうとする者と騙される者が同一の存在、つまり自分自身こそが一番の嘘巧者。
「その通りです。場を整えるのも適切な刺激を与えるのも、自分自身に対してであれば酷く容易い。自分が嘘を吐いていると思わないまま騙す事すら可能です」
 魔理沙は苛立って再び壁を叩いた。壁に穴が空き、家が大きく揺れた。
「結局何が言いたいの? 騙せるから何? ならそれで良いじゃん。例え私が私の事を騙して居ても、今、私は自分のしている事が正しいって信じてる。それでお姉様達が幸せになってくれるなら、私はそれで良い! あなたにどうこう言われる事じゃない。嘘だって気が付かければ、例え偽りだろうとそれは幸せだ!」
 さとりがくつくつと笑って一冊のノートを取り出した。
 魔理沙はその本に見覚えがあった。かつての魔理沙が作っていた魔導書、その最後の一冊だ。それまではちゃんとした装丁の本に書いていたのに、何故か急に香霖堂から安物のノートを買って、魔導書だと言い張っていたから、かつてのフランは魔理沙が冗談を言っているんだと思って笑った。結局魔理沙が魔理沙の家を継いだ時、魔理沙の家にはかつての魔理沙が作った魔導書が何冊かあったけれど、安物ノートの魔導書だけは無くなっていた。さとりが持ち出していたのか。
「気が付かなければ。確かにその通りですが、それは他人から聞かされた嘘の場合です。結局嘘は嘘。自分で嘘を吐いたのなら、意識していなくとも、気が付いているんですよ。自分は嘘を吐いているって。心の何処かではね。知らないふりを決め込んでいるだけで」
 さとりが魔理沙にノートを差し出す。
 どうしてさとりがこれを持っているのかと訝っているとさとりが鼻を鳴らした。
「うちのお燐が持ってきたものの中に入っていたの」
「どうして私に?」
「中を見て欲しくて。それは魔理沙の代役を務めていたアリス・マーガトロイドの日記です。是非読んで下さい。その中にはアリスの苦悩が最初っから最後まで殆ど書いてありません」
「書いて、ない?」
 てっきりさとりが日記を見せてきたのは、自分自身を騙して居た者が如何に苦悩していたのかを教えようとしての事だと思っていたので、魔理沙は肩透を喰らった。
「ええ、書いてません。不自然な程に全くこれっぽっちも。明らかにその話題を避けて日記を書いてあります。これは想像ですけれど、アリスさんは自分でその話題を避けている事に気が付いて居なかったんじゃないでしょうか。自分でも気がつかない内にその事から目を背け続けて来た。まあ、想像でしかありません。さて、何よりも重要なのが、その最後。アリスさんが亡くなったその日、ようやくその事に触れています。どんな事が書いてあったと思います?」
「え? 分からないけど。最期だから、その、触れたの? 話の流れからして、魔理沙で居る事が嫌だったみたいな?」
 さとりの口がきゅっと吊り上がり、質の悪い笑みになった。
「いいえ。その逆です。私は魔理沙で良かった。後悔はしていない。最後の最後までそう書いてあるんです。必死に自分で言い聞かせているみたいに。その日記には全くといって良い程、後悔をしていないアリスさんが書かれています。そしてだからこそ、最初から最後までアリスさんの後悔が伝わってくるんですよ。自分を騙さなければいけないとは、それだけ追い詰められていたという事。アリスさんは無意識の内に、後悔していない自分を演じて自分を騙していた。そうしなければ心が壊れてしまうと分かっていから。どうぞ読んでみてください。痛痛しく苦しみ続けるアリスさんの心情が、伝わってきますよ」
 魔理沙は自分の手の内のノートを見る。自分の手が震えている事に気が付いた。アリスの後悔が呪いとなってノートを伝播して自分に伝わってくる様な気がした。
 魔理沙は首を横に振り、ノートをさとりへと返す。それを受け取ったさとりは、今までとは打って変わって柔らかい笑みを浮かべ、優しい声音で言った。
「そうです。これはとても悲しい事。出来るなら誰も背負いたくない事。いえ、背負ってはいけない事です。フランさん、あなたがこのノートを恐れたのは、まだ自分を騙しきれていない証。きっとアリスさんであれば、躊躇いつつもこれを読み、表面は取り繕いつつ、内心では恐れ苦悩した事でしょう。この日記を書いた者と同じく張り裂けそうな自分の心理に」
 さとりの手が優しく魔理沙の頬を撫でる。その温かさに魔理沙は心地良さを覚えて目を閉じた。
「あなたはアリスさんと同じ道を歩んではいけない。騙すなんて決して上等な事じゃない。まして自分をだなんて。あなたは魔理沙ではありません。あなたは魔理沙をやめるべきだ」
「でもそうしたら、この幻想郷で暮らしていけなくなっちゃう」
「そこです」
 さとりが急に鋭い声を発したので、思わず魔理沙は目を開けた。
「この幻想郷を縛っているのは、その噂に他ならない。妖怪も人間も、幻想郷という檻の外に出たら暮らしていけないと思っているから、誰もが幻想郷のルールに逆らえないでいる」
「どうしようもないじゃん。本当の事なんだから」
「いいえ、正にそれが式の作った場。フランさん、あなたは外の世界で暮らしていた筈ですが、本当に妖怪が暮らしていけない世界だったのですか?」
「え? 分かんないけど。ずっと屋敷の外に出なかったし。気がついたら幻想郷に来ていた位で。でも、このままじゃいけないからって、お姉様達はこの幻想郷に来たって聞いた。それに霊夢も言ってたよ。幻想郷の外は妖怪が生きていけなくて、だから妖怪達の為に巫女として頑張らないとって」
「本当にそうだと思いますか?」
「え? でも」
「はっきりと外を見た訳でも無いのに、どうして分かるんですか? そもそも幻想郷だけが妖怪の生きられる場所? 外の世界はとても広い。他にも場所がありそうなものですけど」
「それはそうかもしれないけど。幻想郷に来る事はお姉様が決めたんだよ? お姉様のする事は正しいんだから、外で妖怪が」
「ええ、そうですね。その時点で幻想郷に来る事が最善の手段だったに違いありません。だからといって、それは幻想郷の外で妖怪が生きられない事と等しくは無い。他にも妖怪が生きていく手段は沢山あるけれど、その中で最善だったのが幻想郷に来る事だったのではありませんか?」
 魔理沙が黙って考えようとすると、それを妨げる様にさとりが顔を近づけてきた。
「どうですか? 私の言っている事に何か間違いはありますか?」
「分からない。けど」
「そうですね。確かな事ではありません。だからあなたはレミリアさんと話し合うべきなんです。魔理沙である事が嫌だとお姉さんに言った事がありますか?」
「私はフランだよって言ってもお姉様は私が魔理沙だって」
「それはあくまで混乱しているあなたに状況を突きつける為の言葉だったのではありませんか?」
「どういう事?」
「もしもその時あなたが、魔理沙になんてなりたくない、お姉様の妹で居たいと言ったらお姉さんはそれを聞き入れてくれたと思いませんか?」
「……分からないよ。混乱してて覚えてないし」
「良く考えて下さい。どうですか?」
「分かんない! そんなの、分かんない!」
「でしたら、一度しっかりとご自分の気持ちを伝えるべきです。レミリアさんの立場になって考えてみて下さい。例えば、あなたのお姉さんが魔理沙になって、嫌で嫌で泣いてしまっているとします。あなたはそれで良いんですか?」
「良くないよ! もしもそうだったら私は」
「でもお姉さんが、私は大丈夫、魔理沙で居る事が楽しいから、心配しないで、と言っています。それならどうですか?」
「それなら、お姉様がそういうなら」
「でも本当は泣いているんですよ? 良いんですか?」
「じゃあ、やだ!」
「どうしてです? お姉様がそういうなら諦めるって言ったじゃないですか?」
「諦めるとまでは言っていないよ! それにお姉様が嘘を吐いてたって分かってたらちゃんと助ける」
「そういう事です。あなたがはっきり言わないと、お姉さんはあなたの言葉が嘘かどうか分からない。さっきみたいに、人生を謳歌しているなんて言われたら、レミリアさんは動けないんです。あなたがどんなに苦しんでいても気が付いてあげる事が出来無いんです。これがどれだけ苦しい事か分かりますか? 大切な人が泣いているのに、それに気が付いてあげる事すら出来無い。それがどれだけ残酷な事か分かりますか?」
 青ざめた魔理沙の頬を、さとりが何度も優しく撫で、眦から零れた涙を拭った。
「あなたはお姉さんに会って、一度あなたの気持ちを伝えるべきです。そうしないとみんなが不幸なまま終わってしまう。もしもそれでお姉さんに迷惑が掛かると思っているのなら、そんな事は無いと私が断言します。妹に頼られて迷惑に思う姉なんて居ません。私も妹を持つ姉ですから分かります」
 ね? っと首を傾げてさとりが笑う。
 魔理沙が涙を拭いながら頷いた。

 魔理沙は翼で空を飛び紅魔館まで辿り着いた。当然勝手は分かっている。魔理沙は迷う事無くレミリアの部屋の窓に張り付いた。何故かいつも閉じているカーテンが開いていたので中が見えた。部屋にはレミリアと咲夜が居た。声をかけようとしたが、二人の話し声が聞こえて、何となく口を閉ざした。
「良かったですね、妹様に会えて」
 自分の話をしている事が分かって、魔理沙は嬉しくなった。さとりの言っていた通りだ。妹を気にかけない姉なんて居ない。今日会いに来てくれたのだって心配してくれたからかもしれない。
 きっとお姉様なら助けてくれる。
 そんな期待を抱いて、窓を破壊して中に入ろうとした時、レミリアが咲夜をたしなめた。
「魔理沙よ。私の妹じゃない」
 魔理沙の、全てが止まった。壁を破壊しようとしていた動きも、呼吸も、笑顔も、思考も、時間も、全てが止まって動かなくなった。
「わきまえなさい、咲夜」
 レミリアの言葉が続く。
「あれは魔理沙。そうであるからこそ、この紅魔館の平穏が保証されている。あなたの言葉が紅魔館に危機をもたらす。もう少し考えて発言なさい」
「ですが」
「妹なら隣の部屋で寝ている。今日は随分はしゃいでいたもの。私だって年甲斐も無く一緒になって遊んで。ねえ、咲夜。これが平穏。これが幸せでしょう? 家族みんなが仲良く、無事に暮らしている。それ以上の幸せが何処にあるの?」
「私は平穏を壊そうだなんて」
「している。さっきの発言がその現れ。あなたは未だに魔理沙を紅魔館に連れ戻したいと思っている。でしょう? それが言動に現れている。それは必ずあの式に嗅ぎつけられる」
 レミリアが自分の事を差し示した。
「私はレミリア。でしょう? あなたは咲夜。隣の部屋に居るのはフラン。そしてあの家に居るのは魔理沙。皆が己の立場に満足している。それを壊す様な発言はしないで頂戴」
 ようやっと魔理沙の時間が動き始めて、目を拭い、部屋の中をようく見た。レミリアが怖い顔をしている。咲夜の発言に怒っている。今の平穏を壊される事を厭っている。
 さとりの話を聞いて、いやその前から、もしかしたらという期待があった。今はルールに付き従っている様に見えるけれど、もしかしたら妹の自分を助ける為に動いてくれるんじゃないかという期待。それは見事に裏切られていた。レミリアは今の平穏を壊そうなんてこれっぽっちも考えていなかった。絶望が全身を支配して体に力が入らなくなった。
 レミリアが今の平穏を望んでいる事は明白だ。レミリアは現状に満足している。それを壊す者を叱っている。
 魔理沙は壊そうとしていた手をおろして、そっとガラスに触れた。
 ガラス一枚隔てた向こうに、温かな幸せが広がっている。今居る外は、暗くて蒸し暑くて嫌になる。出来れば紅魔館の中に入りたかったけれど、魔理沙にそれは出来無い。
 姉に叱られたくない。姉に怒られたくない。
 姉に迷惑を掛けたくない。姉の平穏を壊したくない。
 その為には、ここにいちゃいけない。
 胸の辺りが、寒寒としていた。辺りはじっとりと暑苦しいのに、胸の部分だけは風が吹き込んで冷たい。何かが抜け落ちた様な感覚なのに、何故かその部分だけが重たくて、喉が重たい胸に引っ張られて苦しくて吐きそうになった。
 嗚咽が漏れそうになるのを、両手で口を塞ぎ、止める。
 溢れだす涙をどうする事も出来ず、口を覆ったまま窓から離れた。滲んだ視界にもう一度レミリアを映し、魔理沙は翼を弛めかせて飛び去った。風が舞って窓を揺らした。
 音に気が付いたレミリアが窓に目を向けた。だが窓には誰の姿も見えなかった。レミリアの言葉に納得出来無い様子の咲夜は、音等気にも留めずにレミリアへ食って掛かる。
「どうしてそんな事を言うんですか? お嬢様だって心配していない筈が無いでしょう! いいえ、この世界の誰よりもフランドール・スカーレットに帰ってきて欲しいのはあなたの筈だ! 今日だって心配して見に行ったじゃありませんか。それが、どうしてそんな事を……私は……いいえ、もっと早く言うべきでした。お嬢様!」
 咲夜はレミリアに顔を寄せ、意を決してそれを口にしようとしたが、レミリアが全く別の場所を見ている事に気が付いて語調を弱めた。
「お嬢様、今大切な話を……どう致しました?」
「フラン?」
「え?」
 咲夜がレミリアの見つめている窓を見た。誰の姿も無い。
 そこで咲夜は気が付いた。陽光を嫌う主なので紅魔館に窓という物は殆ど存在しない。レミリアの部屋にある一つの大窓は、あくまで夜の帳が降りた後に、レミリアが外と行き来する為の玄関でしかなく、陽や月の光を取り込む用途として機能した事は一度も無い。だから本来ならばいつだって分厚いカーテンが閉まっている。けれど今日はそれが無い。いや、気持ちが沈んでいて全く気にしていなかったが、このところずっと、昼夜の区別無く窓のカーテンが開いていた。フランがこの屋敷を離れてからずっと。
 もしかしてと、咲夜がロミオとジュリエットを思い浮かべながら、レミリアに視線を戻すと、レミリアは無表情でじっと窓を見つめ続けていた。

 魔理沙は家に帰るなり、大声で笑いながら窓を破って寝室に入り、机の上に置いてあった魔導書を払い除けた。自分でも何をしているのか分からなかった。ただ喉の奥から不思議な程笑い声が溢れてきて、それに呼応する様に魔理沙の家にある色色な物をぐちゃぐちゃにしたくてたまらなくなった。
 本棚を倒し、ベッドをひっくり返して、居間へ向かう。机の上のティーカップを壁に投げつけ、机をひっくり返し、観葉植物を踏みつけた。
 どんどん楽しくなって、更に量の増える涙を拭いながら、実験室に入り、薬品の収まった棚を引き倒して、実験台の上のフラスコを掴みあげ、魔理沙の手が止まった。そのフラスコの中に、魔理沙の教えてくれた魔法が生成されていた。それを見た途端、何だか力が抜けて、フラスコを取り落とす。床に落ちて砕け散った事には頓着せずに、覚束無い足取りで外へ出ると、木の叉に倒れこんだ。そのまま気に縋り、頭を打ちつけながら、泣く。
 自分が何をしているのか分からず、何をしたいのかも、どうしたら良いのかも分からない。何だか色色な事が分からなくなって、自分すら良く分からなくなった。ぼんやりとした頭が痛くて仕方が無い。その痛みに意識を向けると、涙に滲んだ視界がぐらぐらと揺れだした。遠くの星が目に入る。それが光っているという事実が無性に気になった。それが何という訳でも無く、光る星を見つめながら、何でだろうと考える自分の事を考える。きっと悲しみを紛らわせようとしているんだろうと気が付いて、その事に意識を向けようとすると、また光る星が気になった。暑かった。暑くて、体が重たくて、疲れていた。疲れているから寝なくちゃいけないと思った。
 魔理沙は立ち上がって、家に戻る。家の中が荒れていて、沢山の物が壊れている。自分でやった事なのに苛立ちが湧いてきた。部屋の中が荒れている事は許せないが、片付けるのも面倒だから、早く寝てしまおうと思った。
 眠る為に自室に戻ってみたものの、ベッドがひっくり返って壊れていた。足が折れていて、使い物になりそうにない。苛立ちが頂点に達して思いっきり叫んだ。叫んだがどうなる訳でも無く、魔理沙はその場に座り込んで、目の前に置かれた姿見に自分を映した。
 姿見には自分の姿が映っている。それをぼんやりと見ている内に、何だか奇妙な感覚が辺りに広がった。自分は自分である。そう思うのだけれど、自分の名前は何だろうと考えると、どうやっても思い出せなくなった。フランドールだとか魔理沙だとかレミリアだとか美鈴だとか咲夜だとかアリスだとかそういう名前は沢山思い出せるのに、自分の名前となるとそれが何なのか分からなかった。
 もう一度自分は何なのかと鏡に問うと自分の背後に立つレミリアの姿が映った。そして思い出す。いつも自分が鏡を前にした時、何を思っていたのか。自分はお姉様の妹である。そればかり考え、そしてそれだけで幸せだった。それが今では、姉であるレミリア本人に妹である事を否定された。だったらもう自分なんていうものは無いのだろう。
「フラン、何を泣いているの?」
 鏡の中のレミリアがそう言った。
 いつもの幻覚の様だ。魔理沙になった日から鏡を覗くと幻覚を見る様になった。
 レミリアの幻覚が映ったのは久しぶりで、その上、自分の事をフランと呼んでくれたので、幻覚とは思いつつも魔理沙は嬉しくなった。
「お姉様」
 魔理沙は笑い、涙する。
 自分にはもう幻覚で己を慰める事しか出来無い。
 現実では既に見捨てられてしまっている。
「フラン、辛いの?」
 姉の優しい言葉が胸にしみて痛かった。悲しみがどんどん溢れ出てくる。
「辛いよ」
 そう呟いて、慌てて首を横に振った。
「でもね、私頑張るよ。そうすればみんな幸せで居られるから。私は不幸でも良い。頑張る」
「やっぱり嫌なのね?」
「お姉様、そんな事を聞かないで。私頑張るから。私大丈夫だから」
「ねえ、フラン、あなたの本当の願いは何? あなたは本当はどうしたいの?」
 レミリアの問いに魔理沙は目を瞬かせ、自分の望む幸せな日を思って破顔した。
「私はお姉様の妹で居たい」
 去来するのは、紅魔館での思い出。決して良い妹では無かっただろう。良好な姉妹関係では無かった気もする。それでも自分はレミリア・スカーレットの妹だという矜持があった。どんな時でもお姉様の妹であるという事実が自分の事を支えていた。
 それが崩れた。
 魔理沙の顔が悲しみに歪む。
「それがあなたの幸せなの?」
「そうだよ。多分ね。自分でも良く分からないけど、多分そう。ううん、違うかな。だって幸せでなくたって良いから。どんなに不幸になったって良い。自分が何になったって良い。フランだろうと魔理沙だろうとどっちだって良い。あれ? 何か良く分からない事言っている。ごめんね、お姉様。上手く考えがまとまらなくて。あのね、私、私はただ……ただ、お姉様の妹で居たい! お姉様の妹として、紅魔館のみんなと一緒に居たい!」
 それは幾ら望んでも叶わない事だ。
 他ならぬレミリアにそれを拒絶されてしまったから。
 もう妹では居られない。
 嗚咽を吐き出しながら魔理沙は突っ伏した。
「ごめんなさい、フラン」
 背後からレミリアがそっと抱き締めてきたので、魔理沙は驚いて顔を上げた。鏡にレミリアの姿が映っている。いつもであれば姿と声だけの幻覚なのに今日は触覚まで伴っている。確かな息遣いを感じる。鉄錆を含んだ甘ったるい独特の体臭にも気が付いた。
 もしかして本物のお姉様だろうかと、そんな期待が湧いた。
 そんな訳が無いと分かっていても、そう信じたかった。
 レミリアに手を引かれて魔理沙は立ち上がる。
「行きましょう、フラン」
 魔理沙はレミリアに促されるままに玄関へ向かう。
 扉を開けて外へ出た瞬間、湿っぽい空気が奇妙な程熱されている事に気が付いた。そして家の前に広がっている光景に目を見張った。
 紅魔館の者達が勢揃して並んでいた。
 信じがたい光景に、魔理沙は掠れた喉から声を振り絞ってレミリアに尋ねた。
「お姉様、これは?」
 沸き立つ期待とまた裏切られるんじゃないかという不安と、もしかしたら幻覚かもしれないという疑いを綯い交ぜにしてレミリアを見る。
 レミリアは笑い、何でもない事の様に言った。
「決まっているでしょ。外へ出るの」
 期待通りの言葉を聞いたのに、何故か魔理沙は素直に喜べなかった。まず初めに疑いがあった。
「お姉様?」
「何よ」
「幻覚だよね?」
 その瞬間、拳骨を振り下ろされて、魔理沙の頭に痛みが走る。
「痛い。本物だぁ」
「当たり前でしょ」
 レミリアが本物だと分かると、次に恐れと苛立ちが起こった。
「外に出るって言った?」
「ええ。その後は決めてないけど。前に住んでいた場所に戻りましょうか? それとも海を越えるのが辛いなら、日本の何処かに」
「幻想郷の外に出たら私達生きていけないんでしょう?」
「そんなの分からないわ」
 レミリアが魔理沙の手を引っ張って皆の下へと連れて行こうとする。魔理沙はその手を引っ張り返して止まろうとした。
「駄目だよ! そんなの危ない。もしも外に出て本当に生きていられなかったら。そうしたらみんな消えちゃうんでしょ? そんなの嫌だ」
「フラン」
「お姉様、私なら大丈夫。耐えられるから。私頑張るから」
「フラン」
「もう泣かないから」
「フラン!」
 レミリアの怒鳴り声に魔理沙の肩が跳ねて言葉が止まる。
 レミリアがゆっくりと言い聞かせる様に言葉を紡ぐ。
「生きていられるかどうかという話しなら、私はもうこの幻想郷じゃ生きてない」
 レミリアの不穏な言葉に魔理沙は息を呑む。
「どうして?」
「妹が苦しんでいるのに、知らん顔して生きていくなんて私には出来無い」
「お姉様」
 魔理沙の喉からきゅうという甲高い空気が漏れる。何と言って良いからず、何も言えないでいると、レミリアにきつく抱きしめられ、また喉がきゅうと鳴った。
 咲夜と美鈴も集まってくる。
「フラン様」
 やって来た美鈴に抱きしめられ、その懐かしい温かさに、魔理沙は胸が熱くなって、その胸に顔を埋めた。
「美鈴、体調大丈夫なの?」
「ええ、もうばっちりです」
「良かった」
「フラン様、会いたかったです」
「私も会いたかった」
 魔理沙が美鈴をきつく抱き締め返す。
「会いたかったよぉ」
 その瞬間、液体の噴出する音がして、何かが魔理沙の頭に降りかかった。
 驚いて顔をあげると、美鈴が血を流していた。
「美鈴! どうしたの? やっぱりまだ体が」
「いえ、大丈夫です。嬉しすぎただけですから」
 そう言って、美鈴は鼻血を拭い、もう一度魔理沙を抱きしめた。
 美鈴から体を離して、今度は咲夜と向き合った。咲夜は深深と頭を下げる。
「妹様、今まで助け出せず、すみません。何度もそうしようと思っていたのですが」
「ありがとう。助けに来てくれて。私を忘れないでくれて」
「忘れる訳無いじゃないですか」
 魔理沙は咲夜が泣きそうな顔になったのを始めてみた。咲夜にも抱きしめられ、皆の温かさに幸せな気分になっていると、ふと駆け寄ってくる足音を聞いた。
「まーりーさー!」
 その瞬間、魔理沙は反射的に手を広げて、飛び込んできたフランを抱き締める。
「わーい! また会えた!」
 フランが楽しそうに魔理沙に抱きついて飛び跳ね始めた。
 そんなフランに、レミリアが言った。
「魔理沙じゃないわ」
 フランが不思議そうな顔をする。
「え? 違うの? じゃあ、誰?」
「フランドール・スカーレット。私の妹よ」
 はっきりと妹だと言ってくれたレミリアの言葉に、フランの心に驚きと嬉しさが広がった。さっきから込み上げてくる涙を一向に止められない。
 一方フランは驚いた顔で、レミリアと泣いているフランを交互に見つめた。
「え? 私と一緒の名前?」
「いいえ、あなたはもうフランじゃない」
 フランだった吸血鬼の女の子は一瞬きょとんとしてから、レミリアの言葉の意味を理解して恐怖で顔を強張らせた。フランも涙を止めて息を呑む。フランに戻れた事は嬉しいが、フランだった女の子からフランという立場を奪ってしまった。その立場から追い落とされた女の子はどうすれば良い。何の罪もなく、フランやレミリア、紅魔館の皆を慕っていた女の子を捨てるのか。
「お……お姉様、捨てないで。お願い。お願いします。私、ここが良い。嫌なの。またあの牢屋に閉じ込められるのは。良い子になるから、お手伝いするから、わがまま言わないから、何でもするから、だからお願いだから」
 泣きじゃくる女の子にレミリアが溜息を吐く。
「何言っているの?」
 女の子が思いっきり首を横に振る。
「嫌! 私、お姉様の妹で居たいの!」
「あなたも妹でしょ?」
 女の子の首が止まった。その頭をレミリアが優しく撫でる。
「そこのフランも私の妹、あなたも私の妹。それで良いじゃない」
「良いの?」
「当たり前でしょ。あなたは確かに私の妹になったんだから、私とフランの妹よ。大分歳は離れているけれど」
 女の子の顔がフランに向く。
「良いの?」
 フランは女の子を泣かせてはいけないと、反射的に涙を拭い笑った。
「勿論だぜ!」
 そう言ってから、自分の頬を挟み込む様に叩き、改めて言った。
「勿論、良いよ。大歓迎」
 女の子は嬉しそうにフランに抱きつき、それから周りを見渡して、首をかしげた。
「あれ、私の名前ってじゃあ何?」
「前の名前は?」
 レミリアの問いに女の子が悲しそうに首を横に振る。
 それを聞いたレミリアは笑顔になって女の子の頭を撫でる。
「じゃあ、外に出てから考えましょうか。今は時間が無いみたいだから」
 そしてやって来た客に顔を向けた。
 八雲藍が立っていた。
 笑顔のままレミリアは歌う様に抑揚をつけて楽しそうに言った。
「こんばんは。早速だけと、今日は素敵な満月の夜で気分が良いから、とっとと消えてくれない? あんた等の顔なんて見たく無いの」
「そういう訳にはいかないわ。反逆者を取り締まらせてもらう」
「あら怖い。それなら妖怪の山が怪しいわ。最近不穏な動きを見せているから。さあさ、行った行った」
「ならば魔理沙と一緒に退治しに行く事にしましょう」
「ああ、そうなの頑張って。でも魔理沙はお出かけ中みたい。少なくともこの辺りには居ないわよ」
「戯言を交わすつもりは無い。全員逮捕だ。大人しくお縄に付け」
「戯言言っているのはどっちだか。これ以上くだらない茶番を演じるつもりが無いのはこっちも同じ」
 その瞬間、藍は目の前に現れたナイフを掴み取った。
 息吐く間もなく、藍の背後に美鈴が回り込み、後頭部に蹴りを放つ。
 藍が横に飛んで避ける。着地すると、藍の全方位をナイフが覆っていた。驚きに目を見開いている間にナイフが飛来する。藍はナイフを叩き落とすが全ては落とせず、何本かが突き刺さる。動きの止まったところに、頭上から美鈴が足が襲いかかってきた。藍は急いで避けようとしたものの、爪先が掠り腕が吹き飛んだ。
 それを眺めていたパチュリーは魔術書のページを捲り終え、片腕を失った藍に掌を向ける。
「えーっと、式は土か。木克土。グリーンストーム」
 パチュリーが呟き終えると、突然辺りから青青とした木の葉が集い、藍に絡みついて包み揚げた。中の藍は最初こそ暴れていたもののすぐに動かなくなる。風が吹いて集った葉が吹き飛ぶと、中から現れた藍は動く事が出来ずに地面に倒れ込んだ。
 美鈴が傍に寄ると、藍は息も絶え絶えに美鈴を睨みつける。
「お前等の様な犬に負けるとは」
「式に言われたくないね」
「ほざけ」
 藍はやって来たレミリアにも睨みを利かせる。
「お前達は既に幻想郷の敵だ」
「そりゃ結構。どうせすぐ出て行くし。外に通じる博麗神社ならすぐそこよ」
「逃げられるとは思うなよ。幻想郷中にお前達が反逆者だと通達してあるわ」
「まあ、色色言いたい事はあるけれど、面倒だし、一つだけ。あなたさっき犬に負けた事を悔しがっていたわよねぇ? だったらあなたはどれだけ上等なの?」
「私のご主人様は神に匹敵する力を持つ大妖怪。その式である私もそんじょそこらの式とは格が違う。まして蝙蝠に飼われた犬等。そうだ。ご主人様はしばらくぶりに冬眠から起きたのだ。出口である博麗神社にて待ち受けている。例えお前達が他の者達を退けたとしても最後はご主人様が」
 その瞬間、レミリアが高らかに笑い出した。突然の事に、周りの者達や敵意を滲ませていた藍もぎょっとする。
「ああ、おかしい。みんな、聞いた? 例え私に本当の犬が仕えていたとしても、あなたみたいな狐よりそっちの方がまだ使えるわ。考える事すら出来無い奴なんて、使える使えない以前の問題だもの。ましてあなたが蔑んだのは偉大なる夜の王に仕える愛しい従者達よ。あ、勿論パチェは違うわよ。分かっているから不満そうな顔しないでよ。私とあなた友達。私分かってる。何でもっと嫌そうな顔する訳? ああ、もう良い。おい、狐。とにかく、私の愛しい従者達が高高人間如きに操られている獣に負ける訳が無いでしょう?」
 怪訝な顔をした藍が言い返そうとする前に、レミリアが良いわよと言ったのを合図に美鈴が拳を振り下ろした。
 沈黙した藍に背を向けてレミリアは博麗神社に向かって歩き出す。
「さあ、行きましょう。そいつの言う大妖怪の待つ神社にね」

 幻想郷中に触れ回ったという藍の言葉とは裏腹に、博麗神社の階段に辿り着くまでの道程で、敵と出会う事は一切無かった。フランはそれを不思議に思ったが、他の者達は疑問に思っていない様子で階段を登った。
 そしてその途中で博麗の巫女と出会った。
 霊夢は階段の中央で仁王立ちになり、腕を組んで睨んできた。それに向かってレミリアは手を広げて友好を示す。
「ああ、霊夢。どいて頂戴。出来ればあなたを傷付けたくないの。むかつく事もあったけど、あなたにそこまで悪感情は持っていないわ」
「別に良いわよ。通したって」
「え? 本当に?」
「ただし魔理沙は置いていきなさい」
 そう言って霊夢がフランを指さした。体を震わしたフランの手をレミリアが握りしめる。
「残念ながらこの子はもう魔理沙じゃない。フランドール・スカーレット。私の妹よ」
 霊夢が呆れた顔をする。
「何言っているの? 満月で頭がおかしくなった?」
「ええ、そうね。こんなにも月が紅いから」
「真黄色だけど」
「あんたそこは合わせなさいよ」
 霊夢は御幣と御札を取り出し、御幣でレミリアを指し示した。
「これが最後通牒よ。魔理沙を妖怪にくれてやったりなんかしない。魔理沙は私の友達だから。魔理沙を置いて消えなさい」
「これが最後通牒よ、霊夢。この子は魔理沙じゃない。私の妹なんだからあんたにくれてやる訳にはいかない」
 霊夢が御幣を振り上げようとした瞬間、瞬く間に近寄った美鈴がその手を掴んで止めた。更に逆の手に持った御札を咲夜のナイフが射抜いていた。
「あ」
 呆然として呟く霊夢にレミリアが優しげな口調で諭す。
「ねえ、霊夢。これで力の差は分かったでしょう? あなたじゃ私達には勝てない。大人しく通しなさい」
 霊夢は項垂れて何も言わない。レミリアは溜息を吐く。美鈴に命じて霊夢を気絶させようとしたが、霊夢の様子に眉を顰めた。霊夢が頭を押さえてふらついていた。
「魔理沙を返して」
 霊夢が顔をあげる。その視線は焦点が定まっていない。頭痛を堪える様に頭を押さえて顔をしかめ、苦しげな声で言う。
「魔理沙を返してよ! 私の大切な友達なの! 返して! 私は妖怪から守るって誓ったんだから、魔理沙を妖怪には渡さない!」
 霊夢の異常にレミリアは嫌な予感を覚えた。
「魔理沙を返して!」
 その瞬間、霊夢の霊気が爆発的に高まった。レミリアは総毛立って霊夢を気絶させる様に叫ぶ。力の奔流に圧倒されていた美鈴はその叫びで正気づき、慌てて霊夢を気絶させた。倒れ伏した霊夢が意識を失った事を確かめ、力の気配も消えた事に安堵する。
 霊夢を傍の草むらに寝かせた美鈴はレミリアに向かって頭を下げた。
「すみません、油断していました」
「良いわ。私も油断していた。とにかくこれで終わり」
 レミリアは階段を見上げ、もう何の邪魔も無い事を確認して登りだした。
 登り切ったレミリア達は鳥居を潜り、石畳を歩む。後は本殿を迂回して表へ行けば外へ出られる。
 外の世界は妖怪の住めない世界だと聞いている。
 幻想郷が存在する様に、他の場所でも妖怪が生きられる可能性はあるが、それは確証の無い事である。失敗すればもう幻想郷には戻って来られないから、後は消滅するしかない。それは恐ろしい事だ。だがその恐れを覚悟した上で、レミリア達は外へ出ようとしていた。
 本殿を回りこんで表に行くと、石畳の先に鳥居があった。そしてそれが堺となって外に繋がっている。遂に外を目前にして誰もが心を張り詰め出した時、背後から呼び止める事があった。
「待ちなさいな」
 振り返ると、扇で口元を隠した人物が賽銭箱の上に座っていた。八雲紫だ。恐らくレミリア達の後を走って追ってきて、レミリア達が鳥居の向こうに目を奪われている間に、格好をつける為に慌てて賽銭箱の上に座ったのだろう。走った所為か息が上がっている。
 表情だけは余裕ぶっている八雲紫が賽銭箱から降りて近づいてくる。
「まだメインイベントが残っているでしょう?」
 レミリアが進み出て八雲紫と相対する。
「もうメインイベントは終わったと思っていたけど」
「あらあら藍と霊夢を倒した位で幻想郷に勝ったと思われたら困るわ。幻想郷を出て行くのであれば、幻想郷を統べる私を倒してからにして。私の屍を越えて行けってね?」
 レミリアは帽子を被り直すと薄っすらと笑った。
「良いわ。霊夢が私を倒す事がイニシエーションなら、セセッションは私が八雲紫をぶっ倒すって訳ね。みんなは手を出さないで。こいつとは私一人で戦うわ。せめてもの手向けに引導をくれてあげる」
 八雲紫もくすくすと笑う。
「引導ねぇ。妖怪の賢者と呼ばれる私に何を教えてくれるのかしら?」
「現実よ」
 八雲紫が興味深そうに目を見開いた。
 それをレミリアは鼻で笑う。
「あんたが自分の殻に閉じこもって見ようとしなかった現実を教えてあげる。あんたが後生大事に抱えて守ろうとしていた幻想を今この場で否定してあげる!」
 その瞬間、金属質な音が鳴り、鎖が地面から噴出してお互いが絡まり合って編み上がりながら、八雲紫とレミリアを中心に辺り一帯を囲み上げた。完全に天を覆って暗くなると、鎖の色が抜けて透明になり、辺りの景色が再び見える様になった。
 鎖の透けた向こうの景色は地獄だった。
 辺りが博麗神社である事は変わらない。しかし天が紅い。そして紅い天の下、辺りは紅い霧が立ち込め、蝙蝠が空を飛び回り、狼が吠え合って、悪魔達が木や神社の上に腰掛けて笑っていた。それは人が踏み入ってはならない禁忌の夜宴。絶対的な夜の王の饗宴。
 宴の主は紅い月を見上げて込み上げる笑いを噛み殺す。
「こんなに月も紅いから、本気で相手してあげるわ」

 それは勝負にならなかった。
 あまりの力の差に戦いは一瞬で終わり、紅魔館の者達が外へ向かう後ろで、ぼろぼろになった敗者が転がっていた。敗者は紅魔館の者達が続続と消えていく姿をぼんやりと見つめていた。
 辛うじて動いた指を這わせるがそれもすぐに力尽き、魔理沙と呟いた声も届く事は無かった。
 そうして皆消えた時、不意に境界を通ってフランが戻ってきた。
 目を見開いた敗者に向かってフランは躊躇いがちに、申し訳無さそうに、手を振った。
「ばいばい」
 それを聞いた瞬間、全身の力が抜け、力を込めようとする意思すら無くなった。
 フランの姿が消える。
 敗者は涙を一つ溢し、それが地面に垂れ落ちると地面に染みを作った。すぐに天から水滴が降り出し、大雨となって涙の跡を消した。
 そして魔理沙は居なくなった。

 大雨に打たれる敗者の上に傘を差し出す者が居た。
 身じろぎすらせずに視線だけを向けると、さとりとこいしが立っていた。
 さとりは誰も居ない鳥居を見るなり溜息を吐いて、隣のこいしを撫でる。
「お見送りがしたかったけど、行ってしまったみたいね」
 それから冷たい目を敗者に向けた。
「八雲紫ですか?」
 八雲紫は辛うじて口を開く。
「これはこれは。旧地獄の主がどうして」
 そこで血を吐き出して声にならなくなった。
 さとりは冷たい目をしたまま、霧雨魔理沙を失ったみたいですねと詰る様に言った。
 八雲紫が苦しげに笑う。
「何言っているの? 魔理沙は居るわ。ちゃんと幻想郷に。失ってなんか居ない」
 だが八雲紫の言葉を無視して、あくまで冷たい口調で一方的に告げる。
「あなたは失ったんですよ、魔理沙を。またしても」
「違う! ちゃんと居る!」
「何度作っても同じ事。最後は妖怪に奪われる。これは呪いですね。知っていました? いえ知らなかったでしょうね。あなたも、かつてアリスと呼ばれ途中から魔理沙と呼ばれたあの子自身もきっと知らなかった。魔理沙の初代代役、あの可哀想なアリス・マーガトロイドは魔界から出た所為で寿命が縮んで死んだと誰もが思っているみたいですが、実際は妖怪の呪いに殺されたんです。本当ならもう少し、少なくともあなたが成人する位までは生きられる筈だったのに。永遠亭の医者が言っていたから確かな事です。誰が呪ったかは、言わないでも分かりますよね?」
「だから魔理沙は死んでない! 魔理沙はちゃんと居る!」
「そうやって何度も何度も魔理沙を失いその度に魔理沙に対する妄執を深めていく。その先に何があるのかは分からないけど。嫌らしい呪術。美しく残酷に、ね。本当に、まあ、幻想郷は昔っから今に至っても天邪鬼ばかり」
「さっきから馬鹿な事を言わないで! 魔理沙は生きている! だって私、約束したんだから! 何があっても妖怪から守るって! だから魔理沙は絶対に死なない!」
「悔しくないんですか? 自分をはめた相手に、良い様に操られて。繰り返し繰り返し魔理沙を失って。そろそろ起きなさい。この悪夢から」
「何言っているの? 私は起きている。悪夢? 紅魔館の奴等が出て行った事を言っているの? だとしたら別に何て事無い。私には魔理沙さえ居れば」
「あなたは眠っています。ずっと昔から」
「起きてる!」
「じゃあ、自分の名前を言ってご覧なさい、霊夢」
「私は八雲……え?」
「さあ、起きなさい」
 その瞬間、こいしが霊夢の体を揺さぶった。
「そうだ、起きろー! 起きてー!」
「あ、止めなさい、こいし」
 さとりは慌ててこいしを止める。霊夢は痛みに顔をしかめて、体を仰け反らせたかと思うと動かなくなった。
「あーあ、もう少しだったのに」
 さとりは溜息を吐いて、控えていた永琳を呼んだ。永琳は兎達を連れてやって来て、応急処置を施し、担架に載せた。
「で、上手くいかなかったみたいだけど、どうするの?」
 永琳の問いに、さとりは気が進みませんがと言って、霊夢の瞼をこじ開けて、第三の目を翳した。
「どうするの?」
「トラウマを呼び起こします。手っ取り早い方法ですが」
「便利ね」
「そんな事無い。出来ればこんな醜い方法使いたくは無いんです」
 霊夢の顔が苦しみに歪む。
 呻き声をあげる霊夢は雨の中、葬儀の様に静かな一団に連れ去られた。



魔導書編 ~ The Grimoire of Marisa.
記憶編 ~ Marisa's Lifes in Wonderland.
幻編 ~ You ain't seen Marisa, never!
編 ~ Does the Proprium Dream of Genuine Marisa?
魔理沙という名の幻想 ~ And Then There Were No Marisa.
霊夢という名の存在 ~ Marisa Leaving the People's Vision with Reimu.
O ReiAli, ReiFla! wherefore are ye not ReiMari?
烏口泣鳴
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コメント



0.320簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
凄く面白かったです

やっぱり強制も洗脳も弱者に限りますね
強者に洗脳を押し付けるのは精神的な意味でも無理がある
6.90名前が無い程度の能力削除
続き期待してます
9.100名前が無い程度の能力削除
胸糞悪くなる話だけどしっかり書かれている以上読まない訳にもいかず(褒め言葉です)
よく解らんが式として機能する本物の八雲紫はどこに居るの? 実在はするんだよね?
霊夢には「八雲紫」と云う式が張られていた? だとしたら何故? 天魔が「彼」と呼ぶのは誰のこと? フランを演じてたのは天邪鬼の子なのかしら? 判らんのは私の読解力不足か!?