Coolier - 新生・東方創想話

Hospital Break!! ~永遠亭地下隔離病棟を脱出せよ~

2014/07/21 16:20:33
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Hospital Break!! ~永遠亭地下隔離病棟を脱出せよ~



(永遠亭地下隔離病棟 伊吹萃香視点)

萃香 「ま、待ってくれ、やめてくれ・・・」

霊夢 「さて、これで封印は完璧ね」

萃香 「れ、霊夢・・・友達だろ、やめてくれよ」

魔理沙「勇儀、さっさと運んでくれないか」

勇儀 「ほらよ」

萃香 「魔理沙!勇儀!こんなの・・・こんなの絶対おかしいよ」

永琳 「みんな、あなたのためを思ってやってるのよ、さっさと牢の中に入りなさい」

萃香 「さ・・・さ・・・」




萃香 「酒をくれ~~~~!!」

4人 「「「「だぁーーーーめッ!!」」」」



あ、ありのままの私の身に起きたことを話すッ!!
永遠亭で健康診断を受けたら、いつの間にか地下牢に入れられていたッ!!
何を言っているのかわからねーと思うだろうが、私も分からない。
超能力とか瞬間移動とかチャチなものじゃ・・・



魔理沙「いや、健康診断で肝硬変と診断されて、酒類厳禁になっただけだろ」

霊夢 「いちいち小ネタ挟まないで」

永琳 「γーGTPの値も3ケタ突入してたわ。逆によく今まで生きてたわね」

勇儀 「いい機会だ。これで酒と縁を切って健康的な生活をだな」

萃香 「せ、先生ッ!!あいつッ!勇儀ッ!あいつだって肝臓壊れてるよ、絶対ッ!!」

永琳 「あら、そうなの?じゃああなたも検診を・・・」

勇儀 「ワ、ワタシ、オサケノマナイ、ゼッタイ」

永琳 「あら、そうなの」

萃香 「ダウト~~~ッ!!勇儀アウト~~!!鬼のくせに嘘ついてるんじゃあないよ!!」

勇儀 「ああ、鬼は嘘つかないッ!!『ほぼ』なッ!!」

萃香 「何、ごまかしてんだよ!?私をこんな目に合せてッ!」

永琳 「まぁ彼女の結果がどうであれ、あなたをここから出すわけにはいかないわ、医師として」

萃香 「しょ、食事に酒は?」

永琳 「ないわ」

萃香 「食前酒は?」

霊夢 「あるわけないでしょ」

萃香 「さ、酒蒸し!酒蒸しだけでもいいんだ、酒は!?」

魔理沙「お前、治す気ゼロだろ」

萃香 「貴様ら、覚えてろよ・・・」


私は力なく、項垂れる。とは言ってもどうしようもない。
手首には鬼縛りの鎖、鬼の力を封印する鎖だ。今の私は分身もできないし、怪力もない。ただの角が生えてる幼女に過ぎない。


永琳 「まぁ、萃香、よく聞きなさい。ここに入っているのはあなただけじゃないの。紹介するから仲良く暮らしなさいね」

萃香 「冗談じゃないよ、鬼は杯を交わさなきゃ友達になれないのッ!!」


そういいつつ、目は向けてやった。同じような牢屋が2つ。そのそれぞれに一人ずつ囚人がいた。


永琳 「紹介するわ。ここに入っているのはウドンゲ、あぁ・・・鈴仙・優曇華院・イナバ(発情状態)、よ。ほっとくとオ○ニーが止まらないから、自殺保護服を着せてるわ」

鈴仙 「はぁ、はぁ、し、師匠、お願い、この服、脱がせて・・・」


牢やの中には、手を拘束された、やたらとエロい顔した女がいた。これが発情期か。


永琳 「そしてこっちの牢にはレミリア・スカーレットがいるわ。重病患者だから取扱いに注意して」

レミィ「う~、う~、開けなさいよ!!私は病気じゃないんだって!!」


見ると、吸血鬼が牢屋の中に入っている。羽をパタパタしているのが可愛らしい。


霊夢 「レミリアは何の病気なの?」

永琳 「私でも治せない病気。その名も・・・中二病よ!!」

勇儀 「ちゅ、中二病ッ!?」

永琳 「何でも、『自分は500歳生きた吸血鬼だ』とか『私には運命が見える』とか言っているのよ」

魔理沙「相当重症な中二病だな」

レミィ「違うわよ!!本当にそうなのよ!!そういう設定なの!!」

霊夢 「うわぁ、設定とか言い始めちゃったわ」

魔理沙「ノートに自分の必殺技のコマンドとか書いてるタイプだな、これ」

レミィ「霊夢!魔理沙!あなたたちは知ってるでしょ、私のこと!!」

魔理沙「まぁ、なんだ?黒歴史は克服できるって」

霊夢 「いい加減現実見なさいよね」

レミィ「いやいやいや、何、その対応!?何を証拠に私を中二病扱いするの!?」

永琳 「だって、こんなに可愛い500歳がいるわけないじゃない(正論)」

勇儀 「まぁ一通り自己紹介終わったとこだし、ちゃんと病気治せよ、萃香」

萃香 「あのさ、永遠亭は肝硬変患者と精神疾患の患者を同じ病棟に入れるわけ?」

レミィ「ツッコミどころ違う!!」

永琳 「じゃ、私たちは引き上げるわ。食事の時間になったら持ってくるから。じゃあね」


そういって、永琳と不愉快な仲間たちは引き上げていく。
残ったのはこの3人、鈴仙(発情状態)とレミリア(中二病)なわけだが・・・。
まともな会話になるのか?とりあえず自己紹介しよう。


萃香 「あー、私は伊吹萃香。こう見えて鬼なんだ、よろしくな」

レミィ「う~~~~・・・」

鈴仙 「チッ」

萃香 「ちょッ!?オイッ!!そこの兎!!なんで舌打ちしてんだよ!!」

鈴仙 「だって~。女に興味ないし。
    何というか~、この転校生が来るって聞いてテンション上がった後、同性だったと知った瞬間のテンションの落ちよう。
    この気持ち、分かる?」

萃香 「すんげー分かるけど、それは本人のいないところでやれよ」

レミィ「どの道私たち、ここから出られないのよ・・・テンションなんて上がらないわよ」

鈴仙 「萃香さんは誰を強姦してここに入ったんですか?」

萃香 「強姦魔じゃねぇよ。てか、お前はそんなことしたのか?」

鈴仙 「失礼な!!未遂ですよ!!」

萃香 「・・・十分だよ。発情期、マジ怖いわ~」

レミィ「私なんて・・・グスッ・・・何もしてないのに・・・」

萃香 「お前は、まぁ、現実を見れば退院できるわけだし」

レミィ「見てるわよ!私は吸血鬼よ!!というか、あなた、前の異変の時にもあったでしょう!!」

萃香 「いやなぁ~、何というか・・・」

鈴仙 「これは話合わせてあげないと泣いちゃうタイプかな~、て」

萃香 「鬼のくせに優しい嘘なんてついてしまった結果、お前が病気こじらせちゃったんだな。悪いな」

レミィ「いやいやいや、何よ、その態度!?何で急に全否定なわけ!?」

萃香 「急じゃないよ、元から信じてないだけで・・・」

レミィ「私は吸血鬼なのッ!!『運命を操る程度の能力』を持つスカーレットデビルなのッ! OK!?」

鈴仙 「あの~、前から疑問に思ったこと聞いていいですか?」

レミィ「何よ?」

鈴仙 「『運命を操る程度の能力』持ってるのに、ここに閉じ込められる運命は見えなかったのですか?」

レミィ「・・・・・・」

鈴仙 「・・・・・・」

萃香 「鈴仙~、そういうクリティカルなことは聞いてやるなよ」

鈴仙 「すいません、デリケートな問題を・・・」

レミィ「う~、本当にあるんだもん、本当だもん・・・」

萃香 「というか、鈴仙、いつの間にか普通になってない?最初はエロスの塊みたいなノリだったじゃん」

鈴仙 「私、波がありまして。発情している時とそうでない時と」

萃香 「ま、とにかく・・・」


私は立ち上がり、手首についた鎖を差し出す。


萃香 「私はここから出たいんだ。そのためにはこの『鬼縛りの鎖』をどうにかしなきゃいけない」

鈴仙 「医療従事者としては、お酒はお控えになった方が・・・」

萃香 「今はそういう真面目なことはいいんだよ。みんなだって外に出たいだろ?」

レミィ「おうちに帰りたい・・・」

鈴仙 「今年の発情期こそ、彼氏を作りたい・・・」

萃香 「だろ?だからみんなで力を合わせて脱出しよう、てわけだ。私はこの鎖さえ何とかできれば、こんな牢屋、ぶちやぶれるぞ」

鈴仙 「私は自殺防護服で腕が動かせない状態です。あと眼のカラーコンタクトで能力が封じられてます」

萃香 「どんな能力なの?」

鈴仙 「波長を操る・・・ああ・・・人に幻覚を見せたり、見えない存在を探知したり。あと眼からレーザーを出せます」

萃香 「何気に優秀じゃん。で、レミリアちゃんは・・・」

レミィ「うん?あ?え、えぇと・・・」

萃香 「なるほど。何もできないから特に封印もされていない、と」

レミィ「違うわよ!吸血鬼舐めんな!!」

鈴仙 「ではこの牢屋壊せます?」

レミィ「・・・・・・きょ、今日はMPが足りないみたいね」

萃香 「つまり戦力は2人、と」

レミィ「アンタたち、いい加減にしなさいよ!!私は閉じ込められても遠距離攻撃できるのよ!!」

鈴仙 「何ができるんです?」

萃香 「期待しないで見守ってやるよ」

レミィ「ふん!余裕をかましてられるのも今のうちよ。見よ!我が全身全霊のカリスマガードをッ!!う~~!!」


そういってレミリアはうずくまった。両手で頭を押さえている。
・・・・・・いったい何がやりたいんだ?


レミィ「・・・・・・ん?あれ?」

鈴仙 「どうしました?」

レミィ「いや、何でアンタたち、普通なのよ?」

萃香 「普通ってどういうこと?」

レミィ「わ、私のカリスマガードを見たものは全員鼻血出して失神するはずなんだけど」

萃香 「どういう理屈で鼻血だすんだよ」

レミィ「ウチのメイドの咲夜なんかはよく大量出血してるわ」

鈴仙 「咲夜さんは特殊な人種ですから・・・私たちのような健常者にはききませんよ」

萃香 「お前の中二病は身内にも原因があったんだな」

レミィ「何よ、これじゃあまるで、私がおかしいみたいじゃない」

萃香 「現実を受け入れなよ、私は受け入れてるぞ」

鈴仙 「肝硬変を患っておきながら、酒を止められない人が?」

萃香 「それはそれ、これはこれなんだな。それが大人ってやつさ」

レミィ「大人にはなりたくないものね、私は大人だけど」

萃香 「そういうことは置いといて・・・誰かピッキング技術持ってたりしない?」

鈴仙 「サバイバル技術はあるのですが、そういった系統は学んだことなくて・・・」

レミィ「私もないわ」

萃香 「そうか、じゃあ逆に鈴仙のカラコンを外せる人いない?」

レミィ「とはいっても私たち、独房だからね」

鈴仙 「お互いに干渉できません」

萃香 「・・・お手上げ、かぁ~。まぁすぐにどうにかできるとは思ってなかったけどね」

レミィ「・・・・・・あの、その、も、もしかしたら、ものすごく失礼なことになるかも知れないけど・・・」

萃香 「なんだ?今日は無礼講だぞ、酒はないけど」

レミィ「あ、あのね、ここの鉄格子、鉄と鉄との間隔が割と広めじゃない?」

萃香 「ん~、言われてみればそうだなぁ。これじゃ小っちゃい子なら通り抜けちゃうよ」

鈴仙 「扉を閉じたままベットシーツを渡せるようにそうしているんです。ウチも人手が少ないですし」

萃香 「なぁるほど。で、それがどうかしたのか?」

レミィ「あ、あのね、私と鈴仙はそこから抜けられないかな、て試したのよ、既に」

萃香 「まぁ、当然だわな」

レミィ「で、私も鈴仙も、その、胸とかお尻がつっかえて体の大部分は通らなかったんだけど、あなたなら・・・」

萃香 「おい!!私が絶壁だとでも言うつもりか!?」

鈴仙 「た、確かにッ!!」

萃香 「確かに、じゃないよ!!とんでもないこと言ったな、このガキ」

鈴仙 「で、でも、一応試してみましょう。そしてうまいこと行けば出られるかも?」

萃香 「出られるわけないよ!!よく見とけ!!」


私は足を鉄格子の間に入れた。無論足は牢の外だ。
続いて腰。ここも難なく牢の外に。


レミィ「すごい、鈴仙のお尻は既につっかえてたのに。」

鈴仙 「これがスリム缶ボディ・・・」

萃香 「お前ら、後で覚えておけよ」


そして鬼門の胸ッ!私の豊満バストは当然鉄格子にひっかかる・・・

・・
・・・


萃香 「・・・・・・」

レミィ「・・・・・・」

鈴仙 「・・・・・・まさか、ここまでスムーズに行くとは」

レミィ「何の抵抗もなかったわね」

萃香 「く、屈辱~~」


私の胸は、まっっっっっっっっことに遺憾ながら牢の外にあった。
しかし頭と角は流石に通らないらしく、まだ牢の中だ。

かくして、私は首だけ牢屋の中という、よく分からない体制になっていた。


萃香 「でも、これでどうするんだ?これはこれでしんどいぞ」

レミィ「さぁ、そこまで考えてなかった」

萃香 「何だよ、意味ないじゃないかよ」

レミィ「じゃあ、首を牢屋に突っ込んだまま、寝そべったら真向いの鈴仙の牢屋のまで届く?」

萃香 「う~ん、うんしょ、うんしょ、う~ん、ギリギリ届かんな」

レミィ「鈴仙。頭だけ牢屋の外に出せる?」

鈴仙 「え?あんまり出ませんけど、何するつもりですか?」

レミィ「萃香の足の指で、鈴仙のカラーコンタクト外せないかなぁ?って」

萃香 「は、外すってお前・・・」


想像してもらいたい。
コンタクトをしている人間は目にゴミが入っただけで猛烈に痛がる。
それがコンタクトというものだ。
では、他人の足の指でコンタクトを外すという行為は・・・


萃香 「うん、大惨事しか想像できないな」

レミィ「でも鈴仙の能力が使えるようになったら色々便利よ」

萃香 「いや、でもねぇ・・・」

鈴仙 「私・・・やります!!」

萃香 「え、ちょ、おまっ!死ぬぞ!いや、死なないとは思うけど、死ぬほど痛い思いするぞ!!」

鈴仙 「皆さんには分からないかもしれませんが、発情期に拘束されるこの状況。体が疼いて疼いて仕方ないんです!!
    もし、わずかでも脱出できる可能性があるなら、私、それに賭けます!!」

レミィ「れ、鈴仙!!私、レミリア・スカーレットは貴女を尊敬する!!」

萃香 「そうか、では私も何も言うまい!!思う存分、我が足を使うがよい!!」

鈴仙 「鈴仙!行きます!!」

レミィ「いけ~~~!!」

萃香 「お~~~~~!!」

鈴仙 「もうちょっと、あとちょっと・・・あと・・・」






「(ザクッ)うぎゃぁああああああああああああああああああっ!!!!」







・・・30分後。

萃香 「だいじょ・・・うぶじゃないよな・・・」

レミィ「御免。まさかこんなことになるなんて・・・」

萃香 「いや、割と予期してたけど・・・」

レミィ「生まれてこの方500年間。血の涙なんて初めて見たわ」


その中二設定やめろよ・・・とツッコミたいがそんな雰囲気ではない。
まぁ全員が予想した通りだが・・・刺さった。目に刺さった。
しかもお互いが受け身取れない体制だからかなり深く・・・リアル出血するまで刺さった。
本来の目的は鈴仙のカラコンを取り外すことで目からビーム出してもらうことだが・・・


萃香 「れ・・・鈴仙?」

鈴仙 「大丈夫・・・です。グスッ・・・失明はしておりませんが、大事をとって、能力の行使は控えたいと思います」

レミィ「そ・・・そう?」

鈴仙 「大丈夫です、多少痛いですけど最初の波は引きましたから」

レミィ「ごめんね、私があんなこと言ったばっかりに・・・」

萃香 「ま、まぁ、なんだ?今日は脱出とか考えずにゆっくり休もう。ガールズトークと洒落込もうじゃないか」

レミィ「そ、そうね」

鈴仙 「ガールズトーク・・・なんか久しぶりな気がします。以前はミスティアさんの屋台でよくやってたんですけど」

レミィ「どんなメンツで?」

鈴仙 「霊夢さん、魔理沙さん、妖夢さん、早苗さん。あと時々幽香さんもいらっしゃいましたね」

萃香 「え、なんで私呼ばれてないの?」

鈴仙 「そ、それは・・・今度お呼び致しますよ」

レミィ「私、知ってるわよ、ラジオでやってたわね」

鈴仙 「はい・・・ん、ラジオ?なんですか、それ?」

レミィ「深夜ラジオの『オール鳥獣伎楽』って番組でね。”屋台で屯する痛い主人公たちコーナー”って企画に」

鈴仙 「何ですか、それ!?私、知らないんですけど!!」

レミィ「ミスティアがあなたたちの飲み会の内容を録音してるみたいなのよ、で、それを流して・・・」

鈴仙 「はぁあああああ!?そ、それって、盗聴じゃないですか!?」

レミィ「鈴仙の『カマトトぶってんじゃねぇよッ!!』ってフレーズは人里流行語大賞にノミネートされてるらしいわよ」

鈴仙 「いやぁあああああ!!やめて!!私、対外的には清楚キャラで通してたのにぃいいッ!!」

レミィ「万年発情兎、で通ってるわ。少なくともリスナーの間では」

鈴仙 「いやだ・・・もう、死にたい。。。」

萃香 「まぁ死ぬだなんて気楽に言うなって・・・と、酒が飲めないくらいなら死んでやる私が言ってみる」

レミィ「まぁ今日は脱出を諦めて親交を深めるってことで、ゲームでもやりましょうよ」

萃香 「ゲーム?あるのか、そんなの?」

レミィ「あるわよ、刑務所じゃないんだし」

萃香 「じゃあやってみるか、何がある?」

レミィ「桃鉄と桃鉄と桃鉄」

萃香 「・・・永琳は私たちにケンカさせたいのか?」

鈴仙 「・・・実は萃香さんが来る少し前までレミリアさんとケンカしてました」

萃香 「全然深められてないじゃん!!友情破壊ゲームじゃん!!そうと分かって何故このタイミングで進めるわけ!?」

レミィ「じゃあ止める?」

萃香 「・・・・・・やる」

鈴仙 「結局やるんですね、勝っても負けても恨みなしですよ」

萃香 「絶対ケンカになると思うけどな。でもこれで脱出に協力しないとか無しだからな!!」

レミィ「そうよ、たかがゲームごときでケンカして脱出に協力しないとかなしよ!!」

鈴仙 「そうですね、ゲームをやってケンカして脱出に協力しないとか、あり得ませんからね!!」

萃香 「じゃ、やるか~」









3時間後・・・


鈴仙 「ああぁぁぁぁああああ!!!!?フザけんなぁぁあ!!やってられるかッ!!」

レミィ「ちょ、ちょっと鈴仙・・・」

鈴仙 「アンタがやったことでしょ!!!キングボンビーウンコ封じしてきたくせにッ!!」


・・・やっぱりこうなったか。
ゲーム前のやり取りの時点でフラグだなぁとは思っていたんだが・・・。
ちなみにキングボンビーウンコ封じとは、キングボンビーがついているキャラをうんちカードで動けなくする戦法のこと。これをやられると、ただ物件が売られるのを黙って見ているしかない状態になる。超定石戦法ながら、対人戦では確実にケンカが勃発する危険な技だ。


萃香 「鈴仙・・・あのな~、たかがゲームごときで・・・」

鈴仙 「はぁあああ!?たかがゲーム?こっちは遊びでやってんじゃないのよ!!!」

萃香 「まぁまぁ」


ちなみに当のうんち封じしたお子ちゃまは牢屋の隅でカリスマガードして震えている。怖いんならやるなよ。


鈴仙 「だいたいこのゲームおかしいのよッ!!なんでレミリアばっかりゴールに着くわけ!?
    スリの銀次だってレミリアからは一回も徴収してないじゃない!!」

レミィ「それは偶然ってやつで・・・」

鈴仙 「言い訳してんじゃあないわよ!!」


まぁ確かにレミリアは異常なツキだった。
まるで運命でも操作・・・・・・いや、それはないか。


鈴仙 「止めたやーめたッ!私寝るからッ!おやすみッ!!」

萃香 「・・・・・・(おい、レミリア。鈴仙、完全にへそ曲げちゃったぞ)」

レミィ「・・・・・・(う~、そんなに怒らなくてもいいのに)」

萃香 「・・・・・・(これどうするんだよ、鈴仙の能力で何やかんやしないと脱出できないだろ)」

レミィ「・・・・・・(まずいわね・・・もうすぐ奴が来る時間よ)」

萃香 「・・・・・・(奴?)」

レミィ「・・・・・・(永遠亭には3つの恐怖があるわ、1つは『二人の仲を切り裂くピーチ・トレイン』ッッ)」

萃香 「・・・・・・(それって、さっきやった桃鉄だろ。ジョジョ立ちして言うことでもないだろ)」

レミィ「・・・・・・(もう一つが、『言い訳と恐怖のコラボレーション・・・)」

永琳 「み、みんな、夕ご飯の準備ができたんだけど・・・」

鈴仙&レミィ「げ・・・」


レミリアの説明を遮って、さっきのやぶ医者が入ってきた。ご飯を持ってきたようだが、どことなく申し訳なさそうなのは何故だ?


永琳 「あ、あのね。今日は萃香さんが来たことですし、新しい料理に挑戦しようと思ったんだけどね・・・」


・・・嫌な記憶を思い出した。
あれは確か華扇が初めて料理を作った時。
苦笑いと共に悪臭漂う豆がネバネバした何かを持ってきて。
そして、聞いてもいないのに自分から言い訳を始めて・・・


永琳 「と、というわけで唐揚げを作る予定だったんだけど・・・」

萃香 「永琳、ちょっといいか?まさかとは思うが、その黒くてネバネバしたものを唐揚げだというつもりはないだろうな?」

永琳 「ひゅいっ!!?」


まさかというか、やはりというか。ただでさえ今の鈴仙は機嫌が悪い。こんな料理押し付けられた日にはもっと機嫌が悪くなるだろう。


萃香 「仕方ないな。ちょっとだけここから出してくれないか、鎖つけたままでいいから」

永琳 「え?」

萃香 「私が料理作るって言ってるんだよ。みんなもその方がいいよな?」

レミィ「!!・・・そ、そうね!少なくとも今よりひどいことにはならないはず!」

鈴仙 「萃香さん、本当に料理作れるんですかぁ~?」

萃香 「バカにするな!私は萃夢想異変からずっと。博麗の食卓を支えてきた鬼だぞ!!なめるな!!」

レミィ「鬼のわりにはやってることがショボイわね」

萃香 「いいんだよ、そういうことは。さ、永琳、とっとと開けてくれ。お前だってそんな暗黒物質を食べたくないだろ」

永琳 「(ぐさっ、バタッ)・・・・・・」










(30分後。 永遠亭厨房)


精神的に来るものがあったのか、泣き出してしまった永琳をどうにか宥め、私は厨房の前にきた。


萃香 「とはいうものの、ねぇ・・・」


ここにはどうやらロクな調味料がない。普段は鈴仙が料理してるというが、この分じゃ鈴仙の料理も期待もてそうにない。しかし・・・ここの連中は普段何食ってるんだ?これじゃ、まるでウサギの餌程度しか作れないぞ。

あるのはタケノコ沢山。それに鶏肉(さっきの唐揚げもどきの余り)が少々。米はある。ミソもある。昆布もある。あと醤油や塩などの基本調味料はかろうじて、というところ。


萃香 「サバ缶ある?」

永琳 「サバ缶?」

萃香 「サバの水煮の缶詰だよ。病院だから保存食に置いてないかなぁって」

永琳 「あることにはあるけど・・・缶詰を料理って言い張るのはどうなの?」

萃香 「アイツらからしたら、缶詰出してもらった方がよっぽど喜ぶと思うけどな」

永琳 「むむむ・・・」

萃香 「何がむむむだ。サバ缶とってきといてね」


そういいつつ、私は料理の支度をする。まずはタケノコ。タケノコを大きく三等分。そしてウチ一つを一口サイズにぶつ切りにし、醤油、砂糖、めんつゆに漬け込む。


永琳 「何を作ってるのかしら?」

萃香 「煮物だよ、タケノコっていったら定番はこれだしな」


昆布を放り込みつつ、答える。煮物は煮物で準備しつつ、戸棚にあった干しシイタケを水に戻す。そして残ったタケノコの更に3分の1。これを細かく切っていく。鶏肉も同様だ。こちらも細かく切り刻む。で、まとめて醤油に漬け込んでおく。本当はゴマ油もあるといいんだが。まぁしょうがない。


萃香 「この竹、切っていい?」

永琳 「竹?いいけど・・・それも食べるの?」

萃香 「いや、竹は流石に食えないよ。竹筒が欲しいだけさ」

永琳 「竹筒?」


私は竹を加工しながらそう答える。竹林に住んでいながら、この調理法を知らんとは。月の連中はどうにもお高く留まっている。地上のアタシ等はこうして自然の恵みを存分に活用するというのに。


萃香 「アンタ、米はとげる?」

永琳 「バカにしないでよ、それくらいできるわよ」

萃香 「あれだぞ、水だけでとぐんだぞ。ママレモンとか入れる必要はないからな」

永琳 「そんなベタなことはしないわ」


さて、こんなもんか。私は竹筒を加工し終えると、今度は味噌汁の準備に入る。使うのはまたもやタケノコ。残った3分の1のタケノコを今度は薄切りにスライスしていく。味噌汁の鍋に水と味噌。それをぐつぐつと煮込む。もちろん昆布も忘れない。一方は煮物の鍋。こちらも最初の工程でつけていたタケノコを煮込む。ホントはワカメとかあるといいんだが・・・。と思うと、戸棚からニンジンを見つけた。タケノコとニンジンの煮物。あんまり見ない組み合わせだが、まあイケるだろう。同じく一口サイズに切って、めんつゆで煮込む。


永琳 「米とぎ終わったわよ~」

萃香 「おお、ちょっと待ってくれ」


私はフライパンに油をしきつつ、応える。炒めるのは先ほどの鶏肉。塩コショウで味ツケしていく。炒め終わったら、竹筒を出す。まずは米をいれ、水を少なめにはり、最後に鶏肉、タケノコ、そして刻んだ干しシイタケを加えていく。


永琳 「何を作っているのかしら?」

萃香 「炊き込みご飯だよ。竹筒で炊くと、ご飯に竹の香りがついて二重に旨いんだぞ」


というか、冷静に考えてみたら、この医師は暗黒物質(唐揚げ)作っただけで、ご飯も用意してなかったんだな。メインディッシュだけって、余りに質素過ぎるだろう。鈴仙とレミリアはこんなものに耐えていたのか。


永琳 「えーと、メニューは炊き込みご飯と煮物と味噌汁?」

萃香 「おお、そうだぞ」

永琳 「でも、サバ缶は何に使うの?」

萃香 「まぁ見とけって」


本当のこと言うと、私は味噌汁は鰹節派だからな。今回の料理に合うかどうか分からんが。それに煮物にしたって、本来は火をつけた後に冷まして寝かせる工程が必要なんだが・・・。時間もないからとやかく言ってられない。

私は米が炊き上がるタイミングを見計らって、味噌汁にサバ缶を投入する。


萃香 「よしできたぞ。永琳、運ぶの手伝ってくれ」





(永遠亭地下 隔離病棟)

萃香 「さぁお前ら、まともな料理持ってきたぞ」

鈴仙 「んが、んが、もぐもぐもぐ、ごっくん・・・お代わり!!」


持ってくるや否や鈴仙が猛烈な勢いで食い散らかす。少々どころじゃないほど下品ではあるが、ここまで美味しそうに食べられると料理人冥利に尽きる。


レミィ「こ、この味噌汁は・・・ッ!!?白だしにタケノコ、そして魚のアラ!!
    そして隠し味に・・・そうか、木の実だ!!そうだろう!?」

萃香 「いや、ちがう。普通に昆布だし。鰹節の方が好きだけどさ・・・」


間違った食いレポされると何か妙な気分になるな。第一、魚のアラじゃなくて、サバ缶だ。魚のアラには脂分が多いから味噌汁がこってりしちゃう。それはそれで美味しいっていうのもあるんだけど、二日酔い後にはきつい。その点、サバ缶はさっぱりしながら、しかしタンパク質の味を残す、超便利アイテムなんだな。で、数々の調理法を試して行きついたのが、タケノコとサバ缶の味噌汁、てわけ。といっても、このお子ちゃまにはまだ早いか。


萃香 「まぁ、私も自炊歴長いしね。霊夢に料理を教えたのも私なんだな。どうだ、尊敬する気になったか?」

レミィ「わりと真面目に・・・」

鈴仙 「・・・・・・お代わりッ!!」

萃香 「まぁ喜んで食べてもらえるのは鬼でも嬉しいもんだね、ところで永琳?」

永琳 「何かしら?」

萃香 「提案なんだが、これからのご飯は私に任せてみないか?みんな美味しいごはんを食べれるのはいいことだよ」

永琳 「そ・・・そうね・・・・・・私、料理に向いてないし・・・」


くくく・・・
くくくくく・・・

作戦通りィッ!!!!

バカめ、鬼がタダで親切なことすると思ってるのか?鬼を利用した人間は大抵バチが当たるって相場が決まってるもんだよ。これで私は『檻から出る権利』を手に入れた。鎖を外さない限り脱出はできないが、せいぜい情報収集させてもらうよ。


永琳 「じゃあ洗い物は私がやっておくから、あなたたちは早く寝なさい」

萃香&レミィ「はぁーい」


ばたんっ・・・


萃香 「どうだ?これで脱出へ一歩近づけただろう!」

レミィ「うん、あのね・・・」

萃香 「鎖の鍵も探す必要があるしな!外に出れるのは大きいぞ!」

レミィ「えと、あの、それよりも・・・」

萃香 「どうした、元気ないな。お前だってあのクソマズイ料理から解放されるんだから、もう少し喜べよ」

レミィ「あの、鈴仙がとうとう始まったわ」

萃香 「鈴仙?そういや、さっきからやけに大人しいな」

レミィ「来るわよ・・・」


来るって何が・・・と聞き返すまでもなかった。鈴仙の呼吸が少し荒い。頬も少し紅くなっていて、何より目がエロい。


萃香 「これって、もしかしなくても、アレか?」

レミィ「永遠亭三大恐怖の最後。『不定期に発情するポルノ・スター』ッ!!」

萃香 「ジョジョ立ちやめろって」

鈴仙 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・あぁんッ!」

レミィ「特に夕食後。鈴仙は発情しては鉄格子に股を擦り付けてオナニーするのよ!!」

萃香 「なんか・・・あれだ・・・目のやり場に困るな」

鈴仙 「あ・・・あぁんッ!」

萃香 「・・・・・・」

鈴仙 「はぁ・・・あぁッ!」

萃香 「・・・・・・」

鈴仙 「あ、あ、・・・ッ!」

萃香 「で?」

レミィ「で、て?」

萃香 「いや、止め方だよ。これじゃ寝れないだろ」

レミィ「ないわよ」

萃香 「え、ないの?」

レミィ「諦めて鈴仙のオナニーが終わるのを待つしかないわね」

萃香 「え、えええええ!?」


いや、いや、いや、まじありえないだろ。
同性の発情ボイス聞きながら寝るって、どんなプレイだよ。


萃香 「鈴仙、あのな・・・気持ちは分かるが・・・」

レミィ「無駄よ、今の鈴仙に言語認識能力はないわ。あるのは性欲だけよ」

萃香 「つまり、リアル兎状態なわけ?」

レミィ「そういうこと。心を無にして寝るの」

萃香 「ファファファ」

レミィ「そういうボケいらないから。早く寝なさい」

萃香 「寝るって・・・無理だろ。てか、お前、この状況で眠れるの?」

レミィ「咲夜のセクハラに比べたら可愛いものよ」

萃香 「これ以上ってどんだけだよ・・・」

レミィ「朝起きたら隣で添い寝してたり、下着が脱がされてたり」

萃香 「首にしろよ・・・」

レミィ「でもメイドとしては優秀なのよね。咲夜以外に妖精メイドの指揮は任せられないし。必要悪の許容もトップの条件よ」


今までバカにしてたけど、コイツはある意味大物かもしれない。
私が天狗にそんなことされたら顔面パンチ余裕なんだが・・・。


結局私は眠れなかったので、徹夜で桃鉄するのであった。














(1週間後 永遠亭地下 隔離病棟)

萃香 「こんなもんでいいか?」

鈴仙 「はい、大分ひいてきましたね」


あれから一週間。私たちはまだ永遠亭地下にいる。鈴仙の眼が炎症を起こしたためだ。思いっきり強く、しかも雑菌山盛りの足の指を突っ込まれたのだ。そりゃ炎症くらい起こしても仕方ない。永琳に診てもらえば一発なんだろうが、それでは鈴仙のカラコンが取れてることがばれてしまう。仕方なく、私が飯の準備の際にちょくちょく薬をくすねることで手当てしていた。

そしてもう一つ。永遠亭の防御が強化されたのも問題だ。私が牢から出て料理するなんて当初の予定外のことだ。だから永琳は追加防御を施し、逃げにくくしたのだ。その追加防御とは鬼避けの護符、鬼が触れると火傷する逸品だ。いざとなれば強行突破もありうるが、それは最後の手段。何よりも鬼縛りの鎖をどうにかしなければ先に進めない。


レミィ「こっちも気にかけて欲しいわね」

萃香 「まぁがんばれ」

レミィ「う~、泣くわよ・・・」


そういって、レミリアは粘土細工に戻る。粘土は私がこの一週間、レミリアの食事に混ぜたものだ。レミリアは何食わぬ顔で粘土を口にし、永琳が帰った後で吐きだす。私はもうちょっとマイルドな方法でいいって言ったが、永琳を騙すには警戒をするにこしたことはないということでこの方法を取っている。しかし10にも満たない少女がここまでするとは・・・。


レミィ「だ・か・ら、私は500歳の吸血鬼なの!!」

萃香 「はいはい。ふむふむ、大分器用じゃないか」

鈴仙 「あの、何を作っているんです?」

萃香 「ああ、そうか、鈴仙が発情中に計画相談してたからな。今レミリアは牢屋の鍵を作ってるんだ」

鈴仙 「鍵って・・・本物もないのに簡単に作れるものなのでしょうか?」

萃香 「まぁ、何も手がかりがなかったらそうだろうな。一から説明してやろう。まず鍵には規格があるのは知ってるか?」

鈴仙 「規格?」

萃香 「鍵っていうのはランダムに作られるわけじゃあない。ここはこの程度曲がっている、溝のつけ方はこれくらいって規則があるんだな」

鈴仙 「何でそんなことを?」

萃香 「例えば合鍵作るときに、この鍵はこの店でしか作れないっていうんじゃ不便だろ。市販の鍵はどこでも作れるようになってるんだよ」

鈴仙 「はぁ~、それがどう・・・」

萃香 「ずばりな、永遠亭の扉の鍵は全部同じ業者に作らせていて、鍵の規格も全て同じだ」

鈴仙 「!? た、確かに・・・」

萃香 「流石の永琳も牢屋の鍵と鎖の鍵の在処だけは警戒しててな。私もどこにあるか分からなかった。
    しかし他の鍵は放置。いちいち鍵を探されちゃ不便だとテーブルに大公開ってわけ」

鈴仙 「あ・・・」

萃香 「察したようだな。1個の鍵があってもヒントにならない。でも何個も鍵があれば溝の位置の規格くらい分かる。
    粘土で鍵の型取りしてレミリアの食事に混ぜた。で、更に固まってない粘土も一緒にな。
    レミリアは鍵のコピーをヒントに鍵の規格がどうなってるのかを計算し、いくつかの鍵パターンを作ったわけ。
    いきなりピッキングは難易度が高いが、どこに溝がある可能性があるか分かれば話が違う。
    どんな難問も誘導がつくと簡単な問題になるわけだ」

レミィ「結構コツが分かってきたわよ、私の牢屋の鍵は奥側の上に2つ、下に1つ溝があるわね」

鈴仙 「全然分からないのですが・・・」

レミィ「いいのよ、私が分かれば。後は萃香が料理に時間をかければかけるほど私の作業時間が増えるって寸法よ」

萃香 「ただ私を封じてる鎖の鍵の規格は違う・・・そもそも永遠亭が発注したものじゃないしな。
    これもレミリアのピッキングでいつかは外れるだろうが、それじゃ時間がかかりすぎる。
    そこでお前の出番ってわけ」

鈴仙 「私・・・ですか?」

萃香 「永遠亭にはいくつかトラップが仕掛けられてるし、私の封印も解く必要がある。
    でもお前さんなら師匠のモノの隠し場所の癖とか分かるだろうし。
    何よりも万が一戦闘になった時、私とレミリアじゃ戦力になりそうにないしな」

レミィ「失礼ね!!私だってやる時はやるわよ!!」

萃香 「まぁまぁ。じゃ、そんなわけだから早く怪我を治してくれ」


・・・とは言うものの、不安要素が多い。
まずは永琳。天才という割にはどこか抜けているが・・・。鬼縛りの鎖の鍵は奴も最大限警戒しているもののはずだ。いままでは永琳の油断をついていく作戦なわけだが、この部分だけはあの天才と正面から知恵比べをしなければならない。

次に鈴仙。見た限り弱くはないのだが、何だろう。とてつもなく運が悪い。桃鉄がそれを証明している。今まで計画を話さなかったのは、コイツのドジで全てを台無しにされかねないからだ。

逆にレミリア。こいつは幸運の女神がついている。溺愛されているといってもいいくらいだ。試しに粘土で作ったサイコロでチンチロしたが、456サイを使ったのかと思わせるような出目だった。とにかくレミリアの豪運が鈴仙の不幸を打ち消すのを願うばかりだ。

そして、私は懸念の最たるものを鈴仙に見せる。


萃香 「これ。床に転がっていたものだ。吹き矢のような構造に見えるんだが・・・」


調理時に床に無造作に転がっていた筒を見せる。あまりに物騒なものなのでこっそり服に隠して持ち込んだ。


鈴仙 「はい。正確にはトラップ用の矢筒です。吹き矢と違って、底にバネが仕込んでありまして。
    本来ならここにワイヤーピンが通ってて、その間はバネが圧縮された状態になります。
    で、敵がワイヤーに足をひっかけたら罠が作動して矢が発射するという仕組みです」

萃香 「この矢の形状。私が察するに毒矢のように見えるんだが?」

鈴仙 「そうですね。確かこの筒の色でしたらテトロドキシン系の神経毒が使われてますね」

萃香 「効能は?」

鈴仙 「刺されば呼吸困難が発生し、意識が朦朧としますね。もちろん師匠には効きませんが」


・・・逆に言えば、誤って他の家族、例えば鈴仙が引っかかっても奴は気にしない。実はこれを拾って帰ったにはもう一つの訳がある。この筒、ポツンと、あまりにも無造作に転がっていたのだ。まるで見つけてくれと言わんばかりに。つまりこれは・・・


鈴仙 「警告・・・でしょうね」

萃香 「・・・・・・なんだ、私の心でも読めるのか?」

鈴仙 「そんな顔されたら誰でも察しがつきますよ」

萃香 「このトラップ、本当に室内に設置されてると思うか?」

鈴仙 「師匠ならやるでしょうね。見つからないところにモノを隠すより、探した人間を如何に始末するかの方に集中します」

萃香 「いいのか、お前?」

鈴仙 「何がです?」

萃香 「私の脱走を防ぐことだけ考えれば鬼避けの護符で十分だ。またレミリアみたいな幼女に対してこれは過剰すぎる。つまり」

鈴仙 「私への対策が毒矢・・・てことでしょう?」

萃香 「他に考えられる仕掛けは?」

鈴仙 「私も元軍人。師匠よりも罠の造詣には深いはずです。まずはですね・・・、」


きっかり1時間後。


萃香 「・・・なるほどな」

鈴仙 「悲観的なことばかり言ってごめんなさい」

萃香 「いやいや、逆だ。少しだけ光明が見えてきた。ほぼ闇だけどな」

鈴仙 「?」

レミィ「よっしゃ!!開いたわ!!」


みるとレミリアの牢屋の扉があいていた。


レミィ「やったわ!これで私は自由よ!!」

萃香 「お、とうとうやったか!!」

レミィ「ふふん。遠慮なく尊敬していいわよ」

萃香 「後は我々の牢の鍵なんだが・・・まず私の方からやってくれ。作戦上重要なんでな」

レミィ「どうして?調理で抜け出せるあなたより鈴仙を優先させるべきじゃないの?」

萃香 「そうだな、もうそろそろ私の作戦を教えておこう・・・」




・・
・・・


きっかり1時間後。

レミィ「ホントにうまくいくの?」

萃香 「そうだな、ぶっちゃけ100%じゃない。だが8割くらいうまくいくはずだ」

鈴仙 「でも大分推測が入っていません?」

萃香 「しかし状況から考えてそうだろう?でなきゃ、永琳はアレをやっていることになる」

レミィ「でもいろいろ準備が必要ね、脱出はいつにする?」

萃香 「5日後、かな?鈴仙には少し辛いかもしれないが・・・」

鈴仙 「そちらもそれなりにお辛いですよ」

レミィ「ま、それまでに私はアンタの牢の鍵を開ければいいわけね」

鈴仙 「あと、ただ・・・」

萃香 「分かってる。もしそうだったとしたら長期戦にするか、降参するか・・・いずれにせよ失敗だな」

レミィ「でもあんたの読みは間違っていないと思うわ」

萃香 「では各自。作戦の準備を行えよ、私は調理の支度をしてくる」











(永遠亭:永琳視点)

何か違和感を感じる。

違和感の正体は分からないが、やはり彼女、伊吹萃香の様子がおかしい。何がおかしいかというと・・・『何もおかしくない』ことがおかしい。

発端は私の料理であった。少々昔話をしよう。

自他共に認める天才である私にも苦手なものはある。初めて発情期の優曇華を監禁した時のことは忘れられない。今まで優曇華に料理を任せていたために調理担当がいなくなったのだ。仕方なく私が腕を奮ったのだが、結果は惨敗。姫は一口食べただけで吐き出し、てゐは気づいたときにはいなかった。そして次の日、てゐと姫はいなかった。書置きが二つ。てゐは『実家(現在の島根県らしい)に里帰りする』と書いて外の世界に行った。姫は『強敵(とも)に会いに行く』と書いて妹紅の家に居座ってるらしい。兎の発情期が終わったら彼女たちは帰ってくるのだが、次の発情期にはまたいなくなる。そういうことが繰り返されてきた。私はいつも孤独だった。私だって好きで優曇華を監禁しているわけではないのだ。永遠亭、ひいては姫の評判を思って敢えて憎まれ役を引き受けているのだ。なのに、ここまで冷たくされるのは応える。

それに転機が訪れたのは2週間ほど前のこと。同じく隔離病棟に入院している伊吹萃香が料理を作ると言い出したのだ。

常識的に考えれば任せるわけにはいかない。わざわざ囚人に脱走の機会を与えているようなものだ。しかし、私には断れなかった。私は恋しかったのだ。皆で温かいご飯を囲んでいたあの時。それを取り戻したかった。

炊事の許可を与えてしまった後、私は大急ぎで永遠亭の防衛を強化した。まず博麗神社に大量の鬼避けの護符の発注。正直、治療費以上の金銭を消費してしまったが、食卓の団らんを取り戻せるものなら安いものだと思った。それに罠の設置。これも相当な手間であった。月の天才ともあろうものが全く非効率的な・・・と自嘲しているが。それでも私は楽しかった。

で、今に至るわけである。私としては彼女たちを絶対脱出させるわけにはいかない。脱出の兆候、準備があれば念入りに潰すつもりであったが。怪しい行動がほとんどないのだ。もちろん些細な非合理的な行動はあるのだが、伊吹萃香の日常生活自体が最適化しているわけではない。要するに誤差の範囲内の行動にすぎない。

私が見落としている何かがあるのか、それとも本当に病気を治す決意をしてくれたのか・・・。

私は診察器具の片づけ後、再び罠を確認する。まず屋外。至る所に外敵用の防衛装置がめぐらせてある。本来は対月の民用だ。今期だけ、その一部を内部の人間の脱出防止に用いている。今のところ怪しい細工をされた形跡はない。続いて外壁。家を囲むように鬼避けの護符が配置されている。室内に配置した方が数が少なくて済むのだが、それだと萃香の調理に支障がでる。故に家の全外壁と私の研究室に護符を配置している。今話にあった研究室であるが、あそこは様々な危険物質に加え、牢の鍵と鬼縛りの鎖の鍵が保管されている。元々防衛拠点としての設計もされているため、改造もやりやすい。隔離病棟から私の研究室に至る廊下には特に念入りに罠を仕掛けている。私はざっとチェックしたが、ここも怪しい細工の後はみられない。最後に厨房。ここは伊吹萃香が出入りしている場所だ。重要なものはないが、細工をされている可能性は最も高い。とはいえ、彼女と知恵比べしてもしょうがない。元々私が使っていない場所なだけに勝手が分からない。ということで、厨房の外側に更に鬼避けの護符を貼ることで対策している。これで少なくとも、彼女は厨房の外には細工できないのだ。

つまり、結論として・・・彼女が脱出することはありえない。不可能だ。しかし・・・では彼女は何故、自然なのだ?


永琳 「考えても仕方ないか・・・て、もうこんな時間かしら?」


もう夕飯時になっていた。早速萃香に何か作ってもらわなければ。私は地下隔離病棟に降りていく。しかし・・・事件は既に起きていた。


永琳 「いない!?」


牢やは空っぽだった。空き放たれた戸が空しくギシギシいっている。バカな・・・どうやって?戸は無理矢理開かれたわけではなく、開けられたようだ。つまり・・・


永琳 「鍵が盗まれた!?」


ということは、既に連中は外にいるはずだ!急いで外に・・・


???「あん、あん、あん・・・」

永琳 「優曇華!?」


訂正。牢屋が空っぽは間違いだった。優曇華の牢だけ戸は開いていなかった。


永琳 「優曇華ッ!!何があったの!?」

鈴仙 「あん、あん、あん・・・」

永琳 「だから、何があったの!?」

鈴仙 「あん、あん、あん・・・」

永琳 「発情している場合じゃないでしょ!!早くッ!!」

鈴仙 「あん、あん、あん・・・」


く・・・時間の無駄。こんな状態で何を話しても仕方ない。とにかく、萃香とレミリアが脱走した。牢の鍵は盗まれた。おそらく鬼縛りの鎖も解かれているだろう。急いで外に・・・


永琳 「ッ!!!?」


ちょっと、待て・・・。おかしい。私はついさっき、永遠亭敷地の見回りをして、罠が一つも作動していないことを確認した。時間的に考えて私の見回り後に彼女たちが抜け出すのは不可能。ということは、もし彼女たちが脱出したなら、私の罠を一つも発動させずに抜けたことになる。


永琳 「それは、不可能。牢にはいない。しかし外にも出れない。となると残る場所は一つ。厨房!!」


私は隠れているであろう彼女たちに宣言するように厨房に入った。そう、どうやって牢の鍵を手に入れたのかは知らないけど、少なくともここから脱出するのは難しいはず。

彼女たちの作戦はこうだ。牢から脱出する。そして厨房に身を隠す。慌てた私が外を探し回る。私が留守をしたところで強行突破。


永琳 「少なくともここにいることは分かっているのよ!大人しく出てきなさい!!」


・・・しーーーーーーん


永琳 「無駄あがきをしたいようね。でもここに女2人も隠れられるスペースなんて限られているわ!!」


私は戸棚などを開けながら宣言した。さて、見つけたらどんな罰を下そうか・・・。








・・
・・・2時間後



永琳 「い、いない?」


私は探した。考えられる全てのスペース。天井裏、果ては穴が掘られていることを疑って、床下まで調べた。しかし・・・


永琳 「いないってことは・・・本当に外に?それとも何か思い違いを?」


どこに隠れた?まて、分からない。と、とにかく一旦落ち着かなきゃ・・・。




・・
・・・30分後


鈴仙 「で、今日の夕ご飯はこれなんですか?」

永琳 「・・・文句あるの?」

鈴仙 「い、いえ!!頂きます!!」


私たちは缶詰を片手に夕食をとった。まずい。そして全然足りない。

あの後。私が牢に戻った時には優曇華は既に正気を取り戻していた。しかし彼女はいつものように発情中の記憶はないらしく、気がついたら二人が消えていた、ということだった。


永琳 「脱出の気配とかも本当になかったの?」

鈴仙 「あったら私も一緒に脱出してますよ」

永琳 「・・・よねー」


そうなのだ。優曇華が共犯なら一緒に脱出しているはずだし、裏切られたのなら腹いせに情報を売りそうなものだ。つまりは・・・


永琳 「・・・役立たず」

鈴仙 「・・・面目ないです」

永琳 「それにしても、ずいぶん落ち着いてるわね」

鈴仙 「発情してて記憶がなかったので・・・朝起きたらいなくなってたみたいな?まだ少し実感がわかなくて・・・」


・・・こっちはストレスフルスロットルなのに、なんて能天気な・・・。まぁ、しばらくの辛抱だ。


永琳 「じゃあもう寝なさい。私は厨房に行くから」

鈴仙 「? なんでですか?」

永琳 「冷静になって考えてみても、やっぱりここから痕跡なく脱出するのは不可能なのよ。むしろ私が思いもつかない隠れ家を厨房に作ったと考える方が自然だわ。」

鈴仙 「はぁ・・・じゃあ・・・おやすみなさい」

永琳 「おやすみ・・・」


私は階段を上がって厨房に行く。しばらくの間、厨房で張り込みだ。どこに隠れていようと食事には困るだろう。つまり厨房に張り込めば、脱走者と接触しやすいはずだ。










(隔離病棟 鈴仙視点)

永琳 「じゃあもう寝なさい。私は厨房に行くから」

鈴仙 「? なんでですか?」

永琳 「冷静になって考えてみても、やっぱりここから痕跡なく脱出するのは不可能なのよ。むしろ私が思いもつかない隠れ家を厨房に作ったと考える方が自然だわ。」

鈴仙 「はぁ・・・じゃあ・・・おやすみなさい」

永琳 「おやすみ・・・」


そういって、師匠は上に上がっていった。

私一人の空間。周りには誰もいない・・・


・・・わけではない。


鈴仙 「もう行ったようですよ」

萃香 「おお、上出来だ」


そういって私のベットから這い出したのは、伊吹萃香とレミリア・スカーレット。そう、脱走したはずの2人だ。ベットの下の床板は私のレーザーで綺麗に焼切られていた。切断面だけ隠せば、加工されていることはちょっと分からない。床下には穴が掘ってあり、彼女たちはそこに潜んでいたのだ。


レミィ「それにしても、ここを調べもしなかったわね」

萃香 「明日には調べると思うぞ。ただし、私とレミリアの牢屋だけな」

鈴仙 「それにしても、よく思いつきましたね」

レミィ「脱走したはずの2人が、まさか隣の牢屋のベット裏に潜んでるなんて普通考えないわよ」

萃香 「ま、とりあえずメシにするか」


そういって取り出されたのが、焼き米(やきごめ)。炊いた米を煎餅状にして焼いて、水分を飛ばしたものだ。そのままでは食用に適さないが、これに水筒から昆布ダシをかけると、ふやけていい塩梅になる。


萃香 「即席のお茶漬け、てとこだな」

レミィ「あ、これ、保存食だったのね」

鈴仙 「美味しいですけど・・・缶詰でも良かったんじゃないですか?これ作るためだけに結構な日数を消費しましたよ」

萃香 「だめだ、私たちはまだ第一段階にいるにすぎないからな。缶詰を消費したら第二段階に進めないんだ」

鈴仙 「第二段階?これと保存食に関係が?」

萃香 「順を追って説明する。私の計画の第一段階は、私とレミリアが姿を隠すことだ」

レミィ「正に今ね」

萃香 「次の段階では、永琳を外に出す。その特効薬がこの保存食ってわけだ」

鈴仙 「話が見えないんですが・・・」

萃香 「まぁ見てなって。これ食って寝てるだけで、『永琳が』お前を脱出させるから」

鈴仙 「???」


その時は全く意味が分からなかった。しかし彼女の正しさは直ぐに証明された。


















(2日後 隔離病棟 永琳視点)

鈴仙 「し、師匠!?ど、どうしたんですか、その顔!?」


優曇華は開口一番そう聞いてくるが、無理もない。眼は真っ赤に充血、頬はこける、髪はぼさぼさなんだから。蓬莱人でも疲労は感じる。


永琳 「・・・考えたくはないんだけど・・・、あの二人は永遠亭から逃げ出した。そうとしか考えられない」

鈴仙 「は、はぁ?」

永琳 「脱走してから食料が全く減ってないのよ。隠れているんなら食べ物が必要でしょう」

鈴仙 「あ、ああ」

永琳 「それだけじゃない、一番の問題はトイレよ」

鈴仙 「ト、トイレ?」

永琳 「永遠亭のトイレの全てに罠をはったわ。そして更に水道の元栓を調整して水が流れないようにしたわ、あなたのところ以外」

鈴仙 「はぁ、そうだったんですか?」

永琳 「飲まず食わずでも、排泄はしなきゃいけないはずよ。で、トイレに行けないなら悪臭が漂うはず」

鈴仙 「ですね」

永琳 「でもトイレに誰も行ってないのよッ!!」

鈴仙 「そりゃそうですよ」

永琳 「・・・ん?」

鈴仙 「へ?あ、あ、いえッ!!永遠亭から逃げ出したんならウチのトイレに行くわけないって意味です!!」

永琳 「まぁとにかく、結論から言うと、あなたをここから出すことにしたわ」

鈴仙 「へ?え?え?ええええええええッ!?」

永琳 「こんな大失態、他の人間に・・・特に姫に知られるわけにはいかないの。
    かといって、この状態でここを留守にするのもまずい。あなたを留守番にするわ」

鈴仙 「え?え?いいんですか!?」

永琳 「それに・・・もう缶詰生活も限界・・・・・・これ以上長引いたら発狂するわ」

鈴仙 「師匠は今からどこへ?」

永琳 「まずは紅魔館ね。金髪の妹さんに、姉の中二病を治して欲しいって依頼されてたんだけど・・・。
    レミリアは二日も前にそこに帰っているでしょうね。今更連れ戻すことも難しそうだし、今後の次善策検討よ」

鈴仙 「レミリアさん、妹に連行されてたんですね」

永琳 「まぁ、そんな感じで留守は任せるわ」


私はそういいつつ、牢を開ける。優曇華が果たして言いつけを守るかどうか・・・まぁ守らなくてもいいだろう。とにかく今はこの大失態の尻拭いだ。はぁ~。問題は伊吹萃香なのよね。今頃、人里の酒屋でどんちゃん騒ぎしてるだろう。どの面掲げて彼女を迎えに行けばよいのか?永遠亭は既に人里の笑いものだろう。ぶっちゃけ、もう姫の耳に届いているだろうが・・・それでも何もしないことの方が耐えられない。


永琳 「ん?」

鈴仙 「? ど、どうしました、師匠?」

永琳 「いえ、何か忘れているような・・・いえ、きっと疲れているからね」

鈴仙 「少し休まれた方が・・・」

永琳 「いえ、今すぐ行くわ。早くて損することはないわ。得もしないけど」


私は鈴仙の拘束服を脱がせた後、すぐに飛び立とうとしたが・・・


鈴仙 「あ、待ってください!!」

永琳 「ん?なにかしら?」

鈴仙 「えと、あの、今、永遠亭のいたるところに罠が仕掛けられているんですよね?」

永琳 「そうね」

鈴仙 「あの、私の部屋とそこに行くための通路だけでも外していただけませんか?」

永琳 「うん?あ、ああ、そうね。私ったら、うっかりしてたわ。じゃあ、ちゃっちゃと外しちゃいましょう」









(竹林上空 永琳視点)

30分後。罠を外し終えた私は今度こそ永遠亭を後にした。

えっと、最初にどこに行くのだったかしら?完全に思い出せない。流石に一眠りしないといけないのかしら。
でも、一眠りしては間に合わないかもしれないから、無理して行こうって思ったんじゃないかしら・・・。
まずい、お腹空きすぎて気持ち悪い・・・。


永琳 「だめね、せめて何か食べ物を・・・」


下を見るとミスティアの屋台がある。お酒は飲めないが、ちゃんとした料理を食べたい。ちょっとしたものをつまもうと立ち寄った矢先・・・


永琳 「げ・・・」

輝夜 「げ、とは何よ、ずいぶんな挨拶ね」

妹紅 「お、永遠亭の薬師じゃないか」


よりによって、今一番顔を合わせたくない相手だ。重症患者二人も逃がしてしまったなんて失態、絶対覚られては・・・


輝夜 「そう、患者さん、大変なことになっちゃったわね」

永琳 「え!?もうご存知で・・・!?」


しかし考えてみれば不思議はない。鬼が逃げてからもう2日・・・いや3日か?随分たつ。逃げた鬼がミスティアの屋台で一杯やって、それを姫が知っていたとしても不思議は・・・。


輝夜 「いえ、鎌をかけただけよ」

永琳 「な・・・」

輝夜 「どれだけ長い付き合いだと思ってるの。あなたが憔悴した顔で飛んでいるのよ。そうなると考えられることは・・・」

妹紅 「可能性が高いのが、医療ミス・・・か」

永琳 「いえ、医療ミスではありませんッ!!」

妹紅 「ミスした奴は大抵そう言うんだよな」

永琳 「違くてッ!!」


私は観念して事情を説明する。説明していると喉が渇き、途中勧められた酒を我慢できずに飲み干してしまい、語り終えたころにはベロンベロンに酔っぱらっていた。同時にものすごく眠い。


永琳 「てぇ、ことでぇッ!!優曇華以外、全員逃げちゃったわけぇえええ!!」

ミスティア「先生、もうお酒は控えた方が・・・」

永琳 「いいでしょぉお、蓬莱人はぁあああ。酒じゃ死ねないのよぉ」

妹紅 「そぉおだぁあ、よく言った!私も付き合って飲んでやるぞぉおおお」

ミスティア「もう、妹紅さん一人でも面倒なのに、二人も・・・輝夜さん、そろそろ止めてください」

輝夜 「う~~ん、永琳。1つだけ、引っかかるところがあるのよね」

永琳 「んんんん?何かしらぁ、なんかおかしなところ、あったっけぇ、フフフ」

輝夜 「何でイナバは脱走してなかったの?」

永琳 「だぁかぁらぁ!!言ったでしょう?優曇華は発情しててぇ、オナニーに夢中で気が付かなかったのよ!ざまぁ!」

輝夜 「でも連中はそこまで確信もてないでしょう?」

永琳 「はぁ?」

輝夜 「だからッ!連中からしてみれば、優曇華が発情中に本当に外を認識できないかなんて分からないわ」


!!!!・・・急速に酔いが醒めていく。今まで散らばっていたパズルピースが組み立てられていくッ!!


輝夜 「鍵を開ける技量がある連中が、何でイナバのだけ放置しているの?
    どっちがピッキング技術をもっていたにしても、もう一方の鍵はわざわざ開けたのよ?
    イナバのだけ開けない理由がある?実はイナバもいつでも出れる状態にあったんじゃないかしら?
    でもイナバ、いえ、イナバ達は何かの理由があった。
    それを解決するために2人消え、1人残るという状態にしてたんじゃないかしら?」

永琳 「で、でもッ!でもですよッ!何でそんなことをする必要が・・・ッ!!!!?」


私の頭の中で、つい先ほどの情景がフラッシュバックする!

(飲まず食わずでも、排泄はしなきゃいけないはずよ。で、トイレに行けないなら悪臭が漂うはず)
(ですね)
(でもトイレに誰も行ってないのよッ!!)
(そりゃそうですよ)
(・・・ん?)


永琳 「隠れ家・・・」


そうだ、私は彼女たちが消えた時、まず隠れたことを疑った。
そして大量の罠。それにも引っかからないから、まだ隠れているか、実は本当は脱出してるんじゃないかと疑った。
更に、上下水道を制御した。排泄しなければ生存できない。排泄現象が確認できない以上、連中は脱出したと確信していたが・・・。


永琳 「優曇華の・・・牢は・・・対象外だった」


だって、『生活して然るべき者』が中にいるから。しかし生活しているのが一人とは限らない!!


永琳 「私ッ!!急いで戻らなきゃッ!!」

妹紅 「おぅ?それって、向こうに上がっている煙と関係あるのかぁ?」

永琳 「私は嵌められた可能性があるわッ!!だから、急いで永遠亭に・・・って煙?」

妹紅 「あれぇ、確かおまえんちの方角だよなぁ」

永琳 「ええええッ!?」

妹紅 「うわぁ、おまえんち、燃えてやんのぉ、キャハハハッ」

輝夜 「・・・一つだけ言えることは・・・万事既に遅し、ね」


・・・目の前が暗転する。地面が壁のようにせりあがってくる・・・


輝夜 「ちょ、ちょ!永琳ッ!!」


姫の声が聞こえるが・・・私は全ての思考を放棄して寝てしまった。














(3日後 外の世界 静岡県 某海岸沿い 民宿:伊吹萃香視点)

萃香 「かんぱぁ~~~い!!」
レミィ「乾杯ッ!!」


私とレミリアはビールを飲み干す。冷えたビールが五臓六腑に染み渡る。隣でソーセージの焼ける音がジュウジュウしている。脂のパチパチと跳ねる音に思わず涎が出る。


レミィ「しっかし。色々あったわねぇ」

萃香 「そうだなぁ、今にしてはいい思い出さね」



・・
・・・


事は3日前にさかのぼる。
私の策略で永琳を追い出した後、鈴仙はすぐに自分の部屋に行き、戻ってきたときには物騒なものを抱えていた。


レミィ「何それ?」

鈴仙 「C4爆弾、対物ライフル、防毒マスクと保護メガネが3つ、そして消火器です」

レミィ「は?」

鈴仙 「結論からいうと、師匠が本気で仕掛けた罠を回避することは精鋭軍人でも不可能です。となると、方法は一つ・・・」

萃香 「廊下ごと爆破する、か」

鈴仙 「はい、手荒い方法ですがそれが確実です。皆さんはメガネとマスクを。有毒ガスの発生が懸念されます」

萃香 「で?どういう戦法でいく?」

鈴仙 「基本的に爆破して進む、爆破して進むの繰り返しです。
    レミリアさんは消火器で発生した火を鎮火してください。
    萃香さんは後方の警戒を。
    この繰り返しで師匠の研究室まで行き、ドアには触れず対物ライフルで扉ごと破壊。
    中にも爆弾を投げた後、急いで鎮火して中に潜入。
    おそらく鍵は金庫の中なので、それも対物ライフルで破壊します」

萃香 「お前・・・この後、永琳に殺されるぞ」

鈴仙 「もう既に死刑確定です。ならば行くところまで行く!」

レミィ「まぁ行き場所がなくなったら、ウチのメイドとして雇ってあげるわ」

萃香 「最も、私たちはこの後に外の世界に逃げるんだけどな」

レミィ「そういえば何で外の世界にこだわるの?」

萃香 「お前らはとにかく、私が脱走したと知ったら霊夢と紫に半殺しにされる。特に紫から逃げるには外が一番だ」

鈴仙 「さて、そろそろ時間です」

萃香 「いくか!!」




・・
・・・

後は簡単だった。爆発四散した研究室の金庫から鍵を取り出し、鬼縛りの鎖を解除した私たちは幻想郷南端まで逃亡。鬼の怪力で無理矢理結界をこじ開けて外の世界にでた。


レミィ「でも、鈴仙も冷たいわね。すぐいなくなって」

萃香 「まぁアイツにも目的があるんだ」


外の世界に出てすぐ。鈴仙が海に行こうと言い出した。何故にと思いながら渋々私たち3人は海水浴場に。そこで鈴仙はいつの間に用意したのか、割ときわどい、紫のビキニに着替えた。鈴仙の狙い通り、すぐに男たちにナンパされてそのまま別れた。おそらく今もお楽しみ中だろう。レミリアはというと、海水浴場についてすぐ倒れた。どうやらやつは本当に吸血鬼だったらしく、翼がチリチリと燃えていた。仕方なしに私はレミリアを抱えて海水浴場を引き上げ、近くの民宿にむかった。

その民宿は汚く、食事も出ない、ただ寝床だけを用意するという、どちらかと言うと木賃宿だった。しかし庭先のバーベキューセットの使用が自由であった。そこで私とレミリアは近所のスーパーでビールとソーセージ、木炭を買いあさり、脱出記念パーティーを開くことにしたのだった。


レミィ「ま、パーティーと行っても2人だけだけどね」

萃香 「というか、いいのか、お前?紅魔館に帰らなくて」

レミィ「いいわよ、どうせフランも反省してないだろうし。それよりアンタとバーベキューした方が楽しいわよ」

萃香 「嬉しいこというねぇ。ほら、ソーセージ焼けたぞ」

レミィ「じゃあパンで挟まないとね」

萃香 「パン?」

レミィ「知らないの?ホットドックっていうの。美味しいわよ」

萃香 「む・・・ん~~、私はビールとソーセージの方が好きだな」

レミィ「まぁ人それぞれね。はい、ホタテガイのマヨネーズ焼き、トマトとバジルトッピングよ」

萃香 「む、うまいな!!てか、お前、料理できるのか!」

レミィ「咲夜が貧血で倒れた時とか、よく作ってるわね。週6くらいのペースかしら?」

萃香 「メイドとして、全然優秀じゃないじゃないか」


私はひときしり笑った後、ふと夜空を見る。

片手にソーセージ、片手にビール。酒がない人生なんて死んだも同然じゃないか。病気を治さずに死ぬ、病院に入って死んだ人生を送る。それにどれほどの違いがあろうか。ならばより楽しい方を選ぶのは鬼として当然の道ではなかろうか。



これを言い訳として霊夢に語り、顔面をグーで殴られるのはもう少し先の話である。
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コメント



0.580簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
色々ぶっ飛んでて楽しかった
肝硬変が自然治癒する見込みがあったり眼球にカラコン刺さって雑菌入っても割とすぐ治ったり、妖怪ってすげえな…
2.90名前が無い程度の能力削除
この幼女ども、有能である。
一方でウドンゲの見せ場が…w
3.80奇声を発する程度の能力削除
勢いとかがあって面白かったです
9.10名前が無い程度の能力削除
笑いが滑り過ぎて寒い。
11.80非現実世界に棲む者削除
禁断症状って怖いよね。
とても面白かったです。何故静岡県なのかちょっと気になりますが。
12.80名前が無い程度の能力削除
途中までの会話が面白かったです
最後はなんか酔っ払いの世界を泳いでるようなどうにでもなれえ!感がありました
自分でも何言ってるかわかりませんがまあまあ面白かったです