Coolier - 新生・東方創想話

小野塚小町の出張

2014/06/30 17:32:33
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 死神の仕事にも色々ある。
 あたいのような三途の河の船頭をやっている者もいれば、審判の書記を行っていたり、人間の寿命管理などの事務的な仕事をしている奴もいる。人間が想像しているより、死神の仕事は結構ある。
 さっきも言ったけれど、あたいの担当は三途の河の船頭であり、それはそれぞれが単独で行う仕事である。幽霊と生前の出来事について話したりとそれなりに楽しいのだが、何分暇な時は暇なので、眠ってしまうこともある。個人的な考えなんだが、仕事中に眠る事についてあたいは賛成である。眠いとまず頭が働かず、仕事に影響する。それによって小さな失敗をしてしまう。『塵も積もれば山となる』という諺があるように、反省を忘れ小さな失敗を繰り返すと、まるで突然爆発するように取り返しのつかない失敗が起きる事がある、今まで起きた小さな失敗を全て足しても足りないほどの。要するに、休む事に臆病になってはいけない、とあたいは言いたい。
 ちなみ今、あたいは彼岸の外にある幻想郷に足を下ろしている。たまには外で仕事をするというのも一興だ。言い訳をするつもりはないが、船頭の仕事は幽霊が来ない時は頑張っていても睡魔に勝てない時がある。
 まぁ、何が言いたいのかと言われれば。あたいの上司である閻魔様から言われた言葉を使うなら――
 ――しばらく、船頭としてのあなたをクビにします。
 あたいにとっての小さな失敗は居眠りだっただけの事である。



 直接的に言うと、船頭をクビになり幻想郷の外回りの仕事に任命された。その内容とは、近い内に寿命を迎える者の中で、特殊な人間の魂の元へ行く、というものだ。想いが強すぎるために死してなおそこに留まってしまう可能性のある魂や、怪物と関わったために寿命がやや変動してしまった魂を回収したり。極端に善行を積んだ奴を上司である四季映姫様の元で働かせるため連れて行ったり。人間が多くなった今は地獄も何かと人手不足なのである。
 言わせてもらえるなら、あたいはこの仕事はあまり好きではないのだけど、任命された仕事について文句を言える程偉くもないので、それらの不満は一度大きく吐いた溜息に混ぜて飛ばす。
 事務を行う死神から名簿を頂戴し、捲る。するとさっそく、なるほど特殊な人間を見つけた。
 そして幻想郷へと足を運んだあたいは、まず幻想郷を広く見渡せる場所に生える木に背中を着け、一眠りする。何もサボるわけではない。この行いはあたいにとっては仕事の効率を良くするためにどうしても必要なのだ。ただそれを多用したから四季様に目を付けられてしまっただけである。
 まどろみの中で、あたいは夢を見る。

 ――ここは……一体何処ですか?
 ――この世界は全てを受け入れるのよ。
 ――そんな事で……。どうしてそんな事で命を絶とうとするのよ!
 ――ありがとう霊夢さん。大好きです。

 夢から覚めたあたいは立ち上がって一度大きく背筋を伸ばし、死神の象徴とよく言われている大釜を手に持った
「さて、生きますか」



 一人の少女は賽銭箱をじっと見ている。その少女――博麗霊夢は朝早くに起き、いつもと違う気分に違和感を覚えながら、何気なく朝食前に神社の掃き掃除を行った。すると、いつもとは違う神社の風景に気付く。
 賽銭箱を背にして、見覚えのない少女が眠っていた。霊夢は彼女の服装にまず目が付く。幻想郷の人間にとっては和装が主であり、彼女の恰好はどうみても着物とはいえない。しかし神社の巫女である霊夢は彼女から妖怪の気配を感じとることはなかった。
「また流れ込んできたのね」
 あたいが神社に足を踏み入れた時、霊夢はそう言っていた。
「おや、ちょっと早かったかい」
 霊夢はあたいを見て、驚きと嫌悪が混ざった表情をしていた。
「死神……? 何の用かしら」
「いやいや気にしないでくれ。ちょっと悪霊がいないか見回り、って感じだよ」
「ん? 船頭の仕事はどうしたのよ」
「…………」
 さすがと言うべきか、色々するどいねぇ。
「あんた、まさか……」
「ま、まぁ細かい事は気にしない主義さ、あたいは。そんな事より優先するべきことがあるじゃないか」
 そう言ってあたいは賽銭箱で眠っている少女を指し示す。
「その子、迷い込んできたのかい?」
「そうみたいね。それにしてもこんなにぼろぼろになって、人里じゃなくてここに辿り着くなんて、それなりに運はあるようね」
 解りやすく言うと、あたい達の世界――幻想郷は外の世界とは違う文化を持っている。それでいて、ここには時々外の世界から人間が迷い込むことがある。外の人間であるかどうかは服装からなんとなく見分けはつく。というか――
「こんな神社に足を踏み入れる人間なんて、魔法使いの他にはこういう人間しかいないからねぇ」
「出てけ。とっとと彼岸に帰りなさい。そもそも死神なんて、縁起でもない」
「へいへい」
 言われるがまま、あたいは霊夢から背を向けて神社を後にする。人間の幻想入りについてあたいは管轄外なので関わる必要もない。
 しかし、だ。その人間そのものには用があるのだ。



 あたいが神社を去って数時間後、少女は目を覚ました。
「やっと起きたのね。もうおやつ時よ」
 客間には、わざわざ持ってきたちゃぶ台に肘を付けながら煎餅を齧る霊夢と、布団に寝かせられていた少女の二人しかいない。
「ここは……一体何処ですか?」
 その問いは霊夢にとって予想通りのものだった。
「ここは幻想郷。あなたがいたのとは別の世界よ」
「え……?」
 少女は困惑するが、これも霊夢にとっては想定内である。
「あなたは自分のいた世界からここに迷い込んできたのよ」
「……何言ってるんですか?」
 霊夢はあくまで、ただ淡々と言葉を続ける。
「幻想郷に迷い込んで来た人の多くは、向こうの世界と繋がり続ける事を放棄――つまり向こうの世界で生きるのが嫌になった人よ。何か心辺りはない?」
 霊夢の問いに、少女は渋い表情をして何も答えない。図星だったのだろう。
「ま、そんなところでしょうね」
「……私は……」
「気にする必要なんてないわ。言ったでしょ、迷い込んできた人の大半がそうだって。別に帰るも帰らないも、あなたの自由よ」
「? ……帰れるんですか? 元の世界に」
「この神社そのものが出入り口、と言えばいいのかしらね。細かい事は後で話すけど、この神社に辿り着けた事自体、あなたは運がいいのよ」
 突然迷い込んだ世界にもかかわらず、自分が望めば元の世界に帰ることができる。しかし、先程の表情から察するに、少女は理由があってこの世界に迷い込んできたのだ。
「もう少しだけ考えても、いいですか?」
 少女は元の世界に帰る事を拒んだ。
「別に何分でも何日でも考えたらいいわ。あなたが望めば、すぐ向こうに帰れるんだから」
「……ありがとうございます」
 お礼を言う。突如迷い込んだ世界で出会った他人に。それによって霊夢は、理由があって少女は迷い込んできた事を確信した。



 それから少女は、博麗神社で日々を過ごすようになった。飯作りや風呂焚きなど、巫女としての仕事以外の家事を霊夢と交代で行う事を条件に彼女は神社で日々を過ごした。
 時々、魔法使いや変わった髪の色をした巫女が来て色々な話を聞け、それは彼女にとって新鮮な出来事だった。
 その間少女は迷い込んできた心当たりを話すことはなかったが、霊夢もそれについて詮索しなかった。日々柔らかくなっていく彼女の微笑みを見て、それは野暮だろう、と思ったのだ。



「不思議な所ですね、幻想郷って」
 何日か経った頃、縁側で霊夢の隣に座る少女は口を開く。
「『空気がおいしい』って、文字通りこういう事を言うんですね。知らなかった……。魔理沙さん……でしたっけ。本物の魔法使いなんて初めて見ましたし、あんなに可愛い天狗もいるなんて」
「この世界はね、協力してるわけじゃあないけど人間と妖怪が共に存在している。この世界は全てを受け入れるのよ。……なんて、知り合いの妖怪の受け売りだけどね」
 自分のいた世界では共存どころか妖怪などいないからなのか、少女はやや困惑しながらも「すごいですね……」と言葉を返した。
「でも勝手に外を出歩いちゃ駄目よ。そこら辺を飛んでる人喰い妖怪もいるから」
「人喰い……ですか」
「ええ。文とは違って人間を食料としか見てないから、せいぜい気を付けなさい」
 霊夢が言い終えると、少女は口元を抑えて小さく笑っていた。
「何よ」
「あ、いえ。なんか、優しいお姉さんができたみたいで嬉しくて」
「何言ってるのよ、あなたも私も同じ年くらいじゃない」
 そんな雑談を霊夢と少女は続けていた。
 霊夢自身も、あたいや魔理沙達と会話する時とは違った表情を少女に見せていた。外の世界から来た人間、というのは何だかんだ霊夢にとっても新鮮なのかもしれない。大抵の迷い込んできた人間は彷徨う中で妖怪に捕食されるか、人里に着くとすぐに元の世界に帰るのを望むのがほとんどだ。
 だから、霊夢にとっても少女にとっても、この関係はまだまだ続いていくと思っていたのだろう。



 ただ、ほんのささいな事だった。
 霊夢は誰に対しても平等である。調子に乗っている者が近くにいても冷静な言葉を投げ掛ける時があれば、どれだけ弱っている者に対しても間違っていると思えば反論する時もある。
 それは、『親』に対しての話題だった。
「霊夢さんは、親がいないから解らないんですよ!」
 霊夢の何気ない一言に、突如少女は怒りだした。幻想郷に来て十数日経ったので、頃合いかと思った霊夢は少女に元の世界へ帰る事を促した。しかし少女は「長い間いなかったから、親に怒られてしまう」と言って目を逸らす。それに対し霊夢は「今帰れば、大して怒られずに済む」と、至極真っ当な事を言う。それでも言葉に迷いながら帰ることを曖昧に拒む少女に霊夢は「親がずっといてくれるなんて、いいことじゃない」と何気なく言った。それが引き金となるとは、霊夢どころかあたいにだって分からなかった。
 夕食時、霊夢とちゃぶ台を挟む形で座っていた少女の言葉に対しても、霊夢は目を丸くするだけで口を閉じることはない。
「親がいる事で、何の問題があるのよ」
「それは……その……」
 徐々に冷静になり口ごもる少女に霊夢は溜息を吐いて言葉を続ける。
「そこまで言うなら、親から離れて、私のように一人で暮らせばいいじゃない」
「それは……そうですけど」
「……分からない人ね」
 その言葉に、少女の表情は変わる。若干の焦りや恐れが混ざるようになったが、霊夢はそれに気付かない。
「あなたがどうしてこの世界に迷い込んだか。どうしてそんなに親を嫌うのか分からないけど、さっきの言い方が気に入らないわね」
 茶碗から箸を置いた霊夢は、しかし立ち上がらず少女を見上げたまま話す。
「『親が近くにいないから私程度にはあなたの気持ちが解らない』。私の気持ちをまるで無視したような言い方で、傷付かないとでも思ったの?」
「あ……いえ。……それは……」
「人の事を考えないんだもの、人に怒られて当然よ」
「!」
 少女は喉を鳴らし、何かを言いだそうとしてぐっと堪え、部屋の襖を開ける。それに対し霊夢は何も言わない。
「ごめんなさい霊夢さん。ご飯、残します」
 そう言って少女は襖を閉めた。
「変な所で礼儀正しいわね」
 毎回あの子が最後にお風呂に入るけど、今回はどうするのか。そんな事を思いながら、霊夢は少女が半分残した魚に箸を向けた。



 風呂から上がり、縁側を歩く霊夢にあたいは歩み寄った。
「いい月だねぇ。ちょいと一杯にはちょうどいい涼しさだ」
「久しぶりね。あんたまだ見回り仕事なの?」
「映姫様の命令とあっちゃ、あたいも文句は言えないからねぇ。それはそうと――」
 あたいはそこまで意地が悪い方ではない。だから何事も率直に伝える。手っ取り早くていい。
「あんた、やけに機嫌が悪いねぇ」
「……なんでもないわよ。お風呂がちょっとぬるかっただけよ」
「そうかいそうかい。確かに風呂と酒はぬるくちゃ嫌だねぇ。ところで霊夢ともあろうものが、まだ気付かないのかい?」
 霊夢はきょとんとした顔でこちらを見る。
「もうすぐ夏至になろうという割には――」
 あたいは夜空を見て、言う。
「この時間にしては、いくらなんでも暗すぎないかい?」
 その一言で霊夢の頭に妙な直観力が戻る。先程まで何をしていたかあたいには詳細が分からないが、動揺か怒りか、それによって鈍っていた霊夢の勘は戻り、すぐさま一つの予感を感じとる。それでいて、少女に人喰い妖怪の話をしていた事も思い出したのか、あたいに見向きもせず縁側を走り、少女が寝泊まりしている客間を開ける。しかし部屋は暗く、霊夢が少女の気配を感じ取る事はなかった。
「あんた……ルーミアが何処にいるか分かるの?」
「知らないねぇ。あたいも仕事なんだ」
 その言葉で、霊夢はほとんどの事を理解し、あたいを強く睨む。すぐに巫女服に着替え、あたいに構わず夜空に飛んで行った。
「気に病むことはないさ。人間の事を理解しない人間なんて、あんただけじゃない」
 独り言を呟いたあたいは、薄暗い客間の机に置かれている紙に気付いた。



 霊夢が妖怪の元に辿り着いた時、既に少女は倒れていた。
「ルーミアッ!」
 上の服が脱がされ、右肩まで腕がなくなっていた少女の左腕を喰らおうとしていた人喰い妖怪――ルーミアは名を呼ばれた事に驚く。
「霊夢……?」
「その子を……放し……」
 近付きつつも、霊夢の言葉は途絶える。月に照らされただけの薄暗い視界の中でも、先程まで鈍っていた彼女の鋭い勘が既に手遅れだと知らせる。
 ルーミアを払い少女を抱える。左胸が抉られて、ぴくりとも動かなかった。
「なんで……なんで……こんな……」
 徐々に怒りが込み上げる霊夢に対し、焦るルーミアは言い訳する。
「だ、だってその子、全然抵抗しなかったからてっきり……」
「……抵抗しなかった?」
 ルーミアの言葉に困惑する霊夢の元にあたいは辿り着いた。
「小町……あんた分かってたの? この子がこうなるって……」
「……何が原因かは分からないが、この子が死ぬことだけは分かってたよ」
「どうして……」
 霊夢の言葉は止まる。教える気は更々無い。それに神社を訪れたあたいを追い払ったのは他でもない霊夢自身だ。
「この子……何処から逃げてきたの?」
 雰囲気を読まず唐突に質問してきたのはルーミアだった。
「この子……何処かの奴隷だったんでしょ?」
 突拍子もない問いに困惑する霊夢と共に少女の背中を見ると、赤や紫に腫れた痣が至る所に刻まれていた。
「こりゃ本当に酷いな」
 あたいが何気なく言った一言を当然霊夢は聞き逃さなかった。
「『本当に』……? 本当にってどういうことよ」
「……ほら」
 あたいは少女の寝泊まりしていた客間で見つけた紙を霊夢に見せる。
 それは手紙であり、霊夢に宛てたものだった。

 ――霊夢さんへ。
 この数日間、私を神社に泊まらせてくれて、ご飯までごちそうになって、本当にありがとうございました。実のところ、ここはやっぱり日本のどこかだと半信半疑でいます。
 あと、気持ちの問題で直接言いたくなかった事なので、この手紙で言います。私にはお姉ちゃんがいて、親と四人で暮らしています。その三人に、私はいじめられてました。今もいじめられています。実はこう見えても私の身体はアザだらけで、お父さんとお母さんにいじめられています。お姉ちゃんには、何を考えてるか分からない、人の事を考えてない、といつもどなられます。私が悪いのかもしれないけど、直そうとしても何度もどなられます。
 私が初めて幻想郷に来た時、元の世界に帰りたくないと言っていましたが、それが理由です。中学校の帰り道に何となく帰る時間を遅くしようと思い、少し回り道をしたら、なぜか迷ってしまい、とある駅のいすに座って休憩していたら、いつの間にか霊夢さんの神社の布団で眠っていました。
 突然おじゃましてきた私にいじわるしないで、何も言わずに住まわせてくれて、ありがとうございます。優しいお姉さんができたみたいで、嬉しかったです。魔理沙さんや早苗さん、天狗や鬼の人にも、ありがとうございましたと、よければ伝えてください。

「これ……この子の遺書?」
 その霊夢の言葉がらしくなく感じ、あたいは舌打ちした。
「おい。あたいは寿命を分かってたんだ。だから遠巻きに神社を見ていた。この子は部屋を出て、数分で外を出てった。その手紙はなんでもない。前もって書いてた、ただの手紙だ」
「じゃあ……なによ。この子は偶然、ルーミアに襲われて死んだっていうの?」
「いや、それは違う。この子は妖怪に喰われることを望んだんだ」
 まどろっこしいのは嫌いだ。率直に言うに限る。
「死ぬことを何処かで望んでいた中で出会った唯一の生きる希望であるお前さんに否定されたこの子は、外の世界どころか生きることも放棄したんだよ」
「そ……そんな事で……。どうしてそんな事で命を絶とうとするのよ!」
「そんな事だからだよ。あんたはあんたが思っている以上に、この子にとって必要だったんだよ。人間の魂は極端なものさ。強く丈夫になっている魂ならあんたのように、人間でありながら妖怪に勝つ力を持つ事もできる。でも弱ってる時は……」
 言葉が詰まった。あたいだってこんな死に方は望んじゃいない。でも、霊夢の落ち度だとは思っている。人喰い妖怪の存在を教え、極端な密着がないとはいえ何日も過ごして尚この子の傷に気付かない。
「『優しいお姉さんができた』。……そういうことだったのね」
 それでいて、この子が言った何かの手掛かりにも気付かない。そうした小さな失敗が積み重なって、取り返しのつかない失敗が起きたのだ。
「人の事を考えないのは、お前さんの方だったんだよ」
 なるほど、『馬鹿と言った奴が馬鹿』とは上手く応用できるものだ。
「あと言っておくけど、そんな後書きが書かれてある手紙が遺書なわけないだろう。この子は帰るつもりだったんだよ、お前と出会えた事を生きる糧にしながらな」
 少女が霊夢に綴った手紙に書かれていた最後の言葉――

 ――ありがとう霊夢さん。大好きです。

 霊夢は自分自身を許せないかのように叫んだ。悲しみの何倍も大きな自らへの怒りを吐きだす様に。
 あたいはそれに構わず、少女に右手を近づけ、魂を抜き取る。放っておいても転生はするだろうが、これも仕事だ。



 ――ここは?
「ここは中有の道。分かりやすく言うなら、三途の川、と言えばいいかな」
 少女の遺体は霊夢と寺の僧侶に任せ、あたいは魂を連れて帰った。この子が怨霊などになる事はないが。優先して最後まで仕事をしたかった。自分の仕事だ。自分で楽しくしないとやってられない。
 ――私、これからどうなるんですか?
 元々弱々しい魂だったのだ。霊夢という支えも失い、転生をする前に消え去ってしまいそうだ。
「とりあえずは河を渡って。あとは四季様――閻魔様次第かな」
 ――そうですか……。
「まぁ、そう落ち込む事もないよ。霊夢も反省していたよ。霊夢をあんなにしたのは、あんたを含めて数える程しかいない。あんたが死んだのは残念だけど、きっと霊夢の心に残り続ける、生き続けるさ」
 ――大好きです、霊夢さんの事は今でも。
 少女は弁解しようとしたが、その必要はない。
「解ってるさ。ただ、どうしようもなかったんだ。どうしようもなく頃合いが悪かった。あんたは幻想郷に来て元気を取り戻した。それ故、死ぬ事を実行する体力が間に合ってしまった」
 体力が有り余るのも問題とは、人間はつくづく難しい生き物だと改めて実感させられる。だからこそ面白い話も聞けるんだけどねぇ。
「まぁ、あんたのあれは自殺とは少し違うから、外の世界で何かしてない限り即地獄行きなんて事もないさ。それまではあたいが話相手になるよ」
 待てよ。……そうだった、船頭はクビになっていた。……まぁ、なんとかなるだろう。怒られたらその時だ。
「それじゃあ、生きますよっと」
 あたいは少女と船に乗る。
 他の死神や四季様に見つからない事を祈りながら、ゆっくりと船を漕ぎ始めた。



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コメント



0.340簡易評価
4.10名前が無い程度の能力削除
オリキャラならすきに殺していいという考え方に反吐が出そうです。
6.無評価名前が無い程度の能力削除
とりあえず大釜が気になりました
10.70名前が無い程度の能力削除
こんなの言ったら現実見ろと言われそうだけど、人に人の機嫌とらすのを強要するやつって何様だと思うしぶっちゃけゲスだと思う
人の機嫌まで知らんよいや知ろうとしないと駄目なんだろうけど
そういうやつって自分の心の問題を他人になすりつけてる感じで勝手に不機嫌になって人の気持ちを踏み躙る罵倒をする自分勝手なやつってイメージ
そういうのに限ってほんの少し自分が傷ついただけで気遣いも繊細さも欠片も感じられない罵倒したがる傾向があるし
いやまあそういう人は多いから迎合しないといけないんだろうけど
(唐突に始まるグチ)
作品の霊夢は悪くないと思う
悪いのは虐待したやつらであって不幸な偶然だと思う

というか勘はどこ行った