Coolier - 新生・東方創想話

いいえ、私は遠慮しておきます。

2014/06/14 00:15:18
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蓮子が鼻歌まじりにフライパンを揺すっている。じゅーじゅーと肉を焼く音。
廊下に面したせせこましいキッチンで、コンロも一口しかない。
こじんまりとした冷蔵庫に炊飯器、血まみれのシンク。
奥に見える十畳ほどの部屋は雑然としている。

 「こんにちは、蓮子」

扉を開け、メリーが入ってくる。ふんわりとした夏色のワンピース。

「あら、メリー。珍しいわね、いきなり来るなんて」

フライ返し片手に、蓮子がメリーの方を向いて答える。
キャミソール一枚で、下はパンツのみという格好。ブラもつけておらず、
二つの膨らみの頂点にある突起を布越しにも視認できる。
メリーは蓮子の服装を見てしかめ面になった。

「蓮子、いくら家の中だからって、そんな格好は……」

「いいじゃない、誰も見る人いないんだから。玄関は鍵かけてるし、窓はカーテン引いてるし。……中、入って」

蓮子に促され、メリーは部屋の中に入る。

「相変わらず、汚いわねえ」

「いいのよ、あたしはどこに何があるのか、ちゃーんと分かってるんだから。変に片付けされたほうがこんがらがっちゃうわ。
 ところでメリー、お昼食べた?」

「ううん、まだ」

「もうすぐできるから、まってて」

蓮子はフライパンを示すように、コンコン、と軽く叩いた。

「ありがと。頂くわ」

「美味しいわよ」

蓮子はにっこりと笑った。


メリーがちゃぶ台の上を綺麗にした後で、蓮子がてきぱきと食器を並べていく。
ご飯山盛りのお茶碗。冷たい麦茶の入ったコップ。お味噌汁はインスタントだ。

「今日のお昼は、肉もやし炒めよ」

皿をちゃぶ台の真ん中に置きながら、蓮子が言った。

「では、いただきます」

「いただきます」

蓮子とメリーは、向き合うように座る。小さく手を合わせると、箸を手にとった。

「……美味しいわね」

肉を口に運んで、驚いたようにメリーが言う。でしょ、と蓮子は得意気に言った。

「それで、メリー。今日は何のために来たの?」

箸を止めずに蓮子が訊ねる。

「ああ、そうそう。……あのね、大学で殺人が起きたらしいの」

思い出したようにメリーが言った。やはり、箸は止めない。

「怖いわね。一体誰が殺したのかしら?」

「それがね、どうも学内の人間らしいの」

「どうして?」

「死亡推定時刻が、夜の十時頃らしいの。うちの大学、九時には正門閉まるでしょ。
 裏手にある通用門は十一時まで開いてるけど、あそこは関係者じゃないと通れない」

「なるほどね。……でもそれだけじゃ、あなたがわざわざここに来るほどではないわよね、
 マエリベリーさん?」

蓮子が言うと、メリーはくすくすと笑った。

「ご名答。……実はね、その死体の様子が異様だったんだって」

「へえ。どんな風に?」

「うーん。死因自体は明らかなの。頸動脈をすぱっと一撃、それによる失血死。
 凶器の包丁もすぐ近くで発見されたわ。でも……」

「でも?」

「その後がすごいの。殺害現場の二階から、地面に向かって死体が吊るしてあったんだって。
 わざわざ足首にロープを巻き付けて」

「犬神家ごっこでもしたかったのかしら」

「それだけじゃないの。死体そのものも、ズタズタにされてたんだって。肉を削ぎ落とされて、
 あちこち骨が見えるほどだったそうよ。第一発見者の警備員さんはそれを見て胃液の大洪水。
 駆けつけたおまわりさんも夜食とご対面。……ね、蓮子。どう思う?」

「どうって?」

「なんで犯人はそんなことをしたのか。なぜ既に息絶えた死者にわざわざ前衛的な装飾を施したのか。
 まさか、美術科の作品ってわけでもないでしょうし」

「警察は、なんて言ってるの?」

「『被害者に対する怨恨の線で捜査を進める』ですって」

「……ふん、くだらない」

蓮子が鼻を鳴らす。メリーはニヤニヤしながら、味噌汁に口をつけた。

「おや?では名探偵の蓮子さんには犯人がおわかりで?」

「簡単よ。見えてる事実をそのまま繋げればいいだけだもの」

蓮子はそう言うと、飯と味噌汁を一気に口の中に詰め込んだ。そのまま咀嚼しながら話し続ける。

「食べたかったのよ、犯人は。人間を、ね」

言い切ってから嚥下し、話の穂を継ぐ。

「わざわざ頸動脈を狙ったり、死体を吊り下げるような面倒をやったのもそのため。
 血抜きをちゃんとしないと、肉が生臭くなっちゃうもの。死体がズタズタにされていたのも、
 食べられそうな部位を切り取った結果。……もっとも、犯人がそういう行為に慣れていなかったから
 切り口がひどい有様になってしまったけどね」

「はー、なるほどねえ……」

ひとしきり驚く仕草をしてから、メリーはまた皿の上の肉もやしを箸でつかむ。ひょい、ぱくり。

「それにしてもこのお肉、ほんとうに美味しいわねえ」

「大事に食べなさいよ。これ、天然物なんだから。安価でたくさん仕入れられたから、バイトの給料日までは
 これともやしで凌ぐ予定なの」

「たっぷり脂が乗ってて、柔らかくて……。これと比べたら、合成肉なんて味のないチューインガムね」

「そういえば、メリー。一つ聞き忘れてたんだけど」

「なあに?」

「被害者。可哀想に食卓に登ることになったその人は、一体どんな見た目をしていたのかしら」

「そうねえ……」

考える格好をしながら、メリーは皿の上の肉を箸先で弄ぶ。やがて、ついっとそれを摘むと、蓮子の鼻先まで持っていった。

「身長169cm、体重90kg。丸々と太った……とてもとても美味しそうな見た目の殿方だったそうよ」

「へえ、それはそれは……」

がぷ、と目の前の肉に食らいついて蓮子が笑う。

「ぜひとも、ご相伴させていただきたいものね」

おわり
はじめました。
人肉って、実際には筋っぽくてまずいらしいですね。
でもそれは人間がきちんと美味しく品種改良されてないからだと思うのです。
改良を進めていけば、いつの日かスーパーの片隅に「タイ産 人肉ロース 100g128円」のパックが並ぶ日が……(来ません)
くしなな
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コメント



0.500簡易評価
2.70非現実世界に棲む者削除
冒頭から血まみれのシンクでゾクッときたが、やっぱり最後までホラーだった。
3.80名前が無い程度の能力削除
ウェルスmgmg
4.100ボムの人削除
メリー「ところで、犯人はどうして人肉なんて食べたくなったんだろ」
蓮子「ん?そりゃ、より知的に優れたものを食べた方が自分の能力になるからでしょ」
メリー「某博士も言ってたじゃん、好き嫌いせずに食べなさいってさ。
 蓮子は小さいんだからもっと色々食べないとだよ?」
蓮子「……ひらめいた!」
メリー「えっ」

「ねね宇佐見さん、近頃見違えるほどスタイル良くなったけど、どうしたの?」
蓮子「秘訣は“大好きなものを毎日一口ずつ食べる”ことよ!」
6.70奇声を発する程度の能力削除
おおう…
7.80名前が無い程度の能力削除
うん、「血まみれのシンク」で、は? と思ったよ……
「肉」もやし炒めでげっとなったけど、双方わかってて突き進むし……って、遠慮してないじゃん!
9.90名前が無い程度の能力削除
作品の内容よりも、作者あとがきの方がぞくりとするss
10.100絶望を司る程度の能力削除
......え?
11.無評価名前が無い程度の能力削除
これって某秘封倶楽部MMDのパクリだよね? 聞こえ良くいえばオマージュですか
15.100名前が無い程度の能力削除
短い間でさらっと怖い話にまとまってて面白かったです
20.60名前が無い程度の能力削除
うーん、ありきたりすぎてオリジナリティが見えませんでした
23.無評価ナナシン削除
パクリ元とやらを誰もが知ってると思うなよ