Coolier - 新生・東方創想話

あの青い山には神様が住んでる

2014/06/03 16:55:00
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 ぷかりと浮かべた煙草の煙のはるか向こうに青づいてきた山が観える。
 薄紫色の煙は、そのまま山の上の青い空と重なり合って、雲のようにも観え、ほんの一瞬、空がすぐそこにあるような錯覚を覚えた。
 店の軒先に腰掛けて、煙管を加えたままぼうっとその景色を眺めていると、視界の端から一人の少女がゆっくりと近づいてくる。
「久しぶりだねぇ、店主」
 瑞々しい青い髪を見て、店主、森近霖之助は、煙管をコオンと一つ打ち、立ち上がった。
「空が近いと思っていたら、山の方が来たかね。今日は仏より神に縁のある日かな」
 河城にとりは怪訝な表情を浮かべた。
「何の話だい?」
「いや、こっちの話さ。あの青い山には神様が住んでるってね」
「確かにあの山には神様がいるが、空には仏様がいるのかね?」
「さあね。少なくとも騒動を起こした仏様は地上にいるようだね」
 一つ伸びをして、霖之助は改めてにとりに向き直る。
「いらっしゃい。今日の御用向きはなにかな?」
「ちょっと材料を探していてね」
「ほう、今度は何を開発中かね?」
「そいつは企業秘密さ」
「まあいいさ。で、ご入用の品は?」
「まずはちょいとばかし、丈夫な紙をくれないかな。水に濡れても破れないようなね」
「それはまた、難しい注文だね」
「それと、小型の水かきみたいなのがあれば助かるんだがね」

 河童の話はこうだ。
 下流に住む友は、常日頃から厄を集めては溜め込んでおり、そのせいか周りから避けられている。大体流し雛であるならば、人形に厄を篭めて流してしまえばいいのに、そうしようとしない。友として何とかできないものかと思い、目下試行錯誤の最中である。
 そこで一つ考えた。ここは逆転の発想だ。
 そのために、先ほどのものが必要となるのだ。

「さっぱり話が見えないな」
「そうかねえ」
「逆転の発想というからには、何か慣習のようなものを逆手に取ろうというわけかい?」
 河童がパチンと指を鳴らした。
「さすが、鋭いね店主」
「褒めても何もでないよ。しかし、おめがねにかなう品があったかな」
 霖之助は店内ににとりを招き、ぐるりと見渡した。
「紙は油紙でも使えば何とかなるだろうが、水かきか……」
 ううむと唸り、霖之助は手を打った。
「それじゃこちらも発想を捻ろうかな。こいつならご注文にぴったりかもしれない。本来の用途とは大分違うがね」

「おぉい、雛やぁい」
 ぷかりと浮かんだ瘴気の向こうから響く聴きなれた声に、鍵山雛は眉をひそめた。
「もう来るなと言ったでしょうに」
「知らんな、そんな言葉は」
「貴女も懲りないのね」
「発明ってのはね、九割九分の失敗の上に成り立っているのさ」
「中々えんがちょな数字ね」
「じゃあ今日は一つ、そのえんがちょの向こう側に行こうじゃないか」
 にとりは背負ったリュックをドスンと降ろすと、中を漁り始めた。
「今日は何が出てくるの?」
 呆れた様な声を出しつつ、内心、雛は少しだけ楽しみでもあった。
 果たしてリュックの中から現れたのは、奇妙な船であった。
 船底の部分はごく普通なのであるが、船尾の部分に何かがついている。丸い軸に何枚かの羽がついており、その羽の外周もやはり円形になっている。
 船上には薄紫の油紙で作った行灯のようなものが取り付けられている。これの用途については想像がついた。が、
「その丸い羽みたいなのはなに?」
「よくぞ聴いてくれた。こいつは推進機さ」
「推進機?」
「そうともさ」

 河童の話はこうだ。
 わが友(といつも彼女が豪語している)厄神様は、常日頃から厄を集めては溜め込んでおり、そのせいか周りから避けられている。大体流し雛であるならば、人形に厄を篭めて流してしまえばいいのに、そうしようとしない。友として何とかできないものかと思い、目下試行錯誤の最中である。
 そこで一つ考えた。ここは逆転の発想だ。
 そのために、この船が必要となるのだ。

「さっぱり話が見えないわ」
「そうかねえ」
「まさかその推進機付きの船で流し雛をやろうというんじゃないでしょうね」
「そのまさか、といいたいが」
 河童はにやりと笑った。
「私は機械屋だからね、ちと凝ってみた」
 にとりがごそごそと船を弄ると、羽が低い唸りを伴い回転を始めた。
「こいつで、厄を流すんじゃなく、遡らせたらどうだろう」
 雛は眼を丸くした。
「その行灯に厄を篭めて?」
 河童は小さく頷いた。
「厄丸印の流し雛……、流しじゃおかしいな。上り雛なんてどうだい?」
「どこまで遡上させるのよ。まさか……」
「そりゃあもちろん、山の上の神様のところまでさ。格の高い神様に、何とかしてもらおうって寸法さ」
「滝とか昇れるの? その船で」
「そいつはこれから考える。とりあえず、」
 にとりは行灯に火を灯した。ぼうっとした薄紫色の光が、薄暗い周囲を照らす。
「今日はこれでどこまで行けるか、実験しようと思ってね」
「時々貴女が小物なのか大物なのかわからなくなるわ」
 そう言って、雛はため息をついて、呆れたように笑った。つられて、にとりも微笑んだ。
「褒め言葉と受け取っておくよ。さてと」
 にとりはそっと船を河に浮かべる。船はぐらぐらと揺れながらも、ゆっくりと河を上り始めた。目指すは山の上の神社である。
読んでくださった方、ありがとうございました。
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コメント



0.540簡易評価
4.70名前が無い程度の能力削除
夢を追う技術屋といった感じで嫌いじゃない
6.70絶望を司る程度の能力削除
もう少し膨らめば......!面白かったですが、途中で終わっている感じがしますね。
7.80奇声を発する程度の能力削除
面白かったけど、もうちょっと欲しかった
10.100さわしみだいほん削除
流せば大丈夫なのた?まあ冗談ですけれとも
11.80名前が無い程度の能力削除
え、勿論続きがあるんだよね?
17.100名前が無い程度の能力削除
ぜひ続きが読みたい。面白そう。
18.100名前が無い程度の能力削除
終わりで、うおい!となりました。ぜひとも続きを。