Coolier - 新生・東方創想話

四畳半の中 或蚊帳吊り狸の事

2014/06/02 07:27:55
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 たそがれ時を過ぎ、初夏の夏の暑さも少しは落ち着いた夜。
 霊夢は鳴らない風鈴に飽き、夜涼みしようと空へ出た。
 夏は妖怪が多い季節だ。暑さは人を目覚めさせ、時に外へと誘うからだ。怪異のある非日常が少しだけ日常に近づく。
 危険なことに違いはないが、毎年肝試しが行われるように、妖と人間とが節度を持って接することができる季節でもある。現に小さな騒ぎはあれど、大きな異変はめったに起こらない。
 その確認も含めての夜涼みなら一石二鳥というわけだ。

 心地よく風を切っていると霊夢はふと妙な空間が目につく。道の木々の間に四畳半ほどの場に四角い蚊帳がぽつりと張られていた。月明かりに照らされて、怪しい影を作っている。
 蚊帳の外な奴ならたくさんいる幻想郷でも、外に用もなく蚊帳を張る奴はまずいない。

「こういう夜に出る蚊帳と言えば……」

 世には蚊帳吊り狸という妖怪がいる。
 夜道に何故か蚊帳があり、不思議に思い捲って進み通り抜けようとすると何故か捲った先にも蚊帳の中。
 幾ら進んでも蚊帳の中から出ることができない。おかしいと思って戻っても、もはや出ることは叶わない。
 そのまま朝が来るまで閉じ込められてしまうという。
 具体的な危害はないにせよ、典型的で面倒な怪だ。
 対処法は有るが、まず第一に怪しい蚊帳は無警戒に捲ってはいけない。

 霊夢はまさしく怪しい蚊帳を前に独り溜め息をつく。
 蚊帳吊り狸は知っている、でもだからこそ入った方が良いとも思うのだ。

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