私には「名前」というものがない。あるとすれば「大妖精」という名前とも言えないような呼び方だけ。確かに他に「大妖精」なんて呼ばれている子なんていないし、みんなそれを名前として思っているのかもしれないけど。もはや私もそんなことなど気にしないほど自分の無い「名前」を受け入れていた。
でも、そんな臭いものにふたをしただけのような状況は些細なきっかけで呼び起されることになる。私の場合それはふと耳にした一言だった。
「○○ちゃんかあ。いい名前だね。」
私の脳裏にこびりついて離れない言葉だった。呼ばれた相手の名前は覚えていない。ただ、
その子が「名前」が「ある」ことでほめられた。他の人にとってはどうでもいいことかもしれない。けれど、どうしても忘れることができなかった。
ある日、とりあえずチルノちゃんに尋ねてみた。
「チルノちゃんって自分の名前どう思う?」
「あたいの名前?さいきょーのあたいにぴったりな名前だと思うわね!」
「そうだね・・・」
「・・・? 大ちゃん?」
「あ、ごめん何でもないよ」
チルノちゃんは自分の名前を誇りに思っているのだろうか。名前の無い私にはわからないことだった。
ただ「名前」がないということが私を他の人とくっきりと差をつけているような気がした。そして私はついに我慢しきれなくなったのだ。
私は自分に「名前」を付けることにしたのだ。
自分で自分の名前を決めるということは想像以上に難しいことだった。その分だけ「名前」がある人がさらにうらやましくなった。名付け親の人たちはこんなにも苦労して名を考えているのだから。そういえばチルノちゃんの名付け親って誰だったのだろうか。いや、今はそんなことはどうでもいいのだ。「名前」、その存在が何よりの証拠なのだから。
悩みに悩み、そして私の名前は決まった
リトル
今までとは真逆の名前。それでかつ、今までの私から抜け出せるような名前。
何かすがすがしいような、もどかしいような気持ちがあふれてくる。私は自分の口の中でその名前を繰り返しつぶやいていた。チルノちゃんには明日教えよう。今は自分の付けた名前を自分の中で抱えておきたかった。
次の日。私はチルノちゃんに会いに行った。心なしか体が軽いような気がする。遠くにチルノちゃんが見えた。私に名前ができたことをチルノちゃんはどう思ってくれるだろう。そんな期待と不安を抱えながらチルノちゃんに声をかけた。
「あんただれ?」
返ってきたのは予想外の言葉だった。確かに「名前」は付けたけれどチルノちゃんが私を見間違えることなんて・・・
驚きのあまり呆然とした私の目に湖面が映った。そこにあったのは青い髪の可憐な少女と
金髪に黒い眼をした少女だった。
驚きのあまり声も出なかった。そんな私に追い打ちをかけるようにもう一つの声が聞こえる。
「チルノちゃーん!」
向こうのほうから飛んできたのは紛れもなくつい先ほどまでの自分の姿だった。この時点で私の頭はパンクしそうになっていた。「私」がそこにいる。そして先ほどまで「私」だったものは今の私のはずだ。
いや違う。あれは「大妖精」で私は「リトル」なんだ。だから今私は「大妖精」ではない。
「さてはあんたあたいに近づいて何かたくらんでいるわね!」
チルノちゃんは巨大な氷の塊を展開する。「大妖精」は驚いて止めようとするがチルノちゃんは聞く耳を持たない。
「嫌・・・チルノちゃん・・・聞いて・・・」
私は足がすくんで動けなかった。ただほんの少し声を絞り出すことしかできなかった。
「私はっ・・・・」
「アイシクルフォール!」
その声も氷塊によってかき消された。
「目が覚めた?」
私は目を覚ました。目の前には緑の髪でサイドテールの女の子がいた。
「ごめんね・・・チルノちゃんはああなると止められないから・・・」
そういえばチルノという子に吹っ飛ばされたんだったっけ。
「私は大妖精。みんな大ちゃんって呼んでるの。よかったら一緒に遊ばない?」
私は小さくうなづく。そういえば私は妖精だった。
「そういえばあなたの名前は?初めて見る顔だけれど」
名前・・・ そうだ私の名前は・・・
「私の名前はリトル。よろしくね大ちゃん!」
これは幻想郷の普通のお話 終わり
でも、そんな臭いものにふたをしただけのような状況は些細なきっかけで呼び起されることになる。私の場合それはふと耳にした一言だった。
「○○ちゃんかあ。いい名前だね。」
私の脳裏にこびりついて離れない言葉だった。呼ばれた相手の名前は覚えていない。ただ、
その子が「名前」が「ある」ことでほめられた。他の人にとってはどうでもいいことかもしれない。けれど、どうしても忘れることができなかった。
ある日、とりあえずチルノちゃんに尋ねてみた。
「チルノちゃんって自分の名前どう思う?」
「あたいの名前?さいきょーのあたいにぴったりな名前だと思うわね!」
「そうだね・・・」
「・・・? 大ちゃん?」
「あ、ごめん何でもないよ」
チルノちゃんは自分の名前を誇りに思っているのだろうか。名前の無い私にはわからないことだった。
ただ「名前」がないということが私を他の人とくっきりと差をつけているような気がした。そして私はついに我慢しきれなくなったのだ。
私は自分に「名前」を付けることにしたのだ。
自分で自分の名前を決めるということは想像以上に難しいことだった。その分だけ「名前」がある人がさらにうらやましくなった。名付け親の人たちはこんなにも苦労して名を考えているのだから。そういえばチルノちゃんの名付け親って誰だったのだろうか。いや、今はそんなことはどうでもいいのだ。「名前」、その存在が何よりの証拠なのだから。
悩みに悩み、そして私の名前は決まった
リトル
今までとは真逆の名前。それでかつ、今までの私から抜け出せるような名前。
何かすがすがしいような、もどかしいような気持ちがあふれてくる。私は自分の口の中でその名前を繰り返しつぶやいていた。チルノちゃんには明日教えよう。今は自分の付けた名前を自分の中で抱えておきたかった。
次の日。私はチルノちゃんに会いに行った。心なしか体が軽いような気がする。遠くにチルノちゃんが見えた。私に名前ができたことをチルノちゃんはどう思ってくれるだろう。そんな期待と不安を抱えながらチルノちゃんに声をかけた。
「あんただれ?」
返ってきたのは予想外の言葉だった。確かに「名前」は付けたけれどチルノちゃんが私を見間違えることなんて・・・
驚きのあまり呆然とした私の目に湖面が映った。そこにあったのは青い髪の可憐な少女と
金髪に黒い眼をした少女だった。
驚きのあまり声も出なかった。そんな私に追い打ちをかけるようにもう一つの声が聞こえる。
「チルノちゃーん!」
向こうのほうから飛んできたのは紛れもなくつい先ほどまでの自分の姿だった。この時点で私の頭はパンクしそうになっていた。「私」がそこにいる。そして先ほどまで「私」だったものは今の私のはずだ。
いや違う。あれは「大妖精」で私は「リトル」なんだ。だから今私は「大妖精」ではない。
「さてはあんたあたいに近づいて何かたくらんでいるわね!」
チルノちゃんは巨大な氷の塊を展開する。「大妖精」は驚いて止めようとするがチルノちゃんは聞く耳を持たない。
「嫌・・・チルノちゃん・・・聞いて・・・」
私は足がすくんで動けなかった。ただほんの少し声を絞り出すことしかできなかった。
「私はっ・・・・」
「アイシクルフォール!」
その声も氷塊によってかき消された。
「目が覚めた?」
私は目を覚ました。目の前には緑の髪でサイドテールの女の子がいた。
「ごめんね・・・チルノちゃんはああなると止められないから・・・」
そういえばチルノという子に吹っ飛ばされたんだったっけ。
「私は大妖精。みんな大ちゃんって呼んでるの。よかったら一緒に遊ばない?」
私は小さくうなづく。そういえば私は妖精だった。
「そういえばあなたの名前は?初めて見る顔だけれど」
名前・・・ そうだ私の名前は・・・
「私の名前はリトル。よろしくね大ちゃん!」
これは幻想郷の普通のお話 終わり
名前って大切だからね
魔法的な存在だからということか
人間相手には名前の力は騙したり洗脳したりするのが有効だけどそれがそのまま行われるのは妖精が人造的ということか
つか幻想郷自体人造的な魔法の産物だしな
名前や概念が全てじゃなくて強さが全てで、名前や概念は武器に過ぎんがそれにすらあがらう力がなければ確かに全てに等しいな
だからこれは大ちゃんが名前の暴力に敗北し蹂躙される話
無駄なくすっきりまとまっていて、おいしくいただけました