Coolier - 新生・東方創想話

SFiG ~ Special Forces in Gensokyo ~

2014/03/16 23:38:06
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 真夜中の魔法の森の上に黒い影を落とし飛んでいる物体が一つ。
それは正面からみれば、翼を大きく広げた大鷲、かつての幻想郷なら実際の大鷲であっただろう。しかし、その大鷲は高速で回転するローターエンジンを備えていた。また翼と思われた部分は見る者が見れば、空対地ミサイルやロケット弾の発射ポッド、各種レーダーなど精密機器であることもわかる。その大鷲―戦闘ヘリの尾翼で箒にまたがる魔女のエンブレムが怪しく光る。
 今、幻想郷にはかつてとは違った脅威が迫っていた。それは凶悪犯罪や戦争の類いである。外の世界が平和になってしまったのか、それとも滅んでしまったのかはわからない。
 しかし、とにかく、外の世界からある日突然、大量の兵器が流れ込んできたのである。それらを手にした一部の人間が凶悪犯罪を犯し始めたのだ。妖怪相手の異変ではないので、博霊の巫女もうまく対処できずにいた。そんななか、発案されたのが、各勢力から数名を集めた、対人間異変へのチームの編成であった。その結果いくつかの勢力から派遣されたメンバー、有志が、「SFiG 幻想郷特殊作戦隊」なる名義で活動しているのだ。
 ヘリの中には四人の影があった。ちょうど電車のボックス席のような席位置で四人がそこにいた。全員が黒と白の迷彩服。薄着の者もいれば、予備弾倉をぶら下げたタクティカルベストを身につけている者もいる。銃の整備をしている者もいるが、刀を磨いている者もいた。何かに耐えるように座っている。そこにスピーカーから明るい声が聞こえた。

「えー、こちら操縦席、霧雨魔理沙。もうすぐ目的地に到着するゼ。各自、装備点検よろしく。後の説明よろしくなー、イナバ」

 イナバと呼ばれ、一つの影が動いた。迷彩服を完璧に着こなし、首から最新のアサルトライフルであるSCAR-Lを下げている。しかし、彼女の頭からは兎の耳が生えていた。それがヘリのわずかな振動にゆられ、可愛らしく動くが、それを気にする者はいない。イナバが話し始めた。

「では、作戦を確認します。森の奥に監禁された我々の情報員である東風谷早苗の救出です。各自の役割もここで確認します」

 そう言って、まず、自分の隣を見やる。

「射命丸文、到着と同時に狙撃地点を確保。外からの援護を」
「はいはい~、お任せを~」

 射命丸と呼ばれた少女は手をひらひらさせながら、自分の大型ライフルの点検をしている。  
彼女が持ち歩くライフルはPSG-1という7.62mm×51弾を使用するセミオート スナイパーライフルである。セミオートのため万が一ターゲットを外したとしても、ボルトアクション式に比べ次弾装填にかかるタイムラグが短い。しかし、かつて射命丸がその恩恵に預かったことは少ない。
続いてイナバが目を向けたのは大小二振りの刀を下げ、背筋をまっすぐに伸ばしている少女。

「妖夢さ…妖夢は、退路の確保。増援への対処を」
「はい!」

 魂魄妖夢、最年少の彼女の武器は二振りの日本刀―楼観剣と白楼剣。祖父から教えられた魂魄二刀流のみで数々の作戦をかいくぐってきた。普段は大人しい性格だが、感情の起伏の激しさはその年齢故か。
 大きな楼観剣で戦うのが常だが、白楼剣を抜くというのはかなりの強敵が相手ということらしい。二刀流の実力はかなりのもので体術の訓練でイナバは魂魄二刀流と立ち会ったことがあるが、それに負けることはなくとも勝てたこともなかった。

「続いて…」

 イナバの視線が最後の一人を捕えるが、その最後の一人は船をこいでいる。あまりにもない緊張感に周囲の空気が和む。

「美鈴。起きて下さい。そろそろ着きますよ」
「…zzz…!!?」

赤い髪を乱し、慌てるのは紅美鈴。そんな同僚に苦笑いを浮かべつつ

「あなたは建物私と一緒に突入。私は陽動に動きますから、あなたは東風谷早苗を救出して下さい。その後合流して、脱出です」

 紅美鈴、彼女こそSFiG、最強の兵士であり、誰よりも仲間を愛し、幻想郷の平和を愛してやまない者である。

「あ、ぁ、だ、大丈夫ですよ。ちゃんと早苗さんを連れて帰りましょう!」

 拳に力を込め、そこにグローブをはめる。美鈴の武器は己の肉体のみ。銃や刀剣が使えないわけではないが、それが一番強いらしい。らしいというのは彼女が銃を持って出撃してもいつも素手で帰還するのを見た兵士達の噂である。

「各自、パラシュート用意!!」

 イナバは美鈴の言葉を聞き終えるや否やそう叫んだ。全員が慣れた動作でパラシュートを背負う。そして、それが終わると同時にヘリの両サイドの扉が開く。眼下は真っ暗闇。しかし、彼女たちはどこに飛ぶべきかを完全に把握している。

「降下!」

 イナバがそう叫び、各自がヘリから降り立つ。

「いってこいよー。待ち合わせ場所で会おうゼ」

 魔理沙の声が誰もいなくなった機内に聞こえた。



 地上に降り立った兵士達の行動は速い。目の前にあるのは魔法の森に立つ三階建ての廃ビル。外の世界からこのような技術が大量に入ってきてから、要所要所にこのように外の建物が建ち始めた。しかし、そのほとんどが今回のような犯罪者の温床になっているのが現実である。音も無く着地した兵士達はイナバを中心に集まる。全員すでに顔には人相を隠すためのマスクをしており、装備品を見なければ誰かはわからなくなっていた。イナバはSCAR-Lを建物に向け左手で双眼鏡を持つ手の形を作り、それで建物を眺める動きをする。すなわち

「Watch」

のサインである。すでに敵地、どこに敵がいるかまだ把握できていない環境で不用意な発言は命取りになりかねない。そこでイナバはかつて軍属であった経験を活かして、このようなサインを全員に覚えさせたのである。さらに続いて手でピストルの形を作って高く掲げる。曰く

「Rifle」

のサイン。すると、射命丸は素早く動き、森の奥へと姿を消した。当初の予定通り狙撃地点の確保に向かったのだ。しばらくの沈黙。その間にもそれぞれ警戒を怠らない。美鈴は周囲の気を察知し敵の動きを探知している。

「敵は一部の見張り含め、かなりが起きてます。これでは戦闘は避けられませんよ」

美鈴の報告。その時各自の耳に収まっているイヤホンから射命丸の声が聞こえた。

「準備完了です。いつでもどうぞ」

それをきいたイナバと美鈴、そして妖夢が動き出す。建物の裏側に迂回しようとする美鈴と妖夢。正面入り口に近づくイナバ。
全員が配置についた。

「Ready?」

イナバの声だけが、全員の耳に聞こえる。

「Go」

短く聞こえた開戦の合図。



 イナバの仕事は突入兼陽動。早苗救出のための時間を稼ぐため、こちらができるだけ派手に動く必要がある。とても危険が伴う役割だが、それを勤めるのが小隊長としての役割と理解していた。
入り口、ではなくその横の壁に手早くプラスチック爆弾を仕掛ける。粘土のようなもので簡単に加工でき、しかも専用の信管を取り付けないと、たとえ炎の中に放り込んでも爆発しないというもの。

「兎さん。こちらカラス。そちらを確認しました。援護出来ます」

すでにこちらからは把握出来ない位置に陣取る射命丸からコードネームで呼ばれる。

「了解。中国とみょんは裏に回った。では、いくぞ」

壁から少し離れたイナバが信管のスイッチを入れる。線香花火のような光が見えた、次の瞬間。
  ガーッッン!!
周囲の木々で休んでいた鳥たちが驚いて飛び立つ。壁に大穴が開いたのだ。その土煙が沈む前にイナバはSCAR-Lを構え、そこに飛び込んだ。



建物がイナバの爆薬によって大穴を開けられた時、美鈴はすでに建物内にいた。妖夢とは裏口で分かれた。彼女はそこの警戒、および敵援軍に備えている。

「どこだ…?早苗さん」

気だけではどこに早苗がいるかわからないので、一階から全ての部屋を確認しながら先に進まざるをえない。狭い建物内では敵は同士討ちを避けて、銃器を乱射できないようで、それも美鈴の行動には有利に働いていた。
 しかし、イナバの爆発が派手すぎたのか、でてくる敵が完全武装なのだ。すでに二階の廊下まで到達。いきなり目の前の扉が乱暴に開くと、三人の敵がAk-45を乱射しながら、部屋からでてきた。廊下の狭さを考えれば、この横方向に広がる弾幕は不可避を狙った弾幕。

「おわっと」

しかし、それに反応するのが速いか、美鈴はすぐ横の壁を蹴り上げ、ちょうど壁を地面とする形で走った。その勢いのまま相手の背後まで抜ける。真後ろをとられた敵が振り向くよりも速く、

「破ッ」

左右の手刀がまず二人の首に入り、

「フンッ」

短い気合いの声と共にヘッドバットを真ん中の一人にぶつける。どこぞの教師にはかなわないが、一撃で敵を沈黙させるほどの威力を持っていた。
崩れ去る敵兵を背に別の部屋を探す。



 イナバは一階の部屋に大穴をあけ、そこから突入。素早く身を伏せ、射撃体勢をとる。すでに彼女の顔面には粉塵避けのマスクとゴーグルが装備されていた。急襲を受けた敵がうろたえているなか、セミオート射撃でワンショットワンキル。

「One down, two down…」

 一瞬の攻勢が終わる。敵もこの部屋に不用意に乗り込むのが危険と判断したのか、壁の向こうに気配はするが踏み込んでこない。イナバもその部屋からでることもなく、そこで敵を引きつける算段のようであった。
 素早くマグチェンジを済ませ、敵が潜む壁に近づきすぎない位置で待機。壁に近づきすぎないのは、壁ごとイナバを狙った銃撃を受けないためと、万一この部屋に手榴弾が投げ込まれた時すぐさま逃げ出せるような配慮である。
 その時、突入時の爆風を受けて半壊となったドアから同時三つの手榴弾が投げ込まれた。

「Grenades!!」

 手榴弾を見て、認識するより先にイナバの身体は自分の開けた大穴から飛び出ていた。その後ろを追うように爆風が駆け抜ける。さらにこちらがSCAR-Lを構え直すよりも早く敵の姿が穴から現れた。

「こっっちーー!」

 敵兵が叫び終わるよりも早く、その頭が消し飛んだ。

「カラス、こちら兎。支援感謝する」

 兎がライフルの作動を確認している間にもカラスの狙撃音は続いた。



 すでに突入が始まって数分が経過していた。魂魄妖夢は裏口で敵の増援に備えていた。数分とは言え、あの爆発と同時に敵が近くの砦に援軍を要請すれば、もうしばらくで完全武装の兵隊が集まってくるだろう。
 裏口からはまっすぐ開かれた道がある。これは獣道といった類のものではなく、森を開き、地面を固めた立派な人工物であった。おそらく敵がジープなどの車両で駆けつける場合はここを使用するというのが、SFiG情報部の読みであった。

「来たっ」

妖夢が小さく呟く。その視線の先には道路を照らすジープのヘッドライト。それも一台や二台ではない。十台近い車両が列をなして、やってきたのだ。

「こちらみょん。カラスさん、聞こえますか?」

首元のマイクに小さな声で呼びかける。

「はあい、こちら清く正しいカラスです。どうぞ」

イヤホンの向こうからどこか不真面目さのある声と連続した発砲音が聞こえるが、「清く正しい」という返答があったということは感度良好ということなのだろう。

「敵の増援を確認しました。私は車を潰して、森林内でのゲリラ戦に持ち込みます」

そういって楼観剣に手を伸ばす。

「了解ですー。そろそろ私も移動してそちらの支援にいきます」

それをきいた妖夢は薄く微笑んで、長い方の刀を抜く。

「妖怪の鍛えた楼観剣に切れないものなど、ほとんどなぁぁい!!」

結跏趺斬!!
疾風の如き十字の剣気が敵車両を襲う。



 すでに三階に到着した美鈴はほとんどの部屋を確認していた。残すは最後の部屋のみ。敵がドア越しに撃ってこないことを確認するや、美鈴の行動は早い。
ヒュン!
 いきなりドアの蝶番を狙って繰り出される素早い蹴り。それだけで蝶番が真下に落ちて、キレイにドアだけが奥に飛んでいく。
そして、

「早苗さん!」

 ついに対象を発見した。早苗もこちらに気づいた。少し衰弱した様子だが、まだ元気である。しかし、

「待てぇぇっ」

 早苗の側頭部に拳銃が突きつけられた。さすがの美鈴の動きも止る。早苗の見張り役である男が半泣きになってこちらをみる。

「俺は、今から外に出る!!いいか、お前の仲間にも伝えろ、変なことしたら、こいつが…!」

かなり錯乱しているようである。美鈴もそれを理解したようで、両手を挙げてゆっくり後ろに下がる。ここで中途半端な動きを見せれば、早苗に危険が及ぶという判断をした。

「わかりました。早苗さんも変な気を起こさないで下さいよ」

美鈴は早苗から離れてドアがあった位置まで後退した。

「ほらあ、早くどけよぉ!」

語気を荒くした男が威嚇のために美鈴に拳銃を向けた。その時、美鈴の右脚がわずかに動いた。

「ぎゃっ!」

その時すでに、男の右手に蝶番が刺さっていた。先ほどドアを突き破ったときに落ちた蝶番である。

「早苗さん!!」

美鈴が叫ぶと早苗は男の脇からスルリと抜けて、前に駆け出した。それと入れ替わるように美鈴は一歩前進。それを踏み込みとして、全身のバネを使って膝蹴りを繰り出す。

「うっぐっ」

短いうめき声をあげ、崩れる。それを尻目に早苗の方をみやる美鈴。

「さあ、早苗さん、帰りましょう!」

To be continued...
ここまでありがとうございます。
初めまして、初投稿です。
モンタと申します。表現や改行など至らない所があるかもしれませんが、
諸先輩方のご意見を頂ければ幸いです。
脱出編は近日投稿予定です。
皆さんの暇つぶしとなり、スカッとした気分になって頂けたのならば書き手としては望外の喜びです。
モンタ
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コメント



0.300簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
自分はこういうの結構好きですが賛否は出てくると思います
そういうのが出てきてもあまり気にせずにこれからも頑張ってください
5.80名前が無い程度の能削除
 まあなんというか、ミリタリーが忘れ去られるというのは良いことです。続きを期待してます。
6.70奇声を発する程度の能力削除
まぁ色々あるだろうけど頑張って
8.70絶望を司る程度の能力削除
なかなかミリタリー物って少ないのでがんばって欲しいです。