Coolier - 新生・東方創想話

だから、あなたは美しい CASE:鈴仙&妖夢

2014/02/05 01:02:48
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 今夜の博麗神社の宴会は、いつも以上に盛大だった。
 特にこれといってめでたいことがあったわけではない。だが、最初霊夢がひまつぶしに魔理沙と二人で飲んでいたら、あれよあれよと少しずつ神社に人妖が集まりだした。そして、今では神社一杯に酔客が満ちている。
 二月の初めごろ、北風が容赦なく体を冷やす時期だが、みな赤ら顔で酔っ払い、そんなもの気にも留めていないようだ。空には夜の闇の中で、星たちが彼ら自身しか発することが出来ない、儚くもしかしに同時に鋭い光をだしている。それらをよき肴だ、とばかりに宴会はますます盛り上がっていった。
 神社の端っこ。小さな焚き火がぱちぱちと燃えている隣で、二人の少女が並んで横になっていた。鈴仙・優曇華院・イナバと魂魄妖夢である。
 宴会が盛り上がっていく途中、突然各勢力の長たちが、自分たちの従者に一つの指示を出した。曰く、飲酒勝負をせよ。要するに、呑み比べである。この呑み比べに鈴仙と妖夢のほか、咲夜、小町、早苗、お燐が参加した。酔客たちがやんややんやと囃し立てるなか、それぞれ各人頑張ったのだが、最初に早苗がぶっ倒れ、次に鈴仙と妖夢が同時に脱落した。早苗は守矢神社の二柱に介抱され、鈴仙と妖夢は神社の端のほうに絨毯がしかれ、その上に寝転がされた。
 ぱちぱち、という音がする。焚き火の炎はしょうもない死闘を終えた二人に、心地よい暖かさを提供してくれた。鈴仙も妖夢も、頭をぼぅ、とさせながらまるで夢のなかにいるように、ぼんやりとしている。
 どちらが先だったのか。50センチと離れていない二人が、いつのまにか顔を見合わせていた。お互いの息遣いが聞こえる。お互いの匂いがする。そして二人はじっと見つめあった。思考はまとまらず、ただぼんやりと自分の目の前にいる相手のことを、思いはじめる――





 鈴仙はこう思う――

 ああ、妖夢の髪ってどうしてこんなに儚げなんだろう。銀髪っていうより白髪、でも真っ白なわけじゃなくて、薄く薄く銀の色が溶け込んでる。触ってしまったら、その銀色が流れ落ちてしまいそうね。なんていうか、ちょっと神聖さすら感じちゃう。半人半霊だから、厳密には人間じゃないんだけど、それでも人がこんな素晴らしい髪を持っているなんて。月の都にも儚げな髪を持つ神様はいたけれど、あの方たちと同じくらい、ううん、もっとすごい何かがあるんじゃないかしら。それに比べて私の髪は。こんな紫色の髪、ただ重苦しいだけよ。光を受けて輝いても、そこにはなんか相手をひきずり込もうとする妖しさがある。なんだかそれが、エッチなお店の女の人を連想させて、嫌だ。
 そうだ。私は体全体から卑らしい感じがするんじゃないかしら。他の女の子と比べると胸もお尻も大きすぎる。男の人を誘っているんじゃないか、って思われたらどうしよう。その点、妖夢の体はスマートで憧れる。無駄な肉は一切なく全体が引き締められ、かといって筋肉は目立つことなく、ただ要所要所適度についている。その均整の取れた体は、一振りの名刀を思わせる。
 名刀、そうだ妖夢の顔も、剣のようだ。あの永夜の異変(私が直接の原因の)で、妖夢と相対したとき、その顔を見て私は一瞬立ちすくんだ。その鋭い目はまっすぐこちらを見て、こちらの全てを見据えているようだった。月に照らされたその容貌は、戦意という一つの意思が凝縮していた。あの夜、私は確かにありとあらゆるものを断つ刃を見たのだ。
 といっても、いつも妖夢がそうだというわけじゃない。普段の妖夢は、なんというか一本抜けている。私には波長を操る能力があり、それで妖夢の波長を読み取ったことがあるのだが、その時はなんとものびやかな、のんきな波が観測された。妖夢はうっかりもので、ものをよく落とす。なんとも戦いのときとギャップが凄い。
 でも、もちろんそれが妖夢の本質というわけではなかった。妖夢の本質は、その真っ直ぐささだ。いや、私と妖夢はそんなに付き合いが長いわけではない。けれど、それでも私には分かる。そのまっすぐさは、私にはないものだから。自分にないものには、人はよく気づく。
 思えばあの永夜異変のときも、妖夢はただ主を守る盾であることに専念したのだと思う。だから、あれだけの戦意を持てたのだ。その実直さは危うさすら感じるかもしれない。けど、それでも、その一本気は確かに一つの刀剣となって、目の前の障害を斬るだろう。
 私は、月からの逃亡者だ。私は一度逃げてはいけない場所から逃げてしまったがゆえに、妖夢のような真っ直ぐさを持つことは、二度と出来ないだろう。ああ、妖夢が刀を振るその輝くような姿が、私にはまぶしすぎて直視できない。
 でも妖夢、それでもあなたを尊敬させてください。こんな私だけれども、あなたが素晴らしい人だということは分かるから。今は未熟者でも、あなたは一歩ずつ前をむいて、もっともっと強くなれる。
 ああ、頭がくらくらする。お酒がまわりすぎた。
 妖夢の顔が目の前にある。妖夢。妖夢。その真っ直ぐさはなんて、なんて――





 妖夢はこう思う――

 駄目だ、鈴仙の髪から目が離せない。世界でいちばん質の良い染料で染め抜いたような、その艶やかな紫の髪。それは、一度目の当たりにしてしまえば、人を引き付けずにはいられない一種の魔力めいた魅力を持っている。わたしの色素の薄い髪とは比べ物にならないほど、なんというか、『深い』のだ。
 そうだ。髪だけじゃない。鈴仙は、『深さ』に満ちている。
 例えば、その容姿。わたしなんてただ子供っぽい幼稚なつくりの顔だけど、鈴仙のそれは時としてこちらが息を飲むほど大人っぽい、憂いを見つけることが出来る。彼女には太陽のような笑顔も似合うけれど、世の無常を感じそれを憂う表情もとてもよく似合うのだ。
 ……大人っぽいといえば、鈴仙ナイスバディだなぁ。そりゃ、幽々子様や紫様は桁違いだけどそれでも、抱きしめたらその豊満な体を充分に堪能することが出来るだろうなぁ。
 ……わたし、なに考えているんだろう。馬鹿じゃないかな。でも、それも許して欲しい。これも鈴仙の『深さ』が悪いのだ。本当に鈴仙はいろんな『深さ』を持っている。
 やさしくて、且つ気弱な面を見せる一方、戦闘のさいは部下の兎たちを叱咤激励する優秀な指揮官として、かっこいい軍人の姿を見せるときもある。
 まるで暴走した牛のように、しっちゃかめっちゃかである非常識な幻想郷の面々のなかでは珍しいほどの常識人であるかと思えば、世界を狂わす狂気の瞳の異能者でもある。
 一面だけを見ていては気づけないその二面性。その二面性が奇跡のようなバランスで一匹の兎のなかにおさまっているのだ。不思議だ。とても不思議だ。
 ああ、それから。これは鈴仙本人から、以前きいたことだ。鈴仙は月の逃亡者らしい。そのときはちらりとだけ、一言で言われてしまい、その後はこの話をしてはいないから、詳しいことは分からない。ただ、鈴仙がそんな弱い自分を蔑んでいることだけは、なんとなく理解できた。
 でもね、鈴仙。わたしはそれを非難しようとは思えないんだよ。わたしはむしろ、それもあなたの『深さ』の一つなんだと思う。
 わたしは真っ直ぐ生きてきた。ただ真っ直ぐ生きてきた。だけど、一直線に人生を歩んできて、まだ一度も大きくけつまずいたことはないんだ。大きな挫折を、わたしは知らないんだ。
 あなたは大きく転んだ。これ以上もなく大きく転んだ。でも、転んだままじゃなかった。あなたはそれまで真っ直ぐ進んでいた道からは外れてしまったかもしれないけど、また別の道で起き上がった。月の都から永遠亭という道へ。
 あなたは挫折を乗り越えたんだと思う。あなたはそれを否定するかもしれないけど、わたしはその否定を否定する。あなたは、毎日いろんなことをがんばっているじゃないか。
 あなたはこうやって新しい『深さ』を得たんだ。『人生の深さ』を、だ。わたしは鈴仙を、人生の先輩として、尊敬している。
 わたしは、こんな『深さ』を得ることが出来るだろうか。無理かもしれない。もしかしたらこのままずっと……未熟者?
 ああ、鈴仙はすごい。鈴仙はすごい。ものすごく深くて、人々を惹きつける。
 それはまるで、何万年も人間を飽きさせたことがない月のようだ。
 うう、お酒がまわってきた。
 鈴仙、あなたの『深さ』は本当に、本当に――












「「ああ、綺麗――」」
 鈴仙と妖夢の声が、重なった。













「「あらあらあら」」
 そして誰かと誰かの声も重なった。
「え」
「あれ」
 鈴仙と妖夢は同時に、声がした方へ寝転がったまま顔を向けた。
「まあまあ、聞きました永琳さん? 互いが互いを綺麗、ですって」
「聞きましたわよ幽々子さん。まるで恋人同士みたい」
 そこには二人の主、西行寺幽々子と八意永琳がいた。彼女たちは自分たちの従者をにこにこと笑いながら見つめている。
 かっこうのオモチャを見つけた、という面持ちであった。
「ち、ちがうんですよ師匠!」
「なにが違うのかしらうどんげ?」 
 鈴仙と妖夢がお酒の呑みすぎで倒れてしまって、さてどう介抱しようかと思っていた主たちは、なかなかおもしろい場面にでくわしたらしい。
「永琳さん、ここは若い二人に任せましょう」
「そうですね幽々子さん。年寄りは……退場!」
 言い終わるがはやいか、主たちはスタスタとその場から早歩きで去っていく。行き先は宴会の中心だ。
「ちょ! 師匠みんなに話す気でしょう!? 待ってください!」
「幽々子さま、やめて、やめてー!」
 従者たちは、顔を真っ赤に染めながら、急いでその後を追った。
 


 この後、二人は今夜の宴会の主役に抜擢されるのだが。
 今はまだ、星たちだけが、二人の美しい少女を見つめている。
 飲酒勝負は、飛び入り参加の寅丸星さんが優勝!
 ただし、直後に聖白蓮さんにより南無三されました。


 2014・2・7 追記
 コメント11さんへ
 OK、OK。まあ、そう慌てんな。そのうち書いてやるよ、最高のうどみょんってやつをよ……!
 という風に書くと、さすがにちょっとふざけすぎですが、でもこの『だから、あなたは美しい』シリーズではうどみょんを書くことはもうありません(次はゆかゆゆかなぁ)。でも、僕も鈴仙と妖夢のコンビは大好きなので、いつか気合を入れて長編を書こうと思っています。ですから、いつになるかは分かりませんが、どうか気長にお待ちください(いや、ほんとにごめんなさい)。
青坂章也
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コメント



0.370簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
さすがあらあら四天王の二人である
それにしてもうどみょんはいいね
4.80絶望を司る程度の能力削除
こんの主二人は……
5.80名前が無い程度の能力削除
酒の勢いってすげえー!
6.80名前が無い程度の能力削除
うどみょんイイネ
見つめ合って妖夢がおかしくならないかだけ心配だ
7.80奇声を発する程度の能力削除
うどみょん良いですね
11.90名前が無い程度の能力削除
HEY!続きだ!このバカップル共の続きもしくは馴れ初めを!!