Coolier - 新生・東方創想話

小さな理由

2014/02/04 22:02:02
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幻想郷。忘れ去られた者たちの最後のユートピア。大妖怪八雲紫が造り上げて数え切れないほど太陽と月は入れ替わっていき、新しい人妖が迎えられる。争いはかつて弾幕勝負と呼ばれるお遊びで決着がつけられていた。・・・それも昔のことだが。
河童による技術革命はこの世界の生活を豊かにする一方で弾幕勝負のできない、弱い人間に妖怪に対する対抗できる力を与え、夜道を人食い妖怪に襲われる心配もない、新しい幻想郷の始まりを意味した。


力を手に入れた人間は妖怪に支配されるこの世界の変革を望んだ・・・これが私の知る、現在に至る経緯である



かつての人里、今では武装した兵士が行き交う基地に私は従軍記者として赴任した。私は軍人ではないが文々。新聞社の記者としてここにいる。射命丸社長の以降で今回の戦いの記事をつくることになった。それにあたり私は彼女の知り合いであるという霧雨魔理沙中尉についていくことになった。



「あんたが文んところからきた記者か、私は霧雨魔理沙だ。魔理沙でいいぜ」
よろしくお願いします、と出された手を握り返す。みたところ20代後半だろうか?かなりフランクな性格なようで色々質問してくる。文のところで食ってけるのか、奴は元気なのか?いい男だ、うちに入隊しないかとか。これではどちらが取材しにきたのかわからない。
「っと、すまないな。今日のところはあんたが取材しにきたんだったな」
私の困惑した顔を見てか気を使ってくれたようだ。いえ、構いませんと返事をするとさっそく取材に取り掛かることにした。



取材が終わり、彼女はこれから一杯どうかと誘ってくれた。失礼な質問もあっさり返してくれたあたり器が大きいというか大雑把というか、まあいい人である。無論私はOKと答えた。射命丸さんにも人の酒の誘いは断るな、取材のチャンスだと教えられてもいるし、この霧雨魔理沙という人物にも個人的に興味がわいたからだ。


彼女は魔法の森に住む魔法使いだったらしい。あの紅魔事変や神廟事件といった異変を解決した英雄であることは事前に知っていた。一般的にも彼女はよく知られていた人間の英雄なのだ。技術革命以前からの。そんな彼女の横に座って一緒に酌み交わすというのはなんだか誇らしいと感じた。
「お、どうした?顔がもう赤いぜ?もう酔ったのか色男さんよ?それとも私に惚れたか?」
彼女がいたずらっぽく笑う。英雄と飲めると思うと酔も回りますよ、と冗談っぽく返してみる。すると彼女はちょっと寂しげに笑うと一気にグラスの酒を飲み干すと
「英雄なんかじゃないさ、今の私は・・・」
いいえあなたは英雄ですよ、紅魔の件にしてもにしても、今回の戦争にしてもです。と私は言うと、彼女は
「おまえ、私がどうして革命軍にいると思う?」
それは人間の開放のために
「違うんだよ、本当はさ。私は別に人間が支配しようと、紫が治めようと」
私の言葉を遮るように語り始めた。先の取材では質問しなかった彼女が戦う理由を






革命軍は革命を望む妖怪の山、八雲に一泡吹かせたい紅魔館、妙蓮寺を除く宗教家達、そして多数の人間によって構成されている。目的は幻想郷の革命と言っているが私にはその革命がなんなのかよく分からない。八雲を倒して外の世界に行きたいというやつもいれば銃をぶっぱなしたいだけの奴もいる。戦争と銘打ってもこれはただの異変だ。暴走した奴らが騒いでいるだけの異変。一昔と違うのは穴だらけの死体がでるということだ。

「昔の私ならさ、私はこの革命軍を潰す側にいるべきなのさ。異変は解決するもので私は異変を解決する側だからさ。・・・あんたのいう英雄として」
ならなぜあなたはここに?
「英雄とか言われてるけどさ、私一人で解決してきた異変なんかひとつもないんだ。むしろ解決してきたのはあんたもしってるあの巫女なんだ。私はあいつの後を追ってあいつと一緒に解決してきたんだ。」
巫女というと、博麗のですか?
「そうだよ、むしろ私は奴のおまけみたいなもんさ」
そんなことは―
「あるさ、現に私はあいつに勝ったことがまだないんだ、一度もな」

そう言い切ると、彼女は私に顔を向けてこういった。

「私がこの『異変』に加担しているのはさ、奴に勝ちたいからだよ。あいつの敵としてさ。そんな小さな理由だよ」












私がコーヒー片手にデスクでくつろいでいると、新人の白狼天狗が原稿を持ってきた。三面の片隅に載せる記事だ。人間の私を慕ってくれる変な妖怪だ。かわいい後輩だが部下としてはイマイチなのだが。白髪が増えてきたのは年のせいでけではないことが最近わかってきた。いつも学級新聞にのせるような記事をもってくるのだが、今回はなにを取材してきたのだろうか?道具屋の主人が全く人気がないだとかという前回の記事は特に酷かった。小さい店の経営がなんなのだ。で、今回はなんだ?
「今回はですね!有名人を取材してきました!」
自信があるとでもいうように尻尾を振っている。前回もこんな感じだった。また叱らないといけないらしい。まあ一応は読んでやるが。
・・・・・
「どう、ですか?」
・・・たまにはこの犬もいい仕事するものだ。彼女の頭を無言でなでると、私は一面記事を差し替える旨を皆に伝えた。


一面の内容は『霧雨魔理沙、博麗の巫女との決着へ』
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コメント



0.80簡易評価
1.無評価緑色した微生物削除
初めてのSSです。アドバイスお願いします
2.70名前が無い程度の能力削除
妙蓮寺 しってる 人間の開放
 東方Projectの世界観をほぼ全面的にぶん投げるという荒業を、よくぞここまでの掌編でやる気になったものです。いやむしろ、こういう世界がひっくり返った話はショート・ショートでこそ映えるのかもしれませんが。
 文量が少ないゆえに、この新しい世界設定についてほぼまったくといって説明をせず、ただ雰囲気を伝えるための小道具を散りばめるのみに留めたのは、仕方ないし妥当なことでしょう。
 さて、この話の主軸はこれまでずうっと「体制側」であり続けてきた魔理沙が今回「異変」側に立ったその「小さな理由」です。本気の勝負で霊夢に勝ちたい。ただ問題なのは、この主軸のためにこれだけ大掛かりな世界設定の作り変えをやる必要があったのか、ということです。今のままでは、私の読解力が足りないだけかもしれませんが、世界設定が話の本線を支える理由付け(魔理沙が今回の異変を選んだ理由、もしくは、今回の異変の舞台装置を整えるためにスペルカードルールをぶちこわした理由)としてうまく機能しておらず、結果世界設定と本線が乖離して、2つの別々の話になってしまっている、そんな感じがいたします。
 小道具の使い方がかなり巧いと感じるだけに、ここがもう少しわかりやすかったら、「今の幻想郷はこうなってしまった。だから私は異変側に立って霊夢と戦うことに決めたんだ」という必然性の繋がりがもう少しはっきりしていたら、より良くなるのかなと愚考いたします。
5.無評価緑色した微生物削除
ありがとうございます
次回、または今回の作品に反映させていきます
7.無評価名前が無い程度の能力削除
すごい考えながら書いている文章って感じでした。
肩の力抜いて書かないと完成前に疲れちゃうよ。
8.100名前が無い程度の能力削除
評価忘れ