Coolier - 新生・東方創想話

庭師と式神と猫

2014/01/19 01:34:15
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「あれ?」
「おや?」
 人間の里にて、人間ではない二名が、ばったりと顔を合わせて、意外そうな顔をした。
「どうもこんにちは、ここで鉢合わせだなんて、珍しいですね、藍」
「ああ、こんにちは、妖夢」
 互いにぺこりと頭を下げる。
「買い物ですか」
 藍は袋を手にしていた、それに目をやり、掲げて見せる。
「紫様から、お酒に漬ける果実などを適当に見繕うよう命じられてね……磯野さんの出店だとか、いろいろ回って来たというわけ……妖夢は?」
 藍に対し、妖夢の方は特に手荷物などはなく、ただいつもの通りに、二振りの刀を差しているのみだ。
「幽々子様から、白玉楼の幽霊の届け物を代わりにと命じられまして、人魂の信夫さんの所へ……」
 尻すぼみの妖夢の言葉……妖夢と藍は、互いに見詰め合うと、一つ、深く頷く。
「これは絶対に……」
「うん……何か、あるのだろうね」
 そして、深く息をついた。

その後、妖夢と藍は、どちらが提案するでもなく、共に里を歩き始めた。
「ここで、何か異変でも起こっているか、或いは不穏な噂でも? 私は知りませんけど……」
 妖夢は首を傾げつつ、藍へと訊ねる。
「私も特には……それに、こう歩く限り人々の様子は変わらないし、何かを起こしそうな術・物品といった類も今は……無さそうに、見える」
 答えつつ、藍は辺りを見渡した。
道具が勝手に動き出したあの件からは、まだそう経ってはいないし、宗教家達の人気争奪戦もまた同様……今は至って平穏のはずだ。
「……しかし、もし妖夢が心配するような事情だとしたら、貴女はともかく、私個人の出る幕はないのでは?」
「あ、それもそうですね……じゃあ、何なんだろう……」
 妖夢の疑問を受け、藍はやや気楽そうな雰囲気に変わったが、対して妖夢はまだ、気がかりな様子で考え込んでしまっている。
そこへ……
「にゃー」
「あ、猫……」
 妖夢・藍へ声をかけるようにして、黒猫が現れた。
「おいでおいで」
 妖夢はしゃがみこみ、猫を呼ぶ。
「ん? 妖夢……」
「? どうされました?」
 藍が声をかける一方、妖夢はよってきた猫を見て……
「わぁ……私が声をかけても、寄ってきてくれる猫なんて、殆どいないのに……」
 嬉しそうな声音で呟き……
「よーしよし、いいこいいこー……」
 そして、嬉しそうに抱き上げた。
「……喜んでる所、言いにくいんだけど……」
 藍は妖夢が抱き上げた猫を覗き込むと、ばつが悪そうに言葉を続ける。
「それ、橙」
「はい? ……わっ!?」
 妖夢の腕の中で、黒猫の姿から、人の姿へと一瞬変わる橙。
 猫を抱えていたはずが、少女を横抱きにする形となった事で、妖夢はバランスを崩しかけるが、ぐっと踏みとどまった。
一方、橙は人の姿から黒猫の姿へとまた変わり、その隙に妖夢の腕をすり抜け、着地し、藍の横で再び人の姿を取った。
「むぅ、転ばせてやろうと思ったのに、流石は剣客だね」
「こら、橙、友達を騙しておいて、そのふてぶてしい態度はどういうつもりだ?」
 まだ驚き覚めやらぬ様子の妖夢をよそに、口を尖らす橙と、窘める藍。
「だって藍様ー、妖夢ったらその友達に、気づいてくれないんだもん」
「あ、その、ごめんなさい」
 橙の不満そうな声音に、妖夢は顔を赤くして謝罪する。
「論点を摩り替えない。 譲って、妖夢にも非があるとしたって、お前が妖夢を騙した事は、変わらないぞ」
「むー」
 続けて藍は橙の行動を責めるが、橙は不満そうな様子を崩さない。
「それに、あんなに嬉しそうにしてたのに、実は橙が解っててやっただなんて」
「あ、それは別に、悪く思っていないので……」
 妖夢は相変わらず恥ずかしそうにしている。
「……? 何をそんなに恥ずかしそうに……」
「そりゃ、友達相手に、文字通り猫撫で声で、いいこいいこーなんて言っちゃあねー」
 妖夢の様子に首をかしげる藍へ、橙が説明してしまった。
「こ、細かく説明しないでよ……」
 それを受けて、妖夢は更に居た堪れなさそうにもじもじとしてしまう。
「……うん、解った、この件は水に流すとしようか……」
 藍は困ったように頬を掻いて、少し間を空けて言った。
「それで、橙、どうして猫の姿でここへ?」
「えっと、住処の近所の猫仲間の、そのまた仲間の仲間の仲間の……結構遠い所で、集会に顔を出さないのがいるって噂があって……」
 橙は一拍区切り、考えるようにして宙を見やる。
「気になって、噂の正体を追いかけてみたら、里で人に飼われてる子が、人に懐きすぎてて、猫の本分を忘れてるって知って、里なら藍様もよく行ってる事だし、動きやすそうだから、一肌脱ぐ事にしたの」
「猫の本分を忘れてる……?」
 妖夢が、意味が解らないといった様子で、そのまま呟くと、橙は頷く。
「殆ど飼われてる家で寝てばっかり、たまに外へ出ても、他の猫を見たら逃げる有様だって。 そんな調子じゃ、気性の荒いのに目をつけられたら、いじめられちゃう。 なんとか話をしたいんだけど……」
 言葉尻を濁して、俯いてしまう橙。
「他の猫を見たら逃げる、橙も逃げられてしまったという事か……」
「じゃあ、今みたいに人の姿で行ってみては?」
 妖夢が提案するも、橙は首を横に振った。
「匂いでバレちゃったみたいで、逃げられたの。 それなら飼い主から攻めてやろうって、そのまま行ってみたら、私から逃げてきたってとこを、見られてたらしくて……うちの子を怯えさせるのなら、悪いけど会わせられないって、断られちゃったよ」
「……妖夢」
「……ええ」
 藍が妖夢へと声をかけ、互いに視線を合わせると、深く頷きあった。
「……? どうしたの?」
「いやいや、こっちの話だよ、橙」
「うんうん、こっちの話」
 誤魔化す両名に対し、橙は首を傾げる。
「それよりも、仲間の仲間の、そのまた仲間のために一肌脱ぐ橙に、私達も力を貸そう」
「え? いいんですか藍様! それに妖夢も!?」
 目を輝かせる橙、藍は微笑みつつも小さく頷き、妖夢は大きく頷いた。
「有難う! さっきはごめんね、妖夢」
「あ、それは……出来れば蒸し返さないでほしい……」

 飼い主の家、その庇の下で、件の猫は香箱を組んでいた。
 くつろいでいるでもなく、まるで道行く人々を観察しているようだ。
「あの子か……」
 藍が物陰から覗く、姿を確認して呟いた。
 続いて妖夢も顔を出すと……
猫はぴくりと反応し、そしてこちらを向き……
「あ、こんにちは」
 聞こえるはずもない声量で、思わず呟く妖夢。
その声を耳にして、というかのようなタイミングで、猫は立ち上がると、たたっと小走りに遠ざかって行った。
「え? どうして?」
 距離を開けて、こちらを見やる……明らかに気づいて、警戒している。
「きっと、妖夢の気迫に圧倒されたんでしょう」
 藍の言葉は、冗談めかしたような内容だが、その声音は至って真面目だ。
「な、なんでですか、私別にあの子を斬ろうだなんて……」
「自分でも半人前と言うけれど、長く道に身を置いているだけあって、常人とは違う鋭さがある。 動物は、そういう所に敏感だから……」
「……だから寄ってきてくれる子が、少ないのね……」
 妖夢は、しょんぼりと肩を落としてしまった。
「手伝ってくれるのは有難いけど、それならなんで来たの?」
 橙が純粋に疑問な様子で問い、悪気の無い言葉が妖夢に突き刺さる。
「仕方ない、私が行って来よう」

 藍は物陰から出て行くと、家の入り口から数歩離れた死角にしゃがみこんだ。
家主にして飼い主からは、すぐにバレない位置であると共に、隠れて様子を伺う妖夢・橙からも、藍の背で猫の様子を伺い知る事が出来ない。
程なくして、入り口に家主が顔を出し、藍と少し話をする様子が見えた。
家主が屋内に戻り、藍が妖夢・橙の方へ顔を向けて手招きする……どうやら上手く行ったらしい。

「流石は藍様!」
 グッとガッツポーズをとる橙。
「どうやったのかは見えなかったけど、見事ね……」
 感心して呟く妖夢、橙の肩に手を置いて、更に言葉を続けた。
「私が行ったら、また逃げられちゃうかも知れないし……橙だけ行って、私は待ってるから……」
「あ、うん……妖夢も、手伝ってくれて有難うね!」

 しばらくして妖夢が隠れたままの物陰へ、藍と上機嫌な様子の橙が戻ってきた。
「解決したの?」
 妖夢が問うと、橙は首を傾げた。
「どうだろう、一応ね、他の猫から逃げたりはしないって、約束は出来たよ。 でも、飼い主を置いて、夜な夜な猫の集会に参加は出来ないって。 心配させちゃうから。 だから、これから何度か私が来て、ここの猫との仲介をするの!」
 てっきり一件落着かと思っていた妖夢だが、これからまだ頑張りが必要らしい。
それでも橙の表情は、明るいものだった。
「それって、大丈夫なの?」
「うん、他のみんなとも話せるならね、もう大丈夫だよ」
 自信たっぷりに答える橙、妖夢はその様が少し羨ましくも思えた。
「それは何よりね……それにしても藍、凄いですね、気難しい子みたいなのにあっさりと、流石です。 橙や、その仲間との件で慣れてたんですか」
「ああ、まぁね」
 歯切れ悪く答える藍、妖夢はそれに対しては特に気にせず……
「じゃあ、私はそろそろ、幽々子様へお菓子も買って行くし……これで失礼しますね、二人共、お疲れ様でした。 それと、藍、さっきは私の気づいていなかった指摘、有難うございました」
 ぺこりと頭を下げ、別れを告げると、早足で歩いていった。

「……私も同じのを買っていかないとな……」
「私のもね、藍様」
推定年齢17歳(1歳くらいでお迎えした元野良・完全家猫)のうちの子を見るに、「心配させるから出かけない」は無さそうに思えてならない……でもあって欲しい。

前回でご指摘頂いた点は……
読点:以前のものは少なさ過ぎて、そこの指摘もあった反動でつけすぎ
描写部:台詞やり取り→合間の描写→続いていく展開 をこねくりまわしながら通していくせいか、光景が浮かばない場面が多い
と、前者はいい塩梅を学んで行くとして、後者が駄目すぎるんじゃないか的状況、長いブランクと頭が回らない近年の状況そのままに、以前投稿していたものも含めてやってるのが悪いとは思っているのですが……
HYN
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コメント



0.110簡易評価
4.70名前が無い程度の能力削除
地の文がト書きみたいで台本読んでる感じでした
全部がそう、というわけではないです
たまたまなのかどうなのか、文末に「…」があるところで特にそう感じました
とはいえその辺りは評価としては枝葉の部分だと思います
お話そのものは過不足なくまとまっていて読みやすかったです
盛り上がりに欠けるかなとも思ったのでこちらの点数で…