Coolier - 新生・東方創想話

クリスマス・アリス

2013/12/24 23:07:51
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 ――――ふんふんふ~ん。

 魔法の森の小さな家から可愛らしい女の子の鼻歌が聞こえる。
 今日は――クリスマスイブ。
 外の世界では、年に一度の聖なる夜である。
 幻想郷にあるこの魔法の森もこの特別な夜を祝福しているのか、いつもより強い魔力に満ちていた。
 
 その小さな家の窓には、二つの人影が蝋燭に照らされていた。
 台所に向かって立っている少女は―― 七色の魔法使い、アリス・マーガトロイド。
 もう一人、椅子に座っている者がいる。
 蝋燭の光の影になっているため、その表情をうかがい知ることは出来ない。
 だが、彼は飽きもせずにじっとアリスのことを見つめている。

「やった! やっとできたわ!」

 アリスの小さな、喜びに満ちた声が響いた。
 彼女は彼に見えないように手元を隠しながら、くるりと回れ右をした。
 手を後ろに回したまま、もじもじしながらアリスはテーブルの前に立った。
 彼は彼女を見つめ続けている。
 アリスは彼の視線から逃れるように目をそらし、思い切って口を開いた。

「ねぇ、あなた。ほら、今日はクリスマスじゃない? だから……ね、これを用意したの」

 そう言って、アリスは後ろに回していた手をそろそろと前につきだした。
 アリスは震えながら次の言葉を紡いだ。

「これ――クリスマスケーキ! あなたと一緒に食べたくて朝から一生懸命に用意したの!」

 その手には可愛くデコレーションされたケーキが小さな皿にのっかっていた。
 アリスは、はにかみながらケーキをテーブルの上に置いた。

「ほら! 前にあなたが好きって言ってた、チョコレートケーキよ。今切ってあげるわ」

 アリスはそう言って、台所から包丁を取ってきた。
 そして、ゆっくりとした手つきでケーキを切り分け始めた。
 ふと、ケーキを切る手が止まり、アリスは申し訳なさそうに呟いた。

「ちょっと小さくて物足りないかもしれないけど……ね。今晩はこれくらいでちょうどいいかなって」

 彼はアリスの顔を見つめたままであった。
 アリスは恥ずかしそうに小さく笑いかけ、そのままケーキを切り分けた。

 ――すると唐突に、アリスは包丁を握った手を止めた。
 そして、小さく切り分けたケーキをスッと小皿にのせ、包丁を脇に置いた。

 ケーキを皿にのっけたまま数秒間――いや、数分間経っただろうか。
 アリスは目を伏せながら、おずおずと彼に話しかけた。

「それでね、えっと……」

 だんだんと語尾が小さくなり、再びもじもじし始めた。
 ――また少しの間があった後、意を決したかのように顔を上げた。
 アリスの顔はまるでりんご飴のように真っ赤であった。
 そして、しどろもどろになりながらも彼女の願いを彼に伝えた。

「たっ、食べさせて――あっ、あげるわ! ほら、ケーキ!」

 アリスは照れ隠しか、彼の了承も取らずに手元にあるケーキをフォークで分けた。
 そのまま、器用にフォークの上にケーキをのせて、目の前につきだした。

「ほらっ、あ~~~ん!」

 アリスは頬を真っ赤に染めながら、そのケーキがフォークの上から消えるのを待った。
 
 ――数分が経過したが、彼は動かなかった。
 彼の顔を見つめながら、アリスは手に持ったフォークを胸元まで戻した。
 アリスの肩は――震えていた。
 そして、彼から視線を反らし、声を絞り出した。

「ねぇ――」

 アリスは彼に呼びかけながら、フォークの上にのったケーキを皿の上に置いた。
 そのまま、顔を伏せ椅子から立ち上がり、そして――


 ――ドンッ!


「私がこんなにおめかしして、自然にふるまっているっていうのに――どうして、何もしゃべらないのよ!」

 小さな部屋の中に叩かれたテーブルの音とアリスの叫び声が木霊した。
 脇に置いてあった包丁は床に転がり落ち、皿の上のチョコレートケーキは崩れ、テーブルを汚した。
 しかし、アリスはそんなこと気にも留めず、まるで壊れた人形のように床に崩れ落ちた。

「ここまでしたって言うのに…… どうしたら…… どうしたら、答えてくれるのっ……!!!」

 アリスは恨み事を呟きながら、床を叩いた。
 その気持ちが納まるまで、床を叩き続けた。

 ――ズルッ

 アリスが何度も床を叩いた衝撃で椅子に据え付けられた『人の形』がずり落ちた。

 ――ゴトッ

 床に叩きつけられた『ソレ』の蝋で固められた部分が、はがれ落ちた。
 その下には――――

 完
 『物』に『魂』を宿らせるのに必要なものとは何なのでしょう?
 このストーリーは『アリスは完全な自動人形の完成を目指し、日々研究している』という設定に基づいた話です。魂と肉体の両方を得ると自由に動き回れる人形になると言われています。
 人の思い、または人への思い(例え恨みであっても)は物に魂を宿らせます。人間への恨みで妖怪となり、自由に動けるようになったのがメディスン・メランコリー。そして、人に作られ、長い月日が経ち、魂が宿ったものが秦こころや九十九姉妹のような『付喪神』です。
 アリスはクリスマスという『人が人らしく振る舞える機会』を利用し、人形に対して魂を宿らせるため、『人形をまるで人(恋人)のように扱う』という実験を行った結果が今回の話になります。人形の中身は――察してくださいませ。
 初投稿で偉そうなことを書いてしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
アグサン
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コメント



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1.90F15削除
なかなかに新鮮な感じの話で個人的には好きです
3.90名前が無い程度の能力削除
てっきりボッチなアリスの一人芝居なギャグかと思ったら・・
怖いですな
4.80月柳削除
こえぇよw
9.70非現実世界に棲む者削除
うーん、むなしい。
12.80奇声を発する程度の能力削除
おおう…
13.無評価名前が無い程度の能力削除
死ね
14.無評価名前が無い程度の能力削除
アイデアや性格付けに新鮮味がなかったですね.
15.60らぐ削除
パロディかと思ったらホラーだったよ…
どうせならあーでもないこーでもないと思考錯誤してる様(狂気やらグロやら)を長々と書いてほしかったです
他人の視点からみた見た描写があれば尚良し
…あんまり好きなジャンルじゃないけど