Coolier - 新生・東方創想話

緑色

2013/12/11 19:18:17
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そうだ、絵を書こう。

次の瞬間にはキャンパスが目の前にあって、手には絵筆を握っていた。青と赤の絵の具をぐるぐるとかき混ぜて紫を作る。赤過ぎずもなく青過ぎずもない綺麗な紫ができた。私はそれを絵筆にたっぷりと染み込ませて、キャンパスを塗りつぶした。ねちゃねちゃぐちゃぐちゃ音を立てながら、キャンパスが紫色になる。

紫色は地底の色だ。地面と血と怨念が混ざった色。私やお姉ちゃんはそこに住んでいる。ペットの皆や鬼さん達も一緒に住んでいる。

次に私は白と赤を混ぜて桃色を作る。紫色を作り過ぎちゃったみたいで、パレットにはあまりが隙間がない。混ざらないように気をつけたけれど、結局絵筆についた紫色と混ざってしまった。そうして出来上がった桃色をキャンパスに乗せていく。桃色はお姉ちゃんの色だ。優しいけど家に篭りっぱなしのお姉ちゃん。外に出るのが怖いお姉ちゃん。私は外は怖いところじゃないんだよって教えてあげるけど、お姉ちゃんは頷いてくれない。

私は緑色のチューブからパレットに絵の具を出した。パレットは紫色と桃色とその二つが混ざった色で一杯で、緑色はすぐに他の色に溶けてしまった。みるみるうちに飲み込まれていく。私はそれを絵筆ですくい上げ、キャンパスに塗る。生乾きのキャンパスの上で、緑色は見えなかった。紫色と桃色は大きかった。

緑色は私の色だったはず。なのに見えなくなっちゃった。私はどこ?ああそうか。この絵に私はいなかったんだ。地底にはお姉ちゃんがいて、私はいなかったんだ。だから緑色は見えないんだ。

ーーー

気づくとお山にいた。山頂の神社には二人の神様がいる。お空に太陽の力を与えた神様だ。大きな鳥居とのっぽな柱に囲まれた神社。びゅーびゅーとつめたい風が吹いている。山は紅葉が綺麗で、緑色の葉っぱは一枚も残っていない。全部赤と黄色に奪われちゃったんだ。ここでも緑色は見えないみたい。

境内には巫女のお姉ちゃんがいた。掃除の途中だったみたいで、箒とちりとりを抱えている。私には気づかないようで、さっさと神社へと入って行ってしまった。私もお姉ちゃんの後に続いて中に入った。

神様は留守みたいで、巫女のお姉ちゃんが一人コタツでお茶を飲んでいた。

「わあ、茶柱です!今日は何かいいことあるかも!」

何やら巫女のお姉ちゃんが大騒ぎしている。湯のみの中を覗いてみると、緑色のお茶の中に、緑色の茶柱が浮いていた。少しでも息を吹きかければ倒れてしまいそう。ぷかぷかと揺れている。

「ねえ、茶柱立つといいことあるの?」
「そうですよ!茶柱は幸運の印なんです!・・・ってこいしちゃんいつのまに!?」

そうか。こんなちっぽけな緑色でも、皆幸せになれるんだ。

もう一度茶柱を見てみる。水面を漂う一本の筋。しっかりと立ち上がって、沈まないように一生懸命なんだ。黒い湯のみのなかで戦ってるんだ。

「沈んじゃいけないよ。頑張って立ってるんだよ」

私は茶柱を応援した。茶柱は沈まない。きっと沈まない。

ーーー

私はまたキャンパスの前にいた。紫色と桃色でできたキャンパス。絵の具は乾いていて、濃く塗った部分が所々ひび割れている。私はもう一度パレットに緑色を注ぐ。今なら緑色は混ざらない。そのままの色を残せる。筆に含ませて、そのままキャンパスに押し付けた。緑色と桃色。不恰好だけど、お姉ちゃんの隣に私がいる。消えてなくなった私はちゃんと帰ってきた。紫色は怖いけど、桃色は優し過ぎるけど、緑色もちゃんとそこにあった。緑色は幸福の色だから、きっと桃色も紫色も喜んでくれる。皆幸せになれたらいいな。

「あらこいし?絵を書いているの?」
「うん!ほら!」

私はキャンパスを目一杯掲げた。

「綺麗ね」

桃色のお姉ちゃんは笑った。それにつられて私も笑った。

ここまでのあらすじ
初投稿→緊張し過ぎて気持ち悪くなる→発想の逆転「一作目だから緊張するなら、二作目書けばいいんじゃね?」→カキカキカキ→おりゃあ!←いまここ

前作と対になるよう書きました。誰か私に長編を書く構成力と忍耐力をください。
四一七二三
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コメント



0.850簡易評価
3.80名前が無い程度の能力削除
いじましいこいし。
5.80非現実世界に棲む者削除
それ他人にもらうものじゃないような気が...
とにかく頑張って下さい。
こいしちゃんが無邪気でなによりです。
11.90奇声を発する程度の能力削除
良いですね、面白かったです
13.70名前が無い程度の能力削除
ううむ、忍耐力やら何やらに関しては読み専の私には頑張れとしか言い様がない…
というわけで。
頑張れ!長編書けるように頑張れ!
16.70月柳削除
綺麗です。なんかそう感じました。
17.100絶望を司る程度の能力削除
you can do it!!!!!!!!!!
綺麗な話だと思いました。
22.100名前が無い程度の能力削除
好きな雰囲気です。長編も書いてくださるなら、是非読みたいです。
24.無評価名前が無い程度の能力削除
読みやすいし雰囲気も良かった
前作見てきます
27.90らぐ削除
無邪気で温かい