Coolier - 新生・東方創想話

人鬼の闘い、人鬼の絆(上)

2005/08/29 03:22:49
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※この話は、作品集16の「鬼と刀と縁と信頼と」の続編にあたります。そちらをお読みでない方は、内容がまったく分からない恐れがありますのでご注意を。

※オリキャラ要素が入っております、ご用心下さい。

※褌は登場しません…今のところ。























風が吹き、桜の花が舞う。さあっと、一面に優しい音がしていた。そしてそれだけが、そこにある音だった。
辺りはしんと静まり返り、その静寂はまるでその中心に立った一人の少女から漂い出しているようだった。彼女は背負った刀に手をかけ、左足を前にして、ちょうど短距離走の直前のような体勢でただ静かに瞑目していた。その気配は水のように静かで、まだ抜かれぬその手中の刃を思わせる鋼色の髪が風にさらさらと流れ、その様は銀色の川がただそこにあるかのようだった。
そして、ふいに彼女の双眸がかっと開かれて煌き…次の瞬間には、その小さな身体は二百由旬の距離を一閃して、庭の逆の端へと立っていた。彼女の通ってきた道で、桜の枝が幹から離れて次々と地面を叩く。それらの切り口はみな、恐ろしいほどに鋭利だった。
その様子を見て、少女はひとつ頷いて言った。
「今日はまあまあかな?」
枝の剪定具合をまじまじともう一度眺めやって、彼女は満足げに頷いた。…しかし、そこでわずかに表情が曇る。
「でも、これじゃ師匠にはまだとっても及ばないなあ…」
遠くにあればこそ、永遠に目に焼きついて離れないあの凄まじいばかりの剣技…いや、剣業が思われてならない。少女…白玉楼の無敵の盾、魂魄妖夢は師匠がいつか旅立って行った白玉楼の門を見やる。あれから彼女の剣もだいぶ上達した。だからこそ、一度それを師匠に見せてみたくてたまらなかった。師匠から見て、自分の成長はどの程度のものなのかを知りたかった。
特に、最近になってその想いは強くなるばかりだった。何が原因かは自分でも判らなかったが、何か大きな衝動に妖夢は確かに衝き動かされていた。
あの春集めの騒動以来、彼女は強い者と次々と戦い続け、己の未熟をはっきりと悟り始めていたから尚更なのかも知れなかった。
「師匠…今いったいどちらでどうなさっておられるんでしょうか…」
花降り注ぐ空を仰いで、彼女はそう呟いた。と、ちょうどその時、屋敷の方から呼び声が響いた。
「妖夢ー。よーむー」
それは、ほんの時折殺意を覚えることがないではないにせよ、彼女にとって何より大事な主の声だった。彼女はすぐに返事を返し、足早にそちらへと向かい始めた。
「はい、ただいま参ります。少々お待ちを」



そして、その少しばかり前のこと、少女が仰いだ空の彼方、雲衝く山の上で。
「やっほー、お爺ちゃん元気?…って、あれ。珍しいね。幽子いないの?」
酒の肴を携え、萃香は妖忌の家を訪ねていた。以前の一件以来ここはお気に入り場所のひとつで、すっかり常連の客と化しているのである。
「ふむ、そろそろ来るかと思っておったよ。…どうだ、一緒に行くかね」
彼女を見るなり、妖忌は腰を上げる。
「へ?行くって、どこへ?」
「人鬼の修羅場の見物に、よ」
そう言った妖忌の表情を見ると、萃香もにっと笑って頷いた。
「そりゃ楽しそうね。あの子、行かせたんだ?」
「うむ。互いによい刺激になろうかと思うてな」
答えて、妖忌はからからと笑う。その声も表情も、老いた外見からは想像もつかない活力に満ちていた。それを感じ取って、萃香はますます興がる。
「本当、お爺ちゃん見てると懐かしいわ。昔の侍たちを思い出して血が騒いじゃうよ」
「ふむ、爪を出すのは構わんが今は待て。ここでやり合っていたら、見るのに間に合わなくなってしまうからの」
「ちぇ。ま、こっちは後でも出来るしね」
やや残念げに言うと、萃香はさっさと身体を霧と散らせ始めた。そして、妖忌は目指す場所へと歩き始める。…ただ歩いているだけのはずなのに、その速度は常識外れだった。並みの妖怪では、全力疾走してすらその速さに届くまい。
「ふむ、よい行楽日和じゃ。このように急ぎ足せねば間に合わぬのがいささか残念ではあるよ」
「急ぎなんてよく言うよ、走ってすらないくせに」
妖忌を包むように立ち込めている霧から、萃香が上半身だけにゅっと実体化し、くわばらくわばらと肩をすくめて見せた。
「ふむ。鬼神は桑原に落ちない方であろうに」
「そりゃそうかもね」
話しながらも、疾風のように彼らは目的地へと向かっていた。視線の先を行く人物に、その気配すら気づかせぬまま。



「幽々子様、何でしょうか。お三時でしたらまだもう少し…」
妖夢は主人の前にかしこまり、そう尋ねかけてふと違和感を覚えた。主人の様子がどことなく変なのだ。困惑しているような、それとも面白がっているような感じだった。
「…?幽々子様、どうかなさい…」
「妖夢、あなたにお客よ。初顔だけど」
「…はて。初顔…?」
藍や美鈴なら妖夢を訪ねて来ることがあるが、それなら初顔ではない。知らない相手に訪ねられるのは、冥界にあっては非常に珍しいことだった。首を傾げ、彼女は玄関に顔を出す。…そして、驚いた。
(これは…まるで幽々子様…?…いや、違うけれどしかし…)
その客は確かに初めて見る相手だったが、妖夢の主とどこか似た雰囲気をまとっていた。そして、色は黒いがその髪の春風のようにさらさらと流れること、立ち居振舞いに雅があること、瞳の奥に鋼よりも強い魂が覗いていることも彼女と同じだった。
さすがに亡霊として数知れない齢を重ねた幽々子ほどに優雅ではなく、魂強くもないが、それでもその娘は確かに幽々子と似ていた。確かに、彼女が困惑し、また面白がるのは理解出来た。
…ただ、その瞳の光だけは明らかに違っていた。それは幽々子よりもっと荒々しく、そして危ういほどに研ぎ澄まされた、妖夢にとっては良く知る光…若い剣士の光。
「初めまして、妖夢様」
「さ、さま?」
笛のような声で話される、およそ聞いたことのない呼ばれ方に、激しい衝撃を受けた妖夢の思考が中断された。危うくもう少しで、バランスを崩してすっ転ぶ所だった。
「私は幽子と言います。…手紙すらなくいきなりで誠に恐縮ですが、あなたに一手のご指南を願いたいと思い、こうしてやって参りました」
「!」
妖夢の体が、驚きと高揚にこわばった。彼女に対してこんなにまっとうで嬉しい訪問の仕方をしてくれた相手など初めてかも知れない。ただでさえ、よく来る客と言えば隙間妖怪や永遠の有閑姫や飲茶紅白や黒白暴走族など、そもそもまっとうな訪問をしないか趣味がまるきり違う客ばかりなのだから。すぐに驚きの方が消え、高揚感だけが残る。
「…そうですね…木刀で?それとも真剣で?」
答えは分かっていたが、彼女は尋ねた。そして、幽子はまさに思った通りの答えを返した。
「真剣、叶うなら寸止めありで」
心地よいほど迷いのない声。裏を返せば、叶わなければ互いに斬られて文句はないと言うことだ。
それを平然と言ってのけた相手に、妖夢は我知らず血が騒ぐのを感じた。
「では、まずは主の許しを得て来ましょう。許しが得られれば、喜んでお受けします」
そう言って振り向きかけ…妖夢はそれを止めた。すでに静かな足取りが近づいて来ているのが分かったからだ。
「それでは、主として言うわ。あなたの好きなようになさい、妖夢。…やりたくてたまらないのでしょう?」
ぱん、と時もよく音を立てて開かれた扇の陰で、幽々子の目が細く笑う。幽子はそれをしばし呆然と見つめると、やがて頭を下げた。そして、妖夢も続いて頭を下げる。
「ありがとうございます、幽々子様。それでは、この仕合いを喜んで受けさせてもらいましょう幽子さん」
幽子は、黙礼をもってそれに応えた。その様子を、幽々子は目を細めて見つめていた。



桜舞い散る白玉楼の庭で、二.五人の剣士は向かい合って立った。幽子は左足を引いて体を沈め、右手を腰の得物にそっと添え、静かに瞑目していた。対する妖夢は右手に長い刀をどこまでも真っ直ぐな正眼に構え、左手に脇差を背に隠すように構え、足を肩幅に開いてゆったりと立っていた。
二人の得物はそれぞれ白玉楼の蔵から選び出したもので、幽子の刀は身が厚く頑丈でありながら華やかな拵えで、妖夢の刀と脇差はやや長めで無骨、鞘も鉄拵えだった。さすがに、楼観剣と白楼剣は強力過ぎるので、妖夢が自らこうしたのである。あの二振り相手では、相当な刀でなければ受けることも叶わずに刀身が切断されてしまいかねない。
「では」
「いざ」
短く声を掛けあうと、二人はその姿勢のままぴたりと静止する。そして妖夢は、相手の呼吸をはかりながらも訝しげだった。眼前の少女の構えが、どこかちぐはぐなのだ。内心はてと首をかしげたその瞬間、幽子が動いた。笛の音のような声が、凛と風を裂いて響き渡る。
「魂魄流剣士、幽子!参ります!我が姉弟子妖夢様!」
わずかな身体の動きで瞬時に切り替えられた馴染み深い構えを見、その名乗りを聞いて、妖夢はあまりの驚愕に一瞬硬直した。その無防備な体に、まるで防御のことなど考えていない、ただただ闘志だけを剥き出しにした野獣のような居合いの一撃が襲い掛かった。



どがん、とまるで刀でなく槌ででも殴りつけたかのような凄まじい衝撃音を立てて、二刀が間一髪その凄絶な一撃を止めしのいでいた。
「流石です」
「…まさか、妖忌師匠が新しく弟子を取っておられたなんてね…」
もはや確認するまでもなく、確かに幽子は妖忌の直弟子に違いなかった。太刀筋もそうだが、何よりこの底知れない闘気。妖忌にこそ及ぶべくもないが、それと同じ種類の相手を呑みつくす深い気力が彼女の全身には満ち満ちていた。
「居候のようなものです。あのお方には、私の定めと戦う力を与えて頂きました」
鍔迫り合いを続ける刀が、言葉の合間にぎしりぎしりと軋む。膂力も技量も明らかに妖夢の方が上だったが、幽子はその差をただ気迫で埋めて互角の鍔迫り合いを繰り広げていた。後先構わない、自分さえも省みない決死の気迫。完全に防御を捨てているからこそ、妖夢にも太刀打ちが出来るのだ。
「はぁっ…!」
気合の声と共に、妖夢が幽子を押し返す。その勢いに逆らわず、幽子は後方に跳んだ。一気に間合いを開けると、再び彼女は腰を沈めて居合いの構えをとる。
「あくまで攻撃優先…必殺必死、ね」
我知らず上唇をちろりと舐め、妖夢は笑った。見たこともない獰猛な剣は鮮烈で、心を震わせた。
…しかし、高揚する心の外で、ちりちりと動くものもあった。それは鏡のようであるべき心を乱し、妖夢の剣に乱れを生んでいた。それがなければ、いかに幽子が渾身の力を打ち振るおうと、剣の道を彼女よりもずっと長い年月歩み続けている妖夢に敵いはしなかっただろう。
再び、一声もなく二人が動いた。今度は妖夢が先手を取り、右足を踏み込むと共に長刀を幽子の首へ横薙ぎに送り出す。ほぼ同時に雷光のような幽子の抜き打ちが下からそれを撥ね上げ、返す刀が妖夢の胸へと突き込まれた。だが、妖夢の脇差が外から内側にそれを撥ね、更にそのまま左足が思い切り前へ踏み込まれて、猛烈な肩からの体当たりが幽子の肩口を撃った。
「ぐっ…!」
弾き飛ばされながらも妖夢に蹴りを入れ、その反動を生かして勢いのまま受け身を取って、勘のままに幽子は上空へと跳んだ。一瞬前までその身体のあったところを、妖夢の追い討ちが薙ぐ。
「はぁぁああっ…獄炎剣『業風閃影陣』!」
黒い瞳をかっと見開き、幽子は彼女の今知るたった一つの奥義の名を誇らしく叫んだ。その身体の周囲に緋い妖炎がちらちらと浮かび上がり、掲げられた刀へと集い、一閃と共に燃え盛る嵐となって妖夢へと襲い掛かる。
「っ!」
空振りでわずかに体勢の崩れたままの妖夢は、足をぐっと踏みしめ…二刀を暴風のように次々と繰り出して炎弾を次々と叩き落し始めた。それはまさに鬼神の所業、嵐の中に雷と閃く白刃はまるで壁のように炎を呑み込み、吹き飛ばし続けていた。炎がひとつ斬られて弾けるたびに周囲にぱっと光が走り、まさにこの世のものではない、彼岸の世界にこそふさわしい恐ろしくも美しい光景がそこには出現していた。
「でやぁああああっ!」
やがて、裂帛の気合と共に妖夢の振るった一刀が炎を切り払うと同時に、幽子が空から地へと雷霆のように、残った炎全てと共に駆け下りた。
妖夢はあえて炎を叩き落すことを止め、最小限の動きで致命的なものをかわしながらただ炎の中の幽子だけを見据えた。そして、緋く輝く刀を振りかざし、幽子が正眼に一閃する。妖夢の渾身の一閃がそれを迎え撃って弾き、更に三つの刃が翻って無数の剣戟が轟音と共に乱舞し、ほんの一瞬での数十合の後に二人の刀が鍔元で激しく噛み合った。二人はそのまま睨み合い…と思いきや、刀を僅かに後ろに引いて鍔迫り合いの勢いと相手の体勢を流しつつ、妖夢の左足が幽子の腹部へと伸びる。
「きゃっ…!」
小さく悲鳴を上げながらも、幽子は寸前に自ら跳んで衝撃の多くを殺しながら危なげなく左方に着地した。妖夢は、彼女から目を離さぬまま、身体のあちこちから煙を上げながら…全てをかわし切ることは出来なかったのだ…呼吸を整え、構えを直した。しかし、ちりちり動く心は直せない。



(…あんな剣…)
そう、妖夢はこんな野獣のような剣を妖忌に一度だって見せてもらったことはない。業の全てを伝えてもらえる程に自分が剣術を磨き上げていたとはとても言えないが、それならば何故、剣の業においては明らかに妖夢を下回っているこの娘はそれを教わっているのか。向き不向きの問題でそうしたならば、そもそも一度も見たことがないというのが考えづらい。…素質の問題か。
考えれば考えるほど、思考が泥沼に陥って行く。相手が幽々子によく似ているから、違和感が生まれていらいらとした混乱を煽る。師匠への尊崇の念が強いから、あらぬ疑いや嫉妬が勝手に湧き出て来る。そして、それらは妖夢の剣を乱し、狂わせていた。達人であればあるほど、無駄な動きは切り捨てられる。動きの総量は少なくなる。だからこそ、一糸の乱れさえも大きな狂いとなるのだ。
一方、幽子もまた戸惑っていた。妖忌に命じられた通りやって見たら、本当に姉弟子の動きは目に見えて悪くなった。本来の動きをまだ見たことはないが、それでも動きのあちこちのぶれから実力の低下ぶりが判る。しかし、これだけぶれてもまだ幽子の攻撃全てをこともなく打ち払って見せた姉弟子…その本当の実力を見たくてならなかった。こんな勝負では卑怯ではないのか…とも思わずにもいられなかった。ただ、彼女の場合、妖忌の命令という絶対のものがあり、悩みよりも優先してその通りに妖夢を容赦なく攻撃していたから、妖夢ほど剣が乱れたわけでもなかったのだが。



そうして、二人の気は相手と、そして自分自身を相手に圧し合っていた。その沈黙を、突如として力強い声が打ち砕いた。
「先ほどから黙って見ていれば、この馬鹿弟子どもめが!何たる体たらくじゃ!」
二人の剣士は揃って弾かれたようにそちらを向き、声を重ならせた。
『し、師匠?!』
そこには、厳しい目をした堂々たる体躯の老人…彼女らの師匠、魂魄妖忌が立っていた。
「妖夢!」
雷鳴どころか大地震のような一喝に、妖夢はびくりと首をすくめた。
「…お前は、いつから全力を出し切らずに誰かの相手を出来るほど偉くなったのじゃな?」
目を見開く妖夢から、今度は幽子へと視線が移される。
「お前もお前じゃ。悩むなと申したであろう。よいか、仕合いの最中に心乱れるは未熟ゆえ。心もまた剣士の業と力の内ぞ。なれば、心乱されて力弱まったとてそれも相手の器、倒して恥じることなどあるものか」
「は、はいっ!」
厳しい師匠の声に震えながら、幽子は高い返事を返した。
「そうそう。私にかかって来たときみたいにさ、勝てそうにないなりにがむしゃらにかかって行きなよ。それもまた侍への道だよ?」
更に、忽然と幽々子の横に現れてその手元にあった桜もちに手を伸ばしつつ、萃香が笑った。
その声を合図にしたように、妖夢と幽子の視線が再び絡み合った。それは、先ほどまでとは全く違うものだった。

(そうだ…迷うのは勝負の後でいい。迷いのある剣を仕合いで相手に見せるなど…相手にも己の剣にも、失礼この上ないじゃないか)

(そう…遠慮するほど実力が近くはないんだもの、私に出来ることはただ一つ…!)

妖夢の眼は、澄んでいるばかりではなく、今では明るく燃え盛っていた。もはや彼女の心にあるのは、同じ道を歩むものへの尊敬の念と、それを表すための剣の煌きだけだった。
「せめても…お師匠様がいらっしゃらなくなってから今までの成果、今度こそご覧に入れましょう」
二刀をそれぞれ背負った鞘へと納め、妖夢は右手を刀の柄にかけた。
幽子の眼は、理性を残しながらも獰猛に、ただひたすらに妖夢だけをまっすぐに見据えていた。もはやそこには、僅かな揺れさえもない。
「姉弟子様…どこまで通じるかは判りませんが、これが私の精一杯の剣です。お受け下さい!」
周囲がまた静まり返り、桜だけが勝負の行く末に興味を持ったように不意の風にざわめいていた…だが、その静寂の下では、剣士二人の気が凄絶なせめぎ合いを続けていた。妖夢の剣気はもはや獰猛な気に押されることはなく、いつしか河や風のようにそれを受け止め、呑み込み、流し去るようになっていた。一方幽子の剣気もここを先途と勢いを増し、妖夢の気の壁を打ち破ろうと挑みかかっていた。
そして、永遠のような数瞬が過ぎ、二人は同時に動いた。ゆったりとしていながら迅速な足取りで間合いが詰まり、詰まって行き…一足一刀の間合いを越えたその刹那、幽子が剣を抜き打った。それは今まででもっとも猛烈な、もっとも鋭い一撃だった。
(これならば…!)と、彼女が思ったそのほんの刹那の次に、その視認を遥かに超えた速度で妖夢の背の二刀が同時に疾った。切ないほどに澄んだ音とともに幽子の刀が宙を舞い、胸と首筋にはぴたりと刃が突き付けられていた。目をきょとんと瞬かせ、彼女は首をかしげ…そして、倒れた。妖夢が慌ててその体を抱き止めるのと共に、妖忌が重々しく宣言した。
「…勝負あった!」
というわけで、ご好評を頂けた時に考えてみた続編、とうとう書いてしまいました。オリキャラ要素強いから幻想バランスを崩していないかが少し心配ですが…皆様、どうかご笑納下さいませ。


※ご指摘を受ける前に注釈…
幽子は、あれから数年は修行したものとして描いています。言葉遣いが変わっているのも、妖忌と暮らしていたことによるものです。
(ですが、実は微妙に言葉遣いを崩してあります。まだまだ未熟ですし)
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コメント



0.800簡易評価
7.無評価名前が無い程度の能力削除
「楼観剣(ろうかんけん)」「白楼剣(はくろうけん)」な。
13.70削除
うーん、戦闘描写かっこいいですなぁ。
オリキャラはやっぱり好き嫌い別れるでしょうけど…続き見れて良かったです