Coolier - 新生・東方創想話

いっしょに寝てもいいんじゃよ?(チラッ)

2013/07/31 11:30:17
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yuukaも夏が訪れた。蝉の声がやかましくはあるがこの季節は意外に静けさがあり、ふと耳を澄ませば陽の差し込む音ですら聞こえるように思える。
「ふぅ」
 命蓮寺の縁側にはマミゾウが胡座を作って座っていた。
 口から煙管を離すと小さく開いた唇から煙を吐き出した。薄い白さを持った煙は暫くの間モクモクと漂っていたかと思うと次には風に乗って屋根上と昇っていった。
 青空へ吸い込まれていく煙がやがて雲になるのだろうか、眺めながらそんな事を思いマミゾウは一人笑う。
「そんなら儂がお天道さんを隠してやろうかねぇ」
 手の中で煙管を返し、そのまま灰吹きーー煙管を楽しむ時に使う灰皿のようなもの。竹筒に水を入れて使うーーにあて指で叩く。今は燃え殻となった煙草の葉が灰吹きの中に落ちた。
 じゅうう、と火の消える音は小さかったがマミゾウの耳にはとても鮮明に聞こえる。冬の庭で重みに耐えかねて雪が木から落ちたような静寂の中に生まれる小さな音だ。
「マミゾウ親分」
 隣から声が掛かりマミゾウは懐へと伸ばした手を止めた。
「おお一輪どうした」
 見ると一輪が立っている。今日は一緒ではないのか相棒の雲山の姿は見えなかった。
「麦茶を作ったんですけど良かったらどうですか?」
「おー。えぇのう、いただこうかのう」
 それじゃあ持ってきます、い残し一輪は廊下の角に消えていった。

 少しして盆を持った一輪が戻ってきた。盆の上には麦茶の入った薬缶と二人分のコップが乗せられている。
「おまちどおさまです」
 先程と変わらず胡座で待っていたマミゾウにコップを手渡し、盆を挟んで隣に座った。
 手渡されたコップには幾つか氷が入っているため冷たく、コップを掴んだ手に伝わる冷気が心地よかった。
 注がれた麦茶を一口煽る。
「んんん! うまいのぉ! 流石一輪ちゃんじゃな」
「ありがとうございます」
 その後も何回か麦茶をおかわりしたマミゾウは眼鏡を外し、団扇の代わりに手で風を送り始めた。
 眼鏡を外した顔は初めて見たがこうなると美女というより美少女だろうか。そんな事を考えながら一輪は正座を解いて足を縁側から投げ出した。
 縁の下から吹いてくる風がヒンヤリと気持ち良い。
「しっかし暑いのう……。溶けてしまいそうじゃ」
 同時にコップの中の氷がカランと音をたてた。
 なるほど涼しい音じゃ。
 実際冷たいので風鈴よりも効果は現実的なのだろう。暑さが少し和らいだ気がした。
 氷を風鈴にでも化けさせようかなどと考え始めたたその時だった。
 二人の視線の先にある塀の向こうに巨大な水の柱が立ったのだ。まるで間欠泉のように噴き散らしている。
 大体犯人は分かるのだが。
「村紗ー! 打ち水もほどほどにしなさいよー!
 一輪が声を張り上げると噴き出す水の音の間から村紗の「わかってるー!」という声が聞こえてきた。
「まったく……」
「まぁまぁ、ええじゃないか」
 宥めながらマミゾウは再び煙管をくわえた。
「前にも参道を水浸しにしたんですよ? まぁそのあと片付けさせましたけど」
「船長が尼さんに頭が上がらんとは可笑しな話じゃな」
 歯を見せて笑いながらマッチを擦り煙管に詰めたたばこの葉に火をつけた。
 一瞬首をかしげた一輪だったが少しすると気がついたのかクスクスと笑った。
「流石ですね」
「まぁの」

 フワフワと漂う煙を眺めながら一輪はマミゾウに質問した。
「外の世界も夏は暑いんですか?」
 既にコップの氷は溶けきり生まれた水もぬるくなっている。
「なんじゃ一輪は外の世界に興味がおありかな?」
「いえまぁ……ちょっとだけ」
 照れ臭そうに笑う一輪を横目にマミゾウは再び煙を吐き出した。
「外も中も変わりゃせんよ。夏は静かで暑いもんじゃ」
 傍らに置いた眼鏡に日光が反射している。
「ま、外の連中はちーとばかし夏に気づくのが早いがの」
 カラカラと笑うとマミゾウは痺れたのか胡座を作っている足をもぞもぞと動かす。催しているように見えなくもない。
「あの……マミゾウ親分?」
「なんじゃ?」
「どうしてさっきからその体勢のままなんですか?」
 最初に話し掛けた時から、もとい一輪が知らないだけで実際には昼食を終えたぐらいからずっとこうしていた。
「……ほれ、これじゃこれ」
 ばつが悪そうにマミゾウは自分の尻尾を指差した。見るとマミゾウの背後にある部屋の障子は薄く開かれており、彼女の尻尾はその隙間の中にへと伸びていた。
「……ちょっと失礼」
 一輪が立ち上がり障子を開いた。そこには……。
「すぅ……」
「え」
 ぬえがいた。マミゾウの尻尾を枕に気持ち良さそうに昼寝をしているぬえがいた。
「叩き起こしますか?」
「ええよ。寝かしてやりなさい」
 マミゾウが制し一輪は障子を閉じた。尻尾を挟まないようにゆっくりとだ。
 なるほどそれでさっきから動かなかったのか。
 納得したと同時にこのままではマミゾウが暑い思いをして可哀想だと一輪は考え、再び縁側に座った。
「雲山」
 一輪が呼ぶとどこからともなく雲山が現れ、フワフワと庭を漂い察したのか一輪が指示したのか雲山はマミゾウの頭上へと移った。
「すまんの」
「いえこれくらい」
 青空の下、影を作るべく命蓮寺の上で濛々と雲山が漂うのであった。
その夜
一輪のお部屋
「マミゾウ親分の尻尾……もふもふしてて気持ち良いんだろうなぁ」
「……」
「なにか言った? 雲山」
「(チラッ)」
「……あなたもふわふわしてて気持ち良さそうね。いっしょに寝てもいい?」
「……」
「そ、じゃあおやすみなさい」

☆☆☆☆☆

 最初は「暑いねー夏だねー」的な話を考えていたのですがどういうわけか雲山になってしまいました。(夏って入道雲がよく出るし良いかなぁって
 というよりもう夏も本番なんですけどね(笑)
 それでは読了ありがとうございました。
赤ワイン
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コメント



0.340簡易評価
2.90名前が無い程度の能力削除
マミゾウさんは優しいなぁ
4.90名前が無い程度の能力削除
親分の尻尾は気持ち良さそうだと思う反面、この季節に人肌はちょっと暑いかなぁと思ったり
入道の日陰や船幽霊の打ち水は幻想郷ならではで涼しそうですねぇ

それと誤字でしょうか?
・体制のまま
・隙間の5中にへと伸びていた
5.90奇声を発する程度の能力削除
マミゾウさん良い人だ
10.無評価赤ワイン削除

はじめまして皆さま赤ワインです。初投稿ということでドキドキしていましたがマミゾウ親分がもふもふだったので乗りきれました。
2さん
親分は優しいお方なんです。その優しさに若い衆がついてくるんや
4さん
そうですねぇ夏に毛皮は暑い暑い。実は次に投稿を予定している作品のネタを見破られた感じがしてびくびくしてました。
誤字報告ありがとうございます。さっそく修正しました。
5さん
マミゾウばあちゃんはぬえにはとことん甘そうな気がしてならんのです。

というわけで感想ありがとうございました。今後も気付き次第ですが返信したいと思います。
12.703削除
中々風情のある話でした。
作中でずいぶんと「音」に関する事を強調されていたようですが、何か意図があったのでしょうか?