――『九番の歌』とか言う歌が有名らしい音楽家。
「私はちょっとした興味本位で、その人間達の運命をいじった」
――『夕食の終わり』とか、そんな感じの名前の絵を描いた芸術家。
「凡人として生まれ、凡人として死ぬ。その運命を私が操ってみた」
――解けないあまり幻想入りするかもしれない、と風の噂で聞いた『数字の定理』を唱えた数学者。
「結果的に、その人間達は普通の運命を歩むことはできなくなった。それが成功であれ、破滅であれ」
写真に写っているのはそのような人間達である事なんて、私には分かるはずもなかった。
「でも、運命を操っただけ。私がそうしなくても、その人間達が同じ道を歩む事は有り得るわ。さっきも言ったけど、才能なんて存在しないと思っている。だからこそ、どの人間にも一分の上質な存在になることはできるのよ。ただ知らないだけ。ただ知っているだけ。生きることだけを優先し、ただの肉塊として存在しているだけの人間には、輪廻転生……だったかしら。それを何度繰り返しても無理でしょうけどね」
あなたもまだまだ、一分の人間とはほど遠いわよ咲夜。と、吸血鬼は言葉を発し、後ろにいるメイドは目を閉じて、小さく礼をしていた。
「一ついいかしら」
吸血鬼は余裕そうに「どうぞ」と言って、私の言葉を促させる。
「霊夢はあなたにとって……どっちの人間に当てはまるのかしら」
「決まってるじゃない」
不適な笑みを浮かべ、またも注がれていた紅い酒を一口で飲み干す。私が認識していなかっただけで、これが三杯目ではないのかもしれない。
「あなたもそう思っているでしょう」
吸血鬼に指をさされて言われ、私も口が綻んでしまう。
彼女は人間でありながら、妖怪に名前を覚えられる程の存在なのだ。
「まぁ、あの人間は曲がりなりにも、戦い、弾幕を交わし、直接的ではないにせよ、私と関わり、触れ合った。あの人間ももう、普通の運命を歩み出すことはできないわ。今後様々な魑魅魍魎が現れ、彼女と対峙するでしょうね。でも――」
「霊夢なら、きっと勝てる」
吸血鬼の言葉を私は先に言った。
「『吸血鬼である自分に勝った人間が、他の妖怪如きに負けるはずはない』と、そんなところかしら」
吸血鬼は一瞬だけ惚けた表情になり、すぐに不適な笑みを浮かべていた。
「分かってるじゃない。咲夜が追い出さなかっただけはあるようね」
と、そこで瓶の酒が空になったようで、吸血鬼は最後の一杯になったグラスを持って私を見る。
同じ事をするように促された私は、酒が入ったグラスを持ち、お互いに一度高く上げ、口に含み、同じタイミングで飲み干した。
「ごちそうさま」
有りがちな言葉遊びに終始せず何か具体事例を示して頂きたかったですし、霊夢に対する考察も凡庸で目新しさに欠けます
今までの作品と比べたら何か味気ない。
もうちょっと複雑にしてもよかったような気が。
レミリアの理論には興味がありますけどね。
と凡夫が思う
優位性が出るときは凄いけど天才と凡夫の優位性の差がそこまでないことも多いし