Coolier - 新生・東方創想話

縁本、巻の二

2013/03/30 21:33:38
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皆様こんにちは。
幻想郷本を愛する会、会長です。
......嘘です。名乗るほどでもない妖怪です。
しかしながら、本は無限の可能性を持っていると信じる心は、幻想郷一番と自負しております。
例えばこの本......と、出すのもいいんですが、今日は本を持っていません。
なら、と言うと今日は、本を探しに行く予定が入ってます。
目的地は無縁塚。
非常に危険ですが、無限の可能性を探しに出発です。

---

意気揚々と無縁塚へ向かう道中、不思議な二人組を見かけました。
背は小さいけど何やら立派な服装の女性が、背は大きいけど比較的質素な服装の女性に説教しているようです。
近付くにつれ、その内容も聞こえてきました。
「―――以後こんな事が無いように十分に反省し、死神の職務を全うするよう努力しなさい」
「はい......」
「分かりましたね。......では今回は、これで良しとしましょう」
「はい......ありがとうございました」
おや、丁度終わったみたい。
叱られていた方はだいぶ参っている様子で、きっと大層厳しい説教だったんだろうな。
なんて思いつつ通り過ぎようとすると、説教していた方の女性と目が合ってしまいました。
何だか嫌な予感。
「ちょっと貴女、そちらは危険ですよ」
無縁塚へと続く一本道、誤魔化しようがありません。
彼女は私の正面に立ちました。
「無縁塚が危険なのは知っているでしょう?彼の地は外や冥界との境界が曖昧になりやすいのです。境界を管理する者ならまだしも貴女は、少々言葉は悪いですが、力の無い妖怪でしょう。何の用で彼の地へ向かうのです?」
あぁ、これはまずい。
あ、とか、う、とか音を出していると、さっき説教されていた方がやれやれという様子で近付いてきました。
「まあまあ四季様、何の前触れもなく説教するのは良くないんじゃありませんか?ほら、なんか知らない人に突然説教されたって顔してるじゃないですか」
まさにその通り。
「......それもそうですね。改めて、私は幻想郷を担当する閻魔、四季映姫と言います」
「あたしは死神の小野塚小町。よろしく」
こちらも名乗らない訳にはいきません。なので朱鷺子と呼ばれている、と自己紹介すると、映姫さんはむっとした顔になりました。
「呼ばれているとは何ですか。まさか閻魔に偽名を使おうとしてるんじゃないでしょう、ね」
そ、そんなことは決して!と、言おうとしても声が出ませんでした。
閻魔の威圧感ってすごいですね。
「だから四季様、この子は説教慣れしてないんですから。理由を聞いてあげましょうよ」
小町さんが神様のように見えてきました。
あれ、死神だから神様なのかな......?
「......分かりました。聞きましょう」
とにかく、私は必死に説明しました。
出自を知らない事。
周囲から朱鷺子と呼ばれてきた事。
それが本名か確かめる方法がない事。
だから決して偽名ではない事。
「ふむ、嘘はついていませんね。こちらが先走ったようで、申し訳ない」
映姫さんは深く頭を下げました。
上に立つ者というのはこう在るべきなんだろうなー、なんて考えました。
後になって。
その瞬間はもう何が何やら分からず、わちゃわちゃと手を振りながら、頭を上げて下さいと叫んだ気がします。
そのかいあってか、映姫さんは頭を上げてくれました。
「さて、では話が戻りますが」
頭を上げてくれたのはいいものの、結局窮地にいる事には変わりなかったのです。
「どうして無縁塚へ?この道の先を知らない訳では無いようですし」
期待を込めて小町さんを見つめてみましたが、小町さんは首を振るのみでした。
私はもう逃げる術は無いと思い、正直に話しました。
「本を探しに、ですか」
一体どれだけの雷が落ちるかと身構えていましたが、予想に反して、映姫さんの声は穏やかなものでした、が。
「知識を探求しようとすること自体は悪い事ではありません。本は、より良い人格形成に役立つ事も多いですからね。しかし、無縁塚へ行くのは良くありません。先程も言いましたが、彼の地は危険なのです。しかも......」
ああこれは長いな、と自然にわかりました。
粛々と聞き続けること数十分、映姫さんはやっとお説教を終えてくれました。
「では朱鷺子、付いて来なさい」
と、思ったらまだ何かあるらしい。
先を行く映姫さんに付いて歩くと、小町さんが横に並びました。
「や、お疲れさん。どうだった?」
どうだったも何も、堪えたとしか。
「あはは、まだ慣れてないからしょうがないかな。あれでも相当軽い方だよ?」
あれで軽いなんてぞっとします。
「ひどいのになると、密度と時間が3倍ぐらいかな。さっきのと比べて」
......善良に生きよう。

---

映姫さんに付いていってたどり着いたのは、人里でした。
「四季様!一体どうなされたんです?」
さらに言えば稗田家の前。
稗田家現当主、稗田阿求が迎えに出てきました。
求聞史紀の編者として有名ですね。
阿求さんの求聞史紀は今までの物と違って、親しみやすい形式になっているとか。
「心配は要りませんよ。ただこの子を紹介しに来ただけです。本を探しに無縁塚へ行こうとしていたので連れてきたのですが、この子を書庫に入れてやれますか?」
阿求さんはちらと私を見ましたが、すぐに映姫さんの方に視線を戻し、それから快諾したようです。
「では、後は頼みましたよ」
阿求さんと少し話すと、映姫さんと小町さんは帰ってしまいました。
二人を見送ると、阿求さんが中を案内してくれました。
「では朱鷺子さん、こちらへどうぞ」
一番奥へ向かうと、そこには大量の本が。
素晴らしい眺めです。
「四季様のご紹介ですから、朱鷺子さんは本当に本が好きなのでしょうね。どうぞご自由にお読み下さい」
言われた通り、私は目に付いた本から読み始めました。

---

「朱鷺子さん、朱鷺子さん」
阿求さんに呼ばれた時、もう日が暮れている事に気付きました。
「あの、お泊めする事は出来ませんので、その」
もちろんそこまで迷惑をかけるつもりはないので、すぐに辞去しようと思いました。
しかし......今読んでいる本の続きが気になって仕方ありません。
そこで、駄目元で貸してもらえないか聞いてみることに。
「えっと、貸すのはちょっと......ほかの方への示しもありますので......」
やっぱり駄目でした。
「あ、明日も来て頂いて構いませんから!」
ただ、阿求さんはすごく良い人でした。

---

翌日、私は早速稗田邸へ。
胸踊らせて到着すると、なにやらお籠が停めてありました。
お籠なんて初めて見るのでぐるりと眺めていると、その後ろに人影が。
「あ、おはようございます」
兎の耳を生やした女性が、丁寧に挨拶してくれました。
「あの、もし良ければ、あとどれくらいかかるか覗いて来てもらえませんか?」
どうやら私を稗田家の者と勘違いしている様子です。
ですが、私が訪問客であることを告げても驚きませんでした。
「貴女も妖怪ですよね?さすがに、稗田家に妖怪の使用人がいるとは思いませんよぅ」
ふにゃりとした笑顔を浮かべて、自己紹介してくれました。
鈴仙・優曇華院・イナバさん。
長い名前ですね。
「鈴仙で良いですよ?」
鈴仙さんから話を聞くと、どうやら彼女の仕えている方が阿求さんと話しているんだとか。
鈴仙さんは薬師の修業中で、人里にもよく来るんだそうです。
その後も鈴仙さんと話していると、鈴仙さんの背後、何やら隅っこでふよふよと漂う物が目に付きました。
非常に気になる。
「それで師匠が、って、どうしたんですか?」
急に歩き出した私に鈴仙さんが声を掛け、そしてそのふよふよした物までもうちょっと、という時。
「危ない!!」
鈴仙さんが叫びましたが時すでに遅し。お空が見えました。
あー。

---

「この、ばかちん!」
目を覚ました時、誰かが鈴仙さんに叩かれているのが見えました。
聞けばそれが因幡てゐさん、私が落ちた落とし穴の仕掛け主だそうです。
「あ、起きた?大丈夫よ、気を失ってたのはただの脳震盪」
稗田邸の中に寝かされていた私を診ているのは、あの八意永琳さんでした。
人間、妖怪問わず診察してくれる神医だと有名です。
「八意先生、大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ阿求さん、意識ははっきりしてるし。......足首を捻ってるのと、足の指の骨折ね。貴女妖怪にしては、ちょっとひ弱なんじゃない?
でもまぁ痛みはきついだろうから、とりあえず麻酔を打っといたわ。眠くなったら寝ちゃいなさい」
つまりはこういう事だ。
落とし穴の端っこを踏んだ為に、足の後ろ半分だけが踏む先を失い、後ろに倒れ込んで後頭部を強打、そして意識を失ったまま落ちる事で変な向きのまま底に着地し、捻挫と骨折。
我ながら、無駄に器用な事をしたものである。
「本当にごめんなさいね。うちのてゐが迷惑掛けました」
枕元で頭を下げるのは、永遠亭のお姫様、蓬莱山輝夜さん。
最近よく偉い人に頭を下げられるなぁなんて思っているうちに、私の意識は今度はゆっくりと、沈んでいきました。

---

「あ、目が覚めましたか?」
再び目を覚ますと、傍らには鈴仙さんがいました。
「処置はもう済んでますから、治るまで安静にしていてくださいね」
それは良かった。
「まぁ、もう夜ですからどっちみち寝てもらいますけど。お腹減ってませんか?」
大丈夫と答えてから、てゐさんはどうなったか聞いてみました。
鈴仙さんもずいぶん怒っていたようですし。
「てゐですか?もちろん叱りましたよ。でも、叱られずとも結構堪えてたみたいです。あの子、悪戯はしょっちゅうやってるけど、相手を大怪我させた事は無かったから。
むしろ罪悪感を感じすぎてる様子で」
てゐさん、根は良い子なんでしょうか。
てゐさんの性格を考えていると、鈴仙さんが何やら持ってきました。
「あ、そうそう、阿求さんがこれを朱鷺子さんへ、と」
渡されたのは一冊の本。
昨日、読みかけになった物でした。
「特別に貸し出しますので、病床での気晴らしにどうぞ。ですって」
やはり阿求さんは良い人でした。
早速読ませてもらおうと本を開きましたが、鈴仙さんがじっと、こちらを見つめているのに気が付きました。
何かまずかったんでしょうか。
「え、あ、いえ。そういう本って珍しくてつい。私が読む本は学術書がほとんどなので」
なるほど、それならこの本は珍しいに違いありません。
何せ幻想郷地域に伝わる伝承を集めた本で、学術書とは全く違う雰囲気ですから。
とは言え、じっと見つめられていると読みにくい。
しょうがないので、鈴仙さんに先に読んでもらう事にしました。
「えっ?いえ、それは悪いですよ」
じゃあ見つめないで欲しい、とは言えない目をしながら鈴仙さんは断りました。
一体どうしろと言うんでしょう。
困っていると、鈴仙さんが手を打って言いました。
「じゃあ私が読みますよ!」
と、いう事なので私が本を手渡すと、鈴仙さんは私の読みかけのページを開きました。
「えっと、ここまで読んだんですか?
あ、はい。分かりました。では」
そして咳払い。
何をする気かと思っていると、
「―――」
なんと、音読し始めました。
しかも間が悪いことに、子供向けの、いわゆる寝る前のお話じみた所を読むんです。
神話とおぼしき話も収録されているのに、よりによって。
「―――」
しかし鈴仙さんの声は心地良く響き、そのまま聞いていました。
「―――」

―――

「もう大丈夫ね」
翌朝、一応の検査の後に永琳先生から、完治のお墨付きをもらいました。
「こっちの責任だから、もちろん治療費は要らないわ。要らないんだけど、鈴仙のお願いを聞いてくれたら嬉しいわ」
そう言って立ち去った永琳先生と入れ替わりで、鈴仙さんが入ってきました。
「朱鷺子さん、完治おめでとうございます。あの、それで、実はお願いがあるんですけど......聞いてもらえませんか」
おずおずと切り出されたお願いは私の信念にぴったりで、それならと快諾して一緒に向かったのは、慧音先生の寺子屋。
幸いすぐに会うことができました。
「寺子屋を貸して欲しい?」
当然、すぐに了解は得られませんでしたが、理由を説明すると納得してもらえました。
「先日料理を振る舞ってもらったお礼もしたかったし、そういう事なら構わないよ。他に協力出来ることがあれば言ってくれ」
約束を取り付け、次に向かったのは香霖堂。
かくかくしかじかと説明すると、霖之助さんは言いました。
「要するに本を貸してくれと。......うちは貸本はやってないんだがな」
やはりそう上手くは行きませんか。
また何か持ってこなくちゃ、と考えていると、霖之助さんが咳払いをして今度はこう言いました。
「だがまぁ、君にはこの間の借りがあるからな。しょうがない。ちょっと待ってくれ」
またもや、この間振る舞った料理が役立ってくれました。
霖之助さんが持ってきたのは、ぼろぼろの本。
「この本の内容はどうも子供っぽくてね。僕は読まないし、君の要望にぴったりじゃないか?」
確かにその内容は目的にぴったり。
協力したいのかしたくないのか、よく分からない人です。
結局その本を譲ってもらい、予想以上にうまく行った喜びを感じながら寺子屋に戻りました。
「それでは慧音先生、お願いします」
「よし。まずはそのまま読んでみてくれ」
早速鈴仙さんは慧音先生との練習に入ります。
私はと言えば、また永遠亭へ。
「うまく行ったみたいね。じゃあこっちは任せて頂戴」
「本当にありがとうね、朱鷺子ちゃん」
永琳先生に重要な所を任せて、一緒に居た輝夜さんからお礼を言われつつ、私は決行を待ちました。

―――

善は急げと、その日の暮れに決行する事になった鈴仙さんのお願い。
鈴仙さんは、どうにか慧音先生も納得いく読みができたようで、少々自信気です。
そして、
「お待たせ」
「離してよー。もう逃げないからさー」
「うふふ、もうここまで来たら同じじゃない」
てゐさんを連れた永琳先生と、その後ろから輝夜さんも来ました。
舞台は寺子屋、役者も揃いました。
どこか締まった雰囲気に、てゐさんも居住まいを正した様子。
「......では、始めます」
鈴仙さんは、すっ、と呼吸を整えてあの本を読み始めました。
「―――」
その内容は、本当に子供向け。
大人が読んだり、ましてや、読み聞かせてもらうなんてありえない物です。
ですが、鈴仙さんの気持ちが乗っているからか、そんな色眼鏡はどこかへいってしまいます。
......本には、他人に思いを伝える、と言うはたらきがあります。
しかしそれは書いた人から読む人へ、という向きだけでは無いと、今実感しています。
本の可能性の一つ、それはその本を仲立ちにして読む人から読む人へと思いを届ける事。
その本に象徴される、書く人の思いを借り、そして自分の思いを乗せて。
「―――」
「......鈴仙......」
今鈴仙さんが紡いでいるのは、赦し、とでも言うんでしょうか。
本の中身は、いたずら盛りの子供の話。
悪戯をして、その罰に家を追い出され、日暮れになると母親が迎えに来る。
そして、暖かい食卓の場面で終わり。
それだけだと悪戯は駄目、と言う教訓話なんだと思います。
ですが鈴仙さんとてゐさんの間、いえ、てゐさんと永遠亭の皆さんの間にはきっと、それ以上の何かがあるはずです。
「―――」
鈴仙さんの声は穏やかに、その場の全員に染みていくようでした。

―――

「朱鷺子さん、慧音先生、師匠に姫様。ありがとうございました」
素晴らしくも短い読み聞かせが終わり、寺子屋の前で鈴仙さんが頭を下げました。
鈴仙さんの思いはしっかりてゐさんに伝わったようで、てゐさんはそっと、鈴仙さんの手を握っています。
「......鈴仙、ごめんなさい」
てゐさんは鈴仙さんに謝りました。
『本は、より良い人格形成に役立つ事も多い』
映姫さんの言う通りです。
「てゐ、ありがと」
「それから、朱鷺子さん、ごめんなさい」
今度は私の番ですね。
鈴仙さんを見ると、とても嬉しそうに頷きました。

「謝ってくれてありがとう。
......今度、てゐさん、鈴仙さんも一緒に本を読まない?」

「はい!」「うん!」
「善哉」
「四季様も変わってますねー。こんな所まで見届けなくても」
「いいのです、小町」
「はぁ」



と、いうことで二作目、読了お疲れ様でした。
あいかわらず改行がうまく行かない......
ちょっと良い人過ぎましたかね、全体的に。
しかも、作品の軸が既にぶれ始めてる気がしますし......
温めていたネタも尽きたし、次はいつ出せるのか.......
タチマチ
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コメント



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1.100名前が無い程度の能力削除
和むお話でした
4.90奇声を発する程度の能力削除
和めました
5.603削除
何というか、ただこの人がこうした、こうなった、みたいな事実だけを書いている感。
もっと色々な描写があっても良いと思います。