Coolier - 新生・東方創想話

羨望咨嗟

2013/01/24 23:20:45
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「【彗星】ブレイジングスター!!」
 事の発端は、連日続く花見の酔い醒ましと始めた弾幕勝負だった。
 いつもと変わらない筈だったその勝負は、私のブレイジングスターで一変した。
 霊夢の隙を突いたブレイジングスターが直撃し、そのまま霊夢は鳥居に激突。頭から血を流して倒れてしまった。
 紫がスキマで連れてきた永琳が額に汗を浮かべて霊夢の治療に当たる。あんなに慌てた様子の永琳や紫を見たのは初めてだ。
 私はその間、何もできなかった。呆然と、何をするでもなく、考えるでもなく。ただ突っ立っているだけだった。

 霊夢の治療が一通り終わり、永琳が永遠亭へと帰った頃には、さんさんと輝いていた太陽は沈み、あたりは闇で包まれていた。
 博霊神社には、私と霊夢以外は誰もいない。永琳も紫も、私に看病を押し付けて帰ってしまった。
 誰も私を責めなかった。これは事故だと皆が認めているからだろう。
 けど、これは本当に事故だったのか。

――本当は、こうなる事を望んでいたんじゃないのか

 脳裏を過ぎった考えを、首を大きく横に振って払拭する。
 あれは仕方なかったんだ。隙を突いたと言え、霊夢だって反応できない程じゃなかった。回避は難しくても、結界で防御する事くらいは出来た筈なんだ。
 だから、私は悪くない。

――でも私は、ブレーキをかけることなく霊夢に突っ込んだ

 違う、あれは間に合わなかった。そもそも、あれは急には止まれないぜ。それに、当てなきゃ、勝ちにならないじゃないか。

――霊夢に勝つ事しか考えてなかった。霊夢がその後どうなるかなんて

「違う!!!」
 静かな部屋に私の怒鳴り声だけが響いた。
 思わず大きな声を出してしまい、慌てて霊夢を確認する。すぅすぅと寝息が聞こえる。良かった、起こしてはいないみたいだ。

 どうにもジッとしてると後ろ向きな事ばかり考えてしまう。
 私は、昼間届いた霊夢へのお見舞いの品の整理をする事にした。勿論、勝手に中身を見るとか、あまつさえ持って帰るなんて野暮な真似はしない。
 アリスに咲夜、妖夢に早苗。慧音は寺子屋の子供たちの代表という事で持ってきた。
 更には命蓮寺や、閻魔様からまでも届いている。いつの間にか飾ってあった花は幽香だろう。
 こうして見ると、改めて霊夢の人望というか、人気が良く解る。
 私が同じようになった時、私にもこれくらいお見舞いが届くのだろう。
「届かないよな、やっぱり」
 結論はすぐに出た。そもそも比べる事が間違っていたんだ。
 霊夢と私は違いすぎる。それこそ、悲しいほどに。

 努力する事無く、天賦の才と勘で異変を難なく解決して行く霊夢と、
 努力し続けることでしかこの幻想郷で存在を誇示できない私とでは、あまりにも違いすぎた。
 だから私は霊夢が羨ましくて、そして

――霊夢が大嫌いだ

 鈍い音が部屋に響く。音の正体は、私が自分の顔を思いっきり殴った音だ。考えちゃいけない事を考えてしまう自分があまりにも憎らしく、腹が立った。
 確かに私は霊夢に憧れている。劣等感を抱いていることも事実だ。それでも霊夢は私の大切な友人で、嫌いになる筈なんてない。ましてや、傷付けたいなんて思う筈がない。

「本当に?」

 背後で声が聞こえる。振り向くと、そこには先程まで寝ていた筈の霊夢が立っていた。
「霊夢!? お前、大丈夫なのかよ!?」
 心配になって駆け寄る。直後、霊夢の両手が、私の首を絞めた。
「魔理沙、私を殺そうとしたの? したのよね? 私が憎かったのよね?」
 霊夢が尋ねるが、首を絞められているので満足に声が出ない。
 違うんだ、あれは事故だったんだ。声にならない声で必死に弁明する。
 だが、霊夢の力は更に強くなり、どんどん意識が遠くなっていく。
「大嫌い」
 そんな言葉が聞こえたような気がしたが、確認する間もなく、私の意識は途絶えた。



「っはぁ……はぁ……!」
 気が付けば外はすっかり明るくなっていて、雀の鳴き声が朝になった事を告げていた。
 首を確認してみたが、痛みもないし、絞められた形跡もない。どうやら、夢だったみたいだ。我ながら、ひどい悪夢だ。

「あら、起きたのね」
 声が聞こえる。視線を向けると、そこには霊夢が立っていた。手には恐らく私の分だろう。二つの湯飲みが持たれていた。
「え、あ、も、もう平気なのか?」
 あんな夢を見たせいで、どうにも身構えてしまう。
 随分とぎこちない私の言葉から何かを察したのか、湯飲みをちゃぶ台に置きながら
「えぇ、傷は問題ないわ。あんたも、気負わなくてもいいのよ」
 なんて、フォローを入れてきた。その言葉が、私の心に突き刺さる。
 何であんな怪我負わされたのに、そんな顔ができるのか。
 何でそんな優しい言葉をかけられるのか。
 何で私は、素直に喜べずにこんなに醜い感情を抱え込んでいるのか。

「なぁ霊夢。何でだ? 何で霊夢は私に普通に笑いかけれるんだ?私はお前に怪我させたんだぜ!?」
「でもワザとじゃないんでしょ? ならいいじゃない」
 あまりにも普段どおりの霊夢に、思わず大きな声で尋ねてしまった。
 霊夢はそれでも普通どおりに茶を啜り、一息入れて平然と答える。
「何で、何でお前はそうなんだよ!?
あんな事があったのに平然として、色んな奴から心配して貰って……
何でお前と私はこんなに違うんだよ!?そんなお前見てるだけで私は自分が」
 嫌になる。その言葉を口にしようとした瞬間、乾いた音と共に頬に痛みが走った。
「自己嫌悪に陥るのは勝手だけど、私の前で言うのはやめてくれる?
あんたに憧れてる私が、馬鹿みたいじゃない」
 意外な言葉に、思わず呆気に取られる。私の何処に憧れる要素があるのだろうか。
「人知れず努力して、何事にも一生懸命で、ビックリするくらい真っ直ぐで、
それを感じさせないように何時も明るく振舞って……私には眩しかったわ。
だからかしらね。思わず見惚れちゃって、回避し損ねたわ」
 驚いた。霊夢が私をそんな風に思っているなんて。
 そして、あの霊夢が私なんかに羨望の眼差しを向けていた事に。

「はは……そっか、霊夢が、私なんかに……」
 嬉しかった。嬉しさが涙になって零れだしたので、帽子を深く被って顔を隠す。
「だから、くだらない事で心配しなくても大丈夫よ。
私や紫たちが知ってる魔理沙は、好き好んで人を傷付けるような奴じゃないし、
私の好きな魔理沙は、そんなことで心が折れたりする弱い奴じゃないわ」
 言うだけ言って私に背を向けて座り、再びお茶を啜る。
 溜まった涙を拭う。そして霊夢の前にあるもう一つの湯飲みのお茶を一気に飲み干した。
「よし! 霊夢も元気になった事だし、私は帰って寝るぜ」
「……えぇ、また夜は宴会でしょうから、それまで寝てなさい」
 霊夢の言葉に振り向かないまま手を振り、箒に跨って空へと飛び立つ。晴れ渡る蒼空は、今までと同じようで、どこか違った景色に見えた。
 どうも私は、霊夢とは自分を否定してしまったらしい。
 確かに霊夢は羨ましいし、憧れる。妬ましいと思うこともある。
 だからって霊夢と違う自分を否定しちゃ駄目だ。
 じゃないと、私に憧れてくれる霊夢に申し訳が立たない。
 私は、いつも通りの私でいればそれで良いんだ。
 霊夢が、いつも通りの霊夢でいてくれるように。

 けど、

 憧れるくらいは、良いだろ?
 やっぱ霊夢はカッコいいからさ。
初投稿となります、アグニ@紫と申します。今後ともよろしくお願いします。
ちなみに紫は「ムラサキ」と読みます。紛らわしいですね、すいません
まだまだ未熟故、誤字脱字や気になるところ等ありましたら遠慮・容赦なく教えていただければ幸いです
アグニ@紫
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コメント



0.500簡易評価
5.70名前が無い程度の能力削除
主題は明確ですが短くまとまり過ぎているのが残念です、目指せ10KB(今の1.5倍)
霊夢の葛藤を対軸として織り込むとか二人の違いに文章を費やすことで長さを伸ばしましょう
あとSSは段落の最初は一文字下げるとか基本的な作法があります、他の人の作品を読んで学んでください
7.80名前が無い程度の能力削除
内容が良いだけに、確かにもう少し長さが欲しかったかも。
魔理沙の迷い・悩みがよく表現されてて面白かったです。
10.無評価アグニ@紫削除
>>5さん
コメントありがとうございます。参考にさせていただきます
長さは、あんまり長くなりすぎてもアレだろうし、とりあえず3000字以内にまとめる
という目標でやっていましたので…見事に裏目に出てしまいましたね
いずれ、長さを気にせず書いた作品を投稿したいと思いますので
その時はまた宜しくお願いします

>>7さん
コメントありがとうございます
迷い、悩みといった魔理沙の心情に関しては、上手く表現できているか心配だったので
一先ず安心しました
長さに関しては同上です。これから頑張っていきます
16.100名前が無い程度の能力削除
これだけ短くまとめられて、かつ言いたい事がしっかり表現されてるのが凄いと思う。
確かに中身に対しては短すぎると思ったけど、題材が題材ならこの長さでも十分いけるかと。
これからに応援します
18.無評価アグニ@紫削除
>>16さん
お褒め頂きありがとうございます!
これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします!
19.80名前が無い程度の能力削除
素直な題材を読みやすい文章でスッと読むことができた
やっぱり良い雰囲気の作品を読むと「もっと長く読んでいたい」という欲はでてきちゃう
なので今後に期待
20.703削除
テーマはありきたりですが魅力あるものです。
やはり「もっと長く読みたい」という気持ちになりますね。
次回作もお待ちしております。