夕食後、あたいはさとり様の膝の上で丸くなっていた。
どちらかと言うと華奢なさとり様だが、太ももは素晴らしく柔らかい。ふんわりと、スカートからバラの香りがただよう。香水などは使っていないらしいが、さとり様からはいつもいい香りがする。これが少女臭というやつなのだろうか。
優しくあたいの背中を撫でてくれる。飼い主歴が長いだけあって、あたいが知るかぎり誰よりも撫でるのが上手い。手のぬくもりで、心まで温まる。ああ、至福のとき。
さとり様の膝の上はペット間での競争が非常に激しい。喧嘩するとさとり様が悲しむので話し合いで決めているが、数が多いので週1回ぐらいしかまわってこない。
「寒くなってきましたし、こたつを出しましょうか」
不意にさとり様がつぶやく。
こたつ……こたつ! それはあたいが最も待ち望んでいたものだった。
こたつとお燐
「うにゅ、お燐? こんな遅くに何ごそごそしてるの?」
「こたつ出してるんだよ♪」
さとり様のこたつ出す宣言を聞いたあたいは、直ぐに倉庫に眠っていたこたつ一式を引っ張り出した。その物音を聞きつけたのか、お空がのぞきにきた。
「こたつかぁ、最近寒いからね。でもこんな夜遅くに準備しなくても良いんじゃないかなぁ」
「だってこたつだよ!早く出さないと! はりー! はりー!」
猫とこたつは一蓮托生であり、さとり様を質に入れてでもできるだけ早く出す必要があるのだ。これは猫の権利であり義務である。
「お燐はこたつ好きだねぇ」
「猫だからね!」
「なにか手伝おうか?」
お空が手伝いを申し出てくれる。真夜中に勝手にやってるんだから、放っておいても誰も文句を言わないだろうに。
お空は本当に人?(妖怪?)が良い。こんなに素直じゃ、いつか変な人にだまされないか心配だ。お空がだまされて見知らぬ男に汚されるぐらいならいっそあたいが……。はっ、変な雑念が混じった。
「設置は一人でできるから、豆炭にとってきてくれないかな?」
「わかったー」
お空が炭置き場に豆炭をとりに行く。
外の世界では電気式こたつ(博麗神社に設置してあった。隙間妖怪が置いたものらしい)がメジャーらしいけど、幻想郷ではまだ豆炭式がメジャーだ。豆炭は一度火をつければ丸1日ぐらい暖かいうえ、体の芯まで暖かくなる感じがすきだ。
「さて、さっさと設置しちゃおうかね」
机や掛け布団といったこたつ一式を抱えて談話室に向かう。いつも運んでいる死体に比べれば軽いものだ。
普段は他のペットがたむろしている談話室も、夜遅いせいか誰もいない。
机を組み立ててと。長年使っているから、年季も入ってぼろぼろだ。あたいが爪とぎしちゃった傷に、お空が調子乗って焦がした跡。これは寝ぼけたこいし様がみかんと間違って噛み付いた跡だったかな。あ、見慣れないひっかき傷発見。一体誰がつけたんだ、まったく。
そしてちょっとカビ臭い布団をかけてと。みんなのよだれと涙が染み込んだシミが浮かぶ一品だ。地上だと、布団は晴れた日に干すらしいけど、地底だと干してもしょうがないし、お空が使ってれば自動的にフワフワになるからそのままかける。
四半刻もかからず準備は整う。
「よし、完成と」
「豆炭持ってきたよー」
組み立て終わったぐらいに、丁度お空が豆炭を持ってくる。
「それじゃあ早速火をつけるよ」
「おー!」
お空から豆炭を受け取り、妖術で指先から火を出して炭を炙る。
じりじりじり……
「……」
「……」
まだ炙る。
じりじりじり……
「……」
「うにゅー。やっぱり時間が掛かるね」
炭は火が付きにくい。炭には木材と異なり水素が含まれていないから、燃えないためだ(とさとり様が言っていた)。
「うにゃぁ!火がつかないぃ!」
こたつが目の前にあるのに、豆炭に火がつかないせいで使えない。
あたいにこたつを使わせないなんて豆炭はなんて悪いやつなんだ。そうだ、こんな悪いやつはやっつけちゃえ!
「お空! 火がつかない豆炭なんて核の力でやっつけちゃえ!」
「いや、もうちょっと頑張って火をつける努力をしようよ、お燐……」
「いいからさっさとこの汚物を原子レベルまで分解するんだ!」
「もう、私が火をつけるから貸して」
お空に豆炭が奪い取られる。
「あとは全部やっておくから、お燐はそこで丸くなってて!」
呆れながら、火をつけ始めるお空。
お空がそう言うならしょうがない、猫になって丸くなってよう。
四半刻もたっただろうか。丸くなって寝ていたところを揺さぶられる。
「おりーん、火ついたよ」
「にゃ!?まってました!」
寝ている間にお空が残り全部やってくれたらしい。準備万端、こたつの完成だ。
「一番のりー!」
早速こたつに潜り込む。
「にゃー、極楽極楽」
「こら、顔は出しておかないと一酸化炭素中毒になっちゃうよ」
と思ったら首根っこ掴まれて引きずり出される。
「あ、こいしさま」
いつの間にかこいし様がきていた。
「こいしさまぁ、あたいは妖怪ですよ。毒ガスぐらいでやられると思ってるんですか?」
豆炭からは一酸化炭素という毒ガスが出ていて、あんまり吸いすぎると体を壊す(とさとり様が言っていた)。
「去年そう言って調子乗った挙句、丸一日こたつにもぐりこんで具合が悪くなったのはどこの猫ちゃんだったかな?」
「そうだよおりん~」
「だってこたつですよ!猫の存在意義ですよ!」
「やっすい存在意義だなぁ。ま、今はここで我慢しておきなさい」
こいし様の膝の上に乗せられる。
さとり様と同じくやわらかい太ももだ。やはりバラの香りがする。引きこもりのさとり様と、出ずっぱりのこいし様、性格は正反対だけどやっぱり姉妹なんだなぁと思う。
優しく撫でられていると、なんだか眠くなってきちゃった。
にゃー、おやすみなさい。
---
お燐もお空も膝の上で寝てしまった。うちのペットはみんな健康優良児で早寝早起きだからねぇ。恋焦がれて夜の街でフォール・イン・ラブしちゃうような悪い子の私とは違う。
お燐もお空も毛並みツヤツヤで、いつまでも撫でていても飽きない。でもこのままだと風邪引いちゃいそうだしなぁ。どうしよう。
「こたつで寝るなと言いつけてあるのですがね」
「あ、おねえちゃん。」
と心配しているとおねえちゃん登場。相変わらずペットの事になるとマメである。
もう少し自分の身の回りのこともマメにしてくれるといいんだけど。今も髪の毛の後ろの方跳ねてるし。寝ぐせだとしたら一日中放っておいたことになる。もとはいいのに、残念すぎる。
「どうしようか?」
「この子たちは寝付きがいいから、ベッドにそっと置いてくれば大丈夫ですよ」
そういうと、おねえちゃんはお空をだきあげる。
「お燐の方はおねがいね。こいし」
「わかったー」
二人を寝かせたら、おねえちゃんとこたつプレイすることを決めながら、お燐を抱きかかえて寝室へ向かうのだった。
どちらかと言うと華奢なさとり様だが、太ももは素晴らしく柔らかい。ふんわりと、スカートからバラの香りがただよう。香水などは使っていないらしいが、さとり様からはいつもいい香りがする。これが少女臭というやつなのだろうか。
優しくあたいの背中を撫でてくれる。飼い主歴が長いだけあって、あたいが知るかぎり誰よりも撫でるのが上手い。手のぬくもりで、心まで温まる。ああ、至福のとき。
さとり様の膝の上はペット間での競争が非常に激しい。喧嘩するとさとり様が悲しむので話し合いで決めているが、数が多いので週1回ぐらいしかまわってこない。
「寒くなってきましたし、こたつを出しましょうか」
不意にさとり様がつぶやく。
こたつ……こたつ! それはあたいが最も待ち望んでいたものだった。
こたつとお燐
「うにゅ、お燐? こんな遅くに何ごそごそしてるの?」
「こたつ出してるんだよ♪」
さとり様のこたつ出す宣言を聞いたあたいは、直ぐに倉庫に眠っていたこたつ一式を引っ張り出した。その物音を聞きつけたのか、お空がのぞきにきた。
「こたつかぁ、最近寒いからね。でもこんな夜遅くに準備しなくても良いんじゃないかなぁ」
「だってこたつだよ!早く出さないと! はりー! はりー!」
猫とこたつは一蓮托生であり、さとり様を質に入れてでもできるだけ早く出す必要があるのだ。これは猫の権利であり義務である。
「お燐はこたつ好きだねぇ」
「猫だからね!」
「なにか手伝おうか?」
お空が手伝いを申し出てくれる。真夜中に勝手にやってるんだから、放っておいても誰も文句を言わないだろうに。
お空は本当に人?(妖怪?)が良い。こんなに素直じゃ、いつか変な人にだまされないか心配だ。お空がだまされて見知らぬ男に汚されるぐらいならいっそあたいが……。はっ、変な雑念が混じった。
「設置は一人でできるから、豆炭にとってきてくれないかな?」
「わかったー」
お空が炭置き場に豆炭をとりに行く。
外の世界では電気式こたつ(博麗神社に設置してあった。隙間妖怪が置いたものらしい)がメジャーらしいけど、幻想郷ではまだ豆炭式がメジャーだ。豆炭は一度火をつければ丸1日ぐらい暖かいうえ、体の芯まで暖かくなる感じがすきだ。
「さて、さっさと設置しちゃおうかね」
机や掛け布団といったこたつ一式を抱えて談話室に向かう。いつも運んでいる死体に比べれば軽いものだ。
普段は他のペットがたむろしている談話室も、夜遅いせいか誰もいない。
机を組み立ててと。長年使っているから、年季も入ってぼろぼろだ。あたいが爪とぎしちゃった傷に、お空が調子乗って焦がした跡。これは寝ぼけたこいし様がみかんと間違って噛み付いた跡だったかな。あ、見慣れないひっかき傷発見。一体誰がつけたんだ、まったく。
そしてちょっとカビ臭い布団をかけてと。みんなのよだれと涙が染み込んだシミが浮かぶ一品だ。地上だと、布団は晴れた日に干すらしいけど、地底だと干してもしょうがないし、お空が使ってれば自動的にフワフワになるからそのままかける。
四半刻もかからず準備は整う。
「よし、完成と」
「豆炭持ってきたよー」
組み立て終わったぐらいに、丁度お空が豆炭を持ってくる。
「それじゃあ早速火をつけるよ」
「おー!」
お空から豆炭を受け取り、妖術で指先から火を出して炭を炙る。
じりじりじり……
「……」
「……」
まだ炙る。
じりじりじり……
「……」
「うにゅー。やっぱり時間が掛かるね」
炭は火が付きにくい。炭には木材と異なり水素が含まれていないから、燃えないためだ(とさとり様が言っていた)。
「うにゃぁ!火がつかないぃ!」
こたつが目の前にあるのに、豆炭に火がつかないせいで使えない。
あたいにこたつを使わせないなんて豆炭はなんて悪いやつなんだ。そうだ、こんな悪いやつはやっつけちゃえ!
「お空! 火がつかない豆炭なんて核の力でやっつけちゃえ!」
「いや、もうちょっと頑張って火をつける努力をしようよ、お燐……」
「いいからさっさとこの汚物を原子レベルまで分解するんだ!」
「もう、私が火をつけるから貸して」
お空に豆炭が奪い取られる。
「あとは全部やっておくから、お燐はそこで丸くなってて!」
呆れながら、火をつけ始めるお空。
お空がそう言うならしょうがない、猫になって丸くなってよう。
四半刻もたっただろうか。丸くなって寝ていたところを揺さぶられる。
「おりーん、火ついたよ」
「にゃ!?まってました!」
寝ている間にお空が残り全部やってくれたらしい。準備万端、こたつの完成だ。
「一番のりー!」
早速こたつに潜り込む。
「にゃー、極楽極楽」
「こら、顔は出しておかないと一酸化炭素中毒になっちゃうよ」
と思ったら首根っこ掴まれて引きずり出される。
「あ、こいしさま」
いつの間にかこいし様がきていた。
「こいしさまぁ、あたいは妖怪ですよ。毒ガスぐらいでやられると思ってるんですか?」
豆炭からは一酸化炭素という毒ガスが出ていて、あんまり吸いすぎると体を壊す(とさとり様が言っていた)。
「去年そう言って調子乗った挙句、丸一日こたつにもぐりこんで具合が悪くなったのはどこの猫ちゃんだったかな?」
「そうだよおりん~」
「だってこたつですよ!猫の存在意義ですよ!」
「やっすい存在意義だなぁ。ま、今はここで我慢しておきなさい」
こいし様の膝の上に乗せられる。
さとり様と同じくやわらかい太ももだ。やはりバラの香りがする。引きこもりのさとり様と、出ずっぱりのこいし様、性格は正反対だけどやっぱり姉妹なんだなぁと思う。
優しく撫でられていると、なんだか眠くなってきちゃった。
にゃー、おやすみなさい。
---
お燐もお空も膝の上で寝てしまった。うちのペットはみんな健康優良児で早寝早起きだからねぇ。恋焦がれて夜の街でフォール・イン・ラブしちゃうような悪い子の私とは違う。
お燐もお空も毛並みツヤツヤで、いつまでも撫でていても飽きない。でもこのままだと風邪引いちゃいそうだしなぁ。どうしよう。
「こたつで寝るなと言いつけてあるのですがね」
「あ、おねえちゃん。」
と心配しているとおねえちゃん登場。相変わらずペットの事になるとマメである。
もう少し自分の身の回りのこともマメにしてくれるといいんだけど。今も髪の毛の後ろの方跳ねてるし。寝ぐせだとしたら一日中放っておいたことになる。もとはいいのに、残念すぎる。
「どうしようか?」
「この子たちは寝付きがいいから、ベッドにそっと置いてくれば大丈夫ですよ」
そういうと、おねえちゃんはお空をだきあげる。
「お燐の方はおねがいね。こいし」
「わかったー」
二人を寝かせたら、おねえちゃんとこたつプレイすることを決めながら、お燐を抱きかかえて寝室へ向かうのだった。
膝枕とか羨ましい…!
いい話でした。猫とこたつは本当によく似合います。
そしてこたつプレイの古明地姉妹も(ry
短いながらお燐のキャラクターがしっかりと立っていて良かったです。