Coolier - 新生・東方創想話

孤独な魔理沙 プロローグ

2012/12/03 23:07:56
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 霧雨魔理沙 魔法研究兼生活日記より

 11月27日 忌々しい初雪が降った。雪が降ると魔力の精製は普段より容易になるが、なにぶん寒い。
       さっさとこたつに潜りこんで、暖かい紅茶とケーキで借りた本でも読もう。
 11月29日 パチュリーのヤツが突然人の家にボムを撃ってきやがった。
       結界で防御してあるので、屋根に積もった雪を蒸発しただけだったが。面倒だが適当に応戦して諦めさせる。
 11月30日 破れた結界の修復と再構築。防御魔法はあまり得意ではないのに面倒だ。相変らず寒い。
 12月01日 昨日の無理が祟ったのか微熱がある。こういう時は大人しくしておこう。
 12月05日 体温計が示した数値は38.6℃。風邪が長引いている。慢性化すると厄介だな…
 12月07日 霧雨魔理沙完全復活だぜ。
 12月08日 久しぶりにアイツのところに行った。病み上がりなので弾幕勝負はお預け。
       アイツが入れる緑茶はやっぱりうまい。今日は神社で過ごす事にした。
 12月09日 神社から直接図書館に本を借りに行く。病み上がりのせいか上手く飛べない。
 12月10日 パチュリーがまた来た。毎回面倒だし何冊か返したら大人しく帰って行った。
 12月15日 体調が優れない。
 12月17日 熱は無いが体の気だるさが抜けない。自前の栄養剤を飲む。
 12月18日 気分転換に神社へ行こうと思ったが、上手く箒で飛べない。それほど衰弱してるようだ。
 12月19日 箒で飛ぶことが出来ない。私の体に何か異変が起きている?分からない。
 同日深夜  嫌な夢を見た。窓を開けると気分が少しはマシになった。
 12月22日 体調が優れない原因が判明した。どうやら私の魔力が徐々に失われているらしい。
       原因は不明。早急に対策を講ずる。
 12月23日 推測、何者かが仕向けた攻撃魔法の可能性。先日の風邪に似た症状を詳しく分析。
       血液、唾液を採取。
 12月24日 血液、唾液ともに異常無し。私以外の魔力の残留無し。対策未だ不明。
 12月25日 魔力の減少に歯止めが掛からない。小さな炎すら精神を集中しなければ出せなくなった。
 12月26日 パチュリーが弾幕勝負をかけに来た。詳細は書く必要ない。
 12月……













「一月十九日…私は一体何をやっているんだ?」

 息を一息つきコトリと、羽ペン机の上に落とす。鵞鳥の美しく力強かった羽は、今では溝鼠が伏せているかのように褪せている。

「はぁ、買い物…行かないと…」

 寒さで軋む椅子を離れ食料の保管されている戸棚へと視線を落とす。整理された小瓶には、塩、胡椒、タイムなどのラベルが貼られていた。その他の食材は一切見受けられない。

「今日も寒そうだな」

 水滴に濡れたガラスを手で拭い、彼女の吐く息が窓を曇らせる。外は一面白銀の世界に包まれていた。いつもの白黒服に加え帽子とマフラーを取りに二階へと取りに行く。

「また埃が落ちてる」

 階段を登る際に舞い上がった埃を指でつまみつつ呟く。
 部屋の中は至って綺麗だ。散々散らかっていた魔道書は、全てパチュリーに返した。返したというより、奪い返されたのだ。
 ここ数日は部屋掃除に勤しんだ。下手に外出すると妖精や妖怪に襲われるからだ。お陰で食料の備蓄に全く気を払えなかった。吹雪く前に気が付いて良かった。

 魔法の研究をしようにも、今の私にはもう必要の無いことだ。今の私に一体何が残っている?ゴミのような蒐集品に便所紙程度にしか使えない研究成果を集成した本だけだ。あの頃は狂ったように研究していたが、今はフラスコ一本見るだけで吐き気がする。研究室の中は以前のまま放置してある。

 塵一つ落ちていない帽子掛けから帽子とマフラーを手に取った。帽子を深く被り回りに自分の顔が見えないようにする。

「ちょっと足りないかな…」

 ポケットを弄り残金を確認するも、紙屑とコインが一、二枚しかなかった。

「しょうがない、また売るか…」

 現役時代に使っていたウェストポーチを取り出し、魔道書と蒐集品を適当に詰め込む。こんなものでも欲しい人間は存在するらしい。需要らしい需要は無いが、今の私にはこれしか収入源が無い。
 寒さで軋んだ体をほぐし玄関の扉を開けた。玄関の横に立て掛けられた箒には、雪が積もっていた。だが、もう必要の無い物だ。実家を飛び出すとき一緒に持ち出したそれは、屋根の雪下ろし程度にしか使ってない。

「いってきます」

 ある筈の無い返事を期待するかのように語りかける。

「ふふふっ、寂しいと独り言が増えると聞いたが、どうやら本当らしいな」

 箒に軽く触れ、別れを告げるとゆっくり森の奥へ歩みを進める。







 私の魔力が失ってから今日で丁度一ヶ月目だ。最初は疲労で一過性なものだと思っていた。だが、日が経つにつれ自分の中から魔力が着実に失っていくのが分かった。私は恐怖した。

 このまま魔力が失ったらどうなるのだろう?
 私は死んでしまうのか?
 それとも、弱った私を妖怪どもが喰いに来るのか?

 様々な考えを巡らせ、眠れぬ夜は一夜二夜どころではない。既に微かな物音にさえ驚倒する小心者に成り下がっていた。
 この一ヶ月黙って魔力が衰退していくのを受け入れた分けではない。考え得る全ての可能性を検証した。だが、成果らしい成果は得られなかった。緊急時にと魔力を溜めた魔石も、もう全て使い切った。

 言うまでも無く真っ先に霊夢に相談しに行った。あいつなら何か解決策を見出してくれる…そう信じていたからだ。
霊夢自身強い力を持ち万一の時には、誰よりも頼りになる。普段から怠け癖があるのが少々難点だが。そして、私の親友だ。

「あら、大変ね」

 これが霊夢の放った言葉だ。特に興味も無さそうに一蹴りされてしまった。私はそれ以来神社には行っていない。あいつは親友だと今まで思っていたが、どうやら私の思い違いだったようだ。その日家に帰った私は、気が狂いそうなほど泣いた。

 無くなった魔力は魔石とミニ八卦炉を使って対処していた。ミニ八卦炉の魔力はキノコから作った燃料を使うから、壊れない限り永遠に使える。そう、壊れなければ。
 こんな時に限って相棒は呼応するかのように壊れてしまった。メンテもろくにしないで乱暴に扱ってきたのが悔まれる。いつも通り霖之助に修理をさせるために店に足を運ぶことにした。

 しかし、甘い考えだと直ぐに思い知らされた。

 散々好き勝手商品やら食料やらを強奪し、更に半ば脅迫気味に修理させていたのだ。霖之助からしては凶悪妖怪が急に何も出来ないただの人間に変わったに等しい。
 どこから私の情報を仕入れたのか分からないが、私の顔を見た瞬間「帰ってくれ」の一言だ。香霖堂にもこの日を境に行っていない。この日は不思議と気分が冴えていた。

 今の私は、たまに人里に下りて蒐集品を売っては細々と生きていくしかなくなっていた。
 今日もその帰りだ。今日は魔法石五個と魔道書三冊、それに蒐集品の魔法アイテムが少々売れた。これだけ売ってやっとパン一斤とトマト一個が買える程度だ。
 人里のヤツ等も相当足元を見ている。人間と言うのは群れで行動する動物と一緒だ。群れから離れた私は当然余所者と同じか、それ以下の扱いになる。

 帰り道もう一度紙袋の中を確認した。今日の夕食はパンとトマトだけのサラダと…ああ、そういえば戸棚の奥にミルクがあったな。腐ってなければトマトとミルクのスープも作れるな。中々ゴージャスな夕食になりそうだ。

 街道から魔法の森に入ると気分が落ち着く。周りを深山の如く大木が立ち並び、その中に獣道とも見間違う道が一本森の奥に伸びている。私の家は入り口から少し離れていて、飛べば五分と掛からないが今はもう無理な話だ。まあ、のんびり行こう。

 森の木々が放つ瘴気を胸一杯に吸い込む。冬の冷気に冷やされたそれは、肺を中心に徐々に四肢へと流れていく。普通の人間なら毒にしかならない瘴気も、私にとっては甘い香の様なものだ。
 いつもなら飛んで一気に抜ける所を徒歩で気長に進む。こういうのも悪くない。鼻歌でも歌って良いぐらいだ。

 不意に森の奥から人影の様なものが見えた。体が一瞬硬直する。瘴気の煙霧のせいで顔や大きさまでは分からないが、二人居るのは間違いない。今の私は魔力が無くただの人間だ。それに加え私に恨みを持つ妖怪や人間は少なくない。人間ならともかく、妖怪や妖精の類だったら少々面倒だ。

 どうする?引き返すか?

 考える暇も無く二つの人影は、私に向かって飛翔してきた。
 二つの影はチルノとルーミアだった。最悪だ。



 つづく
初めまして、猫狐と申します。
今回初めて創作話を書き投稿させて頂きました。

改行や句読点と見苦しい箇所が多く、幼稚な文章など気になる点を上げたら切がないと思われます。

魔理沙好きの私ですが、こんな可哀想な魔理沙も良いなと思い書かせて頂きました。
なるべく早い内に次を投稿できればと思っていますが、最終的に魔理沙をどうするかは決まっていません。

彼女がこの先どうなるのか、私自身楽しみながら書ければと思っています。
猫狐
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コメント



0.900簡易評価
4.90名前が無い程度の能力削除
これから魔理沙がどうなってしまうのか、とっても気になりました。
期待しながら続きをゆっくり待ってます。
6.90名前が無い程度の能力削除
描写が細かくて想像しやすかったです。
続きを楽しみにしています。
11.100名前が無い程度の能力削除
これからに期待も込めて。
魔理沙は一見派手だけど、基盤が脆いから簡単な事で危ない目に合う印象。
それだけにこういったピンチが似合いますね。ね!

魔理沙をべた甘やかしする事に定評のある森近の旦那がすげないのと、森の空気が平気なのが伏線なのかな?
と考えつつも全裸待機。
12.30名前が無い程度の能力削除
文章は気になりませんでした。
ただ、着地点を決めないで書いているんですね。読みながら、どう決着つける気なんだろうと期待していたので、行き当たりばったりだと知ってがっかりしました。
結末までプロットを練っていない作品はあまり期待出来ないし、とりあえず後先考えず魔理沙を不幸にしてみただけってことですよね?
14.30機会仕掛けの神削除
 続きを楽しみにしています。
15.80奇声を発する程度の能力削除
ここからどう展開するか楽しみです
18.100名前が無い程度の能力削除
続きが楽しみです。
21.無評価名前が無い程度の能力削除
穏便にいこうや(震え声
22.50名前が無い程度の能力削除
期待を込めて、まずは五十点。
25.90名前が無い程度の能力削除
次回作を楽しみにしています
31.無評価名前が無い程度の能力削除
次のペンネームでの作品を楽しみにしています。
36.10名前が無い程度の能力削除
魔理沙虐め系の突然魔力なくなる、何故か周りから総スカン、因果応報でしょ?は目新しくない。反応見ながら書くの?
39.80名前が無い程度の能力削除
霊夢とこーりんつめてえぇwww