Coolier - 新生・東方創想話

車窓

2012/11/22 22:05:43
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「ねぇ、蓮子」
「んー?」
「ねぇってば」
「んー……」
「もう、電車出ちゃうわよ」
「いや、もう既に乗ってるんだから、どうでもいいじゃない」
「蓮子は、電車の出発の瞬間とか、気にしないタイプなの?」
「気にするタイプが存在することを、今始めて知ったわ」
「あっ、動いた!」
 
 ガタリと、電車全体が揺れ、慣性の法則に従って、椅子の上に置いた蓮子のバッグが落ちかけた。

「……随分楽しそうね、メリー」
「だって。楽しくない?」
「そうね、たった今バッグの紐が首に食い込んだりしていなければ、少しは楽しめたのかもしれないわ」
「ゲンキンなのね」
「リアリティがあるの」

 車窓からの景色は駅舎から開放され、僅かながら空が広がり、光が差し込んできた。

「わぁ、ほら。見てよ蓮子」
「何よ、見慣れた街の見慣れた景色じゃない」
「いつもと違う視点、ってことに意味があるのよ。ほら例えば、あそこのビルの裏口が二階にあるなんて、知ってた?」
「それはまぁ……知らなかったけど」
「ね? 見慣れてるからって、油断しない方がいいのよ」
「メリーの方が、なんだかゲンキンな気がするわ」
「リアリティなら、ないわよ? 目の前にあるものは、現実なんだもの」
「現実には、リアリティがないですって?」
「雲に対して、曇ってますね、なんて言う?」
「太陽に向かって、眩しいですね、くらいは言うかもね」
「あ、駅」

 各駅停車の電車はゆっくりと減速し、車掌は駅の名前を告げる。

「メリー。止まる瞬間は、どうでもいいの?」
「一々そんなの気にしていたら、疲れるし、飽きちゃうじゃない」
「まぁ……そう、ね」
「釈然としない、って感じね」
「するとでも思ったの?」
「空はこんなに晴れているのに」
「どこかできっと、雨は降っているわ」
「どこかできっと、電車が動き始めているのと、同じでね」
「なんでそんなに得意げなのよ、メリー」
「疲れちゃったから、少し寝るわ」

 そう言ってメリーは、自分のバッグを抱いて身体を丸めた。

「……本でも、読もうかしらね」

 蓮子は車窓に目を移す。
 太陽は予想以上にまぶしくて、蓮子は思わず、目を細めた。
こうするといいですよ、じゃなくて。
私はこうしたいんです。

一応『行先』に続きます。
歩く楽しみ
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コメント



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8.80courgette削除
会話を中心に話が進むようですが,自分としてはもう少し表情描写を入れてもらえるとより感情移入しやすく,また萌えられます.
せっかくいい雰囲気のストーリーなのですから,せっかくなら作者さんの考えた通りの表情をしたキャラクターを読みたいです.
9.70名前が無い程度の能力削除
二人のやりとりがとても良いゆえに、
もう少し長い話を読んでみたいです。
10.70奇声を発する程度の能力削除
やり取りが面白く良かったです