Coolier - 新生・東方創想話

容疑者 サナエコチヤ

2012/11/06 17:54:32
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「珍しいですね、霊夢さんの方からうちにやって来るなんて。歓迎しますよ」
「早苗、気持ちは有難いんだけど、遊びに来たわけじゃないのよ」
 買い物に出かけるところだった早苗であったが、玄関を出たところで偶然霊夢が訪ねてきた。
 早苗は首を傾げる。
「どうしたんです? もしかして博麗もとうとう守矢の傘下に入ることにしましたか? そういう話ならいつでもウェルカムです」
「いや……そうじゃないんだけど……ちょっと中で話さない?」
 早苗は怪訝に思った。今の霊夢からは、日頃の脳天気さが窺えない。何か重大な用事があるに違いなかった。
「いいですよ。じゃあ応接間で待ってて下さい、お茶と饅頭でもお出ししますよ」
「待った」
 奥に引っ込もうとした早苗を、霊夢は遮った。早苗からすれば、この巫女は三度の飯よりお茶を愛する人種である。ゆえに、この静止は意外であった。
 彼女は風祝を見据え、有無を言わさぬ口調で告げる。
「お茶も饅頭も要らないわ。代わりに、二柱を呼んできてちょうだい」
 地底の異変の頃ならまだしも、博麗の巫女がいまさら、守矢の神に何の用であろう。早苗は訝りながらも頷いた。これといって拒否する理由もない。
 ただ、霊夢が自分に向けていた視線。それが、彼女が見せたことのないような、鋭いものだったことが気にかかった。



******



「で? 博麗の、どういう要件なのさ」
 尋ねる神奈子。
 応接間には三人が座っていた。諏訪子は出かけていたために欠席である。
 霊夢は出された茶にも手を付けず――彼女にしては驚くべきことだ!――ゆっくりと口を開く。
「昨日の夜のことよ。人里で、死体が歩き出した」
「は?」
 一ヶ月前、里で流行病が起きた。
 これは猛威を振るい、永遠亭や命蓮寺、そして守矢神社の尽力にも関わらず、十余名もの死者を出し、この前ようやく収束したのだ。
 問題は、そこから先である。
 病原体を持つがために隔離された死体――それが起き上がって、動き出したというのだ。
「今は建物を外から封鎖してるから、病気がそこら中にバラ撒かれるのは防げてるけど……時間の問題ね。それに、遺族からしたら堪え難いものだし」
「そうですね、由々しき事態です」
「人里の連中は勿論、命蓮寺の連中も原因が分からないって言うから、私にお鉢が回ってきたってわけ。まったく、貧乏くじだわ」
 その一瞬、霊夢は日頃の気怠げな表情に戻ったが、すぐにそれは掻き消された。
 早苗は霊夢が言ったことを頭の中で反芻し、尋ねる。
「なるほど……では今は、情報を集めている段階なのですね?」
「いや、違うわね」
 霊夢は首を横に振ると、二人を交互に見て、言った。
「犯人ならもう、九割がた割れてんの」
 その言葉に、早苗は戦慄した。
 霊夢の発言が真実なら、彼女がここに来た理由は一つになる。
 神奈子が重々しい声で問いかける。
「博麗の。天地神明に誓うが――いや私が神に誓うのはおかしいが、とにかく――うちは不届き者を匿ったりしていない。異変のことだって、今知ったぐらいだ」
「残念だけど、信用するわけにはいかないのよ。……私の目の前に、犯人が居るんでね」
 霊夢の視線は、まっすぐ一人を見据えていた。
 ――早苗。
 神奈子が己をゆっくりと見据える。あり得ない、と語っていた。
「霊夢さん、何か勘違いしていませんか。そんな異変を起こして、何のメリットがあるんです? 守矢にとって人里は懇意にしている相手ですよ?」
 慌てて弁解する早苗。胸中、非常な焦りがあった。
 完全な濡れ衣だ。それで犯人扱いされて、里との関係がこじれたら、たまったものではない。
 里は山の次に、神社の重要な信仰供給源なのだ。
「そうだ、キョンシーにされたのでは? そういうことを出来る仙人、こないだ現れたでしょう」
「あいにく、既に調べてるわ。あの死体にはそういう術がかかっていなかった。それに、隔離された死体には、誰も近づいていないのよ……ただ一人を除いて」
「早苗まさかお前」
 馬鹿な、という口調で神奈子が問いかけてくる。声色は、否定を望んでいた。
 だが現実は残酷で、早苗には心当たりがあったのだ。
 霊夢は一言一言、染みこませるように言う。

「早苗。唯一あの死体に触れる機会があったのは、昨日の昼に病祓いの祈祷をした、あんただけだった訳よ」

「――馬鹿な! いい加減にしろ博麗の!」
 はじかれたように叫ぶ神奈子。その顔は、はっきりと青ざめていた。早苗も同様である。
 しかしそれでも、霊夢の表情は露とも変わらない。
 悪くなる状況に軽い絶望を覚えながらも、早苗は頷かざるをえなかった。
「ええ。そうです。確かに私は昨日の昼、病祓いをしました。でもそれは、人里の方々の心を慰めるためです! 邪な考えなんて、一切抱いていないッ!」
「神奈子。病祓いのことは知ってた?」
「……いや、初耳だった。確かに昨日、出かけていたな」
「意図的に知らされなかった可能性もあるわ」
「何のために? それに、さっき早苗も言ったが、私たちみたいな立場の者が里にちょっかいを出すメリットが無い」
「あんたらに知らせたら、確実に介入するでしょうが。そうしたら死体に何かしら仕込むのが難しくなる。メリットは、それが何かは知らないけど、早苗個人に何かあるかもしれない。大体、それを調べるのは私じゃないわ。私が頼まれたのは、早苗を連れてくることだけよ」
「むう……」

 黙りこむ神奈子。
 早苗は殆ど諦めていた。自分が犯人? そんなことは、どんな奇跡があってもあり得ない――だが、状況をひっくり返すことが難しいのは分かる。客観的に見て、自分が一番怪しい。自分が霊夢のポジションにいても、真っ先に自分を疑うだろう。
 せめて、守矢神社の立場を悪くせずに済む方法はないか……そういう考えに早苗が至ったとき、神奈子が不意に立ち上がった。

「そうか――分かった! 分かった」
「……何が」
「博麗の、ちょっと私の話を聞いておくれ」
「この件に関係したことなら、ね」

 渋々ながらも了承する霊夢。それを受けて、神奈子は語り出した。

「まず結論から言おうか……この件には、犯人も何もない」
「つまり?」
「これは過失、ということだ」

 断言する神奈子。だが、霊夢は納得しない。

「なるほど。病祓いは難しいし、早苗が特にそちら方面に詳しいわけでもない。だから失敗してもおかしくない――まあ、可能性として有り得なくないわね。でもその根拠だって無いじゃない。疑いを晴らせるほどではないわ」
「まあ聞け。早苗、早苗が祈祷をしたのは、間違いなく死者なんだな? 生きていない?」
「え? あ、はい。勿論です」

 その答えに、満足気に頷く神奈子。
 早苗も霊夢も、彼女の発言の意味を測りかねた。

「神奈子。何が言いたいの? 動き出したのが死者だっていうことがそんなに重要?」
「ああ。さらに言えば、祈祷をしたのが早苗だっていうのも、この勘違いを招いた原因さ」
「意味がわからないわ」
「なあに、簡単なことさね。いいかい? 早苗、そして死者。これが意味するところは――」

 そこで神奈子は言葉を切り、続ける。

























「鬼籍を起こす程度の能力、ということさ」
チーッス お久しぶりござる チーッス

↓のセルフカバーにござる 併せてお楽しみござる ニンニン
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喚く狂人
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コメント



0.3040簡易評価
1.50名前が無い程度の能力削除
山田くーん、喚くさんの座布団一枚持っていきなさい
3.70ぴよこ削除
衰えてませんね。
7.50名前が無い程度の能力削除
これだよ。このくだらないの一言で済む話なのにオチまで読ませてしまう謎の吸引力。
12.100名前が無い程度の能力削除
ワハハ
ワハハハ
16.70名前が無い程度の能力削除
約一年ぶりにこのくだらなさ。

これこれ、こういうのでいいんだよ。
19.80名前が無い程度の能力削除
くそうwww
22.90白銀狼削除
久しぶりに読めて安心した…
喚くさんの作品は何故かオチまで引き付けられて読んじゃう。
23.70名前が無い程度の能力削除
なんとも言えない気持ちになった
24.80葉月ヴァンホーテン削除
寝ろ
26.80名前が無い程度の能力削除
ンモー、またこういうオチにするー
28.70名前が無い程度の能力削除
クソッ、あんただよw
29.80名前が無い程度の能力削除
流石駄洒落オチの名人と言いたいところですが
何となく不謹慎ネタの気もするのでこの点で
33.80名前が無い程度の能力削除
ンフフフってなった
35.80名前が無い程度の能力削除
名前見ないで読んだらミステリーかと思いきやコレだよ喚く先輩お久しぶりチィース
43.80奇声を発する程度の能力削除
相変わらずでした
46.80名前が無い程度の能力削除
相変わらずのクオリティで安心したわ~
47.100名前が無い程度の能力削除
この物語を読んで「くだらない」という言葉が褒め言葉である事を学んだ。
49.70名前が無い程度の能力削除
作者見ずに読み始めたら
喚くさん相変わらずですねえ!
51.70名前が無い程度の能力削除
決して100点はつけないけど
何度読んでもくだらないと思わせるオチだけど
それでも名前を見ればまた読まずにはいられない魔力がある
これぞ喚く狂人!!
53.100名前が無い程度の能力削除
きっとオチはくだらないだろうとわかってても笑った自分の負けです
57.100みなも削除
毎度きれいなオチ、ありがとうございます。
58.90名前が無い程度の能力削除
チーッスwwww喚く狂人さんチーッスwwww
変わりないようで何よりです
61.60名前が無い程度の能力削除
んふっ
62.70名前が無い程度の能力削除
あーなるほどねーっと思ってしまった自分が
63.100罪バケツ削除
そーだった! あなたの作品はこう言う作品だった!w
久々にあなたの名前で検索をかけたら・・・!w
楽しませてもらいましたw
64.90名前が無い程度の能力削除
貴殿であったか
65.100名前が無い程度の能力削除
くそう!シリアスかと思ったのに……貴方か!∑(゚Д゚)
66.90名前が無い程度の能力削除
くっそwww
くっそwwwwww
68.90名前が無い程度の能力削除
相変わらずくっだらねぇwwwwwwww
70.80名無しな程度の能力削除
やっぱり!やっぱり喚くさんだよ!
73.80名前が無い程度の能力削除
いつものどおりの狂人さんでした
75.80H2O削除
成る程、そうきたかww
78.80名前が無い程度の能力削除
なんと驚くべき不変性
83.70名前が無い程度の能力削除
いい意味で狂ってる
85.100爆笑する程度の人間削除
なんて面白いんだ!
102.70ミスターX削除
潜木○ぐらはたぶんまだ幻想入りしてないと思うけど…
次は妖怪が溶解したり、咲夜が朱鷺を止めたり、幽々子が詩を操ったりするのだろうか?