Coolier - 新生・東方創想話

静寂の図書館と時計の音

2012/10/13 02:07:14
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   この作品は前作、はるかぜの門番の設定を含んでいますが
  読まなくてもそんなに問題はありません。












 悪魔が住む真っ赤な館。



今日はその館の主であるレミリア・スカーレットの従者である十六夜咲夜が命令で三日前から門番をしていたため不在だった。
ちなみにもともと門番をしていた美鈴は部屋でゆっくり眠っている。
というわけで今日、レミリアは館の図書館で紅茶を飲んで過ごしていた。


カチッ カチッ カチッ






 時計の音が静寂な部屋の中で響く。
この図書館の主は本を読んでおり、邪魔したら怒られそうな雰囲気を醸し出している。
それを小一時間眺めているレミリア。
どっからどう見ても暇そうである。


カチッ カチッ カチッ








「ねえパチェ。暇なんだけど」


ついに痺れを切らしてレミリアが話しかける。
すると、話しかけられるのがわかっていたかのように、レミリアの方を向く


「暇……と言われてもねえ」


ふぅとため息をつき、読んでいた本を閉じる。


「何もないわ。本でも読めばいじゃない」
「今はそんな気分じゃないわ」
「……じゃあ何しにきたの」
「パチェに会いに来た」
「咲夜がいないからやること無かったのね。なんであんなこと言ったのよ。」
「だってしょうがないじゃない!毎日毎日美鈴が寝てるって文句言うんだもん」
「で?あんたは暇で暇でしょうがなくなったと。……貴方馬鹿じゃないの?どうせ考えなしなんでしょ」
「っ!」


しかし言い返したところで言い負かされるので、ここはグッと抑える。
それにパチュリーの言うとおり、後先考えずに言った言葉だ。
そして相手は完全で瀟洒なメイド、十六夜咲夜だ。主の言葉は(基本的に)絶対である。


「はあ……全く私は何をやってるんだか」
「とりあえずここにいても仕方ないわよ?私は本読んでたいし」
「そうよねえ~」


カチッ カチッ カチッ



 結局そのまま会話は終了してしまい、パチュリーも読書を再開する。
どうにも気まずい空間になってしまい、仕方がないので本を読むことにした。
しかしどうにも読みたい本が見つからない。
元々そんなに本を読まないレミリアにとって、大量にある本の中から一つ選ぶのは厳しいものがあった。

「何読もうかしらね……」
「何かお困りですか~?」

するとこの図書館の司書係として働いている小悪魔の姿があった。

「あら小悪魔いいところに、ちょっと読む本を探しているのよ」
「お嬢様も本を読むんですね~」
「どういう意味よ」
「まあまあ。それでは何冊かおすすめを持ってきますね~」
「あら本当?ならお願いするわ」
「承知いたしました」

そう言ってぱたぱたと飛んで本を選びに向かう小悪魔。
少し離れた場所から本を取り出す音が聞こえる。
名前は悪魔だが、中身はいたって真面目な彼女。仕事に関してはとても信頼が厚い。


「改名した方がいいんじゃないかしら、あの子」
「じゃあ小天使にでもしてみる?」
「悪魔の館に天使ってどうなのよ……」
「いいんじゃない?天使と悪魔が住む館」
「……そうかしら」

と、あれこれ話しているうちに


「選んできました~」


 小悪魔がにこにこしながら本を持ってくる。
小さい体で一生けん命持ってくる姿はどことなく微笑ましい。


「さてさて、どんな本があるのかしら」


・脱!貧乳!!
・身長を伸ばす10の秘密
・やさしくなれるほん


「ふむ、成程ね」








カチッ カチッ カチッ









「喧嘩売ってんの!?」


思わず胸ぐらをつかむ。


「まあまあ、本人悪気はないみたいだから許してあげなさいよ」
「いやいやいや!これ明らかに狙ってんでしょう!!」


小悪魔をキッと睨みつける。
しかしすぐに「ひうっ」とおびえる姿に怒気が失せてしまう。
ふうと一回心を落ち着かせ。


「まあ……良かれと思ってやったんでしょうから、今回だけは許してあげるわ」
「ふーん……なるほどね。小悪魔、やさしくなれるほんは片づけてもいいわよ」
「はーい……」
「どういう意味よ」

びくびくしながら本を持っていく小悪魔。
微妙に納得がいかないレミリアであったが、まあ読んで損はないだろうと読み始める。


「結局読むのねそれ」
「何か文句があるのかしら」
「いいえ別に」


それっきり何も話さず、互いに本を読みふける。




カチッ カチッ カチッ










「――――ねえパチェ」
「今度は何?」
「時計の音ってこんなにうるさいものだったかしら」
「……普段気付かないだけで、結構音は聞こえるわよ」
「そんなもんかしら」


しかしどうもこの時計の音が気になったレミリアは椅子から立ち上がり、時計の音が鳴る方へ向かっていく。
確かこの図書館には大きな古時計があったはずである。
こんな大きな音だ、さぞ大きい時計に違いない。



カチッ カチッ カチッ



音を頼りに図書館の中を歩いて行く。
こうやって歩いてみると、この部屋の広さがよく分かる。
そしてその音はどんどん大きくなっていき、ついにその音がする時計の前に立った。


「ほう……」








デジタルな数字が表示され。
何本かの電線が飛び出し。
カチッ カチッ と大きな音を出している。
残り時間は1時間12分と30秒

つまりこれは……?



「ねえパチェ、こんなもの見つけたんだけど」



その時計を持ってパチュリーのところに走る。
気だるそうにパチュリーはそれを見ると


「……なにそれ!?」


パチュリーは目を丸くしてレミリアに詰め寄る。
その勢いに思わずレミリアも引いてしまう。


「で……これがどうかしたの?」
「どうしたもなにも……時限爆弾よこれ!!
「えええええ!?」


どうするどうするとあたふたしているパチュリー。
滅多に見ない彼女の姿につられてあたふたするレミリア。
そこに小悪魔もやってきて、時限爆弾を見るなりあたふたあたふた。


「どーすんのよこれ!」
「私に聞いても分からないわよ!」
「魔法でどうにか出来ないの?」
「生憎、時限爆弾を解除する魔法はないわ」
「じゃあどーすんのよこれ!」
「私に聞かないで!」


ぜえぜえ……はあはあ……
一旦落ち着く。


「まあ、まだ時間はあるわ。いろいろな方法を試しましょう」
「そうねパチェ、頑張りましょう」

 

カチッ カチッ カチッ



「まずは王道の、電線を切ってみましょう」
「待ってパチェ、もし間違えて爆発したらどうする気よ」
「……グッバイ」
「やめましょう!?綱渡り過ぎるわ、もっと確実な方法を探しましょう」

しばらく考える二人。
そこに紅茶を小悪魔が運んでくる。

「ありがとう小悪魔」
「私ではお二人の力になれませんからね、せめてこれくらいはしないと」
「悪いわね、気を使わせちゃって」
「いえいえ、これくらい当然です」

するとパチュリーにアイデアが降り注ぐ。


「そうだ、水をかけて停止させればいいじゃない」
「おお!ナイスアイデア!」
「では水をとってきますね」
「……ちょっと待って」

そう言ってレミリアが時限爆弾の裏面を指差す。

「どうしたの?」
「よく見てこれ、防水って書いてある」
「なんですって!?……これじゃ水では止められないわね」
「いい作戦だと思ったのに」


悩めば悩むほど、刻々と時間は進んでいく。
残り時間が少なくなるほど、二人は焦りが強くなる。
そして、まともな思考も出来なくなっていった。





「あらゆる方法を試してみたけど駄目ね」
「衝撃を与えるわけにもいかないから、迂闊に手は出せないわ」
「「はあ……」」

残り時間は3分。


「あと1ラウンドしかないわ」
「でも3分あればM78星の彼は敵を倒せるわよ?パチェ」
「そういえばカップめんの3分は長いですよね」
「ってなに無駄話してるのよ!!時間がないのよ?」

しかしこの2人に新たな策を考えることは出来なかった。
あーどうしようどうしようと考えるほど、頭は働かないものである。
時間は無駄に過ぎていく。


「レミイ……私、あなたと友達になれてよかったわ」
「何言ってるのパチェ、私たちは親友でしょう?」
「うふふ」
「ふふふ」
「2人ともなんでもう諦めた感じになってるんですか!?」


残り時間は30秒を過ぎた。
2人にはもう覚悟はできている。
「私はできてませんよ!?」


残り10秒
「ああ!お二人が輝いて見える……」


残り5秒
「ああ……なにかできないの?」


「レミイ……」
「パチェ……」

2人は自然と手を握り合い、そして目をつぶる


3……




2……




1……











ボンッ









静寂が部屋を包む







「「「……え?」」」



一同が目を開けるとそこには、粉々になった時限爆弾が転がっている。


「え……これだけ?」
「……そうみたいね」


恐る恐る近づいてみると、そこには小さな箱が置いてあった。
簡単な仕掛けのもので、つまみを回せば開きそうだった。

「開けてみましょう?」
「そうね」

レミリアはつまみを回し、箱を開ける。
すると中には一枚の手紙が入っていた。

「なにこれ……って美鈴のよこれ!」
「ちょっと見せて!なになに」


―――お嬢様へ
咲夜さんがいない間、きっと暇になるだろうと思って作ってみました。
お楽しみいただけたでしょうか?怒ったのならちゃんと謝ります。
               美鈴より





「……あいつめ」
「おかげで寿命縮んだわよ」
「でも、たまにはいいことするじゃないあの子」
「そうね、今日美鈴が寝坊してたのは、これを作ってたからなのかしら」
「まあどっちにしても、結構楽しめたからいいじゃない」

そう言って、手紙を机の上に置く。
気分が落ち着いたところで、あることに気がつく。


「ねえパチェ、いつまで手つないでるの?」
「あっ……でも、たまにはいいじゃない」
「ふふ、そうね」





チッ チッ チッ チッ



そしてまた、静寂の図書館が訪れる。
「そういえばさ」
「なに?」
「私爆弾程度なら全然大丈夫だった気がするのよね」





どうもドラちゃんです。
時限爆弾ネタが書きたかったんです。
書き終わってみて、自分はまだまだだと感じました。
何回も書き続けて、いつか面白い作品が書けたらなと思います。
ドラちゃん
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コメント



0.280簡易評価
7.20名前が無い程度の能力削除
オチのシーンにレミパチェを盛り込んでいるところが良いと思いました。