Coolier - 新生・東方創想話

はるかぜと門番

2012/10/09 00:06:28
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 ぽかぽかとした暖かい日差しと柔らかい風が私を包む、春という季節はどうしてこう、人を眠くさせるさせるのだろうか。紅魔館の前で門番という仕事をしている今、眠気は大きな敵である。少しでも気を緩めたら、はるかぜに負けて眠ってしまいそうだ。ときどき頬を叩いて少しでも眠気を飛ばそうとするが、
焼け石に水。すぐに眠くなってしまう。
 ――とは言ってもそこまで気合を入れて門番をする必要はない。そもそもこの館に敵意を持って来る者などそんなにいない、強いて言うならば図書館の本を奪いに来る魔理沙(昨日来た)ぐらいである。あとの者は客人として招くのがほとんどだ。その魔理沙も来るのは週に一回程度だ。ちなみにちゃんと門から入りさえすれば客人として招くのだが、本人は「門は破るためにあるんだろ?」と、意地でも門から通ろうとしない。全く困った奴である。


「それにしても眠い……」


 門番は本当に暇な仕事だ。基本的に門の前に立っているだけだし、何かやるといっても花壇で水やりをする程度。なんにもすることがない、しかしいつ客が来るかわからないのでサボるわけにもいかないし、サボったらサボったで後が怖い。なんとしてでも起き続けなければ……!


















「すう……すう………………(ガクッ)はっ!?」


 自分の体が崩れるのに気づいて、とっさに踏みとどまる。これはまずい、非常にまずい。
どうもこのぽかぽか陽気は完全に私を寝かしに来ている。ふと上を向くと、時計は寝ている間に30分程経っていることを示していた。すぐに周りを確認したが、これといって変わったところはなく問題はなさそうだ。
 とりあえず顔を洗おう。
冷水を顔に浴びれば多少は眠気が冷めるだろう、そう思い花壇の近くにある水道に向かった。少し門とは距離があるが、ほんの少しの時間だし誰も来ないだろう、そんな軽い気持ちで門から離れていく。
 キュキュッと蛇口をひねり出てきた水を顔にかける。冷たくて気持ちがいい、眠気も覚めてきた。あと数回浴びればしばらくは大丈夫だろうと思っていた矢先、門の方から元気な声が聞こえてきた。


「おねーさーん!あれ?いつものお姉さんがいない」


 その声の主はチルノだった。暇な時たまに遊びに来るのだ、そして今日は遊びに来たのだろう。本当にただに来ただけなので館に害のあることはしない、多少弾幕ごっこをしたときの氷で壁に傷がつく程度だ。と、そんなことを考ええいると。

「お姉さんがいないならいいや、かーえろ!」


そう言って帰ってしまった。
……って!!何をやっているんだ、誰かが来たらすぐに対応してあげるのが門番の仕事。のんきに顔を洗っている場合じゃなかった!!私は目は覚めていたが、まだ頭は眠ったままだったらしい。急いで門の前に行くが、そこにチルノの姿はない。

……門番失格だ。だが過ぎてしまったことは仕方ない、次こそはしっかりしようと自分に言い聞かせて門の前に立つ。顔を洗った効果もありすぐに眠くなるようなことはない、しっかりと門番としての責務を果たせそうだ。


「春ですよ~♪」

 しばらく立っていると、春になるとどこからともなく現れる春の妖精{リリー・ホワイト}の声が聞こえた。私はつぶっていた目を‍開いてその姿に心を和ませる。彼女はにこにこしながら幻想郷を飛び回っていて、その姿を見ているだけでなんだか暖かい気持ちになる。流石春の妖精と言ったところだろう、気が付いたら彼女の姿が見えなくなるまで眺めていた。
 一息入れた後、気持ちを入れなおす。ふと時計を見るとあれから20分も時間が経っていた。
……えっ!?
そんなわけないと思いもういちど時計を見直すが、やはり20分経っている。見間違いではない……となると。


「寝てた!?」


 よくよく思い出してみると私は、目を開いてからリリーを眺めていた。つまり私は眠っていたらしい……
睡魔とは恐ろしいものだ、起きていると思っても気が付いたら眠っている。何もしていないでただ立っていて、さらに暖かいはるかぜも吹いているのならばなおさらだ、この眠気にあらがうことは出来ないのだろうか?
両頬をベチッと叩いて目を覚まそうとするが、その後すぐに目がトロンと落ちてくる。体を動かせばいいじゃないかと重い、全力でその場を足踏みしてみるが、目を覚ますどころか疲れてもっと眠くなる。


 結局眠気には勝てず、気が付いたら夕日が沈んでいた。

……ああ、たぶん私が寝ている姿……誰かに見られてるんだろうな。
そう思い肩を落とす。情けないなと思いながらも、昨日は忙しくて疲れていからと言い訳してしまう自分がいた。



それからは多少うとうとしながらも、眠らないで責務を全うすることができた。
とはいっても誰か来たわけではないので、仕事ができたかと言われれば、自信をもってハイとは言えない。
だが夜で私の門番としての仕事は終わりなので、夜中に門番として働く妖精たちにバトンタッチして、館の中に入る。







―――――――





「……美鈴」
「ハ、ハイ!なんでしょう?」
「ちょっといい?」
「……どうかしたんですか?」
「あなたに謝らなきゃいけないことがあってね」
「……はい?」


何を隠そう。今日はお嬢様の命で今日は門番をメイド長である私、十六夜咲夜がやっていた。
私は普段寝てばかりの(しかも侵入者は取り逃がす)美鈴を不満に思い、お嬢様に相談したところ。

「なら代わりにあなたがやればいいじゃない」








……美鈴の気持ちが少しはわかったかも
「咲夜」
「はい、なんでしょう」
「うちに寝ない門番はいないの?」
「…………」


初投稿です、ドラちゃんと申します。

なんとなく眠気と戦っている咲夜さんが書きたかったんです。
思いついたらまた何か書きたいと思います。

たくさんのコメントと評価ありがとうございます!
それを励みにしてこれからもがんばっていきたいです。

一か所修正しました
ドラちゃん
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コメント



0.1680簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
ほのぼの~と思って読んでいたら
ミスリードを仕掛けられていた!
4.100名前が無い程度の能力削除
ちょっとだらしない美鈴かと思ってたら何とまあ…
門番って魔の仕事場なんでしょうかねぇ
11.100名前が無い程度の能力削除
こりゃハメられましたわ。
けれども、いい空気の作品で気軽に読ませていただきました。
12.90奇声を発する程度の能力削除
うお、まんまとハマりましたわ
14.100名前が無い程度の能力削除
やられましたわwwww
17.90名前が無い程度の能力削除
完全に美鈴の話だと思ってしまった…。
23.90名前が無い程度の能力削除
これは完全にやられたw
24.90洗濯機削除
咲夜さん寝顔みたかったぜ
27.100名前が無い程度の能力削除
あー、やられた!
29.100名前が無い程度の能力削除
いいね!
32.100名前が無い程度の能力削除
工夫がいいね
33.100名前が無い程度の能力削除
どんでんがえしGOOD!
35.90名前が無い程度の能力削除
ミスリードとは!完全にやられましたわ。