Coolier - 新生・東方創想話

鬼は嘘をつけない

2012/07/24 18:05:48
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私の名前は水橋パルスィ、種族は橋姫、人にも鬼にもなれなかった出来損ないだ。
今は世界から疎まれた者たちが暮らす地底で橋守をしている。
暗くて陰気で私にお似合いのこの場所で、私は今日も元気に世界を妬んで過ごしている。
だが最近そんな私の平和な生活を乱す奴がいる。

「パールースィー!」

コイツだ。
コイツの名前は星熊勇儀、種族は鬼、その中でも「語られる怪力乱神」の異名を持つ、
強者の中の強者、そのうえ竹を割った様な性格と面倒見の良さで鬼たちには勿論のこと、多くの地底の住民たちから慕われていて友人も多い、
いわば勝ち組妖怪である。
妬ましい。むしろ妬ましくない要素が無い。どこにも無い。
あぁ妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい!!

「どうしたのさそんな顔して、せっかくの可愛い顔が台無しだよ」

しかもコイツ、星熊勇儀は旧都から決して近くは無いこの橋にわざわざ出向いてきては私にちょっかいをかけてくるのだ、それも毎日の様に。
最初は無視を決め込んでいたものの流石にこれ以上通われてただべらべらとはなされてもいらつくだけだ。
どうにかしようと思った私は単刀直入に聞いた。

「毎日毎日人の仕事場に来ては酒呑みながらべらべらと、いったい何の用?」

これだけ言えば余程の鈍感以外は怯えるなりむかつくなり私に近寄らなくなるだろう。

「あんたと話がしたいんだ!」

どうやらこいつは余程の馬鹿だったらしい。
ていうか、え? 今コイツなんて言った? 話がしたい? 誰と? 私と?

「ば、ば、馬鹿なんじゃないのアンタ?! ていうか馬鹿よ!!」

私と話がしたい? 誰からも嫌われてきた私と?

「話がしたいならアンタの腐るほど居る仲間としてくればいいじゃない!」
「それはちがうぞパルスィ、私はお前と話がしたいんだ」
「だからそれが馬鹿だって言ってんのよ!
 私は橋姫よ、嫉妬を操る卑しい妖怪、世界の全てを妬む妖怪なの!
 アンタたち鬼みたいな最強種の妖怪と話すことなんかないわ! あぁ妬ましい! 
 顔も見たくない!!」
「そんなことない!!」
「ッ?!」

今まで腹立たしい程余裕そうだった勇儀が突然張り上げた声に思わず私は言い詰まった。

「パルスィは卑しい妖怪なんかじゃない!」

そう言う勇儀の瞳は真っ直ぐだった。

「全てを妬めるってことはひとの良いところを見つけるのが上手ってことだ。
 だからパルスィは卑しい妖怪なんかじゃない、誰よりも優しい妖怪だ!
 そんなお前を私は好きになったんだ!!」
「ッ・・・!」

あまりにも素直で綺麗な言葉に私の気は狂いそうだった。
こんなことを言ってもらえたのは何十年ぶりだろうか、もしかしたら橋姫になってから
初めてかもしれない。
嬉しい、嬉しい、嬉しい、長い長い間誰にも許さず自分一人で守ってきた心を許して
しまいそうになる。

「五月蝿い!!」

あぁ、でも、駄目だ。

「地底の端のひねくれ者をからかって遊ぼうっての?
 あぁ鬼は酒が好きだったものね、酒の肴にするつもり、随分ゲテモノ喰いだこと!」
「違うパルスィ私は」
「黙りなさい!!」

そうだ、思い出せ。
忘れたわけじゃないだろう、あのことを。
遠い遠い昔、橋姫という名前を得る前のこと。
心の底から人を信じ、愛し、その先に待っていたのはなんだ?
裏切り。
そう、裏切りだ。
だから私は心を閉ざした。
最初から誰も信じなければ良い、誰も愛さなければ良い。
そうすれば裏切られることなんてないのだから。

「私は誰にも愛されない、愛なんて信じない、そんなのは一時の気の迷いか戯れよ!
 どうせ裏切られるくらいなら愛なんていらない!!」
「パルスィ!!」
「何よ!!」

一気に捲し立てたのにも関わらず勇儀はまだ食い下がる。

「私は鬼だ!」
「知ってるわよ!!」

当たり前だ、額に生える立派な一本角はどこからどう見ても鬼のそれだ。
そうでなくともかつて山の四天王と謳われ今も地底で絶大な力を持つ勇儀を鬼と知らない者はそうそう居ない。

「嘘なんか付かない! 絶対に、死んでもだ!!」
「っそれは・・・!」

私は再び言い詰まる。
鬼は嘘をつかない、知ってはいる。それくらい常識だ。

「でも・・・!
じゃあ何だって言うのよ! 本当に私が好きとでも言うつもり?!」

ありえない、だって私は地殻の下の嫉妬心、緑色の眼をした怪物、この世で最も醜い感情を司る妖怪、橋姫なんだ。
そうでなくたって背も大きくなければ胸だって小さい、はねるから短く切った髪、不気味な緑の眼、力もそこらの野良妖怪より少し強いくらいだ。
嫉妬深くて、根暗、その上ひねくれ者で天邪鬼、愛想なんて欠片も無い
こんな私をどこの誰が愛してくれるだろう。

「ああそうさ!」

躊躇いもなく勇儀は言った。

「お前が好きだ、大好きだ、愛してるんだ・・・!」
「勇儀・・・」
「だからお願いだよパルスィ、返事をおくれ、振ってくれたって構わない
 でも答えが曖昧なままだけは嫌なんだ!!」

気付けば勇儀の姿は必死そのものだった。
いままでずっと余裕綽々だと思っていたのに、私に詰め寄って答えを待つ勇儀はまるで
懇願しているようだった。

「わ、私は・・・」

私はどうなんだろう、勇儀のことをどう思っているのだろう、勇儀は私のなんなんだろう。
いままで凍り付いていた筈の心が急速に溶けていく様な気がした。
毎日毎日私の静寂を乱す迷惑な奴、そうではなかったのか?
私は、私は・・・

「分からない」

分からない
すると勇儀はきょとんとした顔で私の言葉を繰り返した。

「分からない?」
「分からないわよ、そんなの・・・!
 いきなり来て、騒いで、人の気も知らないで・・・アンタなんか・・・」

私も困惑したまま言葉を繋げると勇儀は今にも泣きだしそうな顔で

「嫌い・・・かい?」

違う

「違うッ!!」

勇儀は泣きそうな顔からまた驚いた顔になったが私も同じ様な顔になった。
自分で自分が分からない。私は今なんて言った?
あぁもうわけが分からない。

「分かんないわよ・・・そんなこと・・・ッ!」

今度はわたしが泣きそうな顔になった。

「どんなに無視しても明るく話しかけてきて、大体ここは普段誰も来ない様なとこなのに
 毎日毎日やってきて、私が不機嫌そうな顔しても気にもしないで、私みたいな嫌われ者
 に・・・アンタなんか、アンタなんか・・・ッ!」

泣きそうな顔はついに泣き顔に変わった。
なんとか吐き出そうとする言葉はもはや言葉にもなってなくて。
嗚咽交じりの私の情けない声を一通り聞いて、私が単語すら喋れなくなったころ、勇儀は優しい顔でこう言った。

「そっか。」
「へ?」
「分かんないだな?」
「う、うん・・・」
「じゃ、嫌いじゃないんだな」
「はぁ?!」
「嫌いなのか?」
「う、いや、嫌いじゃぁ、ない、けど・・・」
「じゃあそれで良い」

そう言った勇儀の顔は満足げで、とても優しい顔だった。
それから私の頭を、まるで子供でもあやす様に撫でると当然の様に言った。

「嫌いじゃないけど分からないんだろう? じゃあ分かるまで待つだけさ」
「勇儀・・・」
「それに、」
「それに?」
「いつかパルスィの方から愛してるって言わせてみせるさ!」
「はぁ?!」

あっけらかんと勇儀は自信ありげに言い切った。
あぁ、でも

「・・・全く、アンタってほんっと馬鹿ね」
「酷い!」
「できるものなら、やって御覧なさい。」
「え?」

悪くないかもしれない

「せいぜい頑張るがいいわ」
「え、ちょ、パルスィ?!」

そう言って私は橋の欄干からふわりと飛び立った。

「パルスィー! じゃあまた明日―!!」

後ろで大声を張り上げる馬鹿鬼の、馬鹿で、馬鹿で、馬鹿正直な鬼の言葉を信じるのも。

「鬼が本当に嘘をつかないのか試してあげるわ」




―――そういう彼女の口がほんの少し、笑っていたのは誰も、本人さえも知らない―――
皆さんの素晴らしいSSに滾って勢いで書いた結果よく分からないものが出来てしまいました・・・orz
初投稿なので色々と見苦しいものになってしまっているかと思いますが生暖かい目で見守ってあげて下さい。
トオフジ ヤキ
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コメント



0.590簡易評価
9.80くじらのたましい削除
勇儀姐さん熱いですね
パルスィの卑屈っぷりもかわいい
あと「・・・」は「……」にするんだそうです。
私も前にここで誰かに教えられました
10.無評価名前が無い程度の能力削除
ゆうぎ姉さんイケメン担当だなw
パルスィはかわいいw
何でこの二人の百合が流行ってるんだろ?まあ可愛いからいいけどw
11.70名前が無い程度の能力削除
いやわかりますよ。勇パルでしょ?なかなかいい感じだと思います。
12.40名前が無い程度の能力削除
(iPhone匿名評価)