Coolier - 新生・東方創想話

おてんばチルノちゃんの告白

2012/07/14 03:16:06
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私は霧の湖でただ一人私より強いあの妖精に勝ちたくて、一人鍛錬を重ねた。
いつからそうしていたのかは思い出せない。

ある時私はある妖精の話に乗り、私は彼女に挑戦した。
彼女にとって私は敵でも何でもなく、まるで障害物を取り払うかのように倒された。

少ししてリリーホワイトと共に再び相まみえた。
それでも勝つどころか彼女はあの後霧雨魔理沙と対決する程の余力を残してなぎ倒された。

リリーホワイトは諦めた。
「私はチルノの敵にはなれそうにない」
味方として、また友として力になりたいと、そう語っていた。
きっとチルノの事を気に入ったのだろう。
優しく微笑む春の妖精は、どこか力強く思えた。


私だってチルノの事は気に入っている。
きっと、リリーホワイトにだって負けない程に。

だからこそ、こうするのだ。




霧の湖から少し離れた森で、私と彼女は対峙している。
青い髪と凍てついた翼が特徴的な、氷の妖精チルノ。
見ているのは雲の隙間から覗く月だけ。

チルノは不敵な笑いを湛えつつ、まっすぐにこちらを見ている。

「暫く見なかったけど、こんな形で会うなんてね」

あの時から前も後も、彼女とは少なくない接点を持ち続けている。
きっと妖精の中では最も彼女といる時間が長いのではないだろうか。
いや、彼女自身が気づいていなくてもずっと私はあなたを。

二人だけの空間で、静かに私は口を開く。

私は、あなたを倒したい。
理由は何だっていい。あなたと、戦いたいのです。

「そうか、やりたいなら止めないよ」

どうか、全力で。

「…誰に言ってるのかしら。いつだってあたいは全力よ」

元気に微笑む姿は太陽のように輝いていた。



凍符「コールドディヴィニティー」

カード宣言が静かに響く。
妖精如きが神聖を語るのは滑稽以外の何者でもないが、チルノはそれに相応しい風格を備えていた。

彼女の背後から次々と鋭く巨大な氷柱が生成される。
それぞれがおぞましい程の冷気を放つのが、数十メートル離れたここからでも分かる。

また、二つの小さな手のひらには幾つもの氷片が現れる。
そのまま針のように細かい氷片をばら撒くように投げる。
それが合図だった。

背後の氷柱は狙いをつける訳でもなく一心不乱に膨大な冷気を撒き散らしながら直進する。
風を裂き草木を薙ぐ姿は正に天災。

私にできるのはクナイを投げる事、火炎弾を放つ事、
そして瞬間移動により空間に囚われず移動できる事。

瞬間移動は過信しない。連発はできないし距離にも限りがある。
ざっと氷柱よりも氷片に注視しつつ周囲を見回し、それが最も少ない場所を把握する。
そこへ突っ込むように飛びながら、その周囲を通るであろう氷柱に次々とクナイと火炎弾を叩きつける。
氷柱の一本は5秒前後で砕け散り、その勢いを残したまま下に横に四散した。

ランダムに放たれた氷片を回避する事は難しい。氷柱の冷気の危険域を察して回避する事は更に難しい。
ならばそれを少しでも簡単にしてやればいい。
氷柱だったそれらは氷柱より後に来る氷片を阻害した。そこに安全地帯が生まれる。
私は次々に氷柱を撃墜し、その破片が生み出す隙間を縫うように羽撃いた。

氷柱と氷片の嵐が一段落ついた後、私は無傷の姿でチルノを挑発する。
妖精一人貫けない氷柱で何ができるのか。

残念ながらチルノは私の挑発には乗らない。
彼女は純粋に、自分を追いかけてきた新たな可能性を楽しんでいるのだ。
それは強者にのみ許された歓びであり、少なくとも今までの彼女にはなかったものだろう。


「そうさ、まだまだこれからだよ」


凍符「マイナスK」

バギリ

チルノは動いてはいない。それなのに、何かとてつもないものを感じた。
さっきの氷柱に抱いたものとは違う、本能的な恐怖が体の底から沸き起こる。
その衝動に引っ張られるように、私はチルノから可能な限り距離を取るよう瞬間移動した。

クナイを構えチルノを見据える私はこの世の地獄を見た。
ばら撒く楕円状の物質は氷とも霧とも言い難い奇妙な存在で、ただ純粋な冷気だけを感じさせる。
それらは一定距離を以て爆散し、破片は周囲の水分を吸い取りながら巨大化し周りの何もかもを押しつぶしていく。
更にもう一度砕け、今度はランダムに氷の刃を散らせた。

さっきの氷柱を生き残った大地は、今度こそ凍てつき、崩れ去った。

弾の性質を見て、離れ過ぎたと断定した私は即座に行動に出た。
まず一度目の爆散を待たない物体は少なくとも私では破壊は不可能だろう。
霧雨魔理沙のレーザーをもってしても完全に除去できるか怪しい。

ならばその後の破片を狙えばいい。
ただし爆散した直後は単純に冷気が濃すぎて飲み込まれる。
待ちすぎたなら水分を吸い取り巨大化し破壊に手間取る。
拡散した後の刃を全て撃ち落とす事などは不可能だ。
そのタイミング問題だが、逆に言えばそこを超えさえすれば良いのだ。

短絡的で前向きな姿勢、そんな妖精らしさというものはいつだって素晴らしい。

氷柱程度の耐久になる瞬間を探り当て、叩く。
チルノも何もせずには終わらない。何度もタイミングを変え、方向を変え私を倒しにくる。
一度か二度足や翼を取られながらも姿勢を立て直し、また瞬間移動で脱出を試み
弾が撒かれる方向と合わせるようにチルノを軸に大きく周る。


再び弾が止まる。また生き残った。
体に付着した氷の破片を払いながら、静かに憧れの人を見据えた。

まだまだ私は元気だよ。チルノ。

強敵を相手にしたような、戦いを楽しむような笑顔で返してくれた。


チルノの構えが変わった。相手を寄せ付けず圧倒する迎撃の姿勢から
追いかけ回し撃墜する白兵の、機敏な動きを可能とする姿勢に。


氷塊「グレートクラッシャー」


その響きは不思議と勇気が沸き起こる、どこか温かいものだった。
チルノのスペルカード群の中でも数多く存在する氷と名付けられたカード群。
その最上位に位置するその名はまさに、高みを目指し強者を挫くチルノそのものだった。

予想以上の高速で直進するチルノはその勢いを殺すことなく巨大な氷塊を打ち付けた。
あまりに一瞬で氷塊が現れたために、チルノのアクションに注意し過ぎた私は間一髪でそれの回避に成功する。

大きい。大きすぎる。

爆発し破片が飛び散る。あれは地面との衝突によるものではないだろう。
チルノが内部の冷気を急激に下げ、任意的に破裂させているのだ。
さっきの凍符「マイナスK」を単純に、特化したような。
ただ一点。相手をわかり易い暴力で打ち倒すために。

回避が遅すぎた。氷塊そのものは避けれても破片は無理だろう。
一瞬で決断し瞬間移動で可能な限り距離を取る。それでも破片の雨は降り注いだ。

「次!」

今度こそ高速移動の種を掴んだ。様々な方向、主に背後に向け氷を気化させているのだ。
どういう訳か気体と化した氷は周囲に発散せず、チルノの加速装置と姿勢制御を果たしている。
それすら能力の範囲内という事なのか。

直進するチルノに対し真右に飛んでみるがやはり方向を変える事はそう困難な事ではないようで
左側にいくつか新たな噴出を見たと同時に、こちらに向かって旋回した。

やはり、見切るしかないか。

さっきの一撃を見るに、かなりのおお振り。それでも隙は一瞬。
それを見て正しい方向に回避しなければならない。
使ってから然程時の経っていない瞬間移動はまだ脱出に使えない。

後が無くなってきた。
楽しい。

チルノが今までずっとこんな感覚を持って戦っていたのなら、羨ましい。
きっと私たちには見えない世界が見えているのだろう。

チルノから注意を逸らさず高速で飛び回りながら、その一撃を待つ。
二つの手を揃えるような素振りを見た瞬間にありったけの弾で埋め尽くす。
今まで逃げの一手だった事で少なからず油断していたのか、僅かに姿勢を崩し、氷塊は盾に使われる。
この瞬間に私は更に肉薄する。

彼女を相手に白兵戦は自殺行為だ。彼女そのものから発生する冷気は存在自体が一撃必殺。
それでも私は自分の判断を疑わない。チルノの真上まで直進した私は火炎弾を雨のように降らす。
もちろん、その程度で落ちない。

頭上に分厚い氷の板を6枚重ねるように発生させ火炎弾を防御する。
一枚を破るのに10発かかる。リリーホワイトなら兎も角私の弾幕ではこの距離だと全て破れそうにない。
しかしこの隙は恐らく二度目とはない。
体制を立て直すより先に、私は決断する。

体を回転させ、大きな蹴りを放った。
氷の板に接触した瞬間に進路方向とその逆へ火炎弾を放つ。
衝撃だけでそれが壊れる事はなかったものの、追撃の火炎弾がトドメとして働いた。
チルノがこちらを見ている。僅かに焦りを感じているようにも見える。
後一枚まで破壊したところでチルノがこちらに手を伸ばした。

この瞬間を待っていた。

完全に意識が一点へ向かう瞬間。
冷気を操るという性質から、冷気の流れ自体が触覚のような物として働いているのだろう。
ただ単に視界の外から攻撃しては簡単に防がれる。
だから、チルノへ攻撃を通すには…

私はチルノの背後へ瞬間移動をした。
さっきまでいた位置に氷の華が咲く。
きっと綺麗なそれに目をやる事もなく、一点にチルノにクナイを、火炎弾を突き刺した。
私の力は確実に、チルノに、最強の妖精に届いた。
美しい翼に傷が、服に焦げ目が、次々にできあがる。
周囲の冷気がチルノへの攻撃を半減させるため致命傷にはなる事はない。

「ぐうっ!」

振り返る事もなく新たな翼が剣のように突き出た。
私は間一髪でそれを避けるが、それだけでは済まない。

再び、氷塊が振りかざされる。
さっきと比べれば小ぶりだが私を擦り潰すには十分だろう。
空気を蹴るように回避し、なんとか氷塊を回避する。

しかしそれだけでは終わらない。
次々と破片が襲い掛かる。一つを避け二つを避け。
三つのところで足に大きな衝撃を感じた。
踝の部分に深々と鋭い氷が刺さっている。
その氷は、まるで私の足を這うように駆け上がる。
私は迷わずクナイで太腿を切断した。
激痛は走るがここで氷柱の一本となるよりは幾分かマシだ。
主を失ったそれは血を吹き出し、そのまま赤い華となって凍りついた。

服を千切り切断面を覆う。止めどなく流れる血は氷の張った地面に彩りを残した。
気がつけば随分と気温が下がっている。
普段ならば首を掻き切って死んでも10秒足らずで起き上がる自信があるが、ここまで寒いとそうもいかない。
この足がまた生えるまでかなりの時間を要するだろう。
少なくともチルノとの戦闘が終わるまでには無理だ。

「ふふ、やるじゃない!」

腕を組み、私と向かい合うチルノ。
私はさっきの一撃の他に、こまかい氷片や衝撃による傷がいくつもある。
初めのものは再生したかもしれないが、それでも雀の涙程度だろう。

「思い切りのいいのは嫌いじゃないよ」

「あんたみたいな奴、あたいは大好きさ」

嬉しいことを言ってくれる。
私もあなたが大好きだよ。
ここまで来たのもあなたがいたから。
今までも、これからも、ずっとあなたは私の…

チルノは静かに天に手をかざす。月は妖精二人の戯れに魅入ったかのように動かない。
宣言する。

「パーフェクトフリーズ」

最後にして最強の、彼女を象徴するスペルカード。
今までの三枚が彼女の側面を表すものならばこれはそれらとは一線を画する。
瞬時に、連鎖的に、凍てつき、静止する。チルノの世界。

彼女を中心に、冷気の波が渡る。

大気中に浮遊していた氷の塵が静止する。
チルノ自身の両腕から放たれる氷柱の弾丸が静止する。
翼から弧を描き飛び回る刃が静止する。
私の放ったクナイが、火炎弾が、静止する。

膨大な冷気の反乱。全ての法則を無視し、破壊する。
回避は間に合わなかった、もはや凍りゆく部位を切り落とす余裕すらない。
左目が見えない。右腕の感覚がない。翼は無事なのか。
チルノの周囲から再び冷気の波が、来る。
掠れる視界の中見たその姿は、とても、とても、綺麗。
私だけが見れた、この姿。なんという幸福だろう。

こんどこそ意識が途絶えた。




覚めた時は、なんとチルノの膝枕の上だった。
木陰の中、温かい日差しが葉の隙間かさ差し込む。
起き上がろうと体を動かすと、うつらうつらとしていたチルノが目を覚ます。

「あ、目が覚めたか」

頭を撫でられる。そのひんやりと冷たい掌はとても気持よく感じる。
そして同時に、少し小っ恥ずかしい。

「なんていうか、あのね、その…」

いつにもなく口ごもりながら少しずつ言葉を紡いでいく。
あまり見られない姿に少しばかり驚いてしまった。

「あたいにはね、あんたみたいなのはね、その、あんまりいないんだ」

最強の妖精は数多くの妖精に囲まれていながら、孤独だったのだ。
憧れや尊敬の眼差しで見られても、自分のように全身全霊で挑むような者はいない。
きっとどこかで諦めているのだろう。
妖精として異質な程に誰かの背中を見て高みへ駆け上がる彼女は、
同じく妖精の中で自分を背中を追いかける者に出会えなかった。
私はチルノに全てを捧げる。
足りないものがあるなら、私がそれを補おう。

「これからも…あたいを、見ていてくれる?」

もちろん。そしていつか、きっとあなたを倒してみせるわ。

二人の小さな妖精は仲良く元気に笑った。
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始めての方初めまして。久しぶりの方いないはずです。
こんなの大ちゃんじゃないって方ごめんなさい石なげないで…

時系列では非想天則の更に後、神霊廟よりも後か前かくらいのところです。
ここくらいまで行くと魔理沙や早苗等主人公陣相手に勝率五割弱ありそうなんですがどうなんでしょうね。
そこら辺よくわからないんでチルノちゃんはあくまで象徴的な感じで、あくまで大ちゃんを中心に。
気が強い訳ではないですが、きっと強かな子だと思います。
二人がかりで潰しに来るとかなかなかできないよ。

最後まで読んで頂きありがとう御座いました。
また機会があれば少し頭のおかしい発想でおじゃまさせて頂きます。


因みにラチナムの頭の中ではリリーホワイトも結構電波キャラクターです。
暗黒界の無職ラチナム
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コメント



0.640簡易評価
6.40名前が無い程度の能力削除
(iPhone匿名評価)
14.60名前が無い程度の能力削除
大ちゃんがチルノと弾幕勝負をするための理由といいますか、もうすこし明確なものがあったら良かったと思います。
ストーリーが欲しいです
16.100名前が無い程度の能力削除
孤独に立ち向かうチルノに後押ししている大妖精がとてもいいと思いました
やっぱ氷属性は強いんでしょうね~