Coolier - 新生・東方創想話

紫煙のむこうがわ

2005/07/08 07:36:50
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 巫女の霊夢が縁側でプカプカとタバコを吸っていると、スキマの怪がぶらり訪ねてきた。
「ハーイ霊夢。私にも一服頂戴よ」
「妖怪のくせに馴れ馴れしいわね」
 ぼやきながらも、差し出された雁首に火を点けてやる。
「悪いわね……ふぅ。あぁ、ひと仕事のあとの一服はこたえられないわね」
 八雲紫、満悦の態。
「よく言うわよ、この万年寝太郎」
「どっこい」
 今日は働いたわよぉ、と紫は胸を張った。
「って、何したのよ? またぞろよからぬことじゃないでしょうね」
「あら。まるで私が不良少女のごとく」
「優良幼女とでも言うつもり?」
「さてねぇ」
 ぷか、と妖怪の口から煙が漏れる。
「たいしたことじゃないわよ。ただちょっとその……」
「その?」
「曖昧にしただけ」
「あぁ? 何を?」
「物事の境界を曖昧にしてねぇ……」
「何よそれ? そうしたらどうなるのよ」
「さぁ?」
「さぁ?」
「だってわからないのよ。曖昧にしたんだから」
「あんたは」
 怒鳴りかけて、フト霊夢は思った。
(怒るほどのことかしら)
 どだい、もとからこの世は何もかも曖昧ではないか。
 人間と妖怪の関係も曖昧だし、生者と死者の境もまた曖昧、一瞬と永遠の差もまた曖昧である。
 となればけっきょく、紫が何を曖昧にしようと、たいして変わりはないのであった。
「あら。怒らないの?」
 別に、と霊夢は新しいタバコを煙管に詰めた。
「曖昧になったところで、誰が困るわけじゃなし」
「そうかしらね」
 ぷかり、と宙に煙。
「たとえば私と霊夢の境が曖昧になっても?」
「と、いうと?」
「私があなた、あなたが私になって、つまり個体の差がなくなってもいいってことかしら」
「フムン……」
 それで困るか、と言われると
「いいんじゃない? 別に。困りゃしないじゃん」
 ぷふぅ、と煙が散った。
「ホントに、張り合いがないわねぇ。まぁいいんだけど」
「それで?」
「え?」
「万事曖昧にして、どうしようっていうの」
「それは」
 灰を盆に落とす。
「ほんのいっとき、あなたのような気分になりたかったからかもねぇ」
 へぇ、と霊夢は煙を喫し、目を細めた。
「それで、満足したわけ?」
 そうね、と妖怪。「ほんのちょっとだけど」
「なら結構」人間。「もう一服、吸っていく?」
「遠慮しておくわ。眠れなくなる」
「よく言う。万世寝太郎が」

 煙。
 紫の残した匂い。
 ちょっと経ってから、霊夢は手を振りすべてを宙に溶かしてしまった。
映画『レオン』を観たらなんとなくタバコを吸いたくなりました。
STR
http://f27.aaa.livedoor.jp/~letcir/
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コメント



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2.60おやつ削除
タバコとか酒とか、小道具大好き人間としてはツボです。
ちなみに、私はどちらも出来ませんorz
5.90七死削除
書に中たり
縁側に出て
煙を食んだ

ぷか~り




げほげほ
14.50HBK削除

フムンに神林を感じた
15.80床間たろひ削除
煙草が消えるまでの5分間に、君は何を想う?

こんな感じの歌が、昔あったような。

リアルタイムで煙草を吸いながら堪能させて頂きました。

17.60沙門削除
 「人生はまるで煙草の煙の様だ」と誰かがのたまってました。えー、煙草は十八過ぎてから、などど小学の頃から吸ってた私には言えません。霊夢の様に煙管でプカプカやりたくなりました。
23.30東方歴三ヶ月削除
煙はドーナツ型。