Coolier - 新生・東方創想話

我慢する事は恐ろしい事です。

2012/06/23 02:52:54
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寒いある日の夜
冥界にある白玉楼の居間

主の西行寺幽々子とそれに仕える庭師兼剣術指南役の魂魄妖夢は
双方向かい合うように炬燵に座り、夜のまったりとした時間を過ごしていた。

この時間は妖夢もいつものようなキリッとした感じを捨て、ダラダラできる至福の時間である。
その証拠に妖夢は体を丸めて座っており、顔を炬燵の上に乗せ
幽々子の友人である八雲紫からもらった てれびじょん なるものを見ていた。

何故TVがあるのかという疑問はスキマ送りしていただきたい。

「妖夢」

幽々子は少しうつむき、声のトーンを落とし、妖夢を呼んだ。


それを見た妖夢は驚き一瞬にして姿勢を正そうとするが
炬燵に足をぶつけ、ガコッ!と鈍い音がした。

「いだっ!…すみません。如何なされましたか?」

いつもなら笑いながらツッコミを入れられるのだが
思いつめた表情をしている。
変だな、と思いつつも妖夢は自分の足を撫でながら返答を待った。

「こんな事言うなんてちょっとおかしいかと思うんだけど、聞いてくれるかしら?」
「ええ、勿論です。」


「私…あの、食事の量を減らそうと思うの。」


妖夢は目を大きく見開き停止した。

~~~~~
停止したと同時に妖夢の頭の中に大きな会議室が現れた。
そこに入ってくるのは
妖夢、妖夢、妖夢、もう数人妖夢が続いて、最後に妖夢。
楕円形のテーブルに座っていく
どうやら重要な会議が開かれるようだ。

「それでは臨時妖夢会を始めます。みなさまよろしくお願いします。」

上座の妖夢が進行役のようで、他の妖夢は軽く会釈をし、やや穏やかなムードで開始された。

「それでは先ほど我が主、西行寺幽々子様の発言について議論します。」

「食事の量を減らそうと思う。」

「この発言につきまして何かありますか?」
「はい!」
「はい妖夢。」
「きっと頭がおかしくなったんだと思います。ボケたんでしょうか。」
「とりあえず主に向かっての暴言はつつしんでください。」

「はい。」
「はい妖夢。」
「ごはんがまずかったんだと思います。」
「さっき目の前でバカ食いしているのを見ていなかったのですか?」

「はい。」
「はい妖夢。」
「トイレ行ってきていいですか?」
「行って二度と帰って来るな!」
一人の妖夢は席を立ち出て行ってしまった。

「はい。」
「はい妖夢。」
「会計簿でも見てしまって落ち込んだんでしょうか…」
「こないだ家計簿見て大爆笑してたよな。食費自重って。」

「はい。」
「はい妖夢。」
「なんでお前が自重しろよって言わなかったんですか?」
「お前言えるのか?」

ガチャ
会議室の扉が開いて、モップを刀のようにブンブン振り回して妖夢が入ってきた。
「会議中って知ってて入ってきたのですか?」
「掃除しないといけないんで掃除します。会議は勝手にしててください。」

「はい。」
「はい妖夢。」
「…?」
「言いたいことをまとめてから手を上げるように。」

「あの…」
「なんですか掃除妖夢。」
「掃除妖夢って…いや、ってか本人になんで?どうしたの?って聞けばいいんじゃないんですか?」
「そうだね…かいさん…」

会議室から妖夢達が去って行った。

~~~~~


「あの。」
「何かしら…?」
「なんで量減らそうと思ったんですか?」

「ちょっと、食べすぎかなぁ…と…」

「そうですか…」
「ですが、減らすと言ってもどのレベルまで落とせばいいのか…」

「あなたと同じ量でいいわ。」

「正直に申し上げます。」
「ええ…」


「無理じゃないですか?」
「そんな気はするわ…」


二人とも無言になり、TVからのゲラゲラと下品に笑う声だけが部屋に響き渡る。
しばらくして幽々子が決心したかのように口を開いた。

「いえ、やるわ。私。明日から妖夢と同じメニューにしてもらいましょう。」

そういいながら立ち上がり、炊事担当の霊に伝えに炊事場へ向かう。
炊事場から ひえぇぇええ!? と叫び声が聞こえ、霊が飛んできた。
何があったんですか!?と問い詰めてきたが
幽々子様の仰せのままにとつっぱねてきた。


----次の日の朝
妖夢は気になっていつもより30分ほど早く起きてしまったようだ。
顔を洗い、一旦自室に戻り、大きく深呼吸し心を落ち着かせ、避けられない時を待った。

やがて


―――幽々子様、妖夢様、ちょ、朝食の準備が終わりましたー


居間のほうからやや震えた声で霊が呼ぶ。
「よし!」
妖夢は気合を入れて居間(戦場)へと赴いた。


居間へたどり着くと既に幽々子がスタンバイしていたので
おはようございます と軽く挨拶をかわし、ちゃぶ台に目をやった。
本日の朝食は

出汁巻(2切れ)
塩鮭(1切り身)
大根のお浸し


2人分同じ量並べられていた。

(ああ、うちのちゃぶ台はこんなに広かったのか―――)
妖夢はありえない光景に息をのみながらも、平静を装い正面へと座った。

「幽々子様、今日は良い天気ですね。」
「ええ、そうね。昨日よりは暖かくなるのかしら?」

配膳係りの霊が部屋から出ていき、ここは2人だけの空間となった。
妖夢は幽々子用の小さなお茶碗にご飯をよそおうと、おひつを開ける
おひつの中にはそれなりのごはんが用意されており
ギブアップした場合のしのぎ用でやや多めに用意されていた。

「「いただきます。」」

ついに始まった緊張の第一回食事。
なるべく会話を増やしてそのまま勢いで乗り切ってみようと5秒くらい考えたが
肝心のネタが思いつかなかった。
悩む妖夢をヨソに先に幽々子が話始める

「ねぇ、縁側から見える庭、少し気になる所があるの。」
「配置変えですか?」
「んー、どっちかと言うと何かこう、木の枝が気になるというか…」

その後も、庭の話や最近やってなかった剣術の話等で盛り上がる明るい食卓。
一瞬おかわりを要求しかけた幽々子だったが、笑ってごまかして我慢できたようだ。

この調子だとうまくいきそうだ― と主を見直した価値ある朝食となった。


そして宣言から約半月。

特にゴネる様子もなく、私いつもこの量しか食べませんが何か?みたいな感じでここまできていた。

しかし、その日の昼食の時にひとつの小さな変化が現れた。
「ヒッ、ようむ?今日のやきそヴぁ。すごくおいしいかったわね!?」
「そうですね、明太子がぜつみょんですね…また食べたいですね。」
「ねー、こ、これまた、作ってフヒッもらいましょうね!」

どんだけテンション上がってんのこの主人
と幽々子の変化を甘く見る妖夢。

そして、そこから崩れるように幽々子に変化が訪れた。

「グッ。よをむ。生姜焼きってこんなぬ、おおいしかたね!?」
「おにく、じゅわーってにくじるいいわよnぇね?!あっぷぷるぅぷぴー」

言動がおかしいのである。
目も腐った魚の目2歩手前くらいまで来ている。

妖夢は変化には気が付いていたが
下界の医者から聞いていた話を思い出していた。


薬でもなんでも依存している場合、止めようとする時には必ず禁断症状が現れ
そこで挫折してまた戻ってしまう場合が多い。
しかし、そこを乗り切れば回復する可能性が高い――――


きっとコレもその禁断症状の一つで
ここが正念場で切り抜けさえすれば、もう大丈夫だろう。
と考え、ヘタに刺激しないように言動がおかしい事について進言しなかった。


これが妖夢の最大のミスとなる。


幽々子がすこしおかしくなってから一週間後。
幽々子が八雲紫の家へ出かける事となった。
こんな日は他の霊もお休みとなるので、妖夢は自分でごはんを作らなければならない。
晩御飯に何を食べるかを考えていた。

~~~~~

妖夢の頭の中にできた街にひっそりと佇む洋食店。

The みょん

創業90年の老舗洋食店。
料理長含め全ての調理師が刀で調理をすることで有名な店である。

料理長:妖夢
副料理長:妖夢
チーフ:妖夢
調理師:妖夢
調理師:妖夢
調理師:妖夢
の非常にバラエティーに富んだ顔ぶれである。


基本的に年中むきゅー☆なのだが、今日は急遽定休日にし
晩御飯のメニューを考えようと、店で話し合いが行われていた。
店の外からは
[バカヤロー!早くあけてー!]
[今日ここでパーティーしようと予約してたのにー!]
[妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまりないんですよー!]
等と、妖夢達が詰めかけてきており、暴動一歩手前まで白熱しているのだが
無視する事にした。


「さて、今日は久しぶりの好きな物晩御飯デーです。」
「ここにいる最高の調理師軍団により、最高の献立を作ろうと思います。よろしくお願いします。」

「オムライスとかいいですよねー」
「シンプルに牛丼てのもアリかも!」


------ケチャップライスって飽きますよね

 副料理長妖夢が呟いた。
 それを聞いてしまったオムライス推奨の料理長妖夢がキレた。
 他の妖夢は無視しているのか、気が付いていないのか、何事もないように話を進める。

「和洋中どれでいくか先に決めませんか?」

------オムライスと言えばケチャップライスしかないでしょ?何考えてるんですか?

「和系は基本食べる機会が多いので洋風のがよさそうですね。」

------はい?バターライスとかあるでしょうが。どんだけレパートリー少ないんですか。

「あー、確かに。でも中華はどうでしょう?」

------なんですって!?喧嘩売ってるんですか!ギッタンギッタンにしてあげます!!

「本格的に作りたいんですが、今コンロの調子が悪いそうなので、そこまで火力が出ないと思います。」

------かかってきなさい。身の程を教えてあげます。

 2人の妖夢は抜刀し、戦闘態勢に入る。
 これでもまだ誰も止めようとしない。

「じゃぁ洋食ですかねー。何がいいですかねぇ~」

------クソっ!この! キィンキィン!!

「フライ物は油がもったいないのでパスにしますか?」

------ぬぬ!!やるじゃないですか! キィンキィン!!

「確かに、少量しか作らないのにねぇ。置いておくと明日困るだろうし」

------うぅっ…あなたも…やりますね…!

 同じ妖夢なのでいつまでたっても決着がつかない。
 明らかに2人は疲弊している。チャンスなのだが、自分も疲れているので手が出せない。
 他妖夢はこれでも(略)

「焼き物ですか…うーん…あ!チーズINハンバーグとかどうでしょうか!」

------あ!待ってください!ケチャップライスとバターライスを混ぜればいいのでは!?

 ハッとした表情をして副料理長妖夢は進言する。
 それを聞いた料理長妖夢も同じような表情をさせ、固まった。

「おおー!素晴らしい!その案に乗ります!」

------そ、その発想はなかった…いい案…ですね!

 あまりにも素晴らしい意見だと感じた料理長妖夢は刀を床に落とし
 感動のあまり目に涙を浮かべていた。
 ※素晴らしい意見かどうかには個人差があります。

「確かに、最近食べてませんもんね!」

------ありがとう!私達、うまく協力できればよい関係になりそうだ。仲直りしましょう

「じゃぁそれに決定ー!ありがとうありがとう!」

------ええ!これからもよろしくお願いします! ガシッ

 お互いを認め合い、清々しい笑顔で握手をかわす。
 先ほどまでの憎しみはない、いち料理人として切磋琢磨し
 さらに技術力を上げれるような、よいライバル関係がここに誕生した。
 全力でぶつかり合ったこそ、認め合える――――
 後にこの2人が料理界最高のコンビと呼ばれる日は…あるのか?

 丁度他メンバーの意見もまとまったようだ。
 2人は気合十分、最高のオムライスを作るべく皆の方を向いた

「「ケチャップバターライスのオムライスに決定で!」」
「「「「はい!?チーズINハンバーグに決まったじゃないですか!話聞いてたんですか!?」」」」

「「(´・ω・`)」」

2人の思いは儚く散っていった。

~~~~~

トントントントン...
割烹着を身にまとい、手ぬぐいをほっかぶりした妖夢の楽しげな鼻歌と共にたまねぎが綺麗にみじん切りされていく。

そのたまねぎとバターを熱したフライパンに投入。
ジュワーと音を立て、たまねぎが炒められる。
よくまぜ、全体的に透明になるまでよく炒める。

炒めたたまねぎを別皿に移し、冷ます。

冷めるまで妖夢はボウルに挽肉、パン粉、溶き卵、塩コショウを入れ
コネコネとコネる。
(このなんというか、ニュルっと指の間に入ってくる感覚、変な感じ。慣れないなぁ)
一通りコネた後、冷ましたたまねぎを入れ、再度コネコネする。

(よし、こんなもんかな)

形を整え、中にチーズを忍ばせ、空気を抜く為に軽くキャッチボール。
ペチペチと音を立て、妖夢の目の前を行ったり来たり。

(そういえば昔、幽々子様にハンバーグを作ってあげた事があったっけ。)
(あの時空気抜きしてて、一個落としちゃったんだよね。)
(運悪く幽々子様がその瞬間を目撃してたから、ハンバーグ一つ無駄になったって泣いてたなぁ。)
ふふっと思いだし笑い。
小さなものを3つ作りいよいよ焼く作業に。

中心を窪ませフライパンに投入。
ジューという音と共に、肉の焼ける香ばしい匂いが妖夢の嗅覚を刺激する。
(あー、早くご飯たべたーい)

チラチラと焦げ目を確認し、ひっくり返してすぐさま蓋をする。
(ここが勝負どころ!)
妖夢はカッと目を見開きフライパンに集中する。

じゅー

…しばらくした後、妖夢が動いた
(今だ!)

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
素早く蓋を取り、ハンバーグを皿に盛る。
一人で調理してるのに急に【うおおおお!】はとても恥ずかしい。

(パ、パーペキ(パーフェクト・完璧))
が、本人は何も気にしていない、むしろ雄たけびを上げた事すら気が付いていないようだ。


チーズINハンバーグ。


まぁ、ただのハンバーグの中にチーズが挟まっているだけなのだ。
妖夢は手を合わせ、食材に感謝し、まずは箸でハンバーグを真ん中からゆっくりと割る。
上からほんの少し圧力をかけるだけで肉汁がじゅわぁとしみ出し
真ん中からはとろけたチーズがゆっくりと露出してくる。
そこからさらに半分割り、持ち上げる
チーズは美しく伸び、落ち切れていない肉汁が2、3滴皿に落下する。

チーズと焼けた肉の香りをスーッと吸い込み、そしてそのまま ぱくっ!
もぐもぐ...口の中でチーズとハンバーグの味が一切の喧嘩なく口の中に広がる。


いやぁ、本当においしい…
こんなハンバーグお店でも中々出せないおいしさ。
偉いぞ、このハンバーグを作った私!
もう表彰してあげたいくらいだ。
ハンバーグの肉汁とチーズのまろやかな味わいがとても相性がいい。
このままご飯をかきこむも良し、咀嚼しうまみを堪能するもよし


~~~~

やがて妖夢の頭の中に架空(妄想)の町が現れ
盛大なパレードが始まった。
私の料理最高!とプラカードを掲げ歩く妖夢と
沿道には妖夢を見ようとたくさんの妖夢が集まり歓声が起こる。
そして列の中心には6人の調理師妖夢。
たくさんの妖夢の歓声に答え手を振る妖夢達。

「キャー!妖夢ー!最高よー!」
「こんなハンバーグ食べたことないわー!」
「よ・う・む!よ・う・む!」

~~~~

しかし、その歓声も一瞬で消える事になる。




「オイシソウ ね。ふ、ふふっふふふふっ。」




幽々子が帰ってきたのだ。
袖で口元を抑え笑っているのだが、目が笑っていない。
目はこれでもかと見開き、血走っている。

~~~~

妖夢のパレードに参加していた妖夢たちは泣き叫びながら
蜘蛛の子を散らすように逃げていき、妄想の町はゴーストタウンと化した。

~~~~

「はぇ!?お、お帰りなさいませ。すみません気が付かなくて。」

「ううン。イいのよ?それ今度わた、シニモ食べ食べたさせてね。」

「はい!きっと幽々子様も満足されるハズです!」

それは楽しみね
と小さな声でつぶやき部屋へ戻って行った。

きちんと後片付けをし、少しまったりとTVを見ていると

コ、コッコケー!!コケーコケー!!

飼っていた鶏が激しく鳴き出す。
何だ?と思ったが直ぐに鳴き声は止み、他怪しげな物音は聞こえてこなかった。

喧嘩でもしたんだろうと、妖夢は気にも留めずに
それよりも幽々子が姿を現さなかったのを気にしながらも
夜も遅いし、翌朝聞く事にし、就寝する事にした。


妖夢が就寝してから数時間後、大きな物音がした。

ガチャン、パリン ウ、ウワッ…バリバリッ…ヤメッテッ ギャッ!


妖夢は飛び起き枕元にある白楼剣と楼観剣を持ち声のする方へ急いだ。
そして辿り着いたのは炊事場。
そこにいるはずの霊が見当たらず、物陰で何やらうごめいているのが見えた。

(侵入者…?まさかさっきの鶏はもしや…?)

ピチョ…ピチョ…と水が滴る音だけが響く暗い炊事場
妖夢は白楼剣を静かに抜刀しゆっくりと その何か に近づく。

「抵抗はヤメなさい。ここを白玉楼としっての愚行か?」
「抵抗するなら容赦なく斬る、顔を見せろ!」

うごめいているものが立ち上がった。
丁度同じタイミングで、騒ぎを聞きつけた他の霊が明かりを持って現れた。

明かりに照らされた何かの正体は

幽々子だった。
幽々子は虚ろな表情で妖夢を見つめている。

侵入者ではなかった事にほっとした妖夢は刀を鞘に納め
「ああ、幽々子様でしたか…すみません、暗闇だったので確認できなくて。」
「無礼をお許しください。」
「所でどうされましたか?お怪我はございませんか?」

ヒュッ ドスッ

妖夢の顔のすぐ横を何かがカスめ、すぐ後ろの柱に突き刺さった。
横目で確認するとそれは包丁だった。妖夢の頬が切れうっすらと血が滲んだ。


「な、何を…?幽々子様…?」

「妖夢」

幽々子を心配して霊が幽々子に近づく
本能で危険を察知した妖夢は霊に警告を出す。

「危ない!!!幽々子様から離れろ!」

幽々子は静かに、そして素早く霊に対し扇で霊を叩く。
パァン!と乾いた音がし、霊がものすごいスピードで飛ばされていった。

「な、何をされるのですか!幽々子様!」

「妖夢」

俯きながらゆっくりと近づいてくる幽々子。
妖夢は咄嗟に間合いを取ろうと2、3歩後ずさるが
幽々子はものすごいスピードで妖夢の目の前に移動してきた。
ゆっくりと幽々子は顔を上げ

「早く…お夜食の準備をしなさい。ごはんよ。ごはんんんんごはんごはんごはんごはんごはんごはんごはん!!!!!」

いつもの幽々子からは想像もできない、狂気の表情で妖夢に迫る。

(
なんだ何が起こった!?これは幽々子様か?偽物か!?ごはん!?なんの話!?
作る!?作らない!?これが本物だとしてもこれでは作るのを待つとは到底思えない。
明らかな殺意、きっと作ったらだめ。そうだゆゆこさまのへやへいってかくにんしないと
)

妖夢は渾身の力を振り絞り、幽々子の部屋へ走った。

「よぉぉぉおおおおおむううううぅああああああああ!!!」
恐ろしい叫び声と、後ろからのとんでもない威圧感。
妖夢は振り向かず一心不乱に幽々子の部屋へ。

パァン!と勢いよく障子が開けられる。
「幽々子さ…な、何だこれは…うぉぇっ」


部屋に幽々子はいなかった。
幽々子の部屋は棚の中身や本が散乱しており
部屋の床壁天井に飛び散った血と無残な姿になった鶏が2匹。

思わず妖夢は少し吐いてしまった。

「よぉむ…にわとり…なま…おいしくない」

ハッとし後ろを振り返る。
月の明かりに照らされた幽々子の口元は、血で赤く染まっていた。

ゆらり、ゆらりと妖夢に近づく

幽々子の威圧からか妖夢は一歩も動くことができない。
そればかりか息がしにくい、はっ、はっ と呼吸を整えようとしても
いつまでたっても息苦しい、妖夢の額から汗が流れおちてくる。

その間にも幽々子はゆっくりと近づく、そして手を伸ばせば触れる距離。
幽々子はゆっくりと妖夢の首に手をかけ

ゆっくりと
ゆっくりと力を入れ、妖夢の首を絞めていった。

(く、くる…し…)

妖夢は必死に手をどけようと抵抗するが、ちっとも動かない。
幽々子はそこからさらに力を入れ、そのまま持ち上げ、幽々子はニタァと笑う。
そして妖夢の抵抗がほぼ無くなった時、幽々子はそのまま妖夢を部屋の外へ投げ飛ばした。

ズザァと縁側の下に転げ落ち、その衝撃で妖夢は我に返り、ヒューヒューと必死に呼吸を繰り返す。

危機を察知し、すぐに立ち上がるが
酸欠状態でクラクラし、なかなか体制が取れない妖夢に対して
幽々子はクスクスと笑いながらゆっくりと妖夢に近づいてきた。
妖夢はまだ息を整える事ができない。

(このままではまた…次はもう逃げられない)

息が整わない状態であったが、必死に逃げだし、桜の木が大量にある庭へと逃げ込んだ。

後ろを気にしながらも逃げ、木の影に隠れる。
息を整えようとしながらも、木の陰から走ってきた方向を確認するが
幽々子の姿は見えない

ハヒューハヒューと激しく息をし、じっと確認する。


ざぁあああと強い風が吹く、後方には人影も見当たらない


(ま、撒けたのでしょうか…)
ある程度落ち着いてきたので
ふぅっと一息つき、正面に向きなおす。



「ばああああああああああああああああああ!!」



もう目と鼻の先の距離に幽々子がいたのである。
妖夢はあまりの驚きに声も出ず、ビックリした表情をする事しかできなかった。

口元がヒクつく。
少し混乱してしまった妖夢は、この後、
なぁ~んちゃって!驚いた?妖夢♪
と帰って来るに違いないと予想し、引きつり笑いをしてしまう。

しかし

幽々子の狂ったような表情を見て現実に引き戻された

「ふふ、よ、ようむ。うふ、ふふ。あは、あは、あは、はは」

(
このままでは埒があかない。話してどうこのレベルではない
幽々子を助ける為には、幽々子を行動不能にさせるしかない
もうそれしか方法はない…
その結果私はどうなったって構わない。
)

妖夢は覚悟を決めた

「魂魄妖夢、参る」

ドンッと両手で幽々子を押し、距離を作った。
と同時に自分も少し後ろに跳ね、その反動を利用して幽々子にすばやく近づく
そして白楼剣を握りそのまま抜刀し切りつけた。

(よし!)

シュインッ

刀が空気を切り裂く音がした。

「えっ?」
斬った感触は無い、幽々子の姿も見当たらない


「へったくそ」


幽々子は妖夢の斬撃を躱すとそのまま妖夢の斜め後ろ、死角に回り込んでいた。
グッっと足に力を入れ、妖夢に突進
そしてクルッっと一回転、その反動そのままに妖夢の脇腹に

蹴りが入る

「がぁぁあっ!?」

ドゴッと鈍い音がし、吹っ飛ばされる
不意をつかれた為受け身が取れず、そのまま勢いを保ったまま背中から思い切り木に叩きつけられる。

「ぐあぁああ…ああああ…」
何が起きたのか一瞬理解ができなかった。
幽々子の声が聞こえたと思ったらこの状況である。

手にもっていた白楼剣がない事に気が付く
「あ、あれっ…は、白楼剣…」
「これをお探しですか?」
ヒュッっと空気を切り裂く音、それと同時に妖夢の左肩から肘当たりまでを斬りつけられた。

「うあああああ!!!」
ドクドクと妖夢の左腕から出血し、左手が思うように動かない。

幽々子の持つ白楼剣の先が妖夢の血で赤く染まる。

幽々子が白楼剣をビュンビュンと振り回していると桜の木の枝に当たり、枝が切れた。
太い枝だったのだが、まるで豆腐を切るようにあっさりと切れ
ドスン!と地に落ちた。

「あら、これはこれは」

幽々子は余分な枝を切り落とし、即席の木刀ような物を作る。

「お、おやめください…幽々子様っ…!」
涙ながらに懇願するが

「返すわ。もういらない」

ビュンと白楼剣が妖夢に向けて放たれ、妖夢の右太ももに深く突き刺さる。

「いぎゃあああああああああああああああああ」
「ふふふ…ゾクゾクきちゃう…」

妖夢は必死の思いで楼観剣を太ももから抜き
なんとか鞘に納めながらも立ち上がり、無駄な抵抗と分かりながらも
幽々子に背を向けて逃げ出した。
右足が思うように動かず、全力疾走できない。

「あはは…あはははははは…」

背後から襲ってくる気もなく、追いかけて遊んでいるような幽々子
妖夢はそれでも走り続け、痛いのを懸命に堪え、ついに白玉楼が木々の隙間から見える所まで走ってきた。

「ふふふ、あははははは、ハヤクニゲナサイヨ!!!」
幽々子は必死で逃げる妖夢の背中を強く押した。

妖夢は前のめりになりながら吹っ飛ばされ、顔面から木に激突

「うわやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
顔の左半分を強打
額や鼻から大量に出血しているのが分かる。
左目の世界だけがボヤけて赤く見える。
「ああああ、あああああ…」
顔の左半分をおさえ、のた打ち回る妖夢。

それを見て幽々子は、ゲラゲラと指を指して笑う。

それでも、妖夢はまた立ち上がり、白玉楼へ向かってまた走り出す。

「そうこなくちゃ…」

そして、幽々子と妖夢がいつものんびりとお茶を飲んでいた縁側前まで辿り着いた。
在りし日を思い出し、もう戻れないのだと
妖夢の目からは痛さではなく、悲しみの涙がこぼれていた。

しかし、感傷に浸っている瞬間
フッと目の前に 幽々子が現れる。
妖夢が幽々子を認識するよりも早く血に染まった右足に向けて
即席木刀を振り下ろした。


ボキリ


確かにそう聞こえた。
「きぎゃあああああああああああああsくぁだだあああああああああああ」
「いぎゃあああああああああああああああああああ!!ああああ!!!!!!」
「あああああ…あああああ…ああ…」

「オシまい。タノしかかか、ったわ」

ニヤニヤとしながら妖夢に近づく幽々子と足を押さえてその場で倒れこむ妖夢。

幽々子が近づくのを見て、妖夢は右足に体重をかけないようにまたしても立ち上がる。
痛みと悲しみと怒りが入り混じった表情で、幽々子を睨みつけ
フーッフーッと息荒く、妖夢は楼観剣を抜刀し構えた。

「シツコイ…」

左手は添える事すら困難な状況であったが、妖夢は右手一本で振りかぶった。

「 断命剣 」

長い刀身の楼観剣が妖力をまといさらに大きく変化する。
妖夢は意識が朦朧としながらも、自身最大の一撃を放つ!



「 冥 想 斬 」



弱っている妖夢とは思えない程恐ろしいスピードで幽々子を襲う!

「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「ふふっ」
幽々子は即席木刀に妖力を込め、薙ぎ払う!

ギィン!と金属音がし、妖夢の楼観剣はビュンビュンと音を立て、2人の上空を舞い、妖夢の背後の地面に突き刺さった。

「そ、そんな…あぐっ!!」

本来ならば【両手で】持たなければいけなかった。
右手一本では幽々子のはじきに耐えられなかったのだ。
間髪入れず、幽々子は妖夢の鳩尾に一撃を決めた。

そして、妖夢の意識はここで一旦途絶える事になる。


……

メリッ…ぐちゃっ…ぐちゃっ…

妖夢は奇妙な音と体が張り裂けそうな痛みで意識を取り戻した。

(ううう…
わ、私は…ああ、そうか…
意識を取り戻しただけでも幸運だったのか…?


回りを確認すると、幽々子に斬りかかった場所なのが分かった。
だがしかし背後から生々しい嫌な音がしているのに気が付いた
動かない体に鞭を入れ、恐る恐る背後を確認する。



くちゃっくちゃっ




うわあああ…ああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ




幽々子は妖夢の半霊にかぶりついていた。
既に一部分が無い。
くちゃくちゃと咀嚼しているが、表情はよろしくない。

「起きたのね…ってコレ、あんまりおいしくないわねぇ…もういらないわ。」

無造作に放り投げられた半霊。
ドチャっと鈍い音がし地面に叩きつけられたが、ピクリとも動かない。

「ああうあああ…あああああ…」
「こっちの方がいいわよね。最初からこっちにすればよかった」

ジャリッジャリッ
ゆっくりと妖夢に幽々子が近づく。

「ああああ…ああああ…」
「ふふ…」

涙を流し、ガチガチと歯を鳴らし、全身が大きく震え、絶望の表情を浮かべる妖夢
その表情を見た幽々子は舌で上唇をなぞり、ニヤリと笑い、妖夢まで後3歩の位置へ到達した。


妖夢の視界、左端から何かが飛び出してきた。
何?と思うよりも早く、飛び出してきた何かと幽々子がぶつかり、一瞬にして視界右へ飛んでいき、続けて
ドン!ガラララ...と音が聞こえた。
正面には誰かの足元が見える、長いスカートの裾が妖夢の目の前でパタパタとなびく

「あんた…やっ…いい…と悪…るでしょう!!!」
「妖…!?…?しっ…さい!!ごめ…い、…遅くな…て…まさ…な事に…」
「ら…!…ん!早く…で…い!!!」

「…!!…夢!しっ…り…!大じょ…夫…!」

(だれ…何を言っているの…?)


満身創痍の妖夢は、自然と目を閉ざしていた。
そして、自分の体が持ち上がるのを感じ取った時、完全に意識が途絶えた。




「お願いします。」
「ほら、早く行きなさい!」

幽々子は納屋に激突し、砂埃が立ち込めていた。
やがて砂埃の中から現れた幽々子は目の前にいた ソレ を強く睨みつける。

「…うぅうう…あああ…邪魔したぁ…邪魔したああああ!!!!」

幽々子の前に立ちはだかるのは、幽々子の親友でもあり
幻想郷の賢者と呼ばれている妖怪

八雲紫

「まさかこんな事になってるなんてね…」
「あー、もうほんと、何なの…なんで私…」
はぁ~と大きくため息をつき、ボリボリと頭を掻いた
「何が賢者よ…親友の暴走も検知できないなんて…」
「おかしいとは思ってたけど…ああもう、反省会は後にしましょう。」

「…うぅうう…邪魔したぁ…」
「まずはあなたを助けてあげないとね。幽々子。私が誰だかわかるのかしら?」
腰に手を当て、鋭い目で幽々子をにらむ





「"!#$!"#%&$&TDPS>F>F<!!」


何か分からない、聞き取れない言葉を幽々子が発しながら紫に向かって突進してくる。
紫は適当にあしらう為、幽々子の攻撃が紫に当たらない。
やがて幽々子は落ちていた即席木刀を手に取り、紫に剣先を向ける

「ちょっと・・・あんたそれ本気?」

流石の紫も苦笑いだが、幽々子は鼻息荒く紫に襲い掛かる。
高く振り上げられ、紫の頭を狙って振り下ろされる木刀と
スッ、スッ、と左右に軽やかに避ける紫
何回かの攻防の末
地面に叩きつけられた即席木刀はバキッ!っという音と共に折れてしまった。

木刀が折れた音を合図に紫はスキマへと逃げ込み
幽々子の背後へと回り込む。

一瞬の出来事に紫を見失った幽々子
それを後ろから見る紫

「幽々子……」
紫は優しく幽々子の名前を呼び、トントン、と肩を叩いた。
それに応えるように後ろを振り返る幽々子
紫はニコッっと微笑んだのだが



「いい加減にしないさい!!!このっおばか!!!」



バチーン



紫の思いっきりのビンタが幽々子にヒット
その反動で幽々子は強烈なスピンがかかり、約5回転半してから地面に落ちた

「うっ…ううっ…」
「幽々子」
「ゆ、ゆか、ゆかり?あれ?ゆかり?あ、あれっ?何して・・・?」
「ようむ…?ようむ…?ようむううう…?どこぉ?どこぉ?」

ハッとした表情でキョロキョロと回りを確認する幽々子
目は見開き、必死に妖夢を探す。

「ようむ、ようむ、…あっ」
「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「う、うそっ!ようむ!うそっ!!うそっ!?えっ!?」

自分のやってしまった事が脳裏に過り、さらに混乱する幽々子

「キゃあああああああああああああああああああああああああああ」

そして、血だまり見て、狂ったように叫び声を上げる
これ以上はまずいと思った紫は
素早く幽々子に近づき、幽々子の意識を飛ばした。

「後味…悪いわ…」
歯をギリッとかみしめ、幽々子と抱きかかえ、白玉楼の中に戻って行く



家の中では妖夢の応急処置で霊達がバタバタしていた。

【早くお湯を!!!早く!!!遅い!!!】

藍の怒号が響き渡り、霊が慌ただしくバタついている。

オロオロしている橙を見かけた紫は
「橙!!!永遠亭へ行って医者を呼んできなさい!」
そう言うと同時に橙を永遠亭にスキマ送りした。

とりあえず幽々子を寝かさなきゃと、幽々子の部屋に向かう。

幽々子の部屋は気が利く霊によって既に掃除がされていた。
掃除したといっても、鶏の死骸の処分や、血まみれになった床壁天井を応急的に掃除されているだけで
散乱した書物などは廊下に置かれていた。

「…臭いわね」

幽々子を布団に寝かし、スキマから陶器でできた物を取り出し
中に火をつけると、よい匂いのする煙がもわもわと出てきた。

さて、私もひと頑張りしますかと
幽々子は藍の元へと向かった



それから約半日後

幽々子が目を覚ました。

部屋の真ん中に紫と幽々子は向かい合うように座っているのだが
「うぐっ、ひっく、うぐっうぐっ…」
目を覚ましてから幽々子は泣き続け
未だ嗚咽する声が止まらないが、徐々に落ち着いてきていたので、紫は今回の事情を聞く事とした。

「少しは落ち着いたかしら」
「うん…ごめんなさい…」

「あ、あのう…」
「何かしら?」
「あの、よ、妖夢は…?」
「現在治療中、まだ目を覚ましていないわ」
「そう…」

「まず、あなたがそうなった原因は、食事…よね?」
「そうだとおもう…」
「昨日来たときは至って…とは言わないけど、まぁ普通だったじゃない」
「うん…我慢できてたから…」
「帰ってから何かあった?」
「ん…ええっと…あ」

「妖夢がチーズINハンバーグ食べてたの。すごくおいしそうだったの」
「そこから、何かもう我慢限界で…もうなんか…それから…」

妖夢、チーズINハンバーグで命を落としそうになる。
(不憫すぎるじゃないの…)

「まぁ、あなたが食事制限するってのはその、家計的に考えてもいい事だけど」
「やっぱり我慢しすぎるってのはダメよね?」
「食事の量を減らすにしても、我慢できなくなったら少し食べればいいじゃない」
「後はそうね。最初は週に1回、一食だけいつものようにごはん食べるとか」
「そんな方法もあったわね。今更で悪いけど」

「そうね…」
「ってかそれでいいんじゃないの?そうしなさいな」

「でも…」
「ん?」

「妖夢が目を覚まさなかったら…うぅっ…」
「幽々子…」

「愛想尽かされて出て行かれたり…」
じわぁと幽々子の目に涙が溜り、やがて溢れ出し、頬を伝って流れていく

「私、どんな顔して妖夢に会えばいいのか…」

紫は優しく幽々子の頭をポンと叩く

「まずは妖夢が回復するのを待ちましょう」
「それから、私も一緒に謝るから」

え?っとした表情で幽々子は紫の顔を見る

「大賢者と言われながらも、一番の親友のあなたの異変に気が付けなかった。」
「私がもっと早く対策できていればこんな事にならなかったのよ。」

こんなんじゃ霊夢に叱られちゃうわ。と苦笑いし、また幽々子の頭をポンポンと叩く

「実行犯の私は兎も角、あなたが来なければきっと妖夢を殺しちゃってたわ。」
「命の恩人のあなたが謝るのは違うんじゃないかしら」

あくまでも悪いのは自分だけ、と言い張る幽々子

「いや、私の気が済まないわ。私は最善を尽くせなかったわけだし」
それに、あんた一人で背負わせるのは嫌なのよ―――
と言いかけた所で

コンコン

「紫様、幽々子様、藍でございます。」

「はい、いいわよ入ってきても」
「失礼致します。紫様、下界の医者がお呼びです。」
「はいはい。ありがと藍。下がっていいわよ」
「それでは」

「幽々子、あんたはどうする」
「わ、私も行く…」

2人は終始無言のまま妖夢が寝ている部屋へと向かった。

「お呼びかしら?」
「ええ、現状について少し説明をと」

永琳はいつになく真剣な表情で現状について説明を始めた
余程の治療だったのだろう、珍しく永琳の額はうっすらと汗が滲んでいた

「まずは外傷から説明します。」
「左腕に大きな裂傷、右足にも刺し傷」
「特に右足は刺し傷が深く、そして大腿骨も折れています」
「通常の人間であれば、歩行障害が残る可能性が高いです。」

幽々子はぎゅっと力強く握りこぶしを作り、体を震わせながら聞いていた。
俯き、目に涙を溜めながらじっと聞いている。

「…次は頭部ですが」
「脳へのダメージは特にないと思われます。」
「ただ、左眼球に傷があり、このままではよろしくありません。」
「通常の人間であれば、失明。運が良くてもかなりの視力低下となります。」

ビクッっと大きく肩を震わせ、額から大粒の汗を流す
紫はそっと幽々子の手を握る

「最後に内蔵についてですが」
「所々に内出血が見られます。」
「現在は落ち着いていますが、一番注意しなければいけない箇所ではあります。」

幽々子は紫の手を強くギュッと握った

「とは言っても」
「私の薬で治せない事なんてありません。」
「特に心配する事は何一つありません。今のところ大丈夫です。」

「しかし何が起こるか分かりませんので、絶対安静にしててください。」
「何かありますか?」

幽々子は喋れそうにもないので、紫が代わりに気になる事を聞く
「その、後遺症とやらも大丈夫なの?」
「そうですね、特に心配する事はありません。」

その言葉を聞いて安心したのか、幽々子はズビズビ言わせながら泣いていた

「とりあえず、後はゆっくり待つことです。」
「おうど…鈴仙を置いていきます。何かあればすぐに駆けつけますので。」

お大事に、と言い残し、永琳は帰って行った。

「よかったわね、幽々子?流石永遠亭と言ったところね。」
「一日も立ってないのに素早い対応で助かるわ。」
「鈴仙さん?何もない時はゆっくりしていってくださいな?」
「ありがとうございます、早く回復されるといいですね」

「幽々子?」
「よ"、よ"がったぁ…あああ…よ"がったぁ」

それから、約半月の月日が流れた。
とても効果の強い薬だったのか、妖夢自身の生命力のおかげなのかは不明だが
検査結果も日が経つごとに正常値に戻っており
後は意識が戻るのを待つだけとなる。

そんなある日の夜
幽々子は寝る前に妖夢の部屋を訪れ、今日あった出来事を話していた。
「今日はね、紫が珍しく昼御飯を作ってくれたのよ」
「しっちゃかめっちゃかでね。ふふ。炊事場の霊とか藍がわたわたしてて」
「とても料理している感じじゃなかったわ」
「でね?結局一時間かかって出来たものが、所々コゲてるチャーハンよ!笑えるでしょ?」
「味もまた、しょっぱいのよ。御飯の中から塩が固まりで出てきたし」
「紫もネギとか焼き豚とか切るだけなのに自分の指切っちゃってるし」
「それでも、満面の笑みで、出来たわよ!おあがり!なんてドヤ顔するんだから」
「妖夢が目を覚ましたら一回食べてみなさいな。きっとイヤな顔するわ」

クスクスと笑いながら、妖夢の頭をなでる
心なしか妖夢が微笑んだような気がした。

「こら、人が一生懸命やったのを笑い話にしない!」
スキマから幽々子の背後に現れた紫は、幽々子のこめかみをグリグリとした

「ひゃっ!?あだだだだ!!だって面白かったんだもん!」
「で、どうしたの?こんな時間に」

「あのね、幽々子」

紫は真面目な顔でこう進言した

「…こんな事言うのは間違いなのかもしれないけど」

「あなたと妖夢の今回の記憶」
「…消す事が出来るの」

「そう…」


幽々子はにこりと微笑み
「幻想郷がひっくり返るとしてもきっと頼むことはないわ…」
「私は一生背負っていくつもりよ?ずーっとずーっと終わりなく…」

「そう、ごめんなさいね。変な事聞いて」
「いいえ…気にしないで…」

紫はほっとしたような表情でスキマの中へ戻って行った。

「きっと忘れない、忘れたくないわ」

妖夢の頭をもうひとなでし、寝室へと帰って行った。


それから数日後

バタバタと雑に走る音が幽々子の部屋に近づいてきた。

「幽々子様!鈴仙です!妖夢さんが意識を取り戻しました!」
「…わ、わかりました。」

ふーっと大きく一息つき
ゆっくりと妖夢の部屋へと向かった

部屋を開けると、紫、藍、鈴仙がおり、妖夢と目があった。
手足が震えてくる、平静を装いながらも妖夢の傍に座った。

「あ…ゆ、幽々子…さまぁ…」
弱いながらもはっきりと幽々子を認識してくれている。

「妖夢…あの…」
大きく息をのみ、妖夢に話しかけた。


「よっ、寄るなぁっ!!!」

大きく叫ぶと、妖夢は素早く立ち上がった。

「あ、あ、あんな目に合わせておいて、あああああ」
「こ、こうやって看病して、ま、また」


「また痛めつけるのか!!!」


「よくも半霊を…!!!」
「もう主でもなんでもない!!」
「回復させた事を後悔しろ!刺し違えても…やってやる!」

怒り狂う妖夢、そして抜刀された刀
幽々子は虚ろな目で妖夢を見つめ、座ったまま微動だにしなかった。

「そう…ね。ひどい事したわね」
「いいわ、もう、この首持っていきなさい」

「くたばれぇえええ!!」
妖夢は思いっきり振りかぶり、幽々子に向けて一閃を放った




「幽々子!!!!」
紫に呼ばれハッっと我に返った。

妖夢は依然布団の中にいる。
幽々子の顔は青白く、息も荒く、ガタガタ震えていた
幻覚で良かったと思う一方、その恐怖からか顔を上げる事ができない

「ほら、妖夢が目を覚ましているのよ!?」

「幽々子…さま…?」

布団の中から妖夢が心配そうに幽々子を見つめる
しかし、幽々子は妖夢の顔が見れなかった

自分が殺してしまいそうになった従者の顔が見れない。
幽々子はついに立ち上がり外へ駆けだして行ってしまった。

「ま、待ちなさい!幽々子!」
紫も幽々子を追って外へ

「あ…幽々子様…」
現状を把握しきれず妖夢はただオロオロするばかり

「妖夢、幽々子様はきっとまだ心の整理がついていないようだ」
「…しばらく気にせずゆっくりとするといい」

「…だめです…まったくダメです…」
「主なら主らしくもっと堂々とするべきです…!」

そう返答し、妖夢は立ち上がろうとした
ずっと寝ていた為か、うまく立ち上がる事ができない

「妖夢無理をしてはいけない…!」
「妖夢さん!」

慌てて止めに入る藍と鈴仙
しかし、妖夢は 行かなきゃ!と強く自分の気持ちをつたえた

「追いかけなきゃ…藍さん、鈴仙さん。肩、貸してください。」
「後、あの引き出しの上から3番目にある筒を取り出してください」

鈴仙が引き出しを開けると、そこにはキラキラとした紙が貼りつけてある筒があった。
筒の片方からは紐がぶら下がっていた。

「それ、持ってきてください。あ、紐は引っ張らないで。」

「おや、これはだいぶ前に紫様が外の世界から持ってきた、えーっと」
「く、クラなんとか。まだ持ってたのか」

妖夢は藍と鈴仙に支えられながら幽々子の後を追った。


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「幽々子様!」
庭に出てしゃがみこみうーうーと震えている幽々子に
妖夢が追いついた

妖夢は一人で、ゆっくりとゆっくりと歩き
幽々子の背後に立った

「もう、平気なんですか?」
ふぃぃっと奇声を上げつつもしゃがみこんだまま、まだ顔を上げようとしない

「それにしてもですね…」
「本当に死ぬかと思いました。」
「しかし、主としての強さを垣間見れてすごいなとも思いました。今となってはですけど…」
「コテンパンにやられるとか剣術指南役が聞いてあきれます。」
「実力の差を痛感しました。まだまだ修行が足りません。」
「というか、あんなに鋭く動けるなら、剣術がしんどいとかないですよね?」
「これからは倍頑張っていただきますので。」

「というか」

「何ビクビクしてるんですか?」
「従者に対してはもっとこう、堂々としてくれないと。」
「みんな見てるのにこんな醜態さらして、恥ずかしいです。」
「何してるんですか…本当に。情けないです。」
「正直、殺されかけた事よりも、この状況が本当に腹立たしく思います。」

ちょっと、言い過ぎよ と紫が止めに入ろうとしたが
妖夢は紫にウインクし、シーっと合図を送った。
意図を感じ取ったのか、程々にしなさいよ、と表情で返事した。

「何も言えないんですか?残念です。」

「後、何ですか、庭に逃げた時のアレは」
「後ろから来るものだと思って背後確認して」
「いないと思って、正面向きなおしたら目の前にいたとか」
「どこのホラーですか。」
「危うく…あの、アレしそうになったんですからね!!」
「ほんとに…白玉楼の庭師から白玉楼の漏らしって呼ばれる所でした。」

未だ背を向けてブルブル震えている幽々子に筒の先を向け
妖夢は、一気に紐を引っ張った


パァアアアアアアアン!!!!!と大きな炸裂音がし
紙切れが幽々子の上に降り注いだ。


「ぎゃわぁあああああああんん!!!!!!!」
ビクッ!と大きく幽々子が震え うわぁはぁ~ん とついに声を上げて泣き出してしまった。

「ごめんなさい、ちょっと意地悪しました。」
用済みになった筒を放り投げ、妖夢は後ろから幽々子をぎゅっと抱きしめた


「おかえりなさい。幽々子様。そして止められなくてすみませんでした。」


久しぶりに感じる幽々子の背中
ああ、帰ってこれたのだと妖夢は堪能するようにスリスリした。

「どぼぢて…どぼぢてあんだがあやばるのよぼぉ~」
妖夢の方を向きなおした幽々子の顔はお世辞にもかわいいと言えるものではなく
涙と鼻水でぐっちゃぐちゃになっていた。

「よぉむ…よぉむ…ごべんあざい…ごべんあざいぃぃぃ~」
幽々子は妖夢の顔をしっかりと見て、逆に抱きしめ返す

「こわ、怖い思い、を、させて、ご、ごべんなさい…」
妖夢はうんうんと頷きながらも幽々子に抱き着かれるがままとなっていた。

「き、きらい、になら、ないで…出てて、い、いかなひ、で…なんでも…しまっしまっすから…」

「出ていくわけないじゃないですか。何バカな事言ってるんですか?」

「後何でもしますなんて言わないでください。大丈夫ですから。」
「私は何があっても幽々子様の御傍にいます。どんな事があっても…」
「この命に代えても幽々子様をお守りすると誓いました。」
「大体、この役回り、私以外が務まるとは思いませんがね。」

また幽々子はわんわんと泣き、何言っているのか分からないが
一生懸命妖夢に話をしていた。
妖夢はにこにことしながら、相槌をうち、話を聞いた。

しばらくして、紫が2人に近づいてきた。
「妖夢」
「あ、紫様!すみません、助かりました…なんとお礼を申し上げればよいのか…」
「いや、それは別にいいとして」

「今回の件、私にも反省するべき所があったわ。」
「当日、幽々子って私の家に来てたじゃない?」
「そこで私が予め予測できていればよかったのだけれども…」
「正直、どうかしてた。おかしかったのは気が付いていたけど」
「幽々子に限って、っていう慢心があったのね。反省するわ。」
「ごめんなさい、妖夢、辛い思いをしたでしょう…」

そんな事ない!と言いそうになって妖夢は言うのをやめた。
それは紫の意見を否定し、失礼になると思ったからだ。
妖夢は紫の気持ちを心に留め

「ありがとうございます。もう、大丈夫です!」
ニコッっと笑顔を返した。


それからしばらくしてすっかりと元気になった妖夢は
いつもの生活スタイルに戻っていた。

幽々子は紫の進言通り、週に一日だけ好きなだけ食べる!という決まり事を守り
順調にきていた。


しかし、
その平穏も
長くは続かない
妖夢には
まだ
一つ
最後に
苦難が
残されていた。

「おや?なんでしょう。これ」
朝、玄関に封筒が挟まっているのを見つけ、透かしてみたり振ってみたり確認した後
封筒を開け、中に入っている紙を広げた。
読み進める毎に妖夢の眉間にシワがよるが、読み終える頃には真っ青な顔になっていた。

「ゆ、ゆ、幽々子さまぁああああああああ!!!!」
「な、な、ななんですかこの金額ぅううううううう!!!うり…うわあああああ!!!」
「ちちち、ち、治療ヒィィィィイイイ!!!!」
「あああ、まずいぞ…まずいぞこれは…」

~~~~

妖夢の頭の中で会計係りの妖夢がものすごいスピードでパチパチとソロバンをはじく
何度やっても、字が赤くなる、赤くなる
顔を真っ赤にして会計係りの妖夢はソロバンをはじき続けるが
ついに机にソロバンを叩きつけてバラバラにした後、どこかへ行ってしまった。

~~~~

「ああ…だめだぁ…」

「ゆーゆーこーさーまーぁー」

「このままだとーごはんが食べられませんー」
「いやあああああ!!!ウソだといってぇえええええ!!」

幽々子と妖夢の切ない声が白玉楼に鳴り響く
ご覧いただきましてありがとうございます!

妖夢は嫌いじゃないです。むしろ余裕で好きなほうです。
妖夢好きな方、妄想族にしたりギタギタのメタメタにしてすみませんヾ(・ω・)ノ

――――――2012/06/25 追記――――――
わわ。予想外のお褒めの御言葉と点数ありがとうございます!
あまりにも不安でドキドキしていた為
前作以上の厳しいお言葉が書かれていて少し凹んだ夢を見てしまいました(・´ω`・)

前作のご意見があったからこそ、このSSを作った時気が付いて修正した所も多々ありました。
今更で申し訳ないんですが、ご意見頂いた方々、本当にありがとうございます!

日々精進、次回作のネタ探し中です。
きっとこんなノリのSSばっかりな気がします。
ありがとうございます。

――――――コメント返信的な――――――
実はこの作品、【妄想族妖夢】と【怒り狂う幽々子】は別の没作品の中の設定でした。
で、2つとも気に入っていたので一緒にした結果・・・
こんな落差がついてしまったのですね・・・

>>1さん
ありがとうございます(´∀`)
初っ端のコメントでお褒めの言葉頂いて、正直ニヤリとしました!

>>3さん
ありがとうございます(´∀`)
読み返してもこの流れ、よく書けたなと自分でも思う所があります。

>>5さん
ありがとうございます(´∀`)
最初、幽々子は悲しい表情はするものの、それ止まりだったんですが
妖夢があまりにも可愛そうな結果になってしまったので、号泣していただきました。
悲しい表情だけだと、なんか幽々子悪い子、とは言いませんがなんか薄情な感じがしたので・・・

>>7さん
ありがとうございます(´∀`)
今中のスローカーブ直後のクルーンの剛速球ですかね
すみません。野球ネタでかえしちゃいました。

>>11さん
ありがとうございます(´∀`)
正直、この差ができたのは奇跡だと思います・・・

>>ワレモノ中尉さん
ありがとうございます(´∀`)
新作読ませていただきました!
正直僕にはあの言葉遊び考え付きません!感服しました!

>>26さん
ありがとうございます(´∀`)
こういうのを待ってた。 ってお言葉、本気で嬉しかったです!

――――――2013/02/26 追記――――――
げぇー!久しぶりに自分の読み返しにきたら評価増えてるじゃないですかー
見ていただいているんですね・・・ありがたいことです。
>>stranger さん
ありがとうございます(´∀`)
|| 後半の狂気の表現が圧巻
めっさ嬉しいです!書いてる途中とかでもゾクゾクきてしまう所があって結構自分でもよい出来だーと思ったので、ここ褒めてもらうとテンションだだ上がります。!

>>35 さん
ありがとうございます(´∀`)
そうですよ。何事も我慢はほどほどにしないと・・・うふふ

>>38 さん
ありがとうございます(´∀`)
|| 生々しい表現がすごかった!
書いてて何となく頭でそのシーンを描くと、より一層妖夢がかわいそうになってしまいます・・・。
書いてる途中でも
「これは やりすぎでは ありませんか?」と思ったのですが
「いいえ、まだ足りません」と続けた結果がこれでした!

>>43さん
こっちにもコメントついててびっくりした(´・ω・`)
ありがとうございます!自分の作品なのに読み返すとギリギリ展開でヒェッってなりそうになります。
背中がかゆい
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コメント



0.1500簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
落差がひどい(褒め言葉)
3.100名前が無い程度の能力削除
緩急の差が素敵
5.100名前が無い程度の能力削除
いやー、はじめの「頭の中で全員妖夢会議」のノリがいいなー。と思ったら、いきなり中盤からのギリギリ展開にびっくり。最後はハッピーエンドでよかったでござる。
動揺したり、怒ったり泣いたりする幽々子は素敵。いつも他の話ではすましてクールな感じだから。
7.100名前が無い程度の能力削除
この緩急は打てませんわ
11.90奇声を発する程度の能力削除
この差がとても良かったです
22.90ワレモノ中尉削除
ギャグからシリアスへの落差が凄まじいですね。
こういった作風は自分には出来ないので、素直にすごいと思います。
26.100名前が無い程度の能力削除
こういうのを待ってた。差が激しくて素晴らしすぎる。
33.80stranger削除
前半の妄想のくだりは長く読み難かったので所々飛ばした。
後半の狂気の表現が圧巻。妖夢の痛み、恐怖、怒り、悲哀そして絶望を痛々しく生々しい字面(R-18G)での表現。
また幽々子が、自ら殺してしまいそうになった愛する妖夢にその後どう思われたか、再開への恐怖心で逃げ出してしまうが、それを助ける命を賭けた従者としての妖夢。
幽々子はそんなに感情を表に出さないと思いましたが、細かい設定がどうこうよりも、殊に負の感情を巧みに書き上げている点を評価したいと思います。
35.100名前が無い程度の能力削除
我慢はいけないねヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3
38.100名前が無い程度の能力削除
ギャグかとおもったらめっちゃこわかったwww
生々しい表現がすごかった!
たまにはこういうのもいいね
43.90絶望を司る程度の能力削除
ギリギリっすね……
46.100理工学部部員(嘘)削除
ギャグとシリアスの落差がすごい!
でも、そこまで違和感なく読めました
食費云々で制限したのに、
結局治療費で赤字とは…