Coolier - 新生・東方創想話

れみれみ

2012/04/30 09:27:29
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私はお前が嫌いだ、お前だよ私の頭の中の。悩み。
何でこんなつまらない事で悩まなければいけないのか。
やっぱり思い通りにならない事は嫌だ。
しかし、考えなければ悩みは消えないが私では光が見つからない。
でもパチュリーならきっと答えてくれるだろう。
そう確信して、私は地下の図書館を訪ねた。


「で……何しに来たの?」
「ちょっと私の悩みを聞いてほしくてね」
「ふ~ん……面倒な相談なら咲夜にしてよね。私読書に忙しいから」
「あなた本当に私の友人なの?」
「……私とレミィが友人の確率は……0か……」

相変わらずの冷たい対応。
友人ならば笑顔で接してほしいものだ。活字ばかり見てないでせめて私の顔を見ろ。
こうなれば仕方がない。私は体に力をこめた。

「……どうしたのよ。そんな力んだ顔して……。あっ分かったトイレ行きたいんでしょ。
 小悪魔! 小悪魔! オムツ持ってきて!」
「ちょ! 違うわよ! 私は能力を使ってるのよ!」
「能力? ああ運命を操るやつね。……で効果あったの?」
「まったくもって無いわ。パチェの対応が悪すぎるから、もっと愛想が良くなるように願ったのよ」

「はいはい。で、用件は何ですかお嬢さん」
「欠伸しながら言わないでよ。
 悩んでるのは私が自分の能力を使いこなせていないからよ」
「あれ、そうだっけ」

「そうよ。妹であるフランは自分の能力をちゃんと使いこなせているみたい。
 なのになんで姉である私は能力を完全に制御できないのかしら」
「妹に嫉妬?」
「ち、が、い、ま、す!」
「ふむ……まあいいわ、そもそもレミィの場合はレミィに関わった人物の運命数が変化するみたいだから
 あなた自身が何か影響を受けるわけじゃない。
 操れなくて当然なんじゃないかしら」
「でも私の能力は運命を操る程度の能力なのよ! 運命を操る能力なのよ!
 なのに自分の運命を操作できないのはなぜ?」

「2回言うな、微妙に昇華させるな。……別におかしいことじゃないでしょ。
 操るって言っても別に思い通りにできるわけじゃない。
 咲夜だって時を操る能力だけど時間を戻すことはできない。
 あの白黒も魔法を使う能力だけど全ての魔法を使うことはできない」

「……いや、確かにそうだけど」
「これじゃあ納得できない?」
「うん」
 私が頷くと、パチェは顎に手を当てて考える。

「そう、じゃあこういうのはどう?」
 パチュリーは不適に笑う。

「実はすでにレミィは運命を自分の理想通りにねじ曲げてるのよ」
「えっ」

「あなたは人と妖怪が住む理想郷が欲しいと思った。だから幻想郷ができた。
 あなたは自分に相応しい紅い館が欲しいと思った。だから紅魔館ができた。
 あなたは完全で瀟洒なメイドが欲しいと思った。だから十六夜咲夜ができた。
 あなたは我侭な妹が欲しいと思った。だからフランドールができた。
 あなたは丁度良い強さの門番が欲しいと思った。だからメイリンができた。
 あなたは張り合いのある強力なライバルが欲しいと思った。だから八雲紫ができた。
 あなたは自分を倒せるような強い人間が欲しいと思った。だから博麗霊夢ができた。
 あなたは月に行きたい思った。だからロケットができた。
 あなたは最高の友人が欲しいと思った。だから私が居る」

「……最後はない」
「えっ」

 でも面白い。この考え方は面白い。
 確かにすでに無意識で能力を使っていたのなら私が意識して使える訳が……ん?

「ちょっと待ってよ。それじゃあ私は意識して自在に能力を使いこなせないってこと?
 そんなの嫌よ。私は自分で操作しているっていう実感が欲しいの!
 それに私は負けるのは嫌いよ。なのに紫にも霊夢にもあの月の女にも!
 全然私の思い通りじゃないわ」

「ちっ」
 んんっ! 私の意見に反論するなって目でパチュリーは一瞬睨みつけてきた。怖いからやめて下さい。
 パチェは数秒考え、また口を開く。

「それは……きっとあなたが退屈を嫌うから。死ぬのが嫌いだから」
「死?」
「ほら、暇な時レミィよく言ってるじゃない。退屈すぎて死にそうだって」
「いや、それは言葉のあや……」
「だと言える? 本当に? 私はたまに本気で言ってると感じるよ。
 退屈でレミィが死んじゃう様な気がして心配」
「いやいや……でも、退屈は死ぬより嫌いね」

「でしょ、でもあなたは自殺しない。なぜならやりたい事がたくさんあるから。
 自分を負かした奴等を見返してやりたい、やり返してやろうと思うと生きる力が湧いてくるでしょ。
 復讐は高カロリーだからね。
 でも、運命を操作して全てが自分の思い通りになるんだって自覚しちゃうときっとつまらないわよ。
 だって予想外が人生のエクスタシーだから。アクシデントがあるから予想通りが面白い。
 期待を超えるものはもはやなく、世界の支配に慣れてしまったらもうお仕舞い。
 退屈ばかりの理想郷。やりたい事がどんどん無くなっちゃうわ。
 何かをしたいのに面白いものがない……つまらないものしか選択肢がない。
 つまり生きる事に飽きてしまう。
 レミィの行き着く先は銀の十字架でしたとさ。ちゃんちゃん」

「私の人生を終わらせるな」
「自殺するなんてレミリア・スカーレットにとって最悪の終わり方じゃない。
 それを無意識に避けようとしているだけよ」
「だから私は運命を操作していると自覚ができない……。
 つまり今の現状が、私の願い通りの結果ということ?」
「全ては私の満足の為に、幻想郷はレミィのおもちゃ箱。
 そうでしょ。レミリアお嬢様」

「……そうかもね。今が最良の結果というわけね」
「あなたが楽しむことを忘れないかぎりは」
「うん、わかった」
 私は席を立った。

「ありがとうパチェ。なんか楽しくなってきたわ」
「ふう、調子が戻って良かったわ。レミィが不安だと私も悲しくなるから」
「ごめんなさい、気をつけるわ」
 私はパチェと笑顔を交わして図書館を後にした。
 来た道を戻る。同じ作業だ。しかし、気持ちは180度回っている。
 私も考えたことがある。世界は私中心に回っているのだと。私の為に存在しているのだと。
 でも、長く生きていればそんな願いなんてあっさりと折れてしまう。

 最近不満ばっかりで忘れていたが悩みを解消する銀の弾丸は存在する。
 簡単な事だ。
 現状の全てを肯定すれば良いのだ。
 それが良い。それが私の能力だ。

 パチェには感謝しなければいけない。
 さすが私の友人だ、困ったときはいつも私に正解を教えてくれる。
 しかし、なぜいつも私の悩みを解決できるのだろうかと考える。
 答えは単純だった。

「あ、そっか。パチュリーなら答えてくれると私が思ったからだ」










 




















ショートショート。
悩む事は楽しい事です。

誤字訂正しました。
報告ありがとうございました。
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コメント



0.1700簡易評価
7.90名前が無い程度の能力削除
毒吐きながらも最後は笑顔のパチュリーさん
あなたの作品は絵本のような可愛さがあって大好きです
11.70楽郷 陸削除
能力の解釈が面白いと思いました。
12.80奇声を発する程度の能力削除
二人の関係は良いですね
15.80名前が無い程度の能力削除
ちょっと読みづらかったですが、ひねりが効いてて面白いネタでした。
18.100名前が無い程度の能力削除
能力の解釈が面白かった。
パチェとレミリアは本当に仲が良いですね。
19.90名前が無い程度の能力削除
さくっと読めて心地よいショートショートでした

誤字報告
アクシンデト>アクシデント
25.80名前が無い程度の能力削除
ちょっと読みにくいけど、面白いわこれ
29.80とーなす削除
ううむ、なかなか興味深い。
36.100名前が無い程度の能力削除
楽しく読みました。
39.80ワレモノ中尉削除
2人のやりとりがすごく好み。理想のレミパチェといった感じでした。面白かったです。
44.100名前が無い程度の能力削除
なるほど。そういう解釈もありですね。短いけれど、中身の濃い作品だと思います。こういうの好き!