Coolier - 新生・東方創想話

はしひめ@地霊殿 中編

2012/04/20 00:26:19
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この作品は同作品集内の「はしひめ@地霊殿 前編」の続きです。前作を読んでから読んでいただけると幸いです。







 あたいは火車のお燐。地霊殿の主、古明地さとりさまのペットとして地霊殿に住んでいる。

 今日は珍しくお客さんが多い。遠路はるばる橋姫さまも来たし、鬼の勇儀さんも来た。おや、さとりさまが部屋から出てきたね。・・・泣い、てる?








 私の親友であり雇い主でもある古明地さとりは、私にこう言った。
「地底の番人、辞めていただけませんか?」



 今の仕事はほかでも無いさとりが橋姫である私のために斡旋してくれたものである。妖怪というものは物理的な概念でもあるがそれ以上に精神的なものに影響されるものであり、私の場合は嫉妬と種族の名前の通り、「橋」をより所にして生きている妖怪である。・・・そんな種族ゆえの境遇から、さとりは地底と地上の架け「橋」である場所の地底の入り口の番人という仕事を私にくれたのである。


 そのさとりが今度はその仕事を辞めろと言っているのだ。・・・理解できない。
「え、ちょっと・・・どうして?私何かしたかしら?」

「いえ、そういうことではなくて、パルスィには別の仕事をしてもらいたいのです。」

「・・・どんな?」

「この地霊殿で、私の補佐の仕事をしていただきたいのです。色々と。」
 わざわざ手紙をよこしてくるぐらいなのだから、さとりも熟慮した結果なのだろうが私にはいささか身勝手な話だと思った。橋姫である私に橋を離れこの地霊殿で働けというのか。


わずかな怒りもあったが、まずはさとりの話を詳しく聞くことにした。




 今、地底には新エネルギー、すなわち核の巨大な力をベースとした電気が普及しつつある。様々な便利なものが生まれ、地底の生活スタイルも以前と比べると大きく変わって、そして今もなお変わり続けている。

 そんな中、そのエネルギーをもたらした地獄烏の霊烏路空の保護者であるさとりがそのエネルギーの管理を任されることになった。そのことは自然の流れといえるし、さとりも何も断る理由もなくその任を引き受けた。

 もともと地底をほぼ仕切っていたようなものであるさとりであるから、新エネルギーの管理も上手くこなしていった。・・・そんなとき、問題が起きた。比較的考えの柔軟な者や、若い者はさとりのする仕事に対して賛同し、感謝さえもしていたがさとりの仕事を好く思わない連中が現れ始めたのだ。昔の生活を捨てきれない、保守的な考えの者たちが抵抗するようになった。保守的な考えを持つこと自体は自由であるが、過激な連中は様々な行動に出始めているのだという。



「・・・で、どうして私を呼んだの?過激な連中はともかく、急な変化についていけず抵抗する奴らもいるということぐらい、さとりならわかってることでしょう?」

「・・・もう限界なんです。この変化についていけてないのは、私も同じなんです。みなさんが期待してくれているからこの任を引き受けましたが、私には荷が重すぎるのです。・・・だって、いままでの地底の歴史にないような変化をこの手で起こさないといけないんですよ?・・・ですから、私はあなたを呼びました。助けを求める相手が私にはあなたしかいないんです・・・。」
 
「そんな!勇儀も手伝ってくれるだろうし、こいしもいるじゃない。なに弱気なこと言ってんのよ!皆がさとりの力を求めているのなら、できる限りそれに応えればいいじゃない。」

「あなたは過激派の街の人たちが私をどう思ってるか知らないからそんなことが言えるんです!疎ましく思う、少し腹が立つ程度のものならまだしも、もはや憎悪、殺意に似た感情すら私は感じました!それに、勇儀さんにはこれ以上迷惑をかけられません。街にすむ鬼として、自治をしてもらっています。私の勝手な都合でこれ以上負担をかけたくないのです。・・・こいしは以前は時々地霊殿に戻ってきてくれてましたが、私がこの任を受けてからは戻ってきてません・・・おおかた、こんなダメな姉を見て愛想を尽かしたんでしょう。」
 私は愕然とした。私の知っているさとりはこんなネガティブな思考をする性格ではなかった。いつもどこか力を抜いて、物事に対して余裕を感じさせつつも仕事をこなすのがさとりという妖怪ではなかったか。かくも時代の変化というものは人々に影響を与えるものであるのか。


 さとりは今や、か弱き少女そのものであり余裕など感じられない様相であった。・・・変わり続ける時代の波が、目の前の親友を確実に追いつめていっているのだ。
「パルスィ。私はもう怖くて怖くて仕方がない。人の視線が、私の心に突き刺さる。・・・そんな気がしてもうどうしようもないのです!」
 しかし、私はそんな親友の姿を認めたくなかったのか、怒りに任せて言葉で攻撃してしまっていた。
「甘えたこと言ってんじゃないわよ!そんなことで私、橋姫から「橋」を奪う気!?・・・あんた、わかってるわよねぇ?私が橋姫だからって今の仕事をくれたのはあんたじゃない!それが今度は自分の補佐をしろだって?・・・身勝手にもほどがあるわ!」
 しまった。・・・私は言った瞬間猛烈に後悔した。さとりの表情を見てしまったから。最後の希望であったであろう者に拒絶された絶望の表情を。


「・・・!」
 さとりは顔を伏せ部屋から去ってしまった。急いで部屋の外を見たが、もうどこかに行ってしまっていた。





 部屋の外にいたお燐と目があった。・・・気まずい空気。
「・・・ごめん。お燐。」

「いや、さとり様が最近おかしくなってるのは一番近くにいるあたいが良く知ってるから・・・さとり様は全てにおいて今自信をなくしてしまってるのさ。だから橋姫のお姉さんに助けを求めたんだろうね。」

「・・・ごめん。」
 後悔。何百年も生きているのに、こんな人間じみたことを未だにしている自分を冷静に観察している自分をどこかに感じていた。







 その日、夜になってもさとりは現れなかった。






中編 了 
どうも、まおうです。
拙い作品ですが、完結させないわけにもいかないので続きを投稿しました。
前作にコメントくださった方々、読んで頂いた全ての方に感謝の気持ちを持って製作していっています。次回で完結の予定です。
まおう
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コメント



0.130簡易評価
3.無評価名前が無い程度の能力削除
いいねえ、このアドバイスを無視する感じ最低だね~
5.70名前が無い程度の能力削除
地縛霊じゃないんだから橋姫って言ってもそんなに橋に執着しなくていいのに・・・一応親友なんだよね?
助けてあげようとは思わないの?
しかも最終的には橋関係なく、さとりんの不甲斐なさに怒ってるし。
お燐はご主人様出てっちゃったんだから追いかけたり、
パルシィに敵意を持ってもおかしくないのにやけに冷静だし。
もーちょっと設定背景とか心理描写とか掘り下げてくれないと、どうしてこうなった感が強くなっちゃうかな

個人的にはダラダラかかれるよりはあっさりしてるほうが好きなので
これはこれでもいいですけどねw
ラストも頑張ってください
8.無評価名前が無い程度の能力削除
消化不良感があります。
さとり自身に語らせる前にパルスィを各方面に動かして情報を小出しにしてもらうと話を呑み込みやすかったかも。
とはいえ前編の引きがアレだった以上そういった路線変更もしにくいですね。
この作品をしっかり終わらせて、次の作品にて色々試していただけると期待します。
9.60名前が無い程度の能力削除
雰囲気は好きですがこの長さなら分けなくてもよさそうな気が。