Coolier - 新生・東方創想話

相談天国

2012/03/29 11:33:18
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「アリス! その‥‥聞いて欲しい事があるんだ」

自然の多く残る幻想郷に於いても、この場所は殊更に神秘的な場所だった。
どこまでも続く、色とりどりの花畑。
たくさんの蝶が花から花へ飛び移り、その隣ではキラキラと清流が流れる。
耳をすませば木々のざわめき、鳥の声。
そんな夢のような場所で、魔理沙はアリスに大事な話をしようとしていた。

「どうしたの? 改まって」
「じ、実はその‥‥私はずっと前から‥‥永遠亭の異変でチームを組んだ時から、その‥‥」

歯切れの悪い魔理沙が言葉を紡ぐのを、アリスはジッと待つ。
聡明な彼女の事だ。
既に、魔理沙が何を言おうとしているのか、想像は出来ているのかも知れない。

「‥‥ア、アリス! 私は‥‥私はお前が好きだ! 大好きなんだ!」
「魔理沙‥‥」
「お、お前はどうだ? 私の事‥‥」

顔を真っ赤に染め、返事を促す魔理沙に、アリスは微笑んだ。
そして。

「何を寝ぼけた事を言っているの?」
「え‥‥」
「よしてよ気持ち悪い。私は女で、あんたも女。冗談にしても趣味が悪いわ」
「ちょ‥‥」
「仮に私が、同性の恋愛に偏見を持っていなかったとしてもよ? 育ちも悪い、態度も悪い、おまけに手癖も悪い。そんな子を相手に選ぶわけがないでしょ」
「ア、 アリ‥‥」
「よって、私があなたに好意を持つ事は、絶対に有り得ない。ドゥーユーアンダスタン?」
「う‥‥」





「うわあああああ!」

絶叫と共に身を起こした魔理沙。
額に流れる嫌な汗を腕で拭い、辺りを見渡す。
そこは、見慣れた我が家の寝室だった。

「な、なんだよ。夢か‥‥ハハ、ハハハ! そうだよな! アリスが、あんなひどい言い方するわけがないもんな!」

精一杯大きな声を出し、自分を安心させる。
しかし、夢の衝撃は大きく、未だに心臓が激しく脈打っているのがわかる。
冷たい水を飲み、心と体が落ち着きを取り戻してきた頃、時計に目をやってみると、短針は4の辺りを指していた。

「もう‥‥まだこんな時間じゃないか。ふああ‥‥次はもっと、幸せな夢を‥‥」





「ごめんなさい。私にはもう、心に決めた人がいるの」

「これはリアル過ぎて嫌だあ!」

幸せな夢、という願いも空しく、再び飛び起きる羽目になった。
その後も、何度となく安眠に挑戦する魔理沙だったが。




「仮に天地が引っくり返っても、魔理沙だけは無理」

「にゃあああああ!」


「黙っていたけど、私、恋愛すると死んじゃうのよ」

「そんな馬鹿なあ!」


「私とあなたは、生き別れになった実の姉妹なの」

「ええええええ!」

二度寝、三度寝と繰り返す度に、こんな夢を見るのだからたまらない。
魔理沙は勢いよくベッドから飛び上がると、生活用水の汲んである壺に、頭を突っ込んだ。

「‥‥もういいや。起きよう」

乱暴な洗顔で多少頭はすっきりしたが、それでもまだ眠い。
しかし、こっぴどく失恋を続けるよりは、何倍もマシであった。
濃いめの隈が出来てしまった目を擦り、ぽたぽたと水の滴る髪の毛を振り、愛用の箒を引っ掴む。
こんな気分の時に一人でいては、更に気が滅入るのは想像に難くない。
そういう時は、知人を訪ねるのが一番なのだ。
箒に跨った魔理沙は、漸く明るくなり始めた空へと飛び立った。





勢いよく飛び出してみたはいいものの、行く当てが思い浮かばない。
ただの話し相手を探すならば容易いが、今は先ほどの悪夢について、愚痴の一つでも聞いて欲しいところ。
この時間に起きていて、魔理沙と親交があり、色恋沙汰に興味のありそうな人物。
理想の相手を求めて飛んでいると、いつの間にか眼下には妖怪の山が広がっていた。
この時、魔理沙に電流走る。
すぐに高度を下げると、遠くに見える鳥居を目指して一直線に飛んでいくのだった。





守矢神社に着くと、すぐに目当ての人物を見付ける事が出来た。
境内をせっせと掃除する早苗の姿に、魔理沙は感心する。
もう一つの神社の巫女は、ヘソを出して寝ている頃だろう。
暦の上では既に春だとは言え、まだまだ冷え込みが厳しい。
数時間もすれば、腹痛で飛び起きるかも知れない。
そんな想像をしながらニヤついていると、早苗と目が合った。

「おや? そこにいるのは魔理沙さん。どうしたんです? こんな早くに」
「いや、なあに。ちょっと夢見が悪くてな。無駄に早起きしてしまったんだ」
「なるほど。私でよければ、話し相手になりますよ。掃除を続けながらでよければ」
「察しが早くて助かるぜ」
「それで、どんな話題をご所望ですか?」
「いや、実はだな‥‥早苗、お前は恋をした事があるか?」

その瞬間、早苗の目の色が変わる。
壁に箒を立て掛けると、魔理沙の手を引いて縁側へと向かった。

「おいおい、掃除を続けながらじゃないのか?」
「こんなに真面目な話だとは、思わなかったんですもの。今、お茶を淹れて来ますので」

パタパタと駆けて行く早苗の後ろ姿を見送りながら、魔理沙は歓喜した。
幻想郷にも、女の子らしい女の子がいたのだ!





「お待たせしました。残り物ですが、お汁粉も持って来ましたよ」
「わあ、甘い物か。大好きだぜ」
「今回はこれですけど、私最近、洋菓子作るのに凝ってるんですよ。よかったら試食してくださいね」
「え、いいのか? 楽しみにしてるぜ」

キャッキャ キャッキャ

女三人寄れば‥‥と言うが、二人でもそれなりに話は膨らむようだ。
その後も、たっぷりと会話に花を咲かせたところで、漸く早苗が本題を切り出した。

「さっきの言葉から察するに、夢の内容は恋愛絡みという事でしょうか」
「ああ、実はそうなんだ。夢の中とは言え、何度も連続で肘鉄を食らってな」
「そうですか‥‥それで、実際のところ、どうなんですか?」
「何が」
「アリスさんとは、上手く距離を縮めているんですか?」
「うーん、それが微妙なところなんだよな。なんたって、奴は相当のニブチン‥‥」
「‥‥どうしました?」
「なあ、今お前‥‥アリスって言った?」
「はい。あなたの恋慕の相手ですよね」
「‥‥‥‥」
「魔理沙さん?」
「いやあああああ!」

本日何度目になるかわからない絶叫。
朝から喉が潰れそうな頻度である。
両手で顔面を覆う魔理沙に、早苗は申し訳なさそうに声をかける。

「あ、あの‥‥ひょっとして、秘密のつもりだったんですか?」

返事はせず、こくこくと頭を縦に振る魔理沙。
指の隙間から見える顔色が、実にスカーレットだ。

「非常に言い難いのですが、秘密のひの字もありませんよ。あなたの言動」
「何だと!?」
「『アリスが大好き!』って書いた看板を背負って歩いてるようなものですよ。正直」
「ひいい!」

言われてみれば、思い当たる節がないでもない。
本人としても、何人かには悟られている気はしていた。
が、まさか、そこまで知れ渡っていたとは。
いつも被っている大きな帽子で顔を隠し、足をパタパタさせる魔理沙。
その仕草がちょっと可愛いと思いつつ、早苗はフォローに回る。

「で、ですがまあ、その分心強いじゃないですか! いざという時には、きっと力になってくれますよ!」
「そ、そうかな‥‥」
「そうですとも。勿論、私も応援しますよ」

魔理沙の目に映る早苗の周りには、ラッパを吹き鳴らす小さな天使が飛んでいた。
宗派は違うが。

「じゃ、じゃあ期待させてもらうぜ!」
「私の好きな詩に、こんな一節があります。『もしかあの子が好きならば、風にお願い呟いて』と」
「風にお願い‥‥」
「ご存じの通り、私は風祝です。大船に乗ったつもりでいてください!」
「ははは、何だよそれ」
「えへへへ」

爽やかに笑い合う二人。
青春を謳歌する少女の姿が、そこにはあった。

「では、最初のアドバイスです」
「むむ」
「アリスさんは、人気者ですからね。迅速且つ積極的にアプローチして行かないと、泣きを見る羽目になりますよ」
「確かに、それは言えてるな」
「もしもライバルが現れたら、どんどん蹴落とすつもりで行かないと」
「こ、恋って、そんなに過酷なものなのか?」
「当然です! それとも、ライバルのために、大人しく身を引きますか?」

早苗の言葉に、魔理沙は思わず立ち上がっていた。
そして、力強くこう答えた。

「馬鹿を言うな! 例え恨みを買ったとしても、決して諦めるもんか!」
「その意気ですよ!」
「優しさだけじゃ愛は奪い切れないし、守り切れない! そう、誰か傷付けても、アリスの笑顔だけは譲れない!」

高々と拳を天に突き出す二人。
ちなみに、アルコールの類は一切入っていない。
素面でこのテンションを保てるほど、今の二人は燃えているのだ。
が、燃えてばかりではすぐに灰になってしまう。
早苗はここでクールダウンを図った。

「と、少しばかり脅かしましたが、今すぐに誰かがアリスさんを掠め取って行くというわけでもないでしょう」
「ふむ‥‥まあ、そりゃそうだな」
「今までも大丈夫だったわけですから、プレッシャーを感じない程度に堅実に距離を縮めていけば‥‥」

早苗がここまで言ったところで、空から声が聞こえた。

「おっはようございまーす! 朝刊でーす!」
「あら、おはようございます。ご苦労様です」
「今日の記事は、いつもとは一味違いますよ! 何たって、恋愛絡みですから!」
「へえ! なんだか、今日はそういう話題が多いですね。誰のです?」
「聞いてびっくり! なんと、あのアリ‥‥」

文の言葉が止まる。
視線が、魔理沙を捉えたのだ。

「く、詳しくは自分の目でお確かめ下さい! それでは!」

そう言い残すと、まるで逃げるように飛び去ってしまった。
残された二人は、凄く嫌な予感を押し殺し、一面記事に目を落とす。


『アリス・マーガトロイド、熱愛発覚か!?』


大きく書かれた見出しに、眩暈を覚える。
その真下には、更に衝撃的な文字が躍っていた。


『まさかのお相手は紅魔館に!?』


「‥‥‥‥」
「‥‥ま、まあ‥‥」

焦る必要は無いと言った直後に、この有様。
早苗は必死にフォローの言葉を探す。

「な、何せ、天狗の新聞ですからね。慌てるのは早計というもので‥‥」

割と的確な事を言いつつ、魔理沙に目を向ける早苗。
が、そこには既に魔理沙の姿は無いのであった。





人間離れした速度で空を翔る魔理沙。
摩擦熱で服が燃え出しかねない。
目指しているのは、当然紅魔館だった。

「‥‥ん?」

紅魔館の門前に立つ美鈴が、遥か彼方に黒い点を捉える。
目を凝らすまでも無く、その点はみるみる大きくなり、見知った姿へと変わっていく。

「おはよう。今日も冷えるねー」
「ああ、おはよう美鈴」

いつも通りの態度で答える魔理沙。
魔理沙とて、何の考えも無しに動くわけではない。
まずは事実確認をする事にした。
先ほどは少しばかり驚いたが、所詮は文の書いた記事。
早苗と同じ結論に達したのだ。
が、仮に記事の内容が真実だった場合を考えると、黙って見ているわけにもいかなかった。
それに、今朝見た夢の内容も気にかかる。
夢の中のアリスは、こんな事を言っていた筈だ。
「ごめんなさい。私にはもう、心に決めた人がいるの」と。

「で、今日は何の用かしら。アリスなら来てないけど」
「ば‥っ! なんでそこでアリスが‥‥」

普段と同じからかわれ方をし、普段と同じ反応をしそうになる魔理沙。
が、ここで一つの考えが浮かんだ。

「(待てよ‥‥すぐにアリスの名前が出てくると言う事は、いつもアリスの事を考えている証拠じゃないか?)」
「魔理沙?」
「(考えてみれば、こいつは門番。他の連中に比べて、館外の者と会う頻度も多い)」
「おーい」
「(‥‥十分に考えられるぜ!)」

恋は盲目とは、よく言ったものだ。
魔理沙の思考は既に、脳にカビが生えてるとしか思えないレベルまで低下していた。

「聞いてる?」
「あ、ああ、聞いてるぜ」
「それならいいけど‥‥あ、そうだ。これから皆で朝のティータイムなんだけど、参加してく?」
「ん? うん、悪くないな(ティータイムか‥‥全員同じ場に揃うという事は、話を聞き出しやすくなるぜ!)」

疑心暗鬼のお手本のようになった魔理沙は、快く美鈴の誘いを受ける事にした。





広間に通されると、そこには既にメンバーが集まっており、紅茶と軽食も用意されていた。

「おはよう魔理沙。運がいいわね。今日は割といい茶葉があるらしいわよ」
「おはようレミリア。お招き頂き光栄ですわ」
「笑っちゃうくらい似合わないからやめた方がいいわよ。わはははは」
「うるせい。もう笑ってるじゃないか」

レミリアと軽口を叩き合った魔理沙は、他の面々とも挨拶を交わし、席に着いた。
テーブルの上には、上品な香りの紅茶と、焼き立てのアップルパイが並んでいる。
既に守矢神社で甘い物を鱈腹平らげた事を差っ引いても、非常に魅力的な光景だ。
しかし、今の魔理沙は、素直にこの状況を楽しめない。
意中の人を付け狙っている、不埒な輩を特定するという、重大な使命があるのだから!
脳のカビは順調に発育しているようだ。

そんな魔理沙の心中に関係無く、ティータイムは和やかに進んでいく。

「ところで魔理沙、今日は何の用なの? 本は貸さないし‥‥アリスもいないわよ?」

ある程度、お茶とお菓子が無くなった頃、パチュリーが思い出したように尋ねる。

「あ、ああ。ちょっとな(こいつも開口一番にアリスか‥‥まあ、こいつと美鈴にはバレていそうだからな。からかわれるのも自然と言えなくも無いが‥‥)」
「そう。で、どうなのよ。アリスとは」
「ど、どうって?」
「パチュリー様、可哀想ですよ。進展なんてしてないんだから」
「それもそうね。ごめんなさい魔理沙。うふふふふ」
「あはははは」

既にテンプレートとなりつつある会話を繰り広げる美鈴とパチュリー。

「(‥‥仮にアリスを狙って無かったとしても、こういう奴らは、いつか始末した方が世の中のためだよな。うん)」

しばらくぶりに、まとも且つ正しい思考が出来た。
そんな魔理沙に、今度はフランドールが声をかける。

「ねえ、今日はゆっくりしていくの? 久し振りに遊ぼうよ」
「ん? あー‥‥そんなにゆっくりもしていけないんだ」
「え、そうなの? 残念‥‥」
「悪いな(うん、フランは除外してもよさそうだな。他の連中も、これくらい純粋なら‥‥ん?)」

その時、フランドールの持っている、ぬいぐるみが目に入る。

「それ、可愛いな。どうしたんだ?」
「これ? こないだ、アリスがお土産にくれたんだー。いいでしょ」
「あ、ああ」

些かジェラシーを感じた魔理沙は、ある仮説を閃く。

「(待てよ‥‥フランの髪は金色。そしてアリスの髪も金‥‥まさか、アリスへの憧れで自分の髪を!)」
「魔理沙?」
「(ふふ、私とした事が油断していたぜ。見た目に騙されて、判断力を失うとはな)」
「もしもーし?」
「(可愛い顔して、随分あくどいじゃないか。このイタチ野郎!)」

既に、行き場を失って、耳からカビが出てきそうである。

「ところで魔理沙。あなた、あまり寝てないの? 隈が出来てるわよ」
「ああ、ちょっとな。朝から早苗と話をしてきて」
「そんなに早くから? 珍しいわね」

次に話しかけてきたのは、咲夜だった。
彼女は、現時点で魔理沙の考える、アリス泥棒の最右翼である。

「(他の連中に比べて、アリスと波長が合いそうなのはこいつ‥‥ついに本命のお出ましか)」
「どんな話をしてきたの?」
「ん? ああ‥‥俗に言う、恋ばなってやつだ」

有力な標的を前に、魔理沙は餌を捲く事にした。
咲夜が自分と同じく恋慕中ならば、食らい付いてくるに違いないと思っての事だった。

「こ、恋ばな‥‥そういう話するんだ‥‥」

あからさまに、咲夜の様子が変わる。
作戦成功といったところだろうか。

「ね、ねえ魔理沙。ちょっとこっちに来てもらえる?」
「ん? なんだ、どうした」
「いいから!」

そう言いながら、魔理沙を隣の部屋へと引き摺っていく咲夜。
魔理沙からしてみれば、思いがけない展開だった。

「ねえ魔理沙‥‥」
「なんだよ?」
「き、気になる相手が出来たとしたら‥‥どうやって接すればいいのかしら」
「え!?」

確か、先ほど早苗が言っていた。
隠しているつもりでも、ほとんどの人妖が魔理沙の気持ちを知っていると。
つまり咲夜も、魔理沙がアリスを好いているのを知っている筈だ。
それを承知で、こんな質問をするだろうか?

「(つまり、咲夜は容疑者から外れるか? ‥‥いや待て!)」

魔理沙は考え直した。
この女、アリスと親しい自分から情報を引き出す心づもりなのではないか!?

「(なんて奴だ‥‥やっぱりお前だったか! このタヌキ野郎!)」
「ねえ、聞いてるの?」
「(しかし、考えようによっては、これはチャンスだ。敢えて騙されたふりをして、偽の情報を掴ませれば‥‥)」
「ちょっと!」
「ふふ、そんなお前にグッドニュースがある。今、里の女を中心に、あるブームが巻き起こっているらしい」
「ブーム?」
「それはなんと! どんな女でもモテモテになるという、魔法のファッションだ!」

先ほどの魔理沙の考えは、半分正解で半分間違いだった。
正解の方の半分は、既に咲夜も魔理沙の気持ちを知っているという事。
間違いの方の半分は、魔理沙にこの質問をした理由だった。
アリスの情報を得るためなどではない。
一向にアリスとの仲が進展しない魔理沙を頼らなければならないほど、咲夜は思い詰めていたのだ。
そんな彼女に、こんな夢のような情報を与えればどうなるか。

「ええ!? そ、そんなものが!」

尋常では無い食い付きっぷりだった。

「いいか? まず、スカートだ。ミニは時代遅れなんだよ」
「そうだったの‥‥じゃあ、今の流行りはロング?」
「甘いな。ただのロングなんかじゃない。超ロング‥‥いや、超超超ロングだ!」
「ちょ、超超超ロング? それって、どのくらい?」
「そうだな。確か‥‥余って引き摺っている布に、子供が乗れるくらいだったな」
「はい!?」

明らかに無茶な嘘。
が、今の咲夜に真偽を見極める判断力は無い。

「それからメイクは、額に第三の目を書く。アクセサリーは、首に長ネギを巻くといいそうだ」
「あ、あなた馬鹿にしてるの?」
「ふん、信じないならそれでもいいさ。私はここを出たら、真っ直ぐ八百屋に向かうがな」
「ぐっ‥‥わ、わかったわよ」

哀れ咲夜は、あっさりと毒牙にかかってしまった。
魔理沙に教わった事を復唱しながら、自室へ戻って行ったのだ。

「(ふふ、悪く思うなよ。せいぜいアリスに笑われるがいいぜ)」

こうして、最大の脅威を取り除いた魔理沙は、満足気にテーブルへと戻った。





策略を練り、咲夜を蹴落とした魔理沙だが、まだ気は抜けなかった。
もう一人、確かめておかなければなけない者がいるのだ。
咲夜とフランドールは自室へ、美鈴は門へ、パチュリーは図書館に戻り、この場に残された、もう一人の容疑者が。

「(しかし‥‥コソ泥がレミリアだとは、どうにも考えにくいな。こいつは、正面から宣戦布告をしてくるタイプだろう)」

そんな事を思案する魔理沙に、声がかけられる。

「ねえ魔理沙」
「!? ど、どうした?」
「さっきから、随分と面白い事を考えているようね?」
「な、何の事だ?」
「隠しても無駄。そうね、大方‥‥愛しいアリスが、紅魔館の誰かと恋仲であるという情報を得た。ってところかしら?」
「凄いなお前!」
「新聞読んだもん」
「ああ‥‥」

驚き損であった。

「ま、あなたの考えは何となく読めるわよ。けれど‥‥」
「けれど?」
「私達の中に、ネズミはいないわ。取り越し苦労ね」
「え?」

レミリアの口から、予想外の言葉が告げられる。
魔理沙だって、友人と呼べる間柄の者を疑いたくはない。
しかし、この言葉をそのまま信じていいものか。
いや、ひょっとしたら、このレミリアこそが実は‥‥
悶々と考えていると、レミリアの溜め息が聞こえた。

「疑っているようね。いいわ、約束してあげる。私達は、誰一人として、アリスに手を付けない。‥‥これでいいでしょう?」
「い、いやいや! そんな口約束じゃ‥‥」

魔理沙がそう言い掛けた瞬間、レミリアの雰囲気が一変する。
そして、怒りの籠った口調で言い放った。

「悪魔をなめるな!」

異変で対峙した時にでも感じた事のない、凄まじい威圧感。
それが今、魔理沙に圧し掛かっている。

「我々悪魔にとって、約束を交わすというのは、自らの誇りと生命を賭けるに等しい行為。人間共の軽々しい口約束と同じに考えないでもらおうか」
「‥‥‥‥」
「さあどうする。このレミリア・スカーレットが、全てを賭して結ぶ盟約を、信じる気にならんか?」
「わ、わかった。わかったよ」
「ならよし」

その瞬間、部屋中に充満していた緊張が、消えて無くなった。

「ったく、あんまりこう、本格的な悪魔っぽい言動させないでよ。疲れるし」
「あ、ああ」
「しっかし、迷惑な話よね。なんで選りによって、ウチなのよ」
「さあなあ‥‥」

その時、扉が開き、一人の人物が二人の元へやってきた。

「魔理沙さん!」
「お、早苗。さっきぶりだな」
「いらっしゃい。お茶の時間、終わっちゃったわよ?」
「あ、お邪魔してます。どうぞお構いなく。それで、魔理沙さん!」
「どうした?」
「今回の件、解決しました!」
「ほう?」

魔理沙と別れた早苗は、乗りかかった船という事で、文を追いかけ、問い詰めたらしい。
その結果、記事に書かれた事の真実を知った。

「アリスさんが、紅魔館のどなたかと恋仲だというのは、やっぱりでっち上げでした」
「でしょうね」
「なんでも、先日たまたまアリスさんが来ていたのを見たそうで」
「ほう」
「遊びに来るくらいなのだから、そういう可能性はゼロではない。ゼロで無ければ、それは事実と言えるのではないかと」
「はあ」
「むしろ、事実を自ら作り上げていくのが、報道に携わる者の使命だと。そう言っていました」
「‥‥‥‥」

早苗の口から伝えられる話に、二人は呆れを隠せなかった。
日常茶飯事ではあるのだが。

「とりあえず、今日の夕刊で訂正記事を配るように頼んでおきました。なので、この件はこれで解決だと思います」
「そう‥‥だな。サンキュー、早苗」
「いえいえ、約束しましたもんね。魔理沙さんのサポートをするって」
「へえ‥‥人間同士の約束も、案外捨てたものじゃないみたいね」

こうして、迷惑極まりない騒動は、一件落着と相成ったのである。





「さ、咲夜さん! なんですかその格好!? アーッハハハハハ!」

窓の外、正門方面から聞こえてくる声。

「く、苦しい! ヒイーッ! アハハハハハハ!」

狂ったような笑い声。
そして。

「‥‥魔理沙ーーーっ!」

殺気に満ちた怒鳴り声。
それを聞いた魔理沙は、新たな問題を自分で生み出してしまっていた事を思い出す。

「ま、まずいぜ‥‥殺される! どうしよう!」
「友人を信じず、それどころか陥れようとした者の末路ね。人を呪わば穴二つ、というけれど‥‥魔理沙の体には、いくつ穴が開くかしら」
「愛とは険しい道なのですね! 魔理沙さん、ファイト!」
「は、薄情な! なんとかしてくれよ!」

二人に縋り付く魔理沙だが、既に手遅れだった。

「見付けたわよ魔理沙!」
「‥‥さ、咲夜‥‥」
「その格好は‥‥」
「‥‥ぶふっ!」
「笑うなーっ!」
「ぎゃあ! た、助けて! アリース!」

薄れゆく意識の中で、人を信じる事の大切さと、アリスへの愛を再認識した魔理沙であった。
恋愛がメインの話って事でロマンチックさを重視し、タイトル含めて好きな歌から引用した部分がいくつかあります。
疑り深い魔理沙は、書いてて楽しかったです。

が、今回のメインテーマと言うか、書きたかった部分は別の場所です。
そこのために書き始めたのに、他の部分が長くなって、目立たなかった気がします。

そんな、今回のメインテーマはこちらです。


                             _.   | ヽ
                            /´:_:`l ./   |
                   ゝ--―-―― l::://::/´ヽ_|
          l ヽ      /ヽ、::::::l::::::::::::::::ヽ`イ:ヽ::ノ::/               l ヽ
      r ‐、 l ヽ  ../   ゝ--ヽ:::/:::::lοヽ/::::::/           r ‐、 l ヽ
      | ○ |,.r'、__〉  /  /   |::::::`l:::::::lο〈:|::ll:ll|              | ○ |,.r'、__〉
  ,.rー⌒ト - イ、  /  .l  /     ∨::::::\:::―:∧ll:/        ,.rー⌒ト - イ、  /
 人、__>´ `ー 、, ヽ'   /  ヽ      ヽ:::::::::::>--<          人、__>´ `ー 、, ヽ'
 l  r', |ヽ l、B l H|   .|  ∧l     />::´::/::::::::::::l         l  r', |ヽ l、B l H|
 l / │ ヽ―'^7'    ̄      //:::::::::/ ̄ ヽ:/.          l / │ ヽ―'^7'
/,べ   〉==/⌒、         l/:::::::::::l   /         ./,べ   〉==/⌒、
     // /  ノ           .ヽ:::::::::|   ∧   |            // /  ノ
     |  ( ̄~7              \´l  /:::::ヽ .||              |  ( ̄~7
     ヽ_l  /ヽ               /  /::::/ ̄  ̄ ヽ        ヽ_l  /ヽ
       ソ ./  ヽ         .,.-、  / ./ゝ/      .|           ソ ./  ヽ
  _,.へ_r・' ノ⌒、 )    ,ゝ'´  ¨l´  / /  な  悪  |      _,.へ_r・' ノ⌒、 )
  'ーー-l /ーー'´      ` ̄ ̄ ̄|  l ̄l  め  魔  |     .'ーー-l /ーー'´
     し'               ∨ /  |  る.  を  |          し'
                      ∨  |  な     |
                              ヽ !     |
                            \_____|


最初は小悪魔と椛で書きたかったのに、結局思い浮かばなかったですし、いつか、この二人でリベンジしたいですね。
この犬野郎!
ブリッツェン
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コメント



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2.100名前が無い程度の能力削除
アリスさんの出番無し…だと…
3.90奇声を発する程度の能力削除
本当だ…
4.100名前が無い程度の能力削除
咲夜さんが不憫すぎるwwww
5.100名前が無い程度の能力削除
ほんとだ出番なしww
6.100名前が正体不明で@程度の能力削除
出オチアリス。
9.100名前が無い程度の能力削除
本人の出番がないw
そしてさっきゅんカワイソスwww
10.100名前が無い程度の能力削除
安定のブリッツェン劇場wwwww
13.90名前が無い程度の能力削除
乙女な魔理沙とちょっぴりお姉さんな早苗さんがかわいい
咲夜さんがタダのオチ要員だったのがちょっと残念
14.100名前が無い程度の能力削除
フランちゃんをイタチ野郎呼ばわりするとは……
20.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙が乙女でちょっとばかりおつむが残念なところが可愛いですね
25.100名前が無い程度の能力削除
イイネ
32.80名前が無い程度の能力削除
Gガンのエンディングwwww
マリサの悲鳴可愛い
33.100名前が無い程度の能力削除
ブラックホールwwwww
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こころはタマゴいいよね!
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イタチ野郎可愛いよイタチ野郎
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本当に少しの、甘くないめーさくでしたけど、咲夜さんも必死なんですね
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渦中の彼女が出番なしwwww
個人的には咲夜さんの一生懸命さがとてもかわいらしくてもえました。
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咲夜はこのぐらい天然なところがあっていいよね。
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魔理沙かわいい
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面白いのにここで終わり⁈
もっと読みたかった
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まりさの疑いスキルがスゲぇ笑