Coolier - 新生・東方創想話

メイドと執事のサンドイッチ

2012/03/08 21:53:06
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 少しきつめのカッターシャツにワインレッドの蝶ネクタイを締め、上には袖のない黒のベスト。
 下半身には少しお洒落な、細めで黒のスラックスを履いている。
 その姿は、どこからどう見ても紛うこと無き執事――――

 ――――華奢で瀟洒な執事が、そこには立っていた。

「とってもよく似合っているわ、咲夜」
「わあ、素敵です咲夜さん!」

 そう言ったのは、図書館の主パチュリー・ノーレッジとそのお付きである小悪魔。
 二人は今、目をキラキラ輝かせながら私の目の前に座っている。
 私は少しうつむきながら、二人の方に向き直る。
 私は何故か今、執事服を着て突っ立ていた。
 いつも来ているメイド服と違って、この格好は首元がきつく非常に動きにくい。
 そもそも私は、メイド服以外の服を着ること自体が少ないのだ。
 休日でも、外へ出かける時も、四六時中メイド服。
 そんな私が一体どうしてこんな恰好をさせられているのだろうか。
 私はもじもじとしながら、彼女たちの方を見る。

「なにやってんの、そんな恥ずかしがってちゃダメよ!」
「そうですよ、咲夜さん。執事たるもの、毅然とした態度で主君に接するべきです」

 二人は興奮して何を言っているのかよく分らなかった。

「もっと背筋を伸ばして、しゃきっと!」
「いつものきりっとした態度はどうしたんですか、咲夜さん!」

 というか自分も何をやってるのかよく分らなかった。
 なんで私は執事服を着てこんなところに立っているのだろう……。



 ――事の発端は数分前へとさかのぼる。















 メイドと執事のサンドイッチ
 A Sandwich consisting of Maid and Butler









「咲夜って執事服とか似合いそうようね」

 突然そう切り出したのは、最近、執事ものの恋愛コミックスにハマっていらっしゃるパチュリー様だ。
 最近のパチュリー様は、外の世界の娯楽にすっかり夢中であり、恋愛小説からバトル漫画まであらゆるジャンルの本を集めては、読み漁っているようだ。
 パチュリー様の影響力は絶大で、最近はお嬢様、美鈴、小悪魔までもがしばしばパチュリー様お勧めのコミックスを読んでいる。
 私はというと、掃除やお洗濯などの家事で忙しく娯楽などにうつつを抜かしている暇はなかった。
 しかし、私以外の人たちがそのコミックスとやらの話で盛り上がっているところを見ると、少々切なくなる時もある。
 一人だけ時代に取り残された朴念仁のような気がして、なんだか少しむくれてしまう。
「え、咲夜は○○読んでないの? 遅れてる~」などと言われると、むしろ逆に読みたくなくなってしまうのだが。

 そんなこんなで娯楽が蔓延しているこの状況を作り上げた張本人が言った言葉は、間違いなくとあるコミックスの影響だろう。

「はぁ、執事服ですか……?」
「そうよ、執事服よ。ちょっと着てみたいと思わない?」
「私は女ですが」
「何言ってんの、最近は女性でも男性の服を着こなすのが流行っているのよ!」

 パチュリー様の言う流行りとは、いったいどこの世界で流行っているものだろうか。
 少なくとも、幻想郷ではそのような流行は聞いたこともない。
 強いて言うならば、この紅魔館内では少しは流行っているみたいだけれど。

「じゃあパチュリー様が着ればいいじゃないですか」
「それを……それを言っちゃいますか、お嬢さん……」

 パチュリー様は額に手を当てて、左右に頭を振る。
 最近のパチュリー様は少しおかしい。

「私だって着てみたい気持ちがない訳じゃないのよ……。いえ、むしろ着てみたくて仕方ないの。でもね、咲夜。人には向き不向きってものがあるじゃない? ああいった服は、長身で、ピシッ~とした人間が似合うものよ……」
「……はあ、そういうものですか?」
「そういうものなのよ……」

 パチュリー様はガックリととうなだれる。
 どうやら先ほどの言葉はパチュリー様の胸に少し突き刺さったようだ。

「しかしパチュリー様。私はメイドです。メイドたるもの、いついかなる時でも主君の命令に赴けるよう――」
「あーはいはい。分かってる、分かってるわ。でも、ちょっと着るだけよ? ほんのちょっ~と。時間はとらせないわ」
「しかし万一お嬢様に何かあったときすぐに動けないようでは、メイドとして失格――」
「あ~もう、うるさいわね。大体メイドなんか古いんだってば。いつまでもそんな古臭い慣習に従ってるようじゃ――」
「な――――」

 その言葉に私はカチンときた。
 いくらパチュリー様でも、言っていいことと悪いことがある。

「――メ、メイドのどこが古いっていうんですか!!」
「古いわよ、古い。時代遅れも甚だしいわ」
「メイドに時代もへったくれもありません、メイドはメイドです!」
「はぁ、そんなんだから咲夜は私たちの会話についていけないのよ。いい、時代は執事なの、執事。おわかり?」
「知りません、そんなの! メイドのどこが悪いっていうんですか! このフリフリの可愛らしいエプロンに、愛嬌のあるヘッドドレス。執事なんか、メイドに比べたら月とすっぽんぽんです!!」
「ちょっと貴方、執事を馬鹿にするんじゃないわよ! いくら咲夜でも言っていいことと悪いことがあるわ。――撤回なさい。時代は、執事だと。ジ・エイジ・イズ・執事。メイドなんて廃れた萌文化の象徴よ」
「メイドは素晴らしいんです、可愛いんです! メイドを悪く言う人は許しません!」
「執事は最先端なのよ、かっこいいのよ! 執事を悪くいうやつは消し飛ばすわよ」
「メイドです!」
「執事よ!」
「メイド!」
「執事!」
「メイド!」
「執事!」
「メイド!」
「――おっと手が滑った」
「――きゃぁ!」

 パチュリー様は突然、持っていた珈琲のカップを私に向かってぶちまけた。
 まだほとんど飲んでいない、たっぷりと入った液体が宙に広がる。
 それが私の清潔なメイド服の上に大きな黒い染みを作っていく。
 あまりに突然だったため、時間を操作してどうこうする暇もなかった。
 黒い染みは、みるみるうちに広がっていく。

「わわ、私の一張羅が……」
「ごめんなさいね、私ったらついうっかり手が滑ってしまって」

 オホホホ、と言わんばかりにパチュリー様が不敵な笑みを浮かべる。

「小悪魔、いるかしら?」
「はい、パチュリー様」
「着替えを持ってきてさしあげなさい――咲夜にぴったりの着替えを」
「――了解しました」

 そう言って小悪魔は図書館の奥へと姿を消した。

「ちょ、待ちなさい。着替えなら私の部屋に――」
「あら、咲夜。動くと染みが増えるわよ。せっかく奇麗に掃除した床を、これ以上汚したくはないでしょう?」
「くっ……」

 早く染みを洗い流さなければ……。
 しかし、私が動くと汚れが移って掃除する箇所が増えてしまう。
 私のメイド服はまだしも、下手にうろついて館を汚すわけにはいかない。
 ここは、おとなしく着替えを持ってきてもらうのを待つしかない、か……。

「お持ちしてまいりました」

 そう言って小悪魔が持ってきたのは、どう見てもメイド服――――ではなかった。

「謀ったわね……」
「何を言ってるの、咲夜? せっかく替えの服を持ってきたんだから、早く着替えなさい。ほら、早く」



 かくして私は、パチュリー様が用意した執事服を着ることになったのである。















 そんなこんなで私は執事服を身に纏い、小悪魔と簡単に床の掃除を終えた。
 大切なメイド服はただ今、漂白中である。
 そしてパチュリー様は、大きなカメラを持って私をパシャパシャ撮っていた。

「や、やめて、撮らないで……」

 私はカメラが少し苦手であった。
 カメラも漫画などの娯楽と同じく、外の世界からもたらされた道具であるのだが、自分の姿を写真に収めるというのは、なんだか魂が吸い取られているような気がして気味が悪かった。
 ――と、そんなことはお構いなしに、パチュリー様は私に向かってシャッターを切る。

「ほら、咲夜。ポーズをとって、ポーズ」
「ぽ、ぽ~ず?」

 そんなことを急に言われても、どうすればいいのか全く分からない。
 とりあえず適当に背中で両手を合わせ、首をかしげて微笑んでみる。

「だぁ~れがそんな少女少女したポーズをとれって言ったのよ!」

 一喝された。
 どうやらパチュリー様のお望みのものとは違ったらしい。

「で、でも私――今までにポーズなんてとったことないから、分かりませんわ」
「何いってるの、いつものあなたでいいのよ。ほら、スペルカードを使うときを思い出してごらんなさい」

 スペルカードを使うとき……?
 私はいつも、そんなポーズをとっていたんだろうか。
 いつもはほとんど無意識で体を動かしているから、いざそうしろと言われてもうまくできない。

「咲夜さん、左手は鼻筋に人差し指を垂直に合わせてこう――右肩は上げ、右手はピンと伸ばしてこうです――」

 いつの間にやら小悪魔も私の撮影会に参加して、ポーズの指導にあたっていた。
 私は小悪魔に言われるがままにポーズをとってみせる。
 
 左手は鼻筋に人差し指を添えて。
 右肩は上げ、右手は伸ばす。

「こ、こうかしら――?」
「いいわよ、咲夜、その調子。まるでスタンドが目に浮かぶようよ!」

 そう言ってパチュリー様はまたシャッターを切る。
 というかそれ、執事と関係ない。

 いったいこの撮影会はいつまで続くのやら……。
 ポーズをとって写真を撮られる中、私はどうやってこの場を抜け出そうかとあれこれ思案していた。
 屋敷の掃除もまだ途中であるし、いつまでもこんなところで油を売っている暇はない。
 ここを抜け出す何かいい口実はないだろうか――

 良い案がないかと考えていたその時、


 ――パリン、ガシャガシャ。


 図書館の外で、突然何かが割れるような大きな音がした。

「――何の音かしら?」
「何かが割れる音が聞こえましたけれど」

 パチュリー様と小悪魔が、不審そうに首をかしげる。

「見てまいりますわ――」

 私はそう言うと、咄嗟に近くに置いてあった黒のハットを手に取り、ここぞといわんばかりに図書館を駆け出す。
 ラッキーなタイミングだった。
 きっと、妖精メイドの誰かが手を滑らせて花瓶を割ったりでもしたのであろう。
 この場を抜け出すにはちょうど良い口実だ。
 ただしこの姿を誰かに見られると嫌なので、私は小悪魔が執事服と共に持ってきた黒のハットを、顔がよく見えないよう深く斜めにかぶった。
 そして手でハットを押さえながら、音がした方へと向かう。
 すると図書館前の廊下で、二人の吸血鬼姉妹がなにやら争っていた。
 二人とも、こちらのことなど眼中にない様子である。

「ちょっとフラン、いい加減になさい――」
「あら、お姉さまがいけないのよ。だって自分のほうが強いなんていうんだもの」
「私はただ、あなたはまだまだ未熟だって言っただけよ。私の方が強いだなんて言ってないわ」
「どちらにしたって、同じことじゃない――!」

 妹様はそう言うと、お嬢様に向かって炎の剣を振り落とした。

「危ない――」

 炎の剣が燃え盛る。
 剣の先から炎が周囲に飛び散った。
 こちらにまで熱風が伝わってくる。
 いくらお嬢様でも、妹様のアレをくらってはただではすまない。
 大きな炎の剣が、お嬢様の翼をかすめ――


 ――次の瞬間、私はお嬢様を抱えて紅魔館の庭に立っていた。


「――――え?」

 お嬢様は、自分の身に何が起こったか分からなかったようだ。
 突然、目の前の視界が切り替わったからだ。
 私は時間を止めてから、お嬢様を抱っこしたまま歩いて紅魔館の庭までやってきたのだ。
 相手の混乱を招くといけないので、普段の私なら滅多にこんなことはしないが――。
 今回は緊急事態だったので特別だ。

「お怪我はありませんか、お嬢様?」

 私はお姫様だっこしていたお嬢様をそっと下ろす。
 お嬢様はただ、ぼーっとこちらを見つめて、

「えっと――誰?」

 ――しまった。
 今の私は執事服を身に纏って、深くハットをかぶっている。
 これではどう見ても、この館の住人ではない不審者だ。
 お嬢様が不思議に思うのも無理はない。

「ええとですね――」

 私は少し声のトーンを落として、お嬢様への言い訳を考える。
 あまり面倒なことを起こしたくはない。
 かといって、私がこんな恥ずかしい格好をしていることをばらすのもできれば避けたい。
 いったいどうしたものか。

 お嬢様はさきほどから私のことをぼんやりと見つめたまま、

「もしかして、新しく雇われた執事の方かしら?」
「――――え?」

 今、なんと?

「そうね、きっと咲夜が新しく雇った執事の方に違いないわ。もう、咲夜ったら、新しく使用人を雇うときは私に通してからっていつも言ってるのに! そう言えばこの前だって勝手に新しい妖精メイドを雇っていたし……あの時はすぐに気付いたからよかったけれど……。ああ、ごめんなさいね、こっちの事情よ。まったく、館の主人が使用人を把握してないなんて、ほんと情けないったらありゃしないわ。だいたい咲夜は私がピンチだっていうのに現れやしないし、これはあとでお仕置きが必要ね――」

 お嬢様は横を向いて、なにやらブツブツと独り言を言っている。

「ええと、あの……?」
「申し遅れました――私は何を隠そう、この館、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットよ」
「は、はぁ…………」

 そして私はその館の主に仕えるメイドですが。

「あなたは新しく仕える執事の方ね。名前はなんというのかしら?」
「な、名前? ええと……」
「そう、名前よ。あなたのお名前、教えてくださるかしら?」

 お嬢様は先ほどから私の方をチラチラと覗きこんでいる。
 どうして、そんなに何度もこちらを見てくるのだろう。
 もしかして、やっぱり私だと感づかれているのだろうか……?
 いっそのこと、そうならそうとはっきり言ってくれればいいのに。
 私は顔があまり見えないように、ハットを押さえてうつむく。
 そして、もう少し低めの声を意識して、

「わ、わた…………自分はジャックと申します」
「まあ、ジャック――!」

 ああ、なんだか適当な名前を言ってしまった。
 もっと何か良い名前があっただろうに、こんな適当なものしか思いつかないなんて。
 私は自分のネーミングセンスの無さを悔やむ。

「――素敵なお名前ね」
「そ、そうでしょうか」

 良かった、どうやら気に入ってもらえたようだ。
 もしかして地雷を踏んでしまったかとドキドキしてしまった。

「あの、自分は次の仕事があるのでこれで――」
「そう……そうね、お時間をとらせてごめんなさい。あなたのお陰で助かったわ、ジャック」

 お嬢様は微笑んで私にお礼を言う。
 とりあえず、なんとか私だと気付かれずにごまかせたようだ。
 なんだか今日のお嬢様は、いつもと違って驚くほどしおらしい。
 普段からこの調子なら、もう少しカリスマも認めてもらえるだろうに。

「はい、それでは失礼します。お嬢様――――」


 私はそう言って、逃げるようにこの場を去った。















 こうしてお嬢様を危機から救ったジャックの噂は、数日ですぐに紅魔館全体へと広まったのであった。

 ――なんでも、あの妹様を一撃で倒したらしい。
 ――信じられないくらいの美青年らしいわ。
 ――恐ろしいくらい強くて、メイド長もかなわないんだって。
 ――どこかの貴族の出身だって話よ。
 ――そんな彼が、いったいどうしてこの紅魔館なんかに?

 なにやら噂が勝手に独り歩きをしているような気がしてならない。
 ともかくジャックの噂はメイド妖精たちを介して広まり、今や紅魔館で知る人ぞいない存在となってしまった。
 そして、その噂を広めた当の本人であるお嬢様はというと――

 ――窓際でシクラメンの花びらをちぎっていた。

「好き」
「嫌い」
「好き」
「嫌い」
「好き」
「嫌い……はぁ」

 お嬢様は花びらをちぎり終えると、深いため息をついてうつむいた。

「あ、あの、お嬢様……?」
「…………なによ?」

 いかにも不機嫌そうな表情で、こちらを見向きもせずに返事をするお嬢様。

「おゆはんの準備が整いましたが」
「…………いらない」
「しかしお嬢様、昨日から何も食べていらっしゃらないではありませんか」
「いらないったら、いらないの!!」

 お嬢様は私の言葉にひどくイライラしていらっしゃるようだ。
 しかし、それも無理もない。
 私はお嬢様のピンチの時に、駆けつけることができなかった(ことになっている)のだから……。

「そんなことより咲夜、あのお方は?」
「……はい?」
「あのお方、ジャックさんよ! 今日はいらっしゃらないの?」
「あ、えーと、ジャックさんですね。彼はどうも忙しいらしいですので……」
「そうね、きっとあの方は多忙なんだわ」
「どうも、仕事量の多い紅魔館で働くのは無理ではないかと……」
「なぁに――あの方を雇うのはやめるというのかしら!?」

 お嬢様はこちらをキッと睨みつける。

「いえ、そういうわけではございませんが。まあ、お嬢様には私がついていますし、人手は足りていますわ」
「……なによ。咲夜なんて私がピンチのときには、どこかをほっつき回っていたくせに」

 居ました、私居ました!
 まさにお嬢様を抱っこしてすぐ傍に立ってました!

「もういいわ、下がって頂戴」

 これ以上強く言っても仕方がないだろうと思い、私はあきらめてお嬢様の部屋を後にした。
 それにしても、こんなに不機嫌なお嬢様というのも珍しい。
 しばらくは機嫌が直るまでそっとしておいた方がいいのかもしれない。















「――――それは、恋ね」
「……は?」

 パチュリー様は本を片手にコーヒーを飲みながら、私の疑問にそんな回答を示した。
 私はお嬢様と別れたあと、パチュリー様の意見を聞くために図書館へ来ていた。
 パチュリー様の見解は、私の考えていたようなものとは全く異なっていた。

「そう、レミィは恋に落ちたのよ」
「はぁ、恋ですか」

 恋とはなんだろう……よく分らない。
 私は恋愛などに関しては全く無知であったため、突然そんなことを言われても納得できなかった。

「お嬢様は、誰と恋に落ちたのですか?」
「そんなもの、決まってるじゃない――ジャックよ」

 ジャックとは私が適当に考えた名前であり、空想の人物であるのだが。
 お嬢様はそのような架空の輩と恋に落ちたというのだろうか。

「しかしパチュリー様、ジャックはこの世に存在しません」
「そう、ジャックはこの世に存在しない――レミィは、存在しない人物と恋に落ちてしまった」

 そう言ってパチュリー様は立ち上がると――

 何を思ったか、突然大きな声で歌い始めた。




「レミィは――



 レミィは存在しないものと恋に落ちた

 お相手は執事のジャック

 彼はこの世には存在しない

 幻の中に住むフェイク



 彼女の初恋は 実らぬ運命(さだめ)

 操ることのできぬラック
 
 彼女の心は盗まれたタルト

 奪ったのは執事のジャック


(作詞:パチュリー・ノーレッジ)




 えっと……なんだろう、これ。
 あまりの唐突な事態に、私は茫然としてしまった。
 ちょっとよく意味が分からない。
 口を半開きにしたままパチュリー様を見ると、彼女は満足そうに席へと座るところだった。

「あ、あの……」

「ええ――つまりそういうことよ」

 どういうことですか!
 訳が分かりません!
 というか、びっくりしてあまりよく聞き取ることができなかった。
 なんで突然歌いだしたのかも意味不明だし。
 もしかしてこれも、パチュリー様がはまっている外の世界の娯楽の影響か何かだろうか?

「つまり、レミィの恋は実らないってことよ。初恋の相手が空想の人物とは――なんて、悲劇なのかしら」

 そう言ってパチュリー様は両手で顔を覆い隠す。
 パチュリー様は今にもまた歌いだしそうな雰囲気だったので、私はあわてて質問した。

「し、しかしそれならお嬢様の問題は解決しないってことに――」

 パチュリー様はハッとして顔をあげると、くるりとこちらを見て言った。

「そうね、彼女の悩みはとても深刻だわ……」
「わ――わたしお嬢様がずっとあの状態だったら困ります!」

 今のお嬢様はまともにお食事も取ってくださらないし、動こうともなさらない。
 ずっと部屋に引きこもって、何か考え事をなさっているようだ。
 このままだと、私だけではなく紅魔館全体の問題へと発展しかねない。
 早いとこ、この問題を解決しなければ――

「……解決策がないってわけじゃないわ」

 ポツリ、とパチュリー様がつぶやいた。

「ほ、ほんとですか……?」
「ええ、方法は簡単――。初恋とはね、咲夜…………実らないものなのよ」
「……は、はぁ」

 どこの世界の常識だろう。
 パチュリー様が読んでいるコミックスの世界の常識だろうか。

「だからレミィには…………失恋を経験してもらうわ」
「つまりどういうことですか?」
「――貴方がね、もう一度ジャックへと男装する。そして、レミィに告げるのよ。すまない、自分には国に愛する妻子がいるんだ……! ってね」

 最近のパチュリー様は演技派だった。

「そ……それでお嬢様の悩みは解決されるんでしょうか?」
「ええ、もちろん。相手が妻子持ちなら諦めはつくわ。下手に好きな人がいる、とか恋人がいる、ではダメなの。はっきりと妻子がいるって言うところがポイントよ」
「な、なるほど」

 なんだか腑に落ちない点はいくつかあるけれど、納得はできた。
 つまり私がお嬢様にはっきりと妻子持ちだと告げればいいわけだ。

「レミィには、少しの間、心の傷ができるかもしれない――しかしそれも時間の問題よ。時間が彼女を、癒してくれるわ」

 パチュリー様があまりに自信満々に言うので、なんだか私もその通りな気がしてきた。
 ……相手のペースに巻き込まれている気もしないでもないけれど。
 しかしやはり、恋愛事に関してはどう考えても私よりパチュリー様の方が詳しいだろう。
 それにパチュリー様はお嬢様と非常に長い付き合いだし、私の知らないお嬢様の一面も知っているのかもしれない。

 こうして私は、もう一度あの執事服を着ることを決心した。

「分かりました、パチュリー様。私、やってみます!」

 私は決心して立ち上がる。
 そうと決まれば、決行は早い方がいい。

「ええ、頑張るのよ咲夜――。そう、貴方こそレミィの運命を左右する人間の子」

 突然パチュリー様が立ち上がる。
 しまった、また何か始りそうな予感がする。
 ここは早いところ逃げ出した方が良さそうだ。




「レミィの――



 レミィの運命を左右する人間の子

 それは美しい銀髪の少女

 運命を操る吸血鬼は運命に操られる

 翻弄するのは赤眼の処女



 レミィは心臓を取り戻す

 それは崩れかけの苺のタルト

 はみ出したジャムは悲劇を告げる

 それでもきっと救いはあると


(作詞:パチュリー・ノーレッジ)















 なんだか後ろの方でまたパチュリー様の歌声が聞こえた気がしたけれど、無視して図書館を出た。
 私は急いで自分の部屋まで戻る。
 先日着た執事服は、奇麗に洗濯してから私の部屋に畳んで置いてあった。
 私はそれを手に取ると、もう一度パチュリー様の言葉を思い出す。

 ――レミィには、少しの間、心の傷ができるかもしれない
 ――しかしそれも時間の問題よ。時間が彼女を、癒してくれるわ

 私が勝手にこんなことをして、お嬢様は本当に大丈夫なのだろうか。
 お嬢様の心の傷は、一生癒えることのないものとなってしまった……なんてことに、ならないだろうか。
 考えれば考えるほど、不安は募っていく。
 しかし、このままお嬢様を放っておく訳にもいかない。

 私は決心して、その執事服に袖を通す。
 今度はこの前と違い、正体がばれる訳にはいかない。
 パチュリー様いわく、お嬢様にはきちんと失恋していただかなければならないのだ。
 そこで私は、髪をほどいて後ろの方で短く結んだ。
 この状態でハットをかぶれば、お嬢様がパッと見て私だと気付く可能性はほとんどないだろう。

「……よし、これでバッチリね」

 私はそう呟くと、鏡の前に立って自分の姿を確認する。

 ――鏡の中には、華奢で瀟洒な執事が立っていた。

「…………」

 ちょっとだけ、ポーズをとってみたりなんかする。

「…………ふ~ん」

 今まで、この服を着た自分を客観的に見たことはなかった。
 しかしこうして客観視してみると、自分で言うのもなんだが、結構似合っているのではないか。

「…………なんだ、結構イケてるじゃない」

 お嬢様がこの姿を見て一目惚れしたのも、なんとなくちょっとは分かる。
 紅魔館が、謎の執事ジャックの噂でもちきりだというのも、少しは納得できた。

「なるほど、ね……」

 もうちょっとポーズをとってみたりなんかする。

「…………」

 鏡の中には、美青年がポーズをとって立っていた。

 あれ、これはもしかして…………。

 もしかして…………。

 もしかすると…………。

 私、かっこいい?



 も し か し て 私 か っ こ い い ?



 予想外の事実だった。
 私に執事服が、こんなに似合うだなんて。
 これではパチュリー様に言い訳などできるはずがない。
 パチュリー様はただ、真実を言っただけなのであった。
 それをよく考えもせずに真っ向から否定したのは、完全に私の間違いであった。
 後でパチュリー様には謝っておこう。
 それにしても――――

 鏡の中の美青年は、こちらを見て優しく微笑んでいる。
 その優しい微笑みは、だんだんとニヤニヤ笑いに変化していった。

「――――はっ」

 いかんいかん、私にはこの服を着てお嬢様を振るという使命があるのだった。
 こんなところでニヤニヤしてる場合ではなかった。
 瀟洒な執事が台無しだ。

「早くお嬢様のもとへ向かわなければ――」

 無意識にそう呟いてから、気付いた。
 ――言葉使い。
 これもきちんと正しておかないと。
 それに、声はもっと低く。
 いつものようにお嬢様に話しかけては、すぐに私だとバレてしまう。
 これは少し、練習が必要かもしれない。

「……コホン。あ~、あ~、あ~」

 声の高さを調節してみる。
 もう少し、低めだろうか。

「あー……俺の名前は、ジャック」
「巷じゃ錆びたナイフなんて言われている」

 あ、なんかいい感じかも。

「ま、噂なんて気にしちゃいねぇ」
「俺は、俺であり――」

 ここで、すかさずポーズをとる。

「お前は俺のものだ、子猫ちゃん――」

 ――――決まった、ばっちり。

 これで私は、どこからどう見ても正真正銘の執事。
 お嬢様にも、絶対に気づかれない自信がある。
 あとはお嬢様のところへ行き「すまない、自分には国に愛する妻子がいるんだ――」と告げるだけだ。
 完璧な作戦。
 私は意気揚々と振り向く。


 ――そこには美鈴が、困惑したような表情で立っていた。


「…………え?」

 なんで美鈴がここにいるの?
 ていうかここ私の部屋なんだけど。
 なんで勝手に入ってきているの?
 え?
 なんで?

「あ…………あの、すいません!」

 美鈴は突然声をあげると、私に向って深く頭を下げた。

「わ、わたし咲夜さんに用事があって……それで、その、声がしたものですから……なんだろうと思って、その……」

 美鈴はところどころ声が上擦って、裏返ってしまっている。
 私の姿を見て、とても動揺したんだろう。

「め、美鈴。これは――」

 そう言って、私は美鈴の方へ近付いた。
 美鈴は私が側までやって来ると、目をそらしてうつむく。

「ほ、ほんとすいません、わたし、まさかジャックさんが咲夜さんの部屋にいるなんて思ってなくて――」
「いや、それは……」
「お、お邪魔でしたよね! すぐに帰りますんで――!」

 美鈴は私が何か言う暇もなく、急いでこの場を駆け出そうとする。
 私は咄嗟に美鈴の肩をつかみ、彼女をこちらに引き寄せてしまった。

「……わわっ」

 美鈴はバランスを崩し、こちらに寄り掛かる。
 私はそれを優しく受け止めた。
 彼女は縮こまるようにして、両手をほっぺたに添える。
 それから上目使いでこちらをちらりと見てきた。

 ていうかアンタ――なんで赤くなってるのよ!
 ああもう、なんだかこっちまで恥ずかしくなってきた。

「……あの」
「い、いや……驚かせて悪かったね。実は自分も咲夜に用事があった来たんだ。でも彼女はここにいないみたいだから……これで失礼するよ」

 そう言って、私は苦笑いのまま美鈴の方を見る。

「は、はひ……」
「――それじゃ」

 私は片手で挨拶すると、そのまま自分の部屋から出て行った。
 後に残された美鈴は、私が見えなくなるまで静かにこちらを見つめていた。

 ――ていうか、私の方が出て行ってどうするのよ!

 思いがけず出てきてしまったので、ハットも置き忘れてきてしまった。
 それに、美鈴も私に用事があるみたいだし……これはもう一度仕切り直しか。
 とりあえず、美鈴がどこかへ行くまでその辺で待ってから部屋に戻ろう。


 ……次に着替えるときは、部屋にちゃんと鍵をかけておかないと。















 私とジャックが同棲しているという噂が流れ始めたのは、その翌日からだった。
 何でも噂では、ジャックが部屋で私に向って――――

 ――お前は俺のものだ、咲夜ちゃん。

 とかなんとか言っていたらしい。
 どう見ても変態だった。

 ともかくその噂は瞬く間に広がっていき、紅魔館の人々は私を見るたびにヒソヒソ声でなにか喋るようになった。
 美鈴も、とんだ噂を流してくれたものである。
 そもそもその時、私は部屋にいなかった(ことになっている)というのに。
 まあ、私に関してどんな妄想の噂を立てられようと、別段それが気になったりはしない。
 しかし問題なのは、お嬢様の私に対する態度がさらに酷くなったということだ。
 それから、美鈴もなんだか私に対してはよそよそしい。
 いつもは「咲夜さ~ん」とか言って駆け寄ってくるのに、最近は私を見ると、ちょっとお辞儀をしてからすぐさま逃げるように去っていくのであった。

 ……とにかく、事態が悪化したというのは言うまでもない。

「……お嬢様?」
「…………」
「……あの、お嬢様?」
「…………」

 お嬢様は窓際で頬杖をついて座っていた。
 窓の外には、灰色の絵具で塗りたくったような空が広がっており、部屋の中は薄暗かった。

「お嬢様に、大切なお話があるんです」
「…………」

 先ほどからずっと、お嬢様は黙りこくったままだ。
 私の言葉が耳に届いているのかどうかも分からない。

「お話とは、ジャックさんのことです」
「……なに?」

 どうやら聞こえていたようだ。
 お嬢様は顔は動かさず、目線だけ動かしてこちらを見た。

「この前、ジャックさんは話があると言って私の部屋を訪れました――」
「……咲夜に好きだとかなんとか言っていたんでしょう?」
「いえ、違います。彼は私に、お嬢様への伝言を頼んだのです」
「私に伝言……?」

 私はお嬢様に嘘をつく。
 私は嘘をつくことには慣れている。

「そんな、なんですぐ言ってくれなかったのよ!」
「私は一刻も早くお嬢様に伝えようと努力しました。しかし、お嬢様はなかなか部屋の扉を開けて下さらなかったのです」
「そ……それは、悪かったわね……」
「ジャックさんは私に言いました。今日の夕方十八時――お嬢様と時計台下の鐘の前でお会いしたいと」
「――まあ、なんてこと」

 お嬢様の目に、煌きが宿る。
 胸の前で両手を組むと、

「そ、それってもしかして――――愛の告白?」

 そう言って、お嬢さまは突然立ち上がった。
 そして右手を胸にあて、左手を前に出し、大きな翼を広げ――歌い始めた。




「それって――



 それってもしかして、愛の告白?

 どうしましょう、まだ心は準備中

 私ったら知らないんだもの

 まだ食べたことのないタルトの味



 ああ、もうどうしましょう

 ほんと、どうしましょう

 どうしたらいいか分からないわ

 この胸を押さえつけるドキドキ


(作詞:レミリア・スカーレット)




 ――あんまり上手くなかった。

 それにしても、パチュリー様の影響力は絶大だ。
 この調子だと、紅魔館全土にわたって感染拡大している可能性がある。
 早くなんとかしないと、私はこの空気に耐えられない。

「――とにかく、そういうことですわ、お嬢様」

 お嬢さまは何か勘違いなさっているようだけれど、まあ問題はないだろう。
 何はともあれ、これでお嬢様と約束を取り付けることができた。
 あとはジャックに変装して、お嬢様を盛大に振るだけだ。

「了解したわ、咲夜。伝言ご苦労さま」

 お嬢さまの声は、先ほどまでとは打って変わって調子が良く聞こえた。
 顔もずいぶんと綻んでいるように見える。

「――はい、それでは失礼いたします」


 私はそう言って軽くお辞儀すると、お嬢様の部屋を後にした。















「夕方の十八時――今から、ちょうど一時間後ね」

 そう言いながらパチュリー様は持っているコミックスのページをめくった。
 コミックスの表紙には、細長い顔をした黒い執事が何人か描かれている。
 黒い執事たちの真ん中には、美しいドレスを着た少女が微笑して座っていた。

「はい、そこでお嬢様にはっきり言おうと思います。――私には妻子がいるって」
「――――そう」

 パチュリー様の視線は、コミックスに注がれたままである。
 パチュリー様は、ページをめっくったり戻したりしながら注意深く読んでいるようだ。

「うまく、いくでしょうか――」

 私は大きく息を吐く。
 パチュリー様はゆっくりとこちらを見ると、パタン、と本を閉じて言った。

「それは貴方次第よ、咲夜。そう、それは貴方にかかっている――」

 ――パチュリー様は突然、椅子から立ち上がる。



「それは貴方に――




 私はパチュリー様の両肩をつかむと、椅子に向かって押し下げた。
 パチュリー様は「ドスン」という音を立てて再び席についた。

「分かっています、でも自信がないのです」

 そう、私は自信がなかった。
 なにか胸騒ぎがするのだ。
 こんなに不安な気持ちを感じるのは、本当に久し振りのことだった。

「自信がないなんて――珍しいわね、貴方にしては」
「ええ、自分でも驚いています」

 紅魔館で働くようになってから、私はいつだって自信を持っていた。
 そうでもしないと、この世界では生きていけない。
 それが今回に限って、私はどうしても自分に対する確信を持てなかった。
 きっと事情が恋愛に関する事だというのもあるだろう。
 だからこうして、パチュリー様の助言を聞きにやって来ているのだ。

「貴方のカンはよく当たるわ。気をつけなさい、咲夜。そう、貴方のカンは――」

 ――そう言ってパチュリー様はまた立ち上がる。



「貴方のカンは――




 私はパチュリー様の両肩をつかむと、椅子に向かって押し下げた。
 パチュリー様は、今度は「ドンッ」という大きな音をたてて再び席についた。

 それから私はポケットからロープを取り出すと、パチュリー様を彼女の座っている椅子へと結びつけた。
 ロープをひっぱり、結び目がほどけないようにしっかりとくくりつける。

「ええ、気をつけますわ。忠告、感謝いたします――」

 私は軽く一礼すると、踵を返して外に向って歩き始めた。

「咲夜、貴方の幸運を祈っているわ。そう、貴方は――――――――――ってなによこれ!」

 私はゆっくりと図書館を後にする。

 今度はパチュリー様の歌声は聞こえなかった。















 只今の時刻、十七時四十五分。

 ――ついに、この時がやってきた。

 そろそろお嬢様との約束の時間だ。
 私は首元のネクタイをピシッと整える。
 この執事服にも、もう大分慣れた。
 身繕いするのもお手の物だ。

「あー、あー…………」

 喉に手を当てて、声の調節をする。

「あー、あー…………コホン」

 ――よし、ばっちり。
 さあ、早くお嬢さまのもとへ向かおう。
 もうあまり時間がない。
 執事として、お嬢様を待たせるなんて、もっての他だ。
 私は急いでハットをかぶった。
 最後にもう一度鏡を見ると、私は自らに対して深くうなずく。
 覚悟は決めた。

 私は深呼吸してから、部屋の扉を開ける。





 ――――そこには、悪魔の妹が立っていた。


「うふふ、うふふふ――――あはははは―――――――――――あは―――――クスクス」


 彼女が手にしているのは、巨大な炎の剣。
 パチパチと周囲に火の粉を散らす。
 背後に浮かび上がったのは魔法陣。
 全てを焼き尽くす炎の陣。
 赤い刃が宙を切り裂く。

 空間ごと、切り取られる。

 ――――不意打ちだった。

「――――っ」

 私の体は部屋の窓ガラスを突き破り、ずっと下の地面まで落下する。
 振動で世界がぐらついた。
 まともに呼吸ができない。

 無意識に作った結界で、なんとか致命傷はまぬがれたようだ。
 ――しかし、時を操作できるほどの気力は残っていなかった。

「――咲夜の部屋の前を見張っていたのは、正解だったみたいね」

 薄暗い靄の中から、悪魔の妹が姿を現す。
 ゆっくりと歩きながら、私の方へ近付いてくる。

「こんにちは、ジャックさん――お初にお目にかかるわ。――私はフランドール・スカーレット。レミリアお姉様の妹よ」

 彼女はこちらを見下ろすと、薄く微笑みながら両手でスカートの裾を持ち上げた。

「っ…………」
「今のは、この間のお礼よ。私の大切なお姉様を、勝手に連れ出すんだもの――――気に入っていただけたかしら?」

 ええ、気に入りましたとも……。
 私は地面に手をつき、残った力で立ち上がる。
 膝がガクガクと震える。
 ぼやけた視界で彼女の方を見て、言った。

「君は……少し、おいたが過ぎるね。どうやら、お仕置きが必要なようだ」
「まあ、嬉しい――――」

 妹様は満面の笑みでそう答えると、手の平を空に向ける。
 何も無かった空間に、紫と青の球体が浮かび上がった。

「――ちょうどお腹が空いていたの。お夜食にクランベリーのパイなんて、素敵だと思わない?」

 大中小、様々な大きさの球体が、次々に空へと浮かび上がる。





「それとも、あなたがパイになってくれるのかしら――――――――――!!!」





 ――――それら全てが、私めがけて一気に襲いかかる。


 紫の球体が、空中で交差して私を戸惑わせる。
 私はかろうじてそれをかわす。
 後ろへ一歩引き、左右からの攻撃を避ける。

 ――――罠だ。

 私の後方を、束となった青い球体が取り囲んでいた。
 それはまるで水玉が弾けるように、私に襲いかかる。
 逃げ場は――――無い。

「――それ、いただくわ」

 妹様が、ニンマリと笑う。
 私は向かってきた青い球体を、左腕でガードした。

 ――――衝撃で意識が砕ける。

 球体は私に当たってからも勢いを失わず、私はそのまま暗い林の中へと突っ込んだ。
 体が地面を滑り、木にぶつかって止まる。

 紅葉が、私の周囲を舞った。



「どうしたの、ジャックさん? もっと私を楽しませてよ――」



 ――――妹様の、声がする。

「――つまんなんの。お腹が空いたわ」
「――なぁに、お遊戯の時間?」
「――執事って弱っちいのね」

 ――――四人の妹様が、私の周りを取り囲んでいた。

「――あなたの実力ってこの程度なんだ」
「――今日のお夕飯はこの人間?」
「――私、ダンスは得意なの」
「――ねぇ、早くおもちゃを片付ようよ」

 妹様は、あくびをする。
 妹様は、背伸びをする。
 妹様は、ダンスをする。
 妹様は、ニヤリと笑う。

「――誰がお料理するの?」
「――私、めんどうだわ」
「――じゃあ私がやろうかしら」
「――みんなで一緒にやらない?」

 妹様は、相談する。
 妹様は、相談する。
 妹様は、相談する。
 妹様は、相談する。


「「「「そうね、みんなでやりましょう」」」」



 ――――妹様は、こちらを見る。

 四つの視線が、暗闇に紅く染まった。


 浮かび上がったのは、赤い球。
 浮かび上がったのは、黄色い球。
 浮かび上がったのは、緑の球。
 浮かび上がったのは、青い球。

 四つの球は、四方八方から地面に倒れた私へと雨のように降り注ぐ。
 私は地に手をつけ、なんとか立ち上がろうとする。
 四色の雨は大地を刺す。
 動け、私の体。


 ――――だめだ、間に合わない。


 雨が地面を、打った。

 衝撃が音となり大地を伝わる。

 地響きが近くの湖に波紋を作る。

 落ち葉と土埃が濃煙を立てた。





 ――――私は、妹様の後ろに立っていた。



「……傘はお持ちですか、お嬢さん?」
「…………ウソ、なんで……?」

 妹様が咄嗟に振り向く。
 彼女はすでに一人に戻っていた。

「……やったと思ったのに…………瞬間移動?」
「簡単な手品ですよ――――ただし、種も仕掛けもございませんが」



「…………いいわ、私も本気を出してあげる」



 ――――妹様から笑顔が消えた。


 周囲の木々がざわめく。
 黒い雲が月を隠す
 暗闇が地上を覆う。
 悪魔が世界を支配した。


 妹様はまだ、全く力を出し切っていない。
 それに対し私は、どうだ。
 先ほど最後の力を振り絞って時間を操作したお陰で、もう拳を握る力さえ残っていなかった。
 今は立っているだけで精いっぱいだ。


 妹様は私に向かって歩いてくる。

 私に残された力はあと僅か。

 妹様は左手を空に向かって高く上げた。

 私にできることは、ただ一つ。

 妹様は手を振りおろす。





 私は妹様に向かって、とびっきりの笑顔を作った。





「…………………………………………なによ、なにが可笑しいのよ」


 妹様は、振りおろそうとしていた手をピタリと止めた。


「――――いや、あまりにも可笑しかったものでね」
「だから、何が可笑しいのよ!」
「――なぜならお嬢さん、あなたがそんな格好をして狼藉なさっているものですから」
「……この格好の何がいけないのかしら?」
「いけない、とは言っていません。自分が言いたいのは――――相応しくない、ということです」
「相応しくない?」
「そう、相応しくありません。お嬢さん、あなたの格好はまるで――――庭園にお花を摘みに行くかのようだ」
「………………………………だってわたし、この服しか持ってないし」
「そう、ならあなたに相応しい行いをしてみたらいかがですか?」
「…………なんであんたにそんな事を言われなくちゃいけないのよ!」
「それは――――」


 ――それから私は、ちょっとポーズをとってみたりなんかする。





「それは自分が――――執事だからです。お嬢様の行いを正すのが、執事の役目――――」





 妹様は少しだけ目を丸くした後、

「何が執事よ、ばかばかしい――――」

 そう言ってくるりと向きを変えると、私の目の前から立ち去っていった。

「…………」

 私は妹様の背中を見届けた後、地面にパタリと倒れこんだ。
 緊張の糸が切れたようだ。
 体の上に、枯葉がパラパラと落ちてくる。

 ――それにしても、危ないところだった。

 咄嗟に機転が利いて、妹様を言いくるめることができた。
 しかし一歩間違えれば、ここが私の墓場となるところであった。

 私はふかふかの落ち葉のベッドの上で、ゆっくりと目を閉じる。
 それから独り言のようにボソッと呟いた。



「執事ってホント――――疲れるわ――――――」















 次に目が覚めたとき、私は紅魔館の傍にある林の中で横たわっていた。
 木と木の間から、うっすらとオレンジがかった朝日が差し込む。
 不思議なことに、体は寒くはなかった。
 鳥たちのさえずりが、心地よく私の耳まで届く。

「………………ん……」

 橙色の光が、私の眼にかすかに染みた。
 それは眩しすぎず、気持ちの良い刺激。

 ――私は次第に、意識を取り戻していった。

「………………ひかり…………朝……?」

 ポケットを探り、銀の懐中時計を取り出す。
 時計は朝日を浴びてキラキラと輝く。
 私はよく見えるように角度を変え、時間を確認する。

 午前六時、四十五分。

 ――――しまった!
 ――――お嬢さまとの約束――――!!

 私は咄嗟に立ち上がる。
 背中に鋭い痛みが走った。

「………………つぅ……」

 私は手をついてから、ゆっくりと立ち上がる。
 よく見れば、体はボロボロ、服はぐしゃぐしゃで散々だった。
 私は両手で服の汚れを払い、持っていたハンカチで手を拭いた。

「お嬢様…………」


 約束の時間は、昨日の午後六時。
 あれからもう、半日以上が経過していた。

 ――まさか、待っているなんてことはないだろう。

 そう、思う。
 そう、願った。

 それでも念の為、私は紅魔館へ戻って確認してみることにした。





 ――屋敷の中は静かだった。

 私は階段を上がり、複雑な道を行く。
 そこはまるで迷宮。
 右へ曲がり、左へ曲がり。
 屋上までの距離が、とても長く感じた。

 最上階にたどり着いてから、五つ目の曲がり角を曲ったとき。
 ようやく奥の方に、屋上への扉が見えた。

 ――私はそこまで近付くと、ゆっくりと扉を開けた。

 心地よい風が吹き込んでくる。
 そこは、空に最も近い場所――。

「…………お嬢様……?」

 私は周囲を見回す。
 お嬢様の姿は見当たらない。

 それから、時計台の方へと赴く。
 大きな鐘が、視界に入る。
 その鐘の、向こう側。



 ――――そこにお嬢様は、いた。



「………………お嬢様」

 薄紅の朝焼けを背景として、鐘の下に座っていた。
 お嬢様は、私の声に気付くと、ゆっくりとこちらを振り返った。

「………………遅いわよ……」

 そう言って、お嬢様はぴょこんと立ち上がる。

「…………場所、間違えたかと思っちゃったじゃない」

 お嬢様の声には、怒りも、悲しみも、驚きも無かった。

「………………どうして……?」

 お嬢様はこちらに近付くと、少し高くなった台の上から、右手を差し出した。

「ほら、執事なんでしょ? ――エスコートしてよ」

 私はお嬢様の右手を柔らかく包み込むと、優しくこちらへ引き寄せた。
 お嬢様は軽くジャンプして、私の吐息がかかるくらい近くまでやってくる。

「なによ、あなた…………ボロボロじゃない」

 お嬢様は私の姿を下から上まで眺めまわすと、呆れ顔でそう言った。

「…………申し訳ございません、少々面倒に巻き込まれてしまいまして――」
「その問題は、解決したの?」
「はい、もう大丈夫です」
「そう、ならいいいわ――――」
「――――はい?」
「だから、許すって言ってんの――――あなたが遅刻したことも、全部」
「………………お嬢様」

 私は思わず、お嬢様を抱きしめていた。

「…………ちょっ」

 お嬢様は驚いて体をびくっとさせる。
 私は構わず、力強く抱きしめる。

「な、なによあなた…………大胆ね」

 お嬢様は恥ずかしそうにそっぽを向く。
 そんな顔が、たまらなく愛おしかった。

「それよりも、あなたは私に何か言いたい事があったんじゃないかしら…………?」

 そうだ、すっかり忘れていた。
 私は、お嬢様に言わなければいけないことがある。

 ――私は、お嬢様を抱きしめていた手をそっと離すと、くるっと向きを変えて歩き出す。

 私は、言わなければならない。
 お嬢様に、自分が妻子持ちであることを。
 私がどんなに遅刻しても、ずっと待っていてくれたお嬢様。
 そんなお嬢様に、私は告げなければならない。
 彼女を傷付けるであろう、一言を。

 私は屋上の端まで歩くと、手すりを掴んで空を見上げた。
 美しい朝焼けが、目の前に広がっていた。

 私は、口にする。
 思いが言葉になる、そんな歌を――――。




「思いを――



 思いを告げる メロディ

 優しくて辛い世界への詩

 運命を惑わす サムバディ

 美しく愛おしい君への唄



 時計の針は動き出す

 心は歌となり飛んでいく

 二つの歯車は重なり合う

 思いは言葉となり飛んでいく



(作詞:執事のジャック(十六夜咲夜))





 私は歌い終わると、お嬢様の方を振り向いた。
 お嬢様は、胸の前で手を組んでこちらを見つめている。

「ジャック――――!」

 お嬢様が叫んだ。

「お嬢様、私はあなたに言わなければならないことがあります! ――――聞いてくれますか?」

 私も、お嬢様に負けないくらいの声で叫んだ。

「いいわ、聞いてあげる!」

 私は、覚悟を決めた。
 お嬢様に言わなければならないこと――――

 ――――そんなもの、最初から決まっている。

「それは――――」

「――――それは?」

「それは――――――





                      ――――お嬢様のことが、大好きだと言うことです!! 」





「――――ジャック!!」

 お嬢様が、私の胸に飛び込んでくる。
 私はそれをしっかりと受け止めた。

「ジャック、私もあなたのことが好き――――――」
「…………お嬢様」

 私はお嬢様を強く抱きしめる。
 お嬢様も、負けじと私を抱きしめた。

 思いは、伝わった。
 歌となって。
 言葉となって。

「ありがとう、ジャック――――――」

 お嬢様は、私の胸の中でお礼を言った。

「いえ、こちらこそ――――――」

 お礼を言わなければいけないのは、こちらの方だ。

 お嬢様は胸の中で頭を振る。
 そして彼女は先ほどの言葉に、もう一言――――付け加えた。



「それから、ありがとう――――――――――――――――――――――咲夜」















 ――――さて、これで私の執事ジャックとしてのお話はおしまいである。

 しかし、これを読んでくれている皆さんには、まだ説明していないことがある。
 それは、あのパチュリー様が熱中していたという、コミックスのことだ。
 タイトルを、「メイドと執事のサンドイッチ」という。
 「コミックス」というのは、「絵と文字の入り混じった小説」のようなものであって、外の世界の産物だ。
 外の世界の娯楽であるので、もちろん入手するのはかなりの困難を極める。
 それでもパチュリー様は、様々な方法を駆使して最新の巻まで集めていたようだ。
 さらにパチュリー様は、なんと同じ巻を何冊も所持していた。
 それを貸すことで、お嬢様、美鈴、小悪魔、それから他にも屋敷の多くが者たちが熱狂的にハマってしまった。
 ――どうやら、妹様はご存じなかったようであるが。

 さて、問題はそのコミックスの内容についてなのだが。
 そのコミックスのストーリーとは、大雑把に言えば「主人公の少女がある事情から執事に変装しなければいけなくなり、なんとか女性だとバレないように執事として生活していく」というものである。
 ついでに、その少女は大のミュージカル好きであり所々で「演技をしながら歌を歌ってしまう」という癖があった。

 つまり、私は気付くべきであった。
 パチュリー様が、「最近は、女性でも男性の服を着こなすのが流行っているのよ!」と言った時点で。

 多くの者は気付いていたのである。
 執事のジャックの正体に。
 それでも、誰も何も言わなかった。
 それは、皆あのコミックスが大好きであったからだ。
 知らなかったのは、私と、妹様と、それからそういった娯楽に興味の無い何人かのメイド妖精くらいだろう。
 そして、事情を知る者たちと知らない者たちの間で、噂が入り混じって紅魔館を彷徨ってしまった。

 それにしても、お嬢様も、美鈴も、ノリノリで演技をしてくれたものだ。
 ほとんどの演技は、そのコミックス内で実際にあったような場面を元にして行っていたらしいのだが。
 ――それから、パチュリー様。
 お嬢さまと美鈴だけならまだしも、彼女の迫真ある演技のおかげで私はすっかりと騙されてしまった。

 まったく、紅魔館ぐるみの犯行である。
 それもこれも、全部パチュリー様の持ってきたあのコミックスが原因であった。

 ちなみにパチュリー様やお嬢様が歌っていた歌も、実際にコミックスに出てくる歌のパロディである。
 歌詞の一部をちょっとだけ変えて、私に歌って聞かせたのだ。
 ――しかし、もちろん私の歌った歌は正真正銘、完全に私のオリジナルである。
 おかげで私はあの後、何人かに「思いを告げるメロディ――優しくて辛い世界への詩」などと歌われ、からかわれる始末であった。


 そういう訳で、あのコミックスには深い恨みがある私であったが――――


 皆がそのコミックスにハマったというくらいだから、どれほどのものかと試しに読んでみた。


 ――それが、噂に聞いていた以上に、面白い。


 なるほど、これはこの紅魔館全域にわたって流行ったというのも頷ける。
 パチュリー様を含め、皆があれだけ歌を歌いたくなったという気持ちも理解できた。
 私も、気が付くとついつい歌を歌ってしまいたくなるほどだ。



 そんなこんなで、今も私は最新刊が早く出ないかと待ち遠しい。

 それから、たまにお嬢様たちとミュージカルごっこをしたりなどして楽しんでいる。

 そんな、最近の紅魔館での日常であった。










 あの時ボロボロになった執事服は、今も大切にクローゼットの中で眠っている。










 おわり
今回は、初めて長いお話に挑戦してみました。
咲夜さんに執事服を着させたいという一心で書き上げました。
読んで下さり、ありがとうございました。

(追記)
>愚迂多良童子さま
誤字指摘ありがとうございます、読み間違えて覚えてました(汗
>コチドリさま
とっても参考になります、ありがとうございました!
kfe
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コメント



0.1850簡易評価
2.100白銀狼削除
咲夜さんには執事服も似合う…!!!

その一心で書き上げたとか凄いww尊敬しちゃいます。
4.100奇声を発する程度の能力削除
絶対咲夜さんは執事服が似合う人だと前々からずっと思っていました。
そして、そのお話が今日読めてとても嬉しかったです。
7.100名前が無い程度の能力削除
夢をありがとうございました!
9.100君の瞳にレモン汁削除
( ・ω・)……。


(´ω`)……。


( ゚ω゚)カッ
10.100名前が無い程度の能力削除
これは面白い。よく出来た話ですね。
13.100名前が無い程度の能力削除
b
17.100愚迂多良童子削除
紅魔館の面子で男役と言うと美鈴のイメージですが、なるほどクールビューティな咲夜がやっても様になりますね。
>>慄然とした態度で主君に接するべきです
毅然とした態度? 「慄然」は「恐れ戦く」みたいな意味です。
21.100眠り続ける程度の能力削除
一言だけ言わせてもらいましょう・・・

GJ!! ъ(゚Д゚)グッジョブ!!
23.90コチドリ削除
突っ込みてぇ、そりゃもう盛大に色々と。

だがしかし。パチェさんに続いてレミ様にまで、その美声を披露されてしまっては是非にも及ばず。
紅魔少女歌劇団月組公演のノリで楽しませて頂く以外に、俺の選択肢は残されていなかった。
ジャック・ザ・バトラー氏によるソロの歌い上げに拍手喝采だ。

ノーレッジ女史には本編のノリを考慮しても若干の自重を促したい。
お嬢様は流石に娘役トップの貫禄。歌はアレだけど絶大な乙女の存在感。うん、歌はアレだけど。
男役トップに大抜擢された咲夜さん。最初に見せたとまどいもなんのその、
見事に主演を務めきったそのプロ根性にもう一度拍手を。それにしてもこの娘ノリノリである。

とても面白かった。
作者様の次回公演に期待。
28.90名前が無い程度の能力削除
面白かった.面白かったけどオチの伏線がもうちょい欲しかった気もする
34.100名前が無い程度の能力削除
執事姿の咲夜さんとか、想像だけでご飯5杯はいけるね!(ry
35.100名前が無い程度の能力削除
こんなものいいね。
37.100名前が無い程度の能力削除
おぜうさまの最後のセリフで普通にポカンとし、一瞬遅れて大仰天。ネタバラシを見てあーなるほどねー!
綺麗なドッキリいただきました
38.100名前が無い程度の能力削除
おもしろいものを読ませてもらいました
43.100名前が無い程度の能力削除
つっこみどころが多すぎる、お嬢さまはフランから助けてもらったとき瞬間移動してるんだから咲夜以外誰がいるんだよって変なところでツボに入りました(結局演技だったわけですが)。
それ以外にもお嬢様とパチュリーには何度も爆笑させられましたね。特に歌いだしたときはどこもやばかった、いったいどんな作品が流行ったらそんなんなるんだよと、つっこみ役の咲夜まで感染した時が1番笑いましたかね。
フランに絡まれるのもお約束ですが王道的展開ながらも楽しめました。

そして「メイドと執事のサンドイッチ」……実在するかと思ってググっちまったじゃねーか!「すごい面白かったけどモデルになった作品あるのか、ラノベあんま読まないけどこれは調べてみるか」と思ったらw
まあ登場人物が突然ミュージカルを始める前衛的な作品がそうそうあるわけないですよね、冷静に考えるとw
45.100名前が無い程度の能力削除
ワロタ
53.100名前が無い程度の能力削除
紅魔館はいつも楽しそうでいいねw
55.100お嬢様・冥途蝶・超門番削除
咲夜さんカッコイイ!!これはだれか絵に描いてくれないかな~って思うくらいツボでした。カッコイイ執事最高!  
あ、あとジャックていう名前、私はイイと思います・・                      お嬢様
これを読んで以降、我が部でも執事を雇うか検討中です。咲夜さんの執事姿……さぞや素敵でかっこいいのでしょうね……ハア
変なパチュリーさんもとてもいいキャラで、脇役の皆さんも際立っていました。すごくおもしろかったです。    冥途蝶