Coolier - 新生・東方創想話

■お遣いと浴衣と酒と花火と■

2012/02/23 19:38:31
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【宿屋の二階:客室】



「……」


どうにも旧都に入ってから育ち故郷を思わせる雰囲気を感じていたが、古びた宿屋の一室も、やはりと言うか懐かしいものだった

ドアを開けて目に入ったのは狭くも広くもない部屋、独特の匂いを出す畳、足場の無い柵だけのベランダ、間に合わせの様なテーブル


そして、窓から見える景色


旧都は地下の都
当然日光は入らないので朝も昼も夕方も夜も無い
あえて言うなら、暗闇に建物の明かりが灯り、日没直前の祭を思わせた


「……」


本当ならそんな景色に見取れる筈だったが、そうはならない事情があった



「……」



咲夜さんが、窓に向かっていた
私から取った荷物を置く事も忘れ、放つ気配からも普段の警戒心が感じられない

きっと咲夜さんも夜景に見取れているんだろうとニヤケ顔を堪えつつ忍び足で咲夜さんに近寄り、顔を覗いた




(……え…)


「………」


咲夜さんは無表情だった

睨んでいる様にも、悲しんでる様にも見えた

思わずうろたえ、後ずさる


「ッ、…美鈴」


畳の擦れる音に咲夜さんは我に帰った


「ごめんなさい、外で何か動いた様な気がしてね」


やれやれと荷物を置く


「、そうでしたか」


私も荷物を置く


「にしても本当に汚いわね…」


欠けた土壁や煤けた襖に紅魔館のメイド長は溜息をつき襖を開けた


「紅魔館と比べたら駄目ですよぉ」


「布団は流石に綺麗にして…あら?」


「?何です?」


「……」


スルスルスル、っと紺色の布が流れ落ちる


「あぁ、浴衣ですね」


「…里の人達が着てる?」


「はい、これは…寝巻ですね」


「…意外と広いのね」


間近に見る浴衣に興味津津な咲夜さん


「後でお風呂入りましょうね、咲夜さん」


「えぇ」


浴衣を衣紋掛け(ハンガー)に掛けシワを延ばす


「……」


「……」


「…美鈴?」


「はい?」


「荷物は?」


「あ そうでした…」


いそいそいそ

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