Coolier - 新生・東方創想話

紅魔館のある一日 賢者出現編

2012/02/23 18:11:29
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※時系列は妖々夢phantasm直後です







「大分亡霊もいなくなっているみたいね」

紅魔館のメイド長である十六夜咲夜は紅魔館敷地内に降り立つなり呟いた。
彼女は最近、自宅である紅魔館周辺に亡霊を(結果的に)出没させている犯人をぶちのめしてきたところであった。

すでに辺りは夕焼け色に染まっていた。
ただでさえ紅い紅魔館の壁の色がさらに際立っているように見えた。

「咲夜さん、お帰りなさい」
「ただいま、美鈴」

そのような咲夜を出迎えたのは紅魔館の門番である紅美鈴であった。
彼女は笑顔が似合う美人であるが、これでも人間を食べる立派な妖怪である。

「あ、そうそう。まだ日没前なのにお嬢様が先程お見えになりました」
「え、お嬢様が?」
「ええ、門の所まで。なんだか凄いご機嫌そうでしたよ~」
「へぇ…」

お嬢様というのは、吸血鬼であり紅魔館の主でもあるレミリア・スカーレットのことだ。
咲夜にとっても美鈴にとっても生涯を通じて仕えるべきと考えている主である。

咲夜が美鈴の言葉を聞いて不思議そうな顔を浮かべるのは無理もなかった。
吸血鬼であるレミリア・スカーレットは日光が最大の弱点だ。
だから、彼女の活動時間は基本的に日の入から日の出の時間までとなる。
そんなレミリアが日没前に起きて…さらに紅魔館の外に出てくるのは非常に珍しいことだった。

「さすがに疲れたわ。またね、美鈴」
「あ、はい。お疲れさまでした~」

美鈴との会話もそこそこに、その場を立ち去る。
たった今、疲れたと美鈴に話したばかりだが、咲夜の顔にあったのは疲労の色ではなく歓喜の色であった。

「(ふふふ…そうか、お嬢様ご機嫌なのか…)」

これは御褒美が期待できるかもしれない。
具体的に言えば、お嬢様とのハグやお嬢様と一緒のベッドで寝たりや、お嬢様と一緒にお風呂に入れたり…etc
咲夜はそう考えると自然と笑みが零れてくる顔を止めることが出来なかった。

咲夜は期待を胸に紅魔館の扉へと手を掛ける。

「(お嬢様…貴女の咲夜が今参ります)」

扉を開けた咲夜の瞳に最初に飛び込んできたのは

「お帰り、咲夜」

可愛らしい笑顔を浮かべる愛しい主の姿であった。




「お嬢様?私を待っていて下さったのですか?」
「よく働いてくれた部下を労うのは主の役目だろう?」

咲夜は主人のその言葉に感動に包まれる。

わざわざ玄関先で自分を待っていてくれるなんて。
ああ、やはり自分にはこの人しかいない。
一生付いて行きますお嬢様、と。

咲夜は改めてそう確信できたのであった。

「うん、本当によくやったよ。八雲紫を弾幕ごっこで倒したんだからねぇ」
「え、お嬢様はあの妖怪を御存知なんですか?」

八雲紫とは、先程咲夜がぶちのめしてきた紅魔館周辺に亡霊を(結果的に)出没させている犯人のことである。
咲夜は夜通しどころかほぼ一日掛けて、彼女を弾幕ごっこでぶちのめしてきたのであった。

咲夜の言葉にレミリアは満足そうに頷いた。

「ああ、いけ好かない妖怪だよ。もう良い年なのにいつまであんな若作りしてるんだか」
「ふふ、お子様から見たら年上の女性はなんでも年老いて見えてしまうのね」
「おや、噂をすればって奴かい?全くどこから聞いているんだか」
「えっ!?」

落ち着いているレミリアとは対照的に、咲夜は珍しく慌てて周囲を見回してしまう。
この場にいるのは自身と主だけのはずなのに、第三者の声が聞こえてきたからだ。

「久しぶりね、吸血鬼。相変わらず可愛らしいお姿ですわね」

咲夜の瞳に映ったのは上半身だけを突然現れた穴の中から覗かせた八雲紫の姿であった。



「相変わらず失礼な奴だね。いきなり人の家に忍び込んでくるとは」
「あら、失礼なのは貴女の方でしょう?ペットの躾も出来ていないようだし」

紫は上半身だけを覗かせたまま咲夜に視線を向ける。
その顔には先程の友好的な(?)笑みはなかった。

「咲夜は良い従者だろう?少なくともお前の狐よりは」
「あら、藍は私の言う事をよく聞いてくれますわ。極稀に勝手な行動はとりますけれど、そこも可愛いというものですわ」
「あの狐は従者じゃなくて道具と言うんだろう?」
「道具は良く使いこむ程に愛が芽生えてくるのですわ」

この二人がどういう流れで知り合ったのかはわからない。
ただ、険悪な関係だということは咲夜にも理解できた。

そして、咲夜は会話に出てきた狐…八雲藍のことを思い出す。
あの狐は主人に道具扱いされているのか。
自分の主人がお嬢様で良かった、と咲夜は心底思った。

「そんなんだから天狗の新聞にも動物虐待をしてるって書かれるんだよ」
「天狗の新聞は嘘や誇張ばかり書いてありますからねえ」
「お前が狐を痛めつけている写真も天狗の新聞に載ってたよ」
「あら。あれは虐待ではなく教育的指導よ。必要な事ですわ」

二人の口元は三日月のように両端が上がっている。
そう、笑っているのだ。
口元だけは。
しかし、両者のその瞳は全く笑ってはいなかった。

咲夜はこのような主人の顔を見るのは初めてだった。
そして、そのような顔をしているお嬢様も綺麗だな、ということを考えていた。

「それにしてもお前が人間に弾幕ごっこで負けるなんてねえ」
「霊夢に負けた貴女に言われたくないですわね」
「霊夢は別さ。あいつは特別な人間。咲夜とは違うよ」
「それに関しては同意しておくわ。貴女の犬と霊夢を一緒にしては霊夢が可哀相」

何だか紫だけでなく主人にまでバカにされている感覚に陥る咲夜。
彼女は自身の主人が博麗の巫女である霊夢を気に入っているのは重々承知の上ではあったのだが。
それでも咲夜は多少落ち込んでしまう。

「それにしても随分久しぶりに会ったというのに貴女はまるで成長してないのね。見た目も中身も」
「私は成長期なんだよ。もう落ちる一方のお前と違ってね」
「貴女は一生成長期なんでしょう?」
「お前は一生老年期だな。きっと生まれた頃からその姿だったんだろう?」

二人の額に青筋が出てきた…ように咲夜には見えた。
そのような物が吸血鬼と妖怪にもあるのかは咲夜にはわからなかったが。

「相変わらず口が減らないわね」
「お前は全くシワが減らないな」
「あら、どこにシワがあるというのかしら?ついに子供の姿のままボケが来てしまったのかしら?」
「ボケが来ているのこそお前のことだろう。この万年老衰女」

だんだん二人の会話が子供の悪口レベルになってきたことを感じる咲夜。
もしかしたら最初からだったかもしれないが。

「ふん、本当に口だけは達者ね。でも口だけだから痛い目を見るのよ。主に私によって」
「ふん、年寄りになる程昔の事を引き摺るな。それに私は負けた覚えはないと以前にも言っただろう?それも覚えてないのかい?」
「下半身が吹き飛んでいたくせによくそんなことが言えるわね」
「吸血鬼は下半身を吹き飛ばされた程度じゃびくともしないんだよ。お前こそ私のパンチ一発で怯んでいたくせに」

咲夜にはこの二人の言っている事が理解できない。
ただ、この二人がかつて戦った事があることだけは分かった。
それも咲夜が紅魔館に来る前の話だろう。
咲夜はこの八雲紫と出会ったのは先程の弾幕ごっこの時が初めてだったからだ。

「すっかり私の恐ろしさを忘れてしまったようだねぇ」
「貴女こそ私に敗北したことを覚えていないのね」
「ふん、丁度日も沈んだところだ。表に出な」
「あらあら、お子様は血気盛んなこと。大人はこういう非行少女に振り回されてしまうんですのね」

紫はよよよ…と袖を目に当てて泣き真似をしながらも穴の中からよいしょ、と全身を取り出した。

そのよいしょ、に哀愁が感じられたのは自分だけではないはずだ。
紫はそんなことを考えている咲夜を尻目に紅魔館の扉を開けるレミリアの後を付いて行く。

「今日こそ決着を付けてやるよ、八雲紫」
「あら、返り討ちにして差し上げますわ、レミリア・スカーレット」

そしてそのまま二人の姿は漆黒の空へと消えた。




そして、あとに残されたのは咲夜一人。
自分一人が置いて行かれてしまった事にしばし呆然としてしまう。

「あれ…御褒美は?」

今頃自分はお嬢様からハグの御褒美を頂いていたはず。
どこで一体こうなってしまったのか。
咲夜は少し考えてみる。

あの妖怪が出てくるまではお嬢様はご機嫌だったはず。
つまり、あの妖怪が悪い。
咲夜はそう結論を付けた。

「よし、もう一度あの妖怪をぶちのめそう」

そして、お嬢様から御褒美のハグをいただこう。
咲夜はそう心に決めて漆黒の空へと飛び出した。
初めまして、エルと申します。
これからたまに書かせていただきたいと思うのでよろしくお願いします。

ゆかりんとお嬢様がケンカ友達だったら良いなと思います。
ちなみに、二人が言っている戦いとは吸血鬼異変の時の話です。
この頃の咲夜さんはもう少しドスが効いた話し方だったような気もしますが、あまり気にしないでください。
エル
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コメント



0.700簡易評価
1.100名前が正体不明である程度の能力削除
創想話にようこそ!
5.90奇声を発する程度の能力削除
この二人もそうだけど、咲夜さんも中々な性格してるなw
7.100名前が無い程度の能力削除
いいね いいよ
8.80名前が無い程度の能力削除
テンポのいい会話に惹き込まれました。
13.100名前が無い程度の能力削除
素敵なノリでした!!
17.100名前が無い程度の能力削除
おいてけぼりなさっきゅんが可愛いねw
19.100名前が無い程度の能力削除
こういう対等の友達っぽいレミリアと紫の関係は珍しいですね。