Coolier - 新生・東方創想話

部屋の真ん中でアイを考える

2012/01/20 18:37:58
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 何故、このようなことになってしまったのか。
 これは、非常に難しい問題だ。自由にならない身体で、私は考える。
 状況を打開するには、恐らくは第三者の協力が必要だ。しかしながら、今の私の姿を見て、果たして幻想郷の連中が素直に降ろしてくれるだろうか。否、断じて否である。普段から清楚で通しているこの上白沢慧音が、不可抗力とはいえ、このような珍妙な格好になっているのだ。話の種にならない筈が無い。
 どんな姿かと問われれば、正確には把握できてはいない。だが極めて主観的な物言いをするならば、海老反りだ。縄で海老反りで固定され、自宅の梁の中央から吊るされている。しかも、どんな拘りがあるのか非常に特殊な縛り方をしてくれている。こっちの方面の知識はあまり詳しくはないのだが、亀甲縛りと言われているものだ。動くと無駄に食い込んで痛いので、現在は全力を以って静止している。










 さて、最初の問いに戻る。
 先ずは事象として、このようなことになった経緯を反芻する。
 以前からの約束通り、私は妹紅と温泉に行った。この温泉は地底の異変の際に湧き出た間欠泉を使用したもので、二人で行くのは今回が初めてだった。最近流行のモダンな雰囲気で、桶や手拭いなどの貸出もしており、充実したサービスだったと言える。珈琲牛乳なるものもあり、興味をそそられた物だ。残念ながら、それを飲む事は叶わなかったのだが。
 私と妹紅は大浴場に入りにいったのだが、当然女同士だ、何も隠す必要は無い。だが、彼女は手拭いで前と胸を隠したままである。何を恥ずかしがる必要があろうか。私と妹紅の仲ではないか。生返事のまま耳まで赤く染め、顔を俯かせる素振りは非常に可愛らしいものがあって、それはそれで眼福である。ずっと眺めていたくもあるし、もう少し意地悪をしたくもなろうというものだ。しかし、してはならない事もある。手拭いは、湯に漬けてはならないのだ。
 このようなところで説教など、私もしたくは無い。彼女もそれを汲んでくれたようで、漸くその邪魔な布切れ・・・・・ではなく、手拭いをどけたのだった。
 女性の曲線は美しいと男は言うが、女性からしてもそれは同意する。素晴らしい。感動した。ハラショー。コングラッチレーション。妹紅の肢体に、私の諸々が鰻上りである。きっとそのときの私は、至上の幸福の表情を浮かべていたに違いない。何が良いって女同士だからいろいろ合法的なところである。女に生まれて良かった。
 普段もんぺに隠れて見えないふとももや腰などもいいが、うなじや背中の曲線も見放題である。
 そして胸! 胸である! なんだその可愛らしい胸は! 掌サイズだとぉ!隅から隅まで好き放題ではないか! おのれ保護欲を掻き立てる! 普段は冷静でありながら守って欲しい系か! 抱きしめたいな! 妹紅!
 これはなんだ、我が胸中より湧き出るこの気持ちをなんと表せば良い? この気持ちは正に愛しさ。開拓精神のようなこれは何処へ突き進むのか。それは荒野。あの眩しく輝く朝日昇る地平線。即ち─────
「その胸、ホライズン!!」
 直後、私は延髄への一撃を喰らい、意識は暗闇へ急転直下である。










 一体、何が彼女をそうさせたのか。私にはわからなかった。
 妹紅はあんなに可愛いのに、私に延髄チョップを喰らわせる。熟考したいものだが、現在の状況ではそれも中々に難しい。何せ海老反りは痛いのだ。更に言えば、私はこのような縛り方をされる趣味は持ち合わせていない。どちらか選べと言われれば、まだ縛る方が良いだろう。つまり、痛いだけだ。そして、この状態となった理由にも繋がらない。
 現在、私への負荷は増える一方である。それは、私の視界が移動している事と無関係ではないだろう。
 簡単に説明するならば、梁側の結び目を支点に、反時計回りで私は公転運動を行っている。部屋は相変わらず無人に見えるが、気配が三つ感じられるところをみると、光を操る三人一組の妖精連中か。こんな苦行僧のような表情の私を回して、一体何が楽しいのか。理解に苦しむ。
 動かされることで、段々と各部が絞められてきた。背中は言わずもがなだが、特に乳が痛い。女性はもっと丁寧に扱うべきだと思うのだが、そこのところどうなのか。これでは全身に縄の後がついてしまう。
 ちょっとまて、痛い。これは痛いぞ。主に乳が痛い。もげそうに痛い。胸部分が集中的に絞まっていくのだ。この縛り方、まさかこういう意図でもあったというのか。冗談ではない。私の乳に、一体何の恨みがあるというのか。
 いつの間にか妖精の気配は消えて、私は慣性のみで回っていた。じきに動きは止まるだろうが、食い込んだ縄が緩むわけではない。しかし、いつまでも痛い痛いと言ったところで情況が好転するわけでもない。ここは一つ、落ち着くべく心を無にしてみる。
 すると、一つ気付くことがあった。慣性と重力だ。縛り上げられたことで強調されている私の胸で、それらを感じ取る。
 そこから始めに導き出された結論は、温泉にて妹紅へと放ってしまった一言だった。あれは不可抗力だ。それでもデリカシーを欠いた言葉だったとは思うし、軽率だったと反省もする。彼女を傷つけたとするならば尚更だ。とするならば、この縄も妹紅の仕業ということになる。
 だがしかし、果たして妹紅がそんな事だけのために、このような手の込んだことをするだろうか? そんな事は無い。なにか意図がある筈だ。
 ヒントはある。胸、慣性、重力。これに私の知識を合わせれば、答えを導き出すことなど造作も無いこと。
 胸、即ち魂の宿る場所。つまり、重力に魂を縛られた人々を開放するにはどうすればいいかという哲学的命題を私に問うているのだな妹紅よ!
 ならば、最早私のするべき事は唯一つ! 縄から抜け出し、彼女に『秘儀☆私落とし』をするしかあるまい! ええい、受け取れ私の愛! たかが私一人、妹紅で受け止めてみせろ!

 ─────やっぱ無理!

 つい妹紅の事で頭に血が上ってしまったが、冷静に考えて乳が痛い。凄く痛い。どうみても自爆ですありがとうございました。
 この痛みは心が折れる。実は血が滲んでいるのではないかとさえ思う。重力から魂を開放するという事は、こうも出血を強いられるものなのか・・・
 どだい、無理な話だったのだ。一介の妖怪に重力を振り切るなど・・・ 妖怪? 振り切る?
 あ。私、飛べた。
 あまりに基本的なことなのですっかり忘れていた。灯台下暗しとはこのことか。うっかり者め。この苦労はどうしてくれよう。
「今更だけど、我ながら流石にやりすぎた気はするわ」
「発案は貴女でしょうに」
 丁度良いところで声が聞こえてきた。入り口の方だ。あれは、妹紅と輝夜か。どうやら容疑は確定のようで、しかもラブラブときた。ははは、もはや許さん。
 そうと決まれば話は早い。支点は梁、作用は振り子、打突の先は私の頭。反作用と飛行によって加速した後、国符「三種の神器:剣」にて梁と結ぶ縄を切る。
 目標は扉の向こうだ。くらえ、『秘儀☆私落とし』!
 教・師・発・進!
お久しぶりです。EXVSとかACⅤとかに手を出しました。
重力から魂を開放しようとする人は、結局のところ重力に縛られたままなのではないかとか、投稿するときによぎってみたり。
夢藍(むあい)
http://twitter.com/#!/ikmEIN
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コメント



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1.90奇声を発する程度の能力削除
これは駄目な方の先生かw
4.100名前が無い程度の能力削除
満月がきれいですね
6.80sas削除
今日も幻想郷は平和でしたね
14.100名前が正体不明である程度の能力削除
何が何だかww