Coolier - 新生・東方創想話

紅葉を喰らう

2011/12/23 20:48:30
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 無数の落ち葉が嫌がらせをしてくる季節になってしまった。
 この時期、少しでも気を抜けば境内はたちまち侵略者で埋め尽くされてしまう。
 うっそうとした森に囲まれているばかりに、毎日がちょっとした神社存亡の危機なのだ。
 巫女が掃除をサボったせいで博麗神社がつぶれた、なんて噂されるのも寝覚めが悪い。
 だから、私は今日も今日とて箒を振るうのだった。
 あーあ。

「紅葉狩りをしましょう」
「え?」

 秋風がいつもと違う向きへ流れ始めたのは、悪党どもを成敗するのにうんざりしてきた頃。
 どこからともなく妙なお誘いが聞こえてきたのだ。
 こんな胡散臭い声のかけ方をするのは、まあ、あいつしかいないだろうなぁ。

「もみじがり……」

 箒を動かしながら、境内をぐるりと見回す。
 たしかに、木々からは降ってくるものが増え、気の早い桜などは葉を赤らめている。ただ、神社周辺の色彩は変化を始めたばかり。年中代わり映えのしない迷いの竹林や季節感が狂っている魔法の森は論外としても、この近くで紅葉を楽しめる場所はまだないはずだ。
 とすると、私が知ってるもみじは一つしかない。

「ああ、椛狩りね。狼の肉っておいしいの?」
「下っ端天狗のことじゃなくてよ」

 鼻先にスキマが開き、湯のみが顔に迫る。
 ゆらゆらと上がる湯気がくすぐったい。ここいらで一休みしろということなのだろうか。
 心遣いは嬉しいけど、少しくらい手伝ってくれてもいいじゃない。わがままな天人に神社を壊されたときは『私の神社』って言ってくれたらしいのに。

「分かった上で言ったの……んっ、ありがと」

 癪だったので一息で飲み干して、湯のみをつき返してやる。
 お茶は薫り高く、一気飲みするにはほどよい熱さだった。
 妖怪のくせにこういう配慮ができるんだから、まったく憎らしい。

「神社や里が見ごろになるのはまだ先」

 空の湯のみが消え、入れ替わりに声の主、八雲紫が出てきてスキマに腰かける。

「でも、幻想郷には一足早く紅葉を楽しめる場所もあるのよ」

 紫はそう言って微笑むと、扇子である方向を指した。
 なんともキザったらしいが、言わんとしていることは分かった。天狗の名前を思いついた時点で気がつくべきだったわね。

「そっか……妖怪の山はもう紅葉してるんだ」
「大正解。それと、ごきげんよう、霊夢」

 幻想郷の最高峰、妖怪の山。
 あの山は無駄に背が高いので、山の麓と頂上では気候も風景もだいぶ違ってくる。守矢神社のあたりだと夏でもけっこう涼しいくらいだ。
 以前、早苗に冬は寒くないのか、と尋ねたら、

『こちらへ来る前も寒い場所に住んでいたので平気です! “信濃の国”を歌える子は寒さなんてへっちゃらなんです!』

 とこぶしを振り上げてたっけ。強がりじゃないといいけど。

「ごきげんよう、紫。正解したからには賞品でも貰えるのかしら?」
「正解者には妖怪の賢者と行く紅葉狩り in 妖怪の山をプレゼントして差し上げますわ」
「なにそれ」

 相も変わらず胡散臭く笑って私を誘う紫。

「冗談はさておき、秋めく妖怪の山はまるで天高く燃え盛る炎のよう。あまりの美しさに山の妖怪たちはペンや工具を投げ捨て、連日連夜どんちゃん騒ぎを繰り広げているのよ」
「なるほど。最近、新聞が爆撃されないと思ったら、そんな理由があったんだ」
「仕事を忘れてしまうほど美しいものを、排他的な連中に独り占めさせておくのは忍びない。霊夢はそう思わないのかしら?」
「単にあんたが山にちょっかいを出したいだけでしょ」
「あら、私は霊夢と一緒に紅葉狩りを楽しみたいのよ」
「本当に?」
「ええ、八雲の名にかけて」
「やけに安く名前を売るじゃない。信用を失っても……そんなもの元からないか」
「あらま、ひどい言い草」

 とてつもなく怪しいので紫色の瞳をにらんでみたけど、真摯にも見えるし、人を食っているようにも見える。つまり、こいつが何を考えているのかさっぱり分からない。
 私程度に思考を読まれるような大妖怪ではないか。むしろ読み取れるやつがいるなんて想像できない。さとり妖怪を前にしても、わざと変なことを考えて相手の頭をパンクさせる、なんてことを平気でやりそうだ。春画の内容とかを想像して見せつけたりして。

「はあ……」

 諦めて視線を落とせば、石畳に広がる無数の不届き者たち。
 そういえば掃除の途中だった。この分だとまだまだ終わりそうにない。

「私は仕事で忙しいの。幽々子なり萃香なり、もっと暇そうなのがいるじゃない。従順な式だっているのに、どうして私を誘うのよ?」
「珍しく真面目に働いている巫女さんを見つけたので、思わずご褒美をあげたくなってしまったの」
「それだと普段の私が怠け者みたいじゃない」
「違うのかしら?」
「私はいつだって楽園のそれなりに真面目な巫女よ」
「あらそう。なら、日頃から勤勉に働いている巫女さんをねぎらうために、紅葉狩りへ誘うことにしますわ」
「はいはい。優秀な巫女は悪い妖怪の誘惑には乗らないの。足をぶらぶらさせないでよ。掃除の邪魔になるから」

 紫に対してつっけんどんな態度をとっていたが、実のところ私は悩んでいた。
 正直つまらない掃除なんか投げ出してしまいたいし、気分転換に山へ行くのはまんざらではない。
 一方で、紫の思い通りになるのはなんか抵抗感があるし、これだけしつこく言われた後に首を縦に振るのは負けた気がして嫌。
 箒で落ち葉を退治しつつ、頭の中でどっちつかずの戦いを続けていたけど、結局最後の一押しをしたのは、やはり紫だった。

「この時間から紅葉狩りをするなら、お昼を食べながらしたいわね。紅葉に引けをとらぬ美酒つきで」
「むっ」

 太陽はちょうど空を昇りきったところだ。
 加えて、私は掃除をしたせいで、いつもよりお腹が減っている。

「……食事は誰が?」
「もちろん、ホストである私が全て用意させていただきますわ」

 紫が持ってくる食材はどれも上質で、なおかつ料理も嫉妬するのがアホらしくなるほど上手。たまに外の珍しい食べ物をくれたりもするし。
 考えた途端、腹の虫が鳴きそうになってしまい、慌てて腹筋に力を入れて押さえつける。

「いかがかしら?」

 全てを見透かしたように笑いかけられる。

「……仕方ないわね。一緒に行ってあげるわよ」

 私は負けたけど、きっと歴代の巫女だってこいつに勝てなくて、からかわれていたに違いない。
 そういう関係なのだろう。博麗の巫女と境界を操る妖怪というものは。現博麗の巫女である私が断言する。
 決して敗北したことへの言い訳ではない。

「妖怪の誘惑には乗らないと言ってなかったかしら?」
「あえて乗る場合はかまわないの」
「お掃除は?」
「境内を掃き清めても、参拝してくれる人がいないんじゃ意味がないわ」
「うふふ。素直になれない子は好きよ」
「このひねくれ者」
「お互いにね」
「いいから早く連れて行きなさいよ。お腹ぺこぺこなんだから」
「かしこまりました」

 私は箒を放り投げ、紫はスキマを大きく開いた。
 こうして博麗の巫女は悪い妖怪に攫われたのである。










「わっ」

 紅蓮に染まったカエデ。黄金の小鳥のようなイチョウ。寂寥を漂わせるミズナラ。
スキマをくぐった先で、私は豊かな色彩に圧倒された。神社の周りとは風景がまったく異なっていて、同じ幻想郷とは思えないほど。
 ここは山の中腹あたりだろうか。
 はるか遠くに人里の民家から昇る煙が見え、背後の斜面は紅葉した樹木で埋め尽くされている。燃え盛る炎のよう、とは聞いていたけど、あながち嘘ではなかったようだ。
 紫が選んだ場所だけあって絶景である。

「今から準備するから、少しだけ待っていて」

 声とおいしそうな匂いにつられて振り返ると、紫がゴザを敷いて、その上に重箱や皿を置いているところだった。
 見渡す限りの紅葉に囲まれて気分は炎の中で焼かれる食材だけど、私たちがいる所だけは背の高い木が生えてなくて、ある種の広場のようになっていた。笹やススキみたいな下草もあまり茂ってないので、紅葉狩りや宴会をするにはぴったりだ。
 逆に言えば、開けた場所なので遠くからでも目立ってしまう。少し心配になって周囲に殺気を放ってみたところ、幸いなことに侵入者を監視する視線やスクープを狙う下心は感じられなかった。

「やっぱりスキマは便利ね。妖怪の山は空を飛んで入ってもすぐにバレちゃうから面倒だわ」
「スキマを使っても安心は禁物よ。ここの連中はやたらと鼻が利くんだから」
「追い返しに来たら結界を張って強引に楽しむまで。私たちが一緒に結界を張ったら、つわものぞろいの山の妖怪といえども手が出せないでしょ?」
「そうねぇ。破れるのは射命丸や天魔くらいかしら」
「あの連中でも突破する頃には日が暮れているわよ」

 なんて他愛のない会話をしている間にも、スキマからはどんどん物が出てくる。
 一升瓶や各種調味料にナスが盛られたざる、炒って塩をふりかけた銀杏、イチジク、正体不明の箱、七輪。
 お腹がすいているのは間違いないけど、いったいどれだけ出すつもりなんだろう。
 まあ、紫は人外だし、いざとなったら藍や橙を呼べばいいか。神社に持ち帰って明日のご飯にしてもいいし……なんて食べる前から考えている自分は貧乏性なんだろうな。そうでないと博麗の巫女なんかやってられないけど。

「お待たせ。座ってちょうだい」
「うん」

 促されて紫の正面に腰を下ろす。
 私たちを隔てるは、食べられるのを今か今かと待ち望んでいる旬の味覚。林のように並べられたお酒の瓶。そして、紫の前には艶やかな朱塗りのさかづき。私には可愛らしいおちょこ。妖怪と人間の酒量を考えるとこんなものか。
 空は秋らしくどこまでも澄み渡り、その下で木々は終焉を謳歌する。
 さあ、準備は整った。

「死にゆく山の最後の輝きに、乾杯」
「かんぱい」

 趣味の良い器はひかえめな音で紅葉狩りを祝福してくれた。そのまま一気におちょこを空ける。
 日が高いうちから酒を飲む。これぞ極上の贅沢。

「んー、うまいっ。これって外の?」
「昔は外にあった守矢神社のお酒よ」
「なぬ?」
「ほら」

 紫が一升瓶を見せてくれると、ラベルにはでかでかと御柱と鉄の輪のマーク。
 むむむ、うちの商売敵じゃない。

「ちょっと、なんて酒飲ませてくれるのよ」
「甘口で飲みやすかったでしょう?」
「まあ、ね」
「引っ越してくる前に守矢神社が建っていた地域は酒造りが盛んだったの。その縁にあやかってかは知らないけど、最近、あちこちにこのお酒をばら撒いているのよ。はい」

 再びおちょこが満たされる。
 口をつけると、柔らかくて上品な甘さが舌を喜ばせてくれる。おまけに後味もさわやかで飲みやすい。
 これはグイグイいけてしまいそう。なのに、何故だろうか。目を閉じると早苗のしたり顔が浮かんできてしまう。

「んぅ、味はともかく問題は気分なの」
「分かったわ。次は別の銘柄を……あらま、駄々をこねるのは霊夢だけではないみたいね」

 七輪の上で泳ぐ秋刀魚から脂がしたたり落ち、こちらは本物の炎と腹をくすぐる匂いが立ち昇る。脂の炎で焼くと香ばしくなる反面、あっという間に焦げてしまう。すぐに紫が団扇で消しにかかった。
 別の七輪ではまるまると太った秋ナスが炙られている。

「博麗神社を護る巫女として当然の判断をしたまでよ。うちも対抗してお酒を配ろうかしら。ところで、その魚とナスはもう食べられるんじゃない?」
「おいしいものを食べたいのなら手間と時間は惜しまないこと。銀杏でもつまんでなさい」
「けち」

 紫が七輪にかかりっきりになってしまったので、仕方なく自分で守矢印以外の酒を探すことにする。
 酒瓶の林を探索すると、里で有名な酒造の銘柄に出くわしたので遠慮なくいただいた。

「はふ……しみるわねぇ」

 銀杏を数粒口に放ってから辛口の酒で流し込む。これだけで何とも言えぬ気持ちになってしまう。そして、頭上にはさざ波のように揺れるカエデの赤。じっと眺めていると、何故か心が落ち着いてくる。

「私も老けたのかなぁ」

 嘘か真か、年齢を重ねるたびに紅葉が好きになっていく、なんて話を耳にしたことがある。私はまだ十といくつしか年をとってないけど、毎日のように騒がしい連中に押しかけられて頭を痛めているのだ。知らぬ間に、身体は少女のまま、心だけが心労のせいで老いぼれて……たまるか。さすがに馬鹿馬鹿しい。
 なにはともあれ、一つだけ確かなのは、落ち葉掃除をサボって正解だったということだ。

「お待たせ、いやしんぼさん」

 酒精と紅葉のまどろみから現実へと引き戻される。
 凝った灰釉の長皿に秋刀魚と大根おろしが盛られていた。皿の青に炎との恋慕に身を焦がした魚が良く映えている。ただ盛り付けるのではなく、見て楽しむことも考慮してあるところが、いかにも紫らしい。

「醤油とすだちがあるわよ」
「すだちでいただくわ」

 熱あつの秋刀魚にすだちを絞ってジュッとさせる。これで脂っこさも怖くない。
 もう我慢の限界だ。

「いただきますっ」

 大海原からはるばるやってきた青魚が、すだちの淑やかな酸味に引き立てられ、私の舌で優雅に踊る。実においしいストーリー、もとい料理。二人の仲の良さに嫉妬して辛くなってる大根おろしも忘れずに食べてあげよう。
 いやもう箸が進む進む。ついでに酒も進む。

「味はいかが? うまく焼けていたかしら」
「はふっ、ん、んぅ……く、はぁっ……」
「それは良かった」
「むぐっ……ふぅ。さっきので通じたの?」
「食べている霊夢の姿だけで十分すぎるほどにね。ナスも焼けたわよ」
「もちろんもらうわ」

 焼きたてのナスはちょっと醤油をたらしてから、丸かじりでいただく。太ったナスは噛めば噛むほど甘い汁が出てきて、私を幸せにしてくれる。
 だけど、幸せと不幸はいつだって表裏一体だ。

「あふっあふっ!」
「熱いのにがっつくなんて。皮も剥いてないじゃない」
「んふっ、ふぁ、んっんっ!」
「おいしそうで我慢できなかった? 仕様のない巫女ね」

 だから、どうしてこいつは私の思っていることが分かるんだ。さとり妖怪か。こっちは紫の思考を読めないのに、ずるい。便利ではあるけど。
 今、考えていることも当然分かってるんだろうなぁ。

「はい。これで口を冷ましなさい」
「ん、むんっ!?」

 手渡されたコップを一息にあおった途端、視界が燃え上がった。

「げほっ……ちょっと、これお酒じゃない!」

 しかも、かなり度数が高い。舌だけでなく喉までヤケドするかと思った。
 抗議の視線を向けると、ニヤニヤと嫌らしい笑みを貼りつけた紫の顔が目に入った。

「食欲旺盛な巫女にささやかなお仕置きをしただけですわ」
「水を求めている人に酒を出すなんて、鬼かっ!」
「生粋の鬼ならもっと強烈な酒を飲ませるでしょうね。その上、善意で」
「ああ。それは言えてるわね」
「ほらほら、栗飯をあげるから泣かないで」
「誰が泣くもんか!」

 紫がよそってくれた栗飯は大きな栗がごろごろ入っている豪華な代物だった。新米の息吹きと旬の味覚の合わせ業。こんな栗飯を口いっぱいにかき込んでしまうと、私の機嫌はすぐに良くなってしまう。
 なんか悔しいけれど、ほっぺが落ちそうだったんだから仕方がない。
 秋の味覚をたらふく食べたおかげでお腹の機嫌も一段落。もう料理は酒の肴にゆったりとつまむ程度にしておく。秋刀魚もナスもまだまだ焼いてないやつが残ってるけど、やはり食べきれる気がしない。
 おちょこと一緒に首を傾けると、てろてろとした木漏れ日が紅葉に吸い込まれていくのが見えた。
 あまりにものんびりしていて身体がふわふわと浮き上がってしまいそう。

「ねえ、紫。この秋刀魚って海の魚よね」
「ええ」
「この前、人里の八百屋で見かけたのよ。幻想郷には海がないのに、店で海の魚が売られてるのは変じゃない。八百屋の主人に尋ねてもはぐらかされたんだけど、これって紫が一枚噛んでるの?」
「どうかしらねぇ。秋刀魚も海で暮らすのに飽きて川へ引っ越してきたんじゃない?」
「う、んん? そうなのかな……」

 酒が回ってきたせいか頭がうまく働いてくれない。
 日光と酒は相性が悪いと聞くし、そもそも浮かれていたせいで飲むペースが速かったのかも。紫にいたずらされたし。
 これはまずい。
 酔った勢いで失態でも犯せば、それこそ死ぬまでこの意地悪妖怪にネタにされ、からかわれ続けてしまう。
 今度こそ本物の水にありつこうと視線をさまよわせると、空になったさかづきが見えた。さかづきの持ち主は里芋の煮物を食べていて、酒を注ぐ気配はない。
 どうも、落ち着かない。

「ん」
「あら」

 適当な一升瓶をつかんでさかづきに入れてやる。
 ラベルに妖怪殺しとか書いてあるけど、こいつにはぴったりなくらいだし、そもそも用意した方が悪い。

「……空いてたから」

 紫が一瞬だけ驚いた顔になった、気がする。
 見慣れぬ表情の下半分はすぐさま扇子で隠され、上半分はやけに嬉しそうに笑いかけてきた。

「博麗の巫女にお酌していただけるなんて、光栄ですわ」

 こいつに素直に感謝されるとは、気味が悪い。

「今日は準備とか全部紫にしてもらったから、少しくらいお返ししようと思って……ああいや、あんたに借りを作るのなんか怖くないけど、後で妙な要求されると面倒だし」
「うふふ。なら、そういうことにしておいてあげる」
「なによ」
「別に?」

 顔が熱い。
 しかも余計に落ち着かなくなった。きっと本格的に酔ってきたせいだ。

「それにしても、紅葉って不思議ね」

 無性に話をそらしたくなって頭上の赤を見る。

「色が変わっただけの葉っぱに、どうして惹かれるのかしら」
「鮮やかに染まった葉が美しいからじゃない?」
「そりゃそうだけど……」

 おのれ。風流人を気取ってるくせに身も蓋もないことを言いおって。
 せっかく話題を変えようとしたのに、と憤ろうとしたとき、紫が静かに言葉を続けた。

「でもね、霊夢。紅葉を見て愛でるという風習が広まったのは、そんなに昔のことではないわ」
「へ、そうなの?」
「紅葉狩りを始めたのは平安貴族だけど、庶民が行うようになったのは江戸時代からなのよ」
「人間にとっては十分昔の話じゃない」

 これだから妖怪は困る。
 寿命が馬鹿みたいに長いせいで、時間の感覚がめちゃくちゃになっているのだ。花が狂ったように咲いた異変のときも、60年前も同じことがあったとか何とか言ってた気がする。
 だけど、紅葉狩りが平安時代に始まったということは、それよりも前から封印されていた豊聡耳神子や物部布都やらは知らないのだろうか。まあ、あの連中はそもそも知らないことの方が多そうだ。ドロワーズとか。

「でも、意外ね。花見みたいに古くからやってそうなのに」
「お花見も酒を飲んで騒ぐ現在の形になったのは江戸時代から。ただ、桜を見ること自体ははるか古代から行われていたわ。何故だか分かるかしら?」
「えっ? 桜を見る理由ねぇ……」

 頭が回っていないときに禅問答めいた質問をされてもなぁ。
 おちょこを口に運んでひとまず時間稼ぎ。けれども、紅葉に引けをとらぬ美酒とやらは答えを教えてくれなかった。
 酒精とすっかり仲良くなってしまった脳みそも働いてくれないので、私は考えることをやめて無難に答えておいた。

「うーん……やっぱり桜の花がきれいだから?」
「霊夢。あなたに必要なのはお仕置きよりもお勉強のようね」
「えー」

 あきれたようにため息をつく紫。すっごいムカつく。
 さっきは紅葉に惹かれるのは美しいからって言ってたくせに。

「えー、じゃありません。曲がりなりにも幻想郷を護る博麗の巫女なんだから、この程度のことは知っておきなさい」

 年寄り臭く嫌味を言ってから、妖怪の賢者はそっと瞳を閉じた。まるで、まぶたの裏に映る満開の桜を見るかのように。

「まだ暦すらなかった時代。人間は自然の中から時間の流れを読み取っていたの。気温。太陽や星の位置。月の満ち欠け。渡り鳥。そして、花の開花。桜の花が散った後、人里で何が行われているか思い出してごらんなさい」
「……米作り」

 ここまでヒントを出されたら、回転の鈍くなった頭でも答えにたどり着ける。
 田んぼを耕したり、稲の苗を育てたりと、人里がにわかに活気づき始めるのは、ちょうど花見と称した宴会が開かれなくなった頃だ。

「桜の開花は春の訪れであり、農作業の始まりでもある、人間はそんな解釈していたのよ。かつては花の咲き方、散り方で稲の実り具合を占っていたほど。その名残に心当たりがあるんじゃないかしら?」
「豊穣祈願だとか田の神を招く祭りとかで私も忙しいのよねぇ。あの時期は」
「桜が咲けば稲作ができて米を食べることができる」

 話し終えた紫は栗飯を口へ運び、おいしそうに頬張った。

「満開の桜は、まさに生命の象徴なのよ」

 桜が無事に咲けばお腹いっぱいに米を食べられる、か。
 考えてみれば、桜がいつまでたっても咲かず春が訪れなかった異変のときは、農作物が全然採れなくて大変だった。何とかしのげたのは、里に凶作に備えての蓄えがあったことと、出所不明の食料が大量に出回ったためだ。後者は大方、どこぞのスキマ妖怪が親友の気まぐれの後始末に奔走した結果だろうけど。

「じゃあ、桜が生命の象徴だとしたら……紅葉は?」
「そうねぇ」

 紫が箸を置いて視線を上げた。つられて私も頭上を見る。
 風が木々を揺らし、無数の葉を攫っていく。その様子は、あたかも真紅の吹雪のよう。

「紅葉が散ってしまえば、つらく厳しい冬がやってくる。いくら豊穣の季節と重なっても、生きるだけで精一杯の人間たちには、桜と違ってじっくり鑑賞する余裕はなかったわ」
「楽しめたのはまだしも豊かだった貴族くらいだったわけね」
「その貴族にしても、死が最も近くなる冬はつらいもの。枯れて散っていく姿は、桜よりも鮮烈に無常の念を感じさせて、お世辞にも気持ちの良いものではなかったようね。寂しさと終焉の象徴とはうまく例えたもの……ま、より詳しいことは専門家にお願いしましょうか」
「え?」
『はーはっはっはっ!』

 しっとりとした雰囲気をぶち壊しにする馬鹿笑い、もとい高笑いの二重奏。

「私たちを差し置いて」
「秋を語ろうとするなど」
『笑止千万、不届き千万!』
「誰なのっ!?」

 すわ山の妖怪の襲撃か、とお札と陰陽球を手にとって殺気を飛ばす。どうやらブナの巨木の上から叫んでいるようだった。
 馬鹿と煙は高い場所が好きなのは事実のようね。

「誰なの!? と聞かれたら」
「答えてあげるが秋の情け」
「世界の終焉を……」
「世界の豊穣を守るため!」
「ちょっと、私の台詞を飛ばさないでよ!」
「だってお姉ちゃんがとろいんだもん」

 相手が内輪もめをやり出したけどかまうものか。先手必勝だ。

「ゆけっ! 陰陽玉!」
『や、やなかんじぃ~』

 適当に狙いをつけて陰陽玉を飛ばすと、鈍い音と共に紅葉色をしたものがボトボトと二つほど落ちてきた。
 どちらも見たことがある格好で、一方はカエデの髪飾りに、これでもかというくらいに紅葉を意識した色鮮やかな服装。もう一方はブドウの飾りつきの帽子に、たわわに実った稲穂をあしらったエプロン。

「なーんだ、秋の神様か。びっくりさせないでよ」
「……な、なーんだ、秋の神様かと言われたら」
「せいっ」
「ぎゃふん」
「お、お姉ちゃん!?」

 紅葉の神がまだ動いていたので、一昔前に里で流行したサッカーとかいう外のスポーツみたく陰陽玉を蹴って黙らせておいた。
 初弾が当たったからって気を抜かず、止めを忘れないことが大切ね。
 この様子をさかづき片手に見守っていた紫はのんびりと賞賛を送ってくれた。

「オフといえども、さすがは情け無用の人外退治専門家。お見事ですわ」
「あんたも変な真似したら退治するからね。にしてもこの二柱、やけにテンションが高いし、何かあったのかな」
「そりゃ、秋ですもの」
「わっ。もう復活した」
「ストップストップ! そのモンスターみたいなボールをしまって!」
「八雲様も暴れん坊巫女を止めてくださいよ!」
「どうしようかしらねぇ」

 すったもんだの末、秋の神様も交えて紅葉狩りを続けることにした。
 今年は紅葉の色づきも素晴らしく、里の農作物も無事に収穫できたとかで、姦しく騒ぎながら飛んでいたらしい。
 二柱とも陰陽玉で止めを刺したはずなのに、やたらと機嫌が良くて不気味なくらい。たぶん、秋にはしゃいだ分、冬になったら思いきり暗くなるんだろうなぁ。
 紅葉の名所について紫と熱く語り合う静葉を眺めていると、一升瓶を抱えた穣子が寄ってきた。

「ま、仲直りの印に一杯」
「なにそれ?」
「聞いて驚きなさい! 焼き芋で作った焼酎よ!」

 拒む暇もなくおちょこに注がれてしまう。神様にお酌してもらうのは気分が良いけど、焼き芋の焼酎だって?
 不安になって鼻を近づけてみる。

「あ、本当に焼き芋の香りだ」
「神様は嘘つかないって。これはそのまま飲んでもおいしいし、お湯割りにすると甘味と風味が増すのよ。はい、どうぞ」

 まだおちょこの分を飲んでないのに、お湯割りの入った湯のみを渡されてしまった。
 せっかく飲むのならおいしい方を飲みたいので、お湯割を口につけてみる。

「はふ……いけるわね。それに身体があったまるわ」
「でしょでしょ? この焼き芋焼酎、作るのがすごく大変なんだから。芋をただ焼くだけじゃ駄目で……」

 味の解説がいつの間にか自慢話になっていた。
 満面の笑みでしゃべりまくる穣子を見ていると、彼女が豊穣の神様なのか焼き芋の神様なのか判別がつかなくなってくる。
 私も適当に相槌を打ちながら飲んでいたら、薄らいでいた酔いがぶり返してきた。
 静葉の髪飾りが動いているカニに見える。けっこう危ないかもしれない。

「でね、私は絶妙な焼き加減をマスターするために火の神様である……」
「はいはい。その辺にしておきなさい、穣子。巫女が退屈そうにしているわ」

 話が佳境だか入り口だか分からない場所でさまよっていると、今度は姉である静葉がやってきて妹を押しのけた。
 押された穣子はそのままゴロゴロと転がってイチョウの木にぶつかってしまう。哀れな焼き芋の神様に降り注ぐ黄金の葉。これが落葉の神様の力か。

「いったぁ! 邪魔しないでよ、お姉ちゃん!」
「私たちが乱入する前、二人は紅葉の話をしていたそうよ。だから芋よりも紅葉の話をしましょう、博麗の巫女さん?」
「う……ん? そうだったかな?」

 記憶に濃い酒の霧がたちこめていてあやふやになっている。たしか紫と一緒に紅葉狩りと花見の話をしていて……そうだ、同じように美しくても桜は生命の象徴で、紅葉は寂しさと終焉の象徴だ、というところで中断したままだった。

「邪魔したのはあんたらだったでしょうが」
「まあまあ、細かい部分は置いてといて」
「ちぇっ。いいもん、私は焼き芋焼酎の布教をしてくるから」

 ぷりぷり頬を膨らませた穣子は一升瓶を持って紫の隣へ行ってしまった。
 懲りずに自慢の焼酎を注いでいるが、そのさかづきにはまだ中身が残ってた気がする。

「さて、何から話しましょうか」

 静葉は落葉の神様だけあって、妹に比べれば落ち着いた雰囲気をしている。ただ、あくまでも比べたらの話で、さっきみたいにノリノリで馬鹿をやったりもする。秋だからか。
 お酒を飲んで良い気分になってるんだし、あまり長くて難しい話は聞きたくない。

「話すことなんてあったかな。紅葉の散り方や、次に冬がやってくることを連想させるせいで、もの悲しい印象で捉えられる、というのも納得できたし」
「もの悲しい……そうね、紅葉はいろんなイメージを持たれているかもしれない」

 苦笑した秋の神様は大きなカエデの葉をつまみ、クルクルと回して遊び始める。

「巫女さんは何故、落葉樹と呼ばれる樹木の葉が秋になると色を変え、散ってしまうのかご存知かしら?」

 この神様にしても紫にしても、何故に行楽の最中に、しかも酔っている相手に対して難しい質問をするのだろう。新手の巫女いじめかと本気で悩んでしまう。
 ごまかすように湯のみをすすったけど、やはり豊穣の神様ご自慢の焼酎は答えを教えてくれない。
 私は酒臭いため息をついた。

「衣替え……にしては素っ裸は寒いか」
「残念。はずれ」
「はぁ、知らないわよ。私は幽香じゃないんだから」
「正解は、木が冬支度をしているからでした~」

 嬉しそうに話す静葉は、芋について語る穣子に勝るとも劣らぬ表情をしていた。
 この二柱は本当に秋が好きで好きでたまらないんだろう。秋の神様なんだから当然か。

「冬支度? 動物みたいね」
「植物だって生きているし、冬がつらいのは同じですもの。寒さや乾燥に弱い葉をつけたままでは、厳しい季節を乗り切れない。だから、秋のうちに葉を落とすの。もちろん、松の仲間のように葉を落とさずに越冬する方法を見つけた木もいるわよ」
「境内の掃除が大変になる理由は分かったわ。で、色が変化するのはどうしてなのよ?」
「それは木が葉を落とす準備をしているときに、葉で作られた栄養が変化したり、その他の様々な要因が絡んでくるんだけど……」

 静葉はいったん言葉を切り、カエデの葉を回していた指を止めた。
 よく見れば、付け根から先まで完全に朱に染まった立派な落葉だった。

「私はね、葉っぱの色が変わるのは、木が今まで働いてくれてありがとう、って感謝の思いを込めて最後に飾ってあげているからだと思うの」
「植物の癖にロマンチックな話ね。いくら飾り立てても葬式であることは変わらないのに」
「暗いこと言わないでよ。冬じゃあるまいし」

 失礼な、と静葉は眉をひそめたが、その言い方もかなり失礼ではないだろうか。

「葉を落とすのは厳冬を乗り越えて暖かい春に復活する準備なんだし、落ち葉だって地に還れば新たな命の栄養になる。紅葉を司る私としては紅葉を寂しさと終焉の象徴だけでなく、再生の象徴としても見て欲しいな、なんて……」

 紅葉した葉を抱きしめるように持つ静葉は、やっぱり秋の神様なんだ、とぼんやりとした頭で思った。
 やがて、葉は神の下を離れて風の流れに乗り、蒼穹の秋空へと舞い上がる。
 天を飾る紅い宝石が滝の方角へと消えてしまうで、私たちはしばらくの間、黙って見守っていた。

「結局、紅葉からどんなメッセージを受け取るかは、紅葉狩りをした人次第。私はそこまで責任は持てなくて、落葉樹たちがしっかり冬を越せるように落葉の手助けをするだけなのよ」

 空を見上げたまま話す静葉の顔はどこか達観していて……いや、少し違う。達観したとかではなくて、悩みなんかなさそうな妖怪とかでもたまに見せる表情。人ならざる者の顔とでも言うのか、そう、彫刻や絵画のように現実味が薄いのだ。
 ま、神様にも色々とあるのだろう。守矢神社の騒がしい神様たちだって、それで幻想郷に移ってきたんだし。

「わ、私の顔に落ち葉でもついてるの?」

 酒にやられた頭で考えつつじーっと静葉の顔を眺めていたら、見事に紅葉してしまった。

「んー。神様も大変なんだなぁって。信仰とか足りてる? うちの神社よりは大丈夫だと思うけど、紅葉を見た人次第なんてやり方だと、風流人くらいしか信仰してくれないんじゃない?」
「そうでもないわ。あなたが散歩がてら道端のイチョウを見て少しでも美しいと感じてくれたら、僅かながらも信仰になるし、人間以外からも集まるんだから。ここ一週間ほどは、毎日のように宴会を開いている妖怪の山からの信仰がざっくざくよ」
「へぇ。妖怪の信仰心って当てになるんだ」
「もちろん。幻想郷は人間よりも人外の数が多いし」
「守矢神社が集めている信仰なんか大半が山の妖怪からのものよ。知らなかったの、霊夢? やっぱり勉強不足ねぇ」

 妙に色っぽくて、ついでに嫌味っぽい声が聞こえてきたので振り向くと、口元を扇子で隠しながら艶やかに笑う紫がいた。いつもは白粉をしたように真っ白な頬がほんのり赤くなっている。そして傍らには飲み干された大量の焼き芋焼酎の瓶。
 恐らく、飲み比べでもしたのだろう。穣子が瓶を枕にしてぶっ倒れている。

「あらら。強くないくせに嬉しくなるとつい飲んじゃうんだから」

 静葉はそっと立ち上がると、眠れるお調子者を介抱しに行った。
 その空いたスペースに紫が腰を下ろす。甘ったるい匂いがムワッと広がった。

「芋臭いんだけど」
「霊夢だって酒臭いわ」
「紫ほどじゃない」
「これでもまだ足りないくらいなのよ。秋の味は奥が深くて」
「ふーん、焼き芋の神様もたいそう喜んだでしょうね」
「ええ。私がおいしいと感じるたびに信仰が入っていたわ」
「それは妖怪が掃いて捨てるほどいて、全然信仰が集まらないうちの神社に対する嫌味?」
「あら、そんなつもりではなかったのに。ちょっと自意識過剰ではないかしら? のんびり屋のあなたの場合、問題意識を持っているだけマシかもしれないけれど」

 実際はどうなんだか。
 酔っ払い同士の他愛ない応酬だとしても、妖怪にまで信仰不足をからかわれてしまうのは、さすがに腹が立つ。誰のせいで参拝客の足が遠のいてると思ってるんだ、まったく。
 やけになって湯のみをあおったら、もう焼酎は残ってなかった。
 仕方ないので近くにあった瓶をひっつかんでラッパ飲みする。

「んぐっ、げほっげほっ」
「お酒に逃げても解決しないでしょうに」
「酒を飲みまくって博麗神社を酒の神様を祀る神社にしてやる」
「やれやれね。これでも飲んで頭を冷やしなさい」

 紫が扇子で宙を斬ると同時に湯のみが液体で満たされる。
 見た目は透明で匂いもしない。恐る恐る舐めてみると、今度こそ正真正銘の水だった。

「あー。芋や紅葉の神様にだって信仰されてるのに、どうしてうちの神様は信仰貧乏なのよ」
「博麗神社は特殊な神社だから仕方ないわ。気休めになるかは分からないけど、豊穣や紅葉の神様は今の季節だと日常的に感謝される分、あまりにも身近過ぎてありがたみは薄くなっているのよ。現に力はそんなに強くないし、神社だって持っていないでしょう?」
「うん。弾幕勝負は弱かった」
「二人とも~、きーこーえーてーるーぞー」
「あら、ごめんあそばせ」
「これでいいのだっ!」

 穣子は生き返ったかと思ったら、すぐにひっくり返った。カクカク動く姿も合わせて芳香みたい。慌てて水を口に注ぎ込む静葉は、壊れた芳香を治す青娥そっくり。

「ねえ」
「なにかしら?」
「弱くて、あんなにだらしない神様でも、妖怪は信仰するの?」
「人間の感覚とは少し違っているかもしれないわ。それでも、結果として神様は同じ信仰扱いしているみたいね」
「うーん。妖怪が芋……豊穣の神様に感謝してる姿って、あまり想像できないな」

 妖怪って自分勝手だし、肉体よりも精神に重きを置いているから、頻繁に食事を取らなくても平気な身体をしている。宴会のときみたいに山ほど飲み食いすることもあるものの、基本的には食べないときは本当に食べなくて、よく神社で飲んだくれてる萃香なんかは酒だけで何日も過ごしている。
 妖怪側に近い守矢神社や、人間だけでなく妖怪までも救済する命蓮寺に信仰が集まるのは理解できる。しかし、お米や焼き芋の焼酎、ひいては秋の味覚をもたらしてくれた豊かさと稔りの象徴に感謝することなんかできるのだろうか。

「想像もなにも、目の前で見ていたじゃない」

 紫の端正な眉が飛び上がった。
 これだから信仰に逃げられているのよ、とでも言いたげな視線に促されて記憶をたぐる。
 乾杯をして酒を飲む紫、焼けた秋刀魚を食べる紫。栗飯を口にする紫。いったいどれのことなんだろう。

「今日のこと? 普通に食事をしてるようにしか見えなかったわよ。まあ、おいしそうに食べてはいたわね。実際、おいしかったし」
「そのおいしい料理を食べるということが大切なのです」

 扇子がピシャリと鳴った。

「いいかしら、霊夢。人間にとって味覚や食感は必ずしも必要なものではないのよ」
「え」
「極端な言い方をするなら」

 紫はそばにあった里芋の煮物の器を手にとって掲げた。

「この里芋に味や歯ごたえが存在しなくても、食べたときに栄養さえ摂取できていれば、人間は生きていけるわ」

 栄養しか存在しない料理。言っている意味はなんとなく分かる。だけど、想像しただけでぞっとする話だ。
 心配になってしまったのか、気づいたら私は里芋を箸で取っていた。
 口に入れてもにゅもにゅと噛むと、里芋に染み込んだ煮汁がじわっと広がる。冷めていても、とってもおいしい。

「……栄養だけの料理なんて食べたくないなぁ」
「あくまでも例え話よ。精神に拠るところの大きい妖怪は逆。栄養よりも味や食感、それによって生まれる『おいしい』や『まずい』といった感情が生きていく上で必要なのよ。だから……」

 紫も里芋を一つつまんで食べる。
 味と食感を楽しんだ後、満足そうに目を閉じた。

「うん、我ながら上出来。それで、こうして素晴らしい里芋を堪能できたら、おいしい秋の味覚をもたらしてくれた豊穣の神様に感謝するのよ。これが妖怪流、豊穣を司る神への信仰」
「おおう。力がみなぎるぅっ!」

 信仰を受け取った神様が奇声と共にビクンビクン飛び跳ねた。
さすがにオーバーアクションではなかろうか。
釣り上げた魚のように跳ね続ける神様を見て紫はくすくす笑い、それから視線を上へと向けた。
 真紅、山吹、橙、朽葉といった無数の色が渾然一体となって、秋を愛でる妖怪の紫色をした瞳へと納まる。

「紅葉も同じ。一年に一度しか見ることのできない自然の奇跡に驚愕し、心を震わせる。己の奥底から溢れ出す感情を味わい、喰らってから、かくも美しき舞台を演出してくれた神様に一言『ありがとう』と伝えるのよ」
「感情を、食べるの?」
「『感情を喰らう』や『紅葉を喰らう』といった言い回しの方が、人間風の『栄養を摂取する』よりも格好がつくと思わないかしら?」
「なんだ、見栄か」
「見栄も大切な感情じゃない」

 紫は顔を上げたまま答えた。
 燃え盛る紅葉から目を離さず、むさぼるように見入る姿は、まるで彼女自身が散り行く落葉になったかのように儚い。
 このスキマ妖怪は何を思って紅葉狩りをしているのだろう。
 単に美しい景色に感動しているだけなのか。あるいは、紅葉ともうじき冬眠に入る自身を重ね、寂しさと終焉を嘆いている? それとも、無事に春を迎えられることを再生の象徴に願っている?
 手が勝手に動いて、道士服の裾をつかもうとしていた。

「紫は……」
「あやややや。山へ無断で立ち入り、あまつさえ紅葉狩りまでしている怖いもの知らずとはあなた方でしたか」

 寸前、迷惑極まりない突風が紅葉の雨を乱す。
 荒れ狂う風が静まると、目と鼻の先に見知った新聞記者が浮かんでいた。とっさにお札を放つ。

「悪妖退散!」
「おっと、これはご挨拶」

 秋の神様たちとは違い、軽く避けられてしまった。さすがに山の神として恐れ崇められているだけある。
 うかつだった。
 山の妖怪に警戒していたつもりだったのに、酒のせいで知らず知らず気が緩んでいたらしい。
 まあ、後悔したところで仕方がないか。それに、帰れと命令されて、はい分かりましたとすごすご引き下がる博麗の巫女ではない。

「紫、結界を張るわよ」
「懐に飛び込まれてからでは遅いわ」
「なら……文、大人しく家に帰って布団に入るか、カエデの赤に自分の血を上塗りするか、どっちか選びなさい。天狗の血って赤よね?」
「せっかくの紅葉を血で汚すなんて無粋よ、霊夢。血も流せぬよう、鴉らしく丸焦げに焼いちゃいましょう」
「まあまあ、二人とも落ち着いてください」

 物騒なことを言われているのにもかかわらず、文はにこにこと営業用スマイルを絶やさない。態度も普段よりも礼儀正しい気がする。
 きっと紫がいるせいだろう。いかにも狡猾な天狗らしい。
 私がにらみつけてもどこ吹く風。のんきにしゃべり始めた。

「今日はですね……と言っても、ここのところ毎日なんですが、私は友人たちと紅葉狩りを楽しむつもりでした。好天に恵まれ気分も良かったので、ちょいと奮発して納戸にしまってあった飛び切りの洋酒まで出してきたんですよ」

 ここでへらへらした表情が一転、この世の終わりを表現したかのような顔になった。

「ところがです。人数分のグラスを用意し、ボトルを開けて注いで回り、さあ飲むぞ! というところで私の敬愛する上司に呼び出されたのです。曰く『侵入者を追い出してこい』と。ああ、あの琥珀のようなお酒。一口も飲んであげられなかった」
「嫌なら断ればよかったじゃない。その方が私たちも嬉しかったわ」
「悲しいことに、下の者にとって上司の命令は絶対。それが組織に属するということなんです」
「ご愁傷様……で、戦うの? 戦わないの? 早く決めてよ」
「焦らないでくださいって。実は私、とある心配をしているんですよ。もしかしたら、あなた方は山へ招かれたお客様であり、不幸なことに侵入者と間違われているのかもしれない、と」

 文がねっとりとした視線を紫へ向ける。何を期待しているのやら。

「紫さん、あなたの便利な力を使って上司と連絡をとっていただけませんでしょうか? そして、誤解を解いちゃってくださいよ」
「私たちが招かれた客なら、問題はないのね?」
「そうですとも。あなた方は紅葉狩りを続けることができ、私は帰ってお酒を愛でてあげられる。ついでに、侵入者の発見が遅れたとして哨戒天狗たちが叱責を受けることもありません。みんなで幸せになりましょうよ……」
「ええ、そうしましょうか……」

 文と紫はお互いに顔を近づけ、とっても気持ち悪い笑顔になった。
 私と秋の神様たちが引いていることを気にも留めず、ひとしきり笑い合うと、紫がスキマを開いて中に手を突っ込んだ。しばらくゴソゴソやると、勢い良く誰かを引っ張り出した。

「げぇっ、貴様は八雲紫!?」

 ずいぶんと偉そうな顔をしていると思ったら、妖怪の山を統べる天魔じゃない。

「やめろ、触るな、胡散臭さがうつ……クェッ」
「あら、失敬。手が滑りましたわ」

 紫は易々と慌てふためく天魔の首を押さえて身動きできないようにする。首がありえない方向へ曲がっている気がするけど、肉体が馬鹿みたいに頑丈な妖怪だし大丈夫だろう。
 天魔はじたばたともがいていたが、やがて奇襲された不利を悟ったのか静かになった。
 ちなみに、同じ天狗でしかも部下である文は指一本動かさなかった。組織のしがらみとやらはいいのかな。

「く……私をどうするつもりだ?」
「そんなにビクビクと震えないでくださいな。私はあなたと少しオハナシをしたいだけ。そうね、口以外の穴からメチルアルコールを飲む方法についてなぞ、いかがでしょう。無類の酒好きのあなたならきっと気に入るわ」
「馬鹿、やめろやめろ、やめて! おい、射命丸! 笑ってないで助けろ!!」
「いやぁ、仲睦まじく羨ましい限りです。不肖、射命丸文が邪魔の入らぬよう見張っていますから、思う存分ちゅっちゅしてください」
「この薄情者ぉっ!」
「あーうー聞こえませーん。アーメン、インシャラー、南無三、ざまあみやがれ」

 涙目の天魔はたちの悪い妖怪に茂みの中まで引きづられて行き、世にも恐ろしいオハナシをすることとなった。
 その哀れな上司を適当な祈りの言葉で祝福する文は零細新聞の記者ではなく、さながら芝居の悪役だ。転職した方が売れそうな気がしてならない。さしあたりアリスの人形劇でも手伝ったら良さそうだ。

「見殺しにしてかまわないの?」
「私に仕事を押し付け、自らは紅葉狩りを続けた罰ですよ」

 文はあっけらかんとした顔で答えると、私の方へ向き直った。

「おかげ様で清々しました。お礼に、私が愛でる予定だった美酒を味見させてあげますよ」
「あ、ちょっと……」
「待っててくださいね~」

 よほど嬉しかったのか、もしくは上司が憎くかったのか、幻想郷最速の異名を持つ天狗はあっという間に飛び去ってしまった。
 私が飛ばした言葉は彼女の耳に届かないばかりか、肩をつかむことさえできない。代わりに私の肩が落ちる。

「……やっぱり妖怪って自分勝手」
「やっと私たちを妖怪の山へ招待したことを思い出してくれたわ。年を食うと物忘れが激しくなって嫌ねぇ」

 入れ替わりに年齢不詳のスキマ妖怪が戻ってきた。
 その肩越しに元は天魔だった何かが目に映った気がしたが、見なかったことにする。大勢の幸せのために、一人が犠牲になる話なんてごくありふれたものだ。

「見ていていろんな意味でハラハラしたけど、丸く収まって良かったわ」
「神といえども、山の組織に対してあまり意見を言えないからねぇ」

 隅からこの騒動を見守っていた静葉と穣子もやってきて腰を下ろした。
 文が来たときは、秋の神様なんだから何か言ってやってよ、と思っていたが、神には神なりの事情があるらしい。力量から考えても、天狗衆に文句をつけられるのは、守矢神社の二柱くらいか。
 懲りずにまた焼き芋焼酎を出して紫と静葉に飲ませようとしている穣子を眺めながら物思いにふけっていると、不意に風を感じた。

「お待たせしました」
「待つどころか早すぎるでしょ、あんた」
「清く正しく、そして早くがモットーですから。ささ、どうぞ飲んでみてください」

 問答無用で酒で満たされたグラスを渡される。
 あきれて空を仰げば、舞い散る紅葉に混じるいくつもの陰。文と飲むつもりだった連中が追いかけてきたようだ。

「霊夢さーん……ぎゃっ!?」

 ふらふら危なっかしく飛んできた早苗が、案の定ゴザに胴体着陸した。顔が真っ赤だけど、擦り剥いたのではないらしい。状況から察するに飲酒飛行だろう。
 酒に弱いくせに無茶するんだから。

「やあ、盟友。おいしそうな料理があるけど、つまんじゃってもいいかい?」
「残り物でかまわないなら、どうぞご自由に。作ったのは私じゃないし」
「そんじゃ遠慮なく。いただき~」

 知り合いやら、まったく知らないのやら、とにかく妖怪たちがどんどん降りてくる。
 にとりなどマシな方で、多くは当然の顔をして料理に手を出し、酒を飲んでいる。騒がしさに誘われてか、山に住む妖精まで混じってくる始末だ。お前らはイナゴか、まったく。
 私はため息を一つ吐いてから、文に渡されたグラスを傾けた。
 何とも言えない味がする。

「はあ。賑やかになっちゃったなぁ」

 ドッと歓声が上がった。紫が新しい料理をスキマから出したのだ。










「……んにゃ」
「起きた?」

 目を開くと、一日の終焉を彩る紫色の空と、その紫に負けじと華やかさを競う紅葉が視界いっぱいに広がっていた。
 どうも紅葉狩りの途中で寝てしまったらしい。
 そして、首を曲げていないのに空が見えるのは、仰向けになってゴザに寝転がり、頭をスキマ妖怪の膝に乗せているからに他ならなかった。
 何この状況。

「あわわ……あふん」

 途端に恥ずかしくなり、大急ぎで起き上がろうとして、失敗した。頭が重過ぎる。ついでに気分も良好とは言いがたい。
 理由は簡単に想像がつく。飲みすぎだ。
 後から来た妖怪たちのペースに巻き込まれて、酒を浴びるように飲まされてしまった。眠るまでの記憶が抜けているのも恐らくそのせいだ。私もこの体たらくでは早苗を笑えないな。

「無理しないで寝ていなさい」

 紫はしばらく膝を貸してくれるようだ。なので、大変不本意ではあるが、動けるようになるまで寝かせてもらうことにする。

「……なんとなく、こうなるような気はしてた」
「だとしたら博麗の巫女の勘は今日も絶好調ね」
「紫が食べ切れないほど料理を出すからよ」
「私が原因なの?」
「紫が原因なの」
「ふふ。巫女がそう思うなら、そうなんでしょうね」
「だけど、おいしかった」
「どうもお粗末さまでした」
「今日は私を攫ってくれてありがと。おかげで楽しい思いができたわ」
「それはそれは。どういたしまして」

 私と紫で始めた紅葉狩りの場は多くの人外で埋め尽くされていた。さめざめと泣く天魔を慰める取り巻きたちやら、飲み比べをする守矢の二柱やら、私が眠る前よりもさらに増えてる気がする。これでは紅葉狩りというより、いつもの宴会だ。
 辺りは暗くなってきているが、お開きになる気配はまったくない。

「霊夢」
「うん?」

 私の髪に舞い降りた落葉を取り除きながら、紫が言の葉をつむいだ。

「射命丸が来る前、何か言いかけてなかったかしら?」

 その問いかけに、紅葉に魅入られたかのごとく、上を向いたまま動かない紫の横顔が想起される。
 あの時はどんな気持ちで紅葉を見ているのか気になって仕方がなかったけど、考えてみれば知ってどうなるということではないか。むしろ、そんなことを気にしていた自分が気恥ずかしい。

「んー、あれは紫が何を思って紅葉狩りをしてるのか聞こうとしただけ。あんたの顔が少し……少し変な顔だったから」
「変な顔とは失礼しちゃうわね」

 頬をつつかれた。
 そして、私を見下ろしていた紫が、また紅葉へと目を向けてしまう。

「どんな思いで紅葉狩りをしているか……そうねぇ」

 日が沈み、世界は急速に明るさを失っていく。
 紅葉たちは世の理に抗うようにして己の美を誇示しているが、それでも一瞬ごとに、枝の先端の葉から闇に飲み込まれていくのが分かる。その様子は、葉が全て散ってしまった後に襲い来る季節を予感させる。
 薄闇の中で紫色に輝く瞳が動いた。

「うまく言い表せないわ。私の内側で美しいとか、すごいとか、無数の感情が渦巻いているの」

 ごまかされたのではない、と思う。でも、本当のことかは分からない。
 所詮、私は人の子だ。さとり妖怪じゃないんだから、他人の心を読むことはできない。興味もあんまりないから読もうとする努力もしていない。そんな私が、妖怪の賢者の胸の内を知ることなんかできるはずがない。
 ただ、私は普通の人間よりもほんのちょっとだけ特別な博麗の巫女だ。
 紫の服を引っ張り、もう闇と混じりかけている紅葉から私の方へ振り向かせる。

「無事に春を迎えることを願っていた。そうでしょ?」

 二つの紫色の光が大きくなる。

「それは……どうかしらね」
「私がそう思うなら、その通りになる」

 巫女の勘は絶対。巫女の意思には幻想郷がついてくる。

「違うかしら?」

 舞い散る紅葉と一人寂しく冬眠する自分の身を重ねているのか、幻想の存在が増えていく世を儚んでいるのか。まあ、寂しさと終焉の象徴として紅葉を眺めるのも悪くはないだろう。
 でも、秋の神様も言っていたように、紅葉を再生の象徴として見てやってもいいじゃない。
 偉大なスキマ妖怪が紅葉見て酒飲んでめそめそしてるとか、あんまりだ。私がいるんだし、私だけじゃなくて秋の神様やら、後からは山の妖怪たちまで一緒になったというのに。
 せめて、春にみんなと再会したいなぁ、くらいの前向きな気持ちでいて欲しい。

「ちゃんと春には起きなさいよ。紫は知らないかもしれないけど、起きてこなかったら寂しがる連中もけっこういるんだから。幽々子とか、萃香とか」
「……寝坊しないよう心がけますわ」
「寝坊したら退治するからね」
「まあ、怖い」

 念を押してから、すぐそばに落ちていたカエデの葉を拾う。
 そして、妖怪流の紅葉狩りの真似になってない真似をして葉をかじり、再生の象徴に祈った。

「あっ」
「あら」

 すると、紫の顔が夜闇に浮かび上がったではないか。
 誰かが夜でも紅葉狩りを楽しむためにかがり火を灯したのだ。
 このとき、紫がどんな表情をしていたか……それは私だけの秘密。


 
こんな寒い中、この話を読んでいただきありがとうございます。

若干どころではなく季節がずれてしまいましたが、今回は紅葉狩りの話です。
少しでも秋の山を思い浮かべていただけたら幸いです。
ちなみに、昔は海から遠い地域では八百屋が魚を扱っていたんだとか。干物の隣に大根がごろん、なんて光景が普通だったんですね。
文鎮
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コメント



0.780簡易評価
2.90奇声を発する程度の能力削除
秋って感じが凄く出てて良かったです
4.100名前が無い程度の能力削除
寂しがる連中の中には霊夢さんも居るわけですね

紅葉今年はあまり見なかったなぁ
12.100名前が正体不明である程度の能力削除
秋まであと一年…
15.90名前が無い程度の能力削除
信濃の国、長野県出身の人がほぼ100%歌えるというアレですねww
16.100名前が無い程度の能力削除
いろいろと楽しむポイントが盛り沢山な作品でした。
17.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい。
紅葉の時期に読みたかったですね。
18.100名前が無い程度の能力削除
素直に自分も寂しいって言えばいいのに霊夢さん…
19.90名前が無い程度の能力削除
途中から紅葉の出番が喰われちゃってますね…
ま、「あたらもみじの 咎にはありける」かな?

ある程度長いお話ですが、読みやすい文章のおかげですらすらと頭に入ってきました。