Coolier - 新生・東方創想話

はっぴーしえすた

2011/12/07 21:53:03
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12月の初め。
今日の幻想郷はポカポカと小春日和。
楽園の素敵な巫女、博麗霊夢は腕を枕にして炬燵でスヤスヤと寝息をたてていた。
暖かい風が扉の隙間から吹き込み、黒髪を揺らす。
炬燵の上に置いてあった紙がフワリと浮く。
綺麗に重ねてあった紙が炬燵の天板の上に散らばった。
黄色い小さな鉛筆が紙の下に隠れる。
そんな風も昼寝を快適にするだけ。
今日の博麗神社の和室は、絶好の昼寝日和だった。
ただいま、博麗神社和室付近にはお昼寝警報発令中です。

☆☆☆

神社の境内に二人の魔法使いが舞い降りた。
白黒魔法使い魔理沙さんと七色魔法使いアリスさん。
アリスさんは手に大きなバスケットを持っている。
バスケットには薄い紙がのせてあって、何が入っているかここからでは分からない。
「おーい、霊夢ー、いるかー?」
魔理沙さんが声をかけるが、返事はない。
二人は顔を見合わせると、あたりを見回す。
柔らかな日差しに照らされる魔法使いが境内に二人。
しばらくして、何かに気づいたらしい魔理沙さんが縁側の方へ向かった。
引き留めるアリスさんを無視して黒い靴を脱いで勝手に縁側にあがる。
魔理沙さんが少しだけ開いていた襖を開けると、霊夢さんが炬燵でスヤスヤ。
アリスさんも靴を脱いで縁側にあがった。
その顔には小さな子供を見るような微笑み。
アリスさんは足音をたてないように静かに和室の中へ入る。
散らばった和紙をまとめて、大きなバスケットを天板の上に置いた。
その様子を魔理沙さんは炬燵に入って眺めていたが、何かを思いついたように、突然とんがり帽子をひっくり返して、中に手を入れる。
その顔には悪魔の微笑み。
やがて、帽子の中から出てきたのは一本の黒いマジックペン。
さすがイタズラ好きの魔法使いが考えることだ。
キャップを外して、額にかかる髪をよける。
しかし、落書きに移ろうとした瞬間、その手はアリスさんに捕まれてしまった。
さらに不満を漏らそうとするアリスさんの口を左手でふさぐ。
口をパクパクさせて、言い合う二人。
それでも霊夢さんは気づかないでスヤスヤと眠っている。
口喧嘩は何故かアリスさんが真っ赤になって終わった。
アリスさんは眠っている霊夢さんに書き置きを残す。
文字を書く手も、明らかに動揺していた。
書き終わると、靴を履いてさっさと飛んでいってく。
その後を追いかけて魔理沙さんもふわりと飛び上がった。
開けたままになった襖から風が吹き込み、バスケットの上にのせてあった紙が畳の上にふわりと落ちる。
その中からは、クッキーや程良く焼けたパンが顔を覗かせていた。

☆☆☆

次に境内を訪れたのは虹色の門番、美鈴さん。
こんな時間に神社に来て、メイド長に怒られないのだろうか?
美鈴さんは、炬燵で眠っている霊夢さんに気づくと、すぐに縁側にあがった。
霊夢さんを一見して少し微笑むと、何故か神社の奥へ。
しばらくして戻ってきた手には茶色の湯呑みがあった。
炬燵の中に潜り込むと、慣れた手つきで一口。
いろいろな意味でマイペースだと思っていると、美鈴さんと目があった。
さすがは門番さん。
木に紛れている自分が見えているらしい。
湯呑みを軽く上げて、首を傾けてこちらを見る。
顔には花のほころぶような微笑み。
その仕草に少し胸が高鳴った。
でも、残念ながら今は仕事中。
肩にかけてあったカメラを見せて、胸の前で手の平を合わせ会釈をする。
美鈴さんは軽くはにかむと左手を天板の上に置き、その上に顎を乗せた。
右手をのばして霊夢さんの髪を軽くなでる。
霊夢さんは少しくすぐったそうにしたが、気持ちよさそうに夢の世界に浸っていた。
博麗の巫女が見る幸せな夢はなんだろうか?
二人の様子を眺めながら考える。
神社にたくさんの人が来ることだろうか?
それとも、厄介な妖怪が来なくなることだろうか?
たぶんどちらも違う。
人が来るには、この神社までの道のりはあまりに危険すぎる。
この巫女は口で言うほど妖怪を嫌っていない。
人里で話を聞けば、今の巫女は信頼されているし、本当に妖怪が嫌いならば、妖怪が神社に寄りつかないように結界でも張るだろう。
楽園の素敵な巫女が見る幸せな夢。
その夢は意外と普通の夢なのかもしれない。
そんなことを考えていると、また人影。
今度は山の巫女、早苗さんだった。
両手で風呂敷を抱えている。
もし妖怪と遭遇したらどうするつもりだったのだろうか?
炬燵でのんびりしていた美鈴さんが気づき、軽く会釈。
早苗さんが頭を下げて、縁側へ上がろうとすると、美鈴さんは人差し指をたてて、口に近づけた。
その後に霊夢さんをトントンと指さす。
早苗さんはピシッと右手を右目の上にかざすと、静かに和室の上に入っていった。
炬燵の中に入り、持ってきた風呂敷を天板の上に置く。
美鈴さんが覗き込むと、早苗さんはそっと風呂敷をほどいた。
大きな丼が現れて、大きめに切られたジャガイモや人参が顔を覗かせる。
丼で持ってきたところを見ると肉じゃがだろうか?
なぜか苦笑いをしながら美鈴さんと話をする早苗さん。
美鈴さんも軽く笑うと、一瞬天井を見て考えこみ、何かを思い出したように身振り手振りを交えながら話はじめた。
何かを包丁で切るような動作に、かき混ぜるような動作。
胸の前で大きな鍋を持つ真似をすると、考えながら1つ2つと指を折っていく。
早苗さんは2回ほど大きく頷くと大笑いした。
霊夢さんの体に軽く力が入り、少し頭が動く。
それに気づいた早苗さんは慌てて両手で口を覆った。
美鈴さんと軽く目を合わせる。
しばらく待っていると霊夢さんは、また幸せそうに寝息をたてはじめた。
大きくため息をする2人。
そのまま2人は霊夢さんの寝顔や外を眺めていた。
ときどき指をのばして、霊夢さんの頬をつつく。
静かな博麗神社の昼下がり。
夏に聞こえていた蝉の声や、秋に聞こえていた虫の声も今は聞こえない。
代わりに空を眺めると雪虫が飛んでいた。
雪虫。
別名トドノネオオワタムシ。
小さな虫で、飛んでいる時は体全体が白い綿に包まれているように見える。
雪虫が飛ぶと初雪が降る。
そんな言い伝えが幻想郷にはあった。
幻想郷の初冬の風物詩とも言える。
言われてみるとそんな気がしなくもない。
「雪虫かぁー」
空にむけてシャッターを切る。
カメラは数匹の雪虫と冬独特の澄んだ青空を切り取った。
やはり季節は冬。
今日は暖かくとも、確実に厳しい季節は近づいている。

☆☆☆

和室の中には美鈴さんが1人
アリスさんが持ってきたクッキーを食べていた。
緑茶にクッキー。
そもそも来客が勝手に食べていいのだろうか?
早苗さんは書き置きを残して帰っていった。
天板の上には大きなバスケットとこれまた大きな丼。
今夜の霊夢さんの夕食は豪華そうだ。
ここで夕食にするのも悪くないかもしれない。
一人で食べきれる量ではなさそうだし。
両手でクッキーを持ちながら食べている美鈴さんを眺めていると、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
2人か3人くらいの声。
その正体はすぐに分かった。
境内に降りたのは、氷の妖精チルノさんとその保護者の大妖精さん。
それに闇の妖怪のルーミアさんだった。
本当にこの巫女は様々な人や妖怪に好かれている。
それだけ好かれる理由があるのだろう。
その声に気づいたらしい美鈴さんは、炬燵から出てくると、縁側で3人に手招きをした。
3人とも美鈴さんの方へトテトテと寄っていく。
腰を屈めて、3人と目線を合わせた美鈴さんは、まだ夢の世界にいる霊夢さんを指し示した。
口の前で人差し指をたてる。
さらに、霊夢さんが針を投げる動作の真似をした。
3人がコクコクと頷く。
美鈴さんは満足そうに頷くと3人の頭を優しくなでた。
靴を脱いで縁側にあがる。
美鈴さんは奥の方へ入っていくと、今度は小さなお皿に数枚のお煎餅を入れて持ってきた。
4人で並んで縁側に座り、お煎餅を食べる。
門番さんは膝の上にチルノさんをのせていた。
幸せそうにお煎餅を食べるチルノさん。
お煎餅を食べ終わるとルーミアさんが足音を立てないように和室に入っていった。
畳の上に散らばっていた和紙と黄色い鉛筆を拾うと、炬燵に入る。
眠っている霊夢さんの前でルーミアさんは何かを描き始めた。
鼻歌を歌いながら何かを楽しそうに描いている。
妖精の2人は神社の裏に向かった。
2人だけの秘密の遊び場でもあるのだろうか?
美鈴さんは2人が出かけていくのを見送ると、またお茶を持ってきて炬燵に入った。
ルーミアさんは絵を描くことに夢中になっている。
美鈴さんはお茶を飲みながらお皿に残ったお煎餅を食べていた。
なんとなく鉛筆の音と、お煎餅を食べる音が聞こえてくる気がする。
冬で空気が澄んでいるからだろうか?
ときどき妖精達の声も聞こえてくる。
空を見上げてフワフワと飛んでいる雪虫を眺める。
しばらく目で追っていたが、やがて見えなくなった。
軽くため息をついて、木の幹に腰掛けなおす。
ふと和室の中を眺めるとある変化に気づいた。
眠っている霊夢さん、お茶を飲む美鈴さん、絵を描いているルーミアさんは変わらない。
変化は冬の低い日差しが和室の中まで届いていることだった。
普段は日影になっている部屋の中が少し眩しく光って見える。
その中に自分が隠れている大きな木の影がコントラストを作り出していた。
最初は和室の入り口で止まっていた影の先端がだんだん延びていく。
和室の入り口から畳の上。
畳の上から炬燵の上へ。
初冬は日暮れが最も早い。
まだ日没までには時間があるが太陽はどんどん低くなっていく。
木の影が炬燵の端まで延びた頃に妖精達が戻ってきた。
絵を描き終わったらしいルーミアさんは、霊夢さんと一緒に夢の中。
美鈴さんは帰ってきた妖精達を出迎えて、もう一度「シーッ」とする。
その時、霊夢さんが小さなくしゃみをした。
妖精達は一瞬、身を凍らせたが、すぐに寝息が聞こえてきて、胸をなでおろす。
ホッとした妖精たちは小声で話を始める。
その後何かを思いついたように、抜き足差し足で和室の中に入って行った。
さらに和室を通り抜け、寝室へ。
戻ってきた2人は大きな毛布を持っていた。
1人では持ちきれないのか2人で1枚を持っている。
霊夢さんの場所まで毛布を運ぶと、今度は2人でなんとか肩にかけようとする。
しかし、妖精の力ではどうしてもうまく肩に乗らなかった。
それを見た美鈴さんが何かを2人に話しかけると、2人は毛布を美鈴さんに預けて、また寝室に入っていった。
美鈴さんが霊夢さんの肩にそっと毛布をかける。
戻ってきた2人の手にはもう1枚、毛布が握られていた。
美鈴さんはその毛布も受け取ると今度はルーミアさんの肩にそっとかける。
3人はもう一度毛布がかかっていることを確認すると、静かにハイタッチをした。

☆☆☆

空が赤く染まる少し前。
遠くからカラスの声が聞こえてくる。
襖が閉じていて分からないが、おそらく和室では霊夢さんとルーミアさんが寝ているのだろう。
美鈴さんは2人の妖精を連れて帰っていった。
霊夢さんは消えたお煎餅やクッキーに気づくのだろうか?何となくだが、今日のことは気づかないような気がする。
そんな静かな境内に、またしても妖怪が来た。
月の兎、鈴仙さんに、死を操る亡霊の幽々子さんとその従者の妖夢さん。
人里から帰ってきたのだろうか?
手にはたくさんの荷物を持っている。
死を操る亡霊が人里を歩いていて大丈夫なのだろうか?
妖夢さんが、境内を見回すが当然霊夢さんはいない。
待ち切れなくなったのか、幽々子さんが靴を脱いで縁側に上がった。
慌てて2人が後を追いかける。
幽々子さんは躊躇うこともせず、和室の襖を開けた。
その中にあるのは、眠っている霊夢さんとルーミアさん、そして食べ物。
この幽々子さんが感じたのは霊夢さんの気配ではなく食べ物の気配だった。
それにしても、死を操る妖怪が進入しても気づかない巫女。
歴代博麗の巫女でも大物だろう。
幽々子さんがさっそく丼の中身を手づかみで食べようとする。
その気配に気づいた妖夢さんが、あわててその手を押さえた。
幽々子さんがぷーっと頬を膨らませる。
騒ごうとする幽々子さんに妖夢さんは懐から大きな飴を取り出した。
白と青の渦巻き模様をした飴が、棒に刺さっている物。
食べ終わると口の中が真っ青になることで有名なものだ。
妖夢さんはその飴を躊躇うことなく、幽々子さんの口の中に突き刺した。
口の横幅ギリギリの飴を入れられた幽々子さんは、しゃべることができない。
横で見ている鈴仙さんはどう反応すればいいのか困っていた。
飴によってしゃべれない幽々子さんというのは面白いが、突き刺したのは妖夢さん。
しかも妖夢さんは従者だ。
妖夢さんと同じようにある種の従者である鈴仙さんが、反応に困るのは不自然だろうか?いや不自然ではない。
思わず反語を使いたくなるほど鈴仙さんは困惑していた。
顔には苦笑い。
そんなことをまったく気にしていない妖夢さんは持ってきた荷物の1つを置くと、そばに置いてあった紙にさらさらと書き置きをする。
固まっていた鈴仙さんも、妖夢さんによって強制解凍され、同じように荷物の1つを置いて、書き置きをした。
これで、炬燵の周りには、バスケットと丼が1つずつ、それに2つの荷物、さらに4枚の書き置きが残された。
妖夢さんは、鈴仙さんに簡単に頭を下げると、口に飴が入ったままになっている幽々子さんを引き連れて空に飛び上がった。
あのタイプの飴は溶けにくい。
その様子を見守っていった鈴仙さんは、しばらく動けなかった。
おそらく困惑していたのだろう。
鈴仙さんは2人が見えなくなった頃に神社を後にした。

☆☆☆

「ふわぁー」
あたりは真っ赤な夕暮れに染まっている。
博麗霊夢は目を覚ました。
なぜか肩には毛布がかかっている。
炬燵で寝てしまったため、体のあちこちが痛い。
軽く目をこすって、大きくノビをすると、少しずつ頭が働いてくる。
「ん?」
ようやく働き始めた頭は、部屋の異変を感じとった。
まず自分の正面。
なぜかルーミアがいる。
そして天板の上。
大きなバスケットが一つ。
中にはパンやクッキー、底の方には瓶に入ったジャムまであった。
つぎに隣に置いてあった丼をのぞき込む。
風呂敷の上に乗っているそれには、大量の肉じゃがが入っていた。
「これは、今夜じゃ食べきれそうにないわね」
つぶやきながら畳の上に置いてある袋を覗く。
1つ目には缶に入った緑茶があった。
しかも3つも。
もう1つの袋には、袋の中に細長い箱が入っていた。
こんな箱に入れるものは1つしかない。
糊をはがして箱を開くと、予想通り3つのケーキが顔をだした。
栗が上に乗ったモンブラン。
「こんなに食べたら太っちゃうじゃない」
思わず悪態をつく。
モンブランは魅力的だが、3つも食べたら大変なことになってしまう。
「それにしても、お茶とケーキは誰が持ってきたのよ?」
パンが入っていたバスケットや、肉じゃがの入っていた丼には見覚えがあった。
アリスと早苗で間違いない。
しかし緑茶とケーキは誰が持ってきたものだかわからなかった。
「まさか、毒でも盛ってるんじゃないわよね?」
いや、もしかしたらありえるかもしれない。
そう思った瞬間、パシャリとフラッシュが光った。
「博麗の巫女、秋を過ぎても食欲は秋のまま」
「勝手に入ってくるんじゃないわよ」
「これだけ勝手に入られていて、今更なにもないでしょう」
悪びれもなく文が笑う。
実際その通りだが。
「あんたは何も持ってきてないの?」
「ちゃんとお土産は持ってきましたよ」
そう言って文が取り出したのは文々。新聞の最新号だった。
「そろそろ定期購読をしませんか?」
「新聞勧誘はお断りよ。それより、このケーキとお茶、誰が持ってきたか知らない?あと、ルーミアが寝てるんだから、あんまり騒がないでよね」
いつも通りのやりとり。
いくら断っても新聞勧誘をしてくる。
そろそろ天狗避けを作る必要があるかもしれない。
「それなら、そこにある置き書きに書いてあるんじゃないですか?」
文が示した先には、散らばった紙があった。
眠っているルーミアを起こさないようにそっと紙を拾い集める。
予想通り、パンはアリス、肉じゃがは早苗だった。
お茶とケーキは妖夢と鈴仙か。
今度何かお返しを用意しないと。
それにしても。
「霊夢さん、ケーキを一晩で3つも食べるんですか?これからクリスマスにお正月に……」
「ぐっ……」
考えていたことを先に文に指摘された。
「それに肉じゃがにアリスさん特製のジャムに」
「わかってるわよ!」
文がニヤニヤしながら囁く。
ただでさえ冬はいろいろ身につきやすいのに。
「あー、もうわかったわよ!ケーキは3人で1つずつね。あんたも巻き添えよ」
どうせなら文も巻き添えだ。
ミニスカートなんか身につけられないほど太ってしまえ。
「ふふふ。ありがとうございます。たくさんもらえる理由は、やっぱりその優しさですかね?」
「誰が妖怪なんかに。あんたへの優しさはこれが最後よ」
ちょっと気を許すと、すぐ調子にのるんだから。
「あら、今のは本心ですよ?」
文がいつもの締まりのない表情をして言う。
そんな顔で言っても、全く説得力がない。
「あぁ、はいはい、どうもありがと」
適当に返事をしておけばいいだろう。
さて、今日の夕飯はどうしようか?
パンに肉じゃがにケーキ。
和洋折衷はいいとして、なにか汁物がほしい。
「文、今夜の汁物は何がいい?」
「うーん、どうせなら中華スープとかどうでしょうか?」
和、洋、と来て中。
たしかに悪くないかもしれない。
しかし、中華スープなんか作れるだろうかと考えていると、ルーミアが小さな呻き声をあげながら目をさました。
なぜか顔が真っ黒になっている。
「うーん……、れ、れいむぅ、おはよ」
ゴシゴシと目を擦る。
よくよく見れば手も真っ黒だった。
原因は天板の上にある紙だろう。
なぜか紙にはチルノと大妖精、美鈴の姿があった。
しかもチルノは煎餅を食べている。
「あーぁあーぁ、もう手が真っ黒だがら、お風呂入って来ちゃいなさい。服の袖も真っ黒だし」
白い長袖のシャツも真っ黒。
真面目に洗濯しないと落ちないだろう。
明日のことを考えるとため息がでる。
すっかり汚れてしまった服を脱がせて、寝ぼけているルーミアを風呂場まで連れて行った。
急いでお風呂を炊き、予備の巫女服を着替えの代わりにする。
ルーミアを風呂に放り込んで戻ってくると、文が炬燵の中に潜っていた。
「明日の洗濯、代わってくれない?」
もちろん冗談。
「嫌ですよ。明日は記事を書かなくてはいけないので」
「今日、取材なんかしてたの?」
「そうですよ。今は取材帰りです」
取材帰りに人の家で夕食なんて、相変わらずいい度胸をしている。
「今日はどこに迷惑をかけた来たのよ?」
「別に、ちょっと面白い人間を取材してきただけですよ」
「面白い人間ねぇ」
文なら誰に取材をしても面白おかしくするだろう。
なんせ捏造新聞記者なんだから。
「誰を取材してきたの?」
とりあえず気にはなる。
もし、隠れてココを覗き込みなどしてたら、即刻追い出す。
「妖怪に優しくて、しかも妖怪に好かれている不思議な人間ですよ」
文は珍しく真面目そうな顔をして言った。
妖怪に優しい人間なんて誰だろう?
自分だったら間違いなく針の雨を降らせる。
とりあえず自分が取材されたわけではないので、よかったとしよう。
そんなことよりも、夕食の準備とルーミアを着替えを手伝わなくては。
霊夢はスープのためのお湯を火にかけ、巫女服を持って風呂場に向かった。
文視点での霊夢のお話。
急に寒くなってきたので、ちょっと暖まるお話を。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
琴森ありす
簡易評価

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コメント



0.1970簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
ホッと一息付けるような穏やかなお話でした
3.100名前が無い程度の能力削除
自覚無しの優しさって素晴らしいやん?
ほのぼのしい話で和めました
9.90名前が無い程度の能力削除
最後の下から5~3行がトドメだった。いいわぁこれ。
13.100名前が無い程度の能力削除
無自覚霊夢さん。
むしろ無自覚だからこそ好かれるのかもしれませんな。
妹みたいな扱いになってるルーミアもかわいいなぁ
15.70名前が無い程度の能力削除
話は面白かったけど、
・地の文頭は一文字空ける
・感嘆符等記号の後は一文字空ける
・所々句読点が抜けている
と、細かいところまでしっかりられていれば読みやすかったです。

>霊夢さんは消えたお煎餅やクッキーに気づくのだろうか?何となくだが~…
→霊夢さんは消えたお煎餅やクッキーに気づくのだろうか? 何となくだが~…
16.100名前が無い程度の能力削除
肉じゃがを勝手に手掴みで食べようとし、あまつさえペロペロキャンディで黙らせられる幽々子さまがなんとも言えない……
18.100名前が無い程度の能力削除
みんな可愛いから可愛いのです
23.100名前が正体不明である程度の能力削除
ルーミア可愛い可愛い可愛い可愛いいいいいいい!!!!
26.100名前が無い程度の能力削除
眠れる霊夢の周りに漂うまったり感がすごく良い
そこに目をつけた文は流石です
34.90名前が無い程度の能力削除
しかし霊夢さん、寝すぎじゃね?w
35.100名前が無い程度の能力削除
美鈴と霊夢って組み合わせ的には珍しいけどなんか和むなぁ。まったりさせていただきました
38.90名前が無い程度の能力削除
霊夢も疲れてたんだね…
こたつの魔力の前では仕方ない。
49.100名前が無い程度の能力削除
ちょっと息抜きになるような暖かい作品でした
51.80話が読める程度の能力削除
あったかくていいですね。