Coolier - 新生・東方創想話

Cynical Monsters

2011/11/16 00:58:42
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注意


前々々作 【Contrainess Jealousy】
前々作  【Coward Insensitive】
前作   【Conceal Incomprehensible】

さとり×パルスィの様な何か
逆にさとパル分の少なさに注意
性格崩壊 口調崩壊 過去捏造 設定捏造 など注意


それではブラウザバックor スクロールバーダウン

























少し昔の話をしよう

















静寂が辺りを包んでいる
まるでそこに居る者全てを縛ろうとするかのような絶対的な静寂が辺りを包んでいる
それはまるで蛇のように辺りをのたくり回っているのだ、少しでもその空気を乱す物を見つけた瞬間飲み込んでしまおうと涎を垂らしながら虎視眈々と私達を狙っているのだ。
そんな馬鹿な事を考えてしまうぐらいその空間は静寂と、一種の緊張で満ちてた。
その中に居るのはただ二人、さとりと私のみだ それ以外は一人一匹一体とて存在しない
私達は机を挟んで互いに向かい合わせて座っている。

「……………………」

お互いに一言も交わさない
いや、交わせないのだ

先に動いたものが負ける

先に動けば隙をとられる、それは即ち負けと言う事に直結する
それを分かっているからお互いに顔を見合わせて黙っている、私にはさとりの第三の目やさとりの整った顔が見える、さとりには私の濁った緑眼やらなんやらが見える、一部たりとも余さずに丸見えだ。

ふとさとりの方を見てみると僅かの頬が紅潮している、恐らくは緊張からくる興奮だろう。
思わず笑みが零れる、この分ならば勝負がつくのは案外近いかもしれない。
じんわりと汗が額をつぅっと滑り、絨毯の上に落ちてゆく、中々貴重そうな絨毯だが勿体ない事にさとりはペットに好き勝手やらせているせいで買った時の面影はどこへやら、今ではあちこちに解れが見える。

ごくり

思わず唾をのみこむ
どちらかが動かねば負ける つまりそれはどちらかが動けばもう片方も動くという事であり、まだそれはどちらも動かなければ自体は進展せずそのまま膠着し続けるという事になる。
慣性の法則と言うのをご存じだろうか、止まった物は止まったままだし動いたものは動き続けるというあれだ、あれは物体のみならずこんな状況にも働くと私は思っている。

どちらかが動けば事態は瞬く間に進展する、あっという間に勝負がつく。動いたものが負けるという結末で。
それはいかに心を読めるさとりと言えど変わらないし変えられない事だ。

しかし、このまま動かないと事態は一向に進展しない、そして私は早くこれを終わらせてしまいたい、寧ろそっちの方が切実な問題だ。
しかしさとりにわざわざ勝ちを持っていかれるのも癪と言った物で、つまり、突き詰めてしまうと私は『勝ちたい』、のではなく『負けたくない』のだ、勝ちなぞどうでも良いという訳では無いがさとりには負けたくないのである。
我ながら情けなくなるようなプライドだとは思うが態々勝てる勝負を潰したくはない、そう思うのは仕方がないだろう。

◆◇ ◇◆

そんな事を目の前の緑眼を持った妖怪は考えていた
思わず溜息を吐きそうになる、結局もって彼女が私の事について何も考えていないことに。
彼女が私の事について考えることは無い、今だって彼女が焦点として考えている事は勝敗だのプライドだの勝負だの、そういった事だけだ。

昔から、私と彼女が初めて会った時からそうだったと思う
あの時もあの時もいつの時も、彼女が私を見ることは無い
なぜかは分からない、だが分からない 気になるけれども分からない
知りたいけど、知りたいけれどそれを知る事は敵わない

―――――まあ 頑張んなさいな

その言葉を言われたのはいつだったか
昔々、私と彼女が出会って、ほんの少しの期間共に暮らして、その最後に私が更に奥に向かう時に言われた時だ
その後長い期間お互い別れて暮らしていた、あんまりにも長かったから彼女は私を忘れてしまったのかもしれない。
だけど、だけれども私は彼女を覚えている、忘れた事なんて一日たりとも無いのだ。

思い出せとは言わない、そんなリスキーな行動を取れるだけの勇気を私は生憎持ち合わせていない。
だけど、だけれども私は願うのだ
この関係がこのまま続いてくれますようにと

◆◆ ◆◆

さとりはただ黙って私の方を見ている、じとぉっとした瞳で見られるという事は思わずたじろいでしまうよう何かを感じる、目を背けたくなるというか何と言うか。
薄い紫の様な、濃いピンクの様な色の瞳の奥でこいつが何を考えているのか私には分からない、さとりは私じゃないし私はさとりでは無いから当然の事だが。
私はこいつの考えを読んでみたい、こいつが何を考えているのか考えてみたいと思う事がある。

昔からふざけている時とか、考えている時とか、そういった時のこいつは読みやすい、だけどそうでない時のこいつは読み辛い、何を考えているのかさっぱり判別できない。
私に見えるのは表層のみだ、こいつのほんの薄く表に出ている所しか読み取ることができない、それ以下は固くガードに覆われているか、全てが薄ぼんやりとしているか、ともすればすべての可能性を秘めた闇が広がっているのみなのだ。

はっきりと言ってしまおう、私はさとりの事を、この目の前の覚妖怪の事を恐れている。
こいつと私の間には浅はかならぬ何かがある、宿命の様な何かがある
分からないのだ、何が私とこいつをそこまで引きあわせようとしているのかが

―――――頭が、痛むんですか?

それは遠い昔、私はこいつに頭を撫でられたことがある
さとりは覚えていないようだけれど 私は覚えているのだ
あの時は頭が痛かった 痛くて痛くて堪らなかった
それをこいつがどうやったかは知らないが治してしまったのだ、あの終わらないと思った痛みをたった一瞬で
これが恐れずにいられるのだろうか

あれからこいつと私はまた会う筈が無かった、あいつはあいつのテリトリーがあって私は私のテリトリーがあった筈だ、そこから出ることが無ければ私達は会う筈が無かった。
それがどういった了見か私達は今ここで向かい合っている

これは何の冗談なのだろうか

◆◇ ◇◆

ともかく、目の前のこの問題を処理しなくては膠着はこのままだ
何とかしなくてはいけない―――――――











―――――――――目の前のこの大福を
皿の上に大福、これは豆大福である、それが一つ
たった一つだ、二つでもないしましてや三つでもない
これが0個ならどれだけよかったのだろうか、どれだけ世界が平和に片付くのだろうか
だが世界が私達に与えたのは無情にもたった一つの大福である。

分ければいいではないか、確かにそれが一番確実で確執の残らない対応だろう、私もできる事ならばそうしたい、さとりもそうだろう。
だがここで問題が、見逃す事にできない問題が一つ発生する、さとりと私の買ってきた大福は奇数個では無く偶数個なのである、そしてさとりは既に自分の分を食してしまっているのである。
これが如何なることかは分かるだろう、即ち私が一つ分損をしているという事だ、そしてさとりが一つ分得をしているという事でもある。
細かい奴だと罵られるかもしれない、いけずだと蔑まれるかもしれない、それでもいい―――何?行かず後家だと?ふざけるでない、私は元人妻だ。
ともかく、私は損をしたと言う事では無くどさくさに紛れて私の分の大福を取ったさとりを責めているのだ、一か月に一度きりしか発売されないという伝説の豆大福『天狼』を。


この雑誌を手に取っている者で『天狼』を知らない者はいないであろう
一か月に、しかも不定期にしか発売されないこの大福に多くの行列が群がる事も知っている事だろう、不定期にも拘らずなぜか行列がそこにある事は地底七不思議の一つに数えられている。
誇り高き天狼すらも垂涎する程の品と言うのがその由来と言われるこの大福はまさに名前負けをしない出来である。
店主は不明である、地上で4000年の鍛錬を積んだ凄腕の職人とも言われるしどこかの家の奥さんとも言われるし幼女と言う説もある。
兎も角この大福について知りたいならば食え、それしか言う事は出来ない。
しかしそれには大きな困難に直面しなければならない、その不定期さと欲する者の多さ、そして絶対数の少なさ。
それを乗り越えた者のみがこれを手にすることができるのである。
立てよ勇者! 嗅ぎつけよ勇者! 並べよ勇者! それがこの地底における3つの訓示である事は忘れない様に。
――――――――地底厳選和菓子Warカー 第5期より抜粋


辛口雑誌と名高いあの雑誌にここまで高評価を受ける品はやはり、素晴らしい出来だった。
もちもちと柔らかく伸びる生地と合わさる様な粒餡、餡はどのような技術を使ったかは分からないが蕩ける様な舌触りで実際に流体のような性質を持っている。
まるで果実の様な大福をもう一つ もう一つと食べていった時点で気が付いたのである、残り二つの筈なのに一つしかないと。
これは由々しき事態である、直ちに犯人を糾弾せんとさとりを問い詰めた所さとりはこうぬかしおった「え?私食べてませんよ?」と。
一体いかなることかは分からないが私は犯人を追及せんと身構えた、そして今に至る。

―――む?ここまで緊張状態になる原因が見当たらない
其処でさとりが大きく息を吐いた

「パルスィ、あなた疲れてるのよ…」
「煩いわね、なんか緊張感のある空気がしたのよ」

どうやら私はなぜか知らんが一人相撲を取らされていたらしい、これは如何なる事なのか。
しかし恥ずかしい事をしたものだ、思わず耳の先が紅くなる。

「こんなことが出来る者は一人しか知りません…」
「すると…つまり…」
「この『室内』」にッ『古明地こいし』がッ!存在するぅーッ!」
「なにぃぃぃぃーっ!?」

ドギャァァァァァァン

「いえ、そこまで大げさには言っていないのですが」
「何だか場が盛り上がって行く雰囲気がしたから」
「そうですね、例えて言うのであれば『ドドドドドドドドドド』と言ったところでしょうか」
「あんたが何を言っているかは分からないけどそう言う事でしょうね」

こいしが確かに此処に居るのは確かだ、だがいつから紛れ込んでいたのかは分からない、何せこいしは無意識に生きているのでいつから入って来たかは分からないのだ。
そこで私は今日一日を振り返ってみる事にした、もしかするとこいしがいつから来てどこに居たか分かるかもしれない。



◆◇◆



私は今日の朝から家でこいしと一緒にぼーっとしていた
その日は朝からすべての物事にやる気が起きなかったので橋守の仕事をさぼって家でごろごろしていたのだ、どうせ誰も来ないしばれないだろうと思っていたし今までもそういった事はさんざやっていた。
だがその日は勝手が違ったようで、どうにも私の厄日だったらしい それを言ってしまうと毎日が厄日だが。
初めにそれに気が付いたのは畳に顔を擦り付けて「うーあー」とか言っていた時だ、多分他の人が見たらその光景はさとりを超える駄目妖怪にしか見えなかったに違いない。

私のパルスィイヤーは誰かが近づいてくるような足音を感じたのである、その距離おおよそ30m。
一瞬勇儀かと思って身構えたが体重が軽いせいか踏込にそんなに力が入ってないし一歩一歩の威力が桁違いだ、弱いと言う意味で。
はて誰だろう、一瞬でもそう考えてしまった私の脳みそは恐らく腐りきっていたに違いない、この橋に来る言わば『常連』から可能性を一つずつ潰していけばおのずと一人のみに行き着くというのに。

対象との距離が残り5mになってもそいつは走るスピードを落とさなかった
脳みそが沸いていた私はそこで初めて何が起こってしまうか気付いた訳である、本当に遅いにも程がある。


「そぉいやぁ!」

ドバゴォン


凄まじい音と共に私の家の壁を突き破りながら登場した古明地さとりはその場で一回転、二回転、三回…あ、壁にぶつかった
さとりはそのまますっくと立ち上がり私とこいしに向かって実に爽やかな笑顔を向けながらこうぬかしたのである。

「パルスィ、こいし、耳寄りな情報が在ります」








「それで、なぜ私は吊るされているのでしょうか」
「自分の胸に聞いてみなさい」
「訳が分からないよ 私はただ単に会いに来ただけだというのに」
「本当にそれだけしか覚えていないならあんたは此処で死んだ方が良いわね、地底の平和のために」
「ごめんなさいふざけ過ぎました許してください」
「絶対に許さない、絶対にだ」

取り敢えずこのままさとりを軒先に吊るしておくのも景観が悪いので放してやることにする、さとりの吊るされている縄に鋏を持って近づくとさとりは「その光景って凄い怖いですよね」とか言ってきたから黙って上の縄だけ切ってあげた、さとりは落ちた。

「酷いですね」
「酷いのはどちら様よ、とりあえずあんたが家の壁を破壊してまで教えたかった情報って何なのよ」
「ああそうです、パルスィ『天狼』が出る様ですよ」
「………いつ?」
「うーんと……後5分後」
「馬鹿野郎速く行くわよ」
「私には縄が付いているのですが」
「走りながら切ってやるから走りな」
「ええー」
「良いから走れ!●●●●止め!下着上げ!ハリー!ハリーアップ!」







そこから先は面白いようにとんとん拍子で事は進んだ。
なにせ私とさとりとこいしは地底で最も嫌われ、敬遠され、恐れられる存在なのである
そんなのが一堂に会してしまったらどうなるか、どうなってしまうのか。
皆逃げ出した、少しずつ、静かに、だが着実に並んでいる数は減っていき、やがて私達しか居なくなってしまった。

「流石に露骨ですね」

そういったさとりの目は悲しんでいるように見えず、寧ろ面白がっているように見えた
こいつにとってすればこの程度の事は見ていて面白い事にカテゴライズされてしまうのであろう、全くもって嫌な性格をしている。
まあ、そう思う私も私でどこか遠目に見ていた節があるのだが。

ともかく私とさとりは嫌われ者なので大福を残さず狩って…ならぬ買っておいた。


◆◇◆


「…駄目ね、いくら思い返してもこいしは見つけられないわ」
「流石は無意識、と言ったところでしょうか」

まあ、こいしは結局見つけられないが犯人がさとりでは無い事は分かったしいいか、さとりを犯人呼ばわりしたことは忘れよう。
大人しく大福を食べようとした私を阻んだのはその時は考えもしなかった客人だった、
その客人達は、考えもしなかった所から乱入してきた。

「WRYYYYYY無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」
「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらぁ!」

轟音と共に地霊殿の壁を巨大な碇とこれまた巨大な拳でぶち破りながら登場したのは最近ここに落とされてきた妖怪、村紗水蜜と雲居一輪だった。

◆◆ ◆◆

ああ、やっぱり覚えていない
パルさんは知っている 知っているけど覚えていない

記憶は無意識と云う匣の中に閉じ込められている、閉じ込めたのは他ならぬパルさんだ
問題はパルさんが何故、何の為にしまいこんでしまったのかだ それを開ける方法も
パルさんは内鍵をしてしまった 二度とそれが表に出ない様に
内鍵をして、二度と開けられない様に閉じ込めた記憶 それを開かない限りは何も始まらないし、何も終わらない 悲劇的な結末以外ではこの茶番は終わらない

やらせるものか 私の目の前で悲劇など
他人の悲劇は面白い事この上ない それは蜜のように甘美なショウだ
だが、身内は別だ、あれは苦々しい事この上ない 不味いったらありゃしない
それもお姉ちゃんの悲劇など見たくはない あれはあれで私の大事なお姉ちゃんなのだ

そんな正義的な事を考えながら私は心のどこかで面白がっているのかもしれない
なにせ私の行動の理由などは私にもわかりっこないのだ
ともかく私の中の何かが“それ”を止めろと言っているのだ、止めない訳が無いだろう
その為には鍵が必要だ
開かずの金庫を開ける鍵が必要だ 5桁の量子暗号が必要だ

私は鍵が一つだとは思っていない
もう一つ、鍵はある それもパルさんすらも開けられない扉を開けてしまう黄金の鍵が

私は頬が吊り上るのを感じた
面白い 実に面白い
黄金の鍵は 恐らく―――――――――









□■□









その二人と馬鹿でかい船を地底において最初に見つけたのは意外な事にキスメだった。
その時私はいつもの様に暇を満喫していたが突然キスメが弾幕と共に降って来たため中断せざるを得なくなり当時の私は大変不機嫌だったことはよくよく覚えている。
何を考えていたのかはよく覚えていないが大変いい事を考えついていたのだがその考えはその衝撃で失われてしまって、代わりに行く先のしれぬ怒りのみが残った、どうせキスメにぶちまけた所で余計に怒りが溜まるだけだ、そんな非効率的で非合理的な事を私はしない。

「いやはや いやはや 面白い物が落ちて来たものだよ」
「あんたはその為にわざわざ私の貴重な休暇を邪魔しに来たの?」
「職務を全うせよ橋姫、異変には真っ先に駆けつけるがよい、侵入者は率先して立ち向かうが良い」
「そう言うのはあんたらがやってしまう事じゃないの」
「無論厄介そうなのは橋姫の仕事だ」
「あーもーどうしてあんたらはそう使えないのかね」
「他者の為にならないように努力しているからさ、自分は損をしているのに他人ばかり得をするのは癪だろう?」
「まあね、でもあんたら普段から迷惑しかかけてないじゃないの」
「それが地底の妖怪さ、諦めろとしか言えないね」
「…まあ いいか」

どうせ最終的には私の管轄となるのだ、まずここに落ちて来るという事は橋などが甚大な被害を追うだろう、それから私はそれを止めて、中に居る奴らに色々と尋問して、色々と厄介な書類を書いて…ああもう面倒くさい事ありゃしない、今から頭が痛くなりそうだ。
まあ、報告に遅いもへったくれも無いだろう、報告してくれただけ感謝と言う事か。

「でも少しくらい褒美ってもんが欲しい所ね」
「職務全てが全て褒賞の為にあるもんじゃないさ、自己犠牲の精神ってやつだよ」
「地底に最も当てはまらなそうな言葉ね、それ」

急いで詰所から羽織やらなんやらを取って来る、羽織は普段着ている色の淡いのではなく橋守だと一目でわかる様などぎつい配色とこれまた過激な文様の付いたものだ。
橋守にしても何にしても相手に威圧感を与える事は非常に重要となる、例えば如何にも御しやすそうな奴他と思われてしまえば幾ら脅したところで調子に乗られるだろう、もしも私が極道の組長であったとしてもだ。
第一印象と言うのは非常に重要なインパクトを与える、ここで連中に恐怖やら圧迫感を与えてしまえばそれで万々歳だ、後はとんとん拍子に尋問でも何でも進んでくれる寸法だ。

「だけどねぇ、今回はそうとんとん拍子で行かない気がするわ」
「うん?どうしてだいねこの道うん十年の熟練橋姫さん」
「あんたはどうしてそう人をムカッとさせるようなことを言うのかね、訳が分からないわ」
「ははは、それが私だという事はとっくのとうに分かりきった事だろうに」
「…もう話すの疲れた」

とにかく、今回は一筋縄ではいかなそうと私は考えている、というよりも私の勘がそう言っているのだ。
地上と地底間に封がかけられて既に十数年ともなる、そんな中入って来たと言う事は相当な爆弾要素を満載しているというのが落ちて来たものについて私が話を聞いて抱いた見解だ。
そもそも『降りて来た』かどうかすらも怪しい、『叩き落された』が妥当な線のように感じる、何をしたかは知らないが叩き落されたという事は地上で何かやばい事、それもとんでもなくやばい事をやらかした奴だ、おまけに叩き落されたという事は本人の意思とは無関係だ、なので地上への未練たらたらなのだろう、これはあくまで勘だが、更にさらっとキスメが言った事だが『でかい船』と言うのも気になる、それも敵の戦力だとしたならばもしかすると地底に害をなす、最悪の場合侵略しに来たのかもしれない、鬼がうようよと居る此処を侵略してどんな利点があるのか私にはさっぱり理解できないがそれでも用心に越したことは無い。

なので羽織と一緒に一通りの武装を携帯してゆくことにした 苦無に糸、そして短剣だ。

「ほう、橋姫ほどの実力者でもそういった物を持っているのかい」
「馬鹿言うんじゃないの、私の能力が聞かない相手だっているし、それにこういうのは使い慣れているからね、人間だった頃に」
「あら?その頃の記憶は覚えてないんじゃなかったっけ」
「体が覚えているのよ」

ちぃんと短剣を抜くと耳に良いが辺りに響いた、キスメが身震いする
どうやらそういった物に敏感なキスメは気付いたらしいがこれはただの短剣では無い
これは私の血で直々に研いだものだから籠る怨念とか威力とかが他の短剣とは桁違いだ、迂闊に切られようものなら間違いなく致命傷を負うだろう。
キスメが気味悪い物を見るような目で私に聞いてきた。

「…これで何人切ってきたのか是非とも聞きたいところだね」
「一人よ」
「うん?」

そう、他の武器は使った事はあるが強化した後のこの短剣で何かを切った事はただ一度しかない、それほどまでにこの短剣を使う機会は限られている。

「使われた奴は死んだのかい」
「いえ?まだ生きてるわよ」
「それじゃあその短剣は見かけ倒しかい」
「そんな事も無いわよ」
「訳が分からんね」
「でしょうね」

準備を終えた私とキスメは今まさに落下している最中であろうそれへと向かって飛び出した。
縦穴に響く風はいつもよりも強く飄々と鳴いていた。


◆◇◆


「だ~か~ら!ここから出してください!」
「無理っつってんだろうがこの磯臭い女が!」
「確かに私は海女ですよ!」
「そういった意味じゃねぇって!」
「とにかく私は此処から出なくちゃならないんです!ついでにこの束縛状態を何とかしてください!」

やはり私の勘は当たっていた、その斜め上の方向でだが
一筋縄でいかないどころの話では無い、話が通じない所からまず致命的だ
私がこの世の中で一番嫌いな奴は聞き訳が無い奴と人の話を聞かない奴とごねれば言う事を聞くと思っている奴全員同着一位だ。
思わず苦無で首を掻っ切りたくなるがここは我慢だ、相手の素性すらつかめてないのに攻撃なぞ愚かすぎる行為だ。

そうこうしているうちに偵察に行かせていたキスメが戻ってきた、そんな事はやらないとてっきり思っていたのだが本人曰く「だってこの船面白そうだし、偵察の名を借りて見学できるなら万々歳」と言っている辺り流石はキスメである。

「で?なにか分かった?」
「パルスィ、この船とんでもないよ」
「ちょっと一輪、何でこんな小さい子を入れちゃってるのさ」
「だってこの子『面白そうだから中見させて』とかいうし…」

何かキスメの口調がおかしいと思ったらそうか、今のこいつは『初心者向け』モードか
なんの厄介さも感じさせないあどけない幼女を装っているならばどこへだって侵入可能、おまけにやばい事が見つかったとしても少し涙見せれば即許される、こういった地底慣れしていない、要するに騙しやすい奴には便利な容姿だ。
もしもこいつの正体があんな腹黒だと分かっているのならば絶対に入れたりはしないだろう、間違いなく。
キスメは相変わらず『あどけない様に見える』笑顔を振りまきながらふよふよと私の耳元に近づいてぼそっと一言だけ口にした。

(報告は後だ、とりあえずこいつらは一旦泳がせて現在位置は分かるようにしておいた方が良いだろう)

此奴の言う事を聞くのは癪だがやはりこう言った事にかけてはそう言ったプライドだとか何だかくだらない物は無視しなくてはならない。
私はキスメの言う通りひとまずそいつらを船と共に橋を通す事にした、無論偵察用の分身を憑けて。
磯臭い海女と優柔不断そうな尼は、というよりも海女の方は散々渋っていたが地上に戻れない事と下手をすれば旧都の方にも行けないことを知ると大人しく従った








「んで?何が分かったの?」

二人が去ってすぐ、私はキスメに問いかけた
事が事なら私はさとりやらなんやらに報告しなくてはならない、それも迅速に
キスメはキスメで面白いような厄介な物を見るような目で辺りを見回している、珍しい表情もあるものだ。

「簡単に言ってしまうと、あれにゃー僧侶の力が、それもとんでもなく強力な僧侶の力がかかってるね」
「ほう!珍しい事」

地底において僧侶とかそういった者の影響を受けている者は少ない、寧ろそう言った輩を敬遠する者が殆どである、当然ながら神や仏なぞあてにできるかと思ってるのだ。
その中にもかつてはその残光を追い求めていた者は居る、だがそう言う奴らはそれに裏切られた、もしくはそれを裏切ったのだ。
そうでなければ地底なぞ光の届かない所には居ないだろう。
そんな環境に慣れていたので仏とかそういったものに今も密接な関係を持ち続けている者は物珍しかった。

「それで、気になる奴が一人いるんだがね」
「気になる奴?」
「うんにゃ、最近地上から叩き落された上に封印食らってるとか言う人間の事よ」
「なにそれ私知らない」
「橋姫さんはもうちぃーっとここ以外の所に行くとか他人とコミュニケーションとった方が良いと思うんだよね」
「だって私が必要な所と言えばここと旧都の市場と地霊殿だからね、その他の所なんて知ったこっちゃないわ」
「あんたも大概だね」
「コミュニケーション取ってないのはあんたも同じ事でしょうよ」
「私は他人の話を盗み聞きして情報を取ってるから」
「…そういうのってありなの?」
「案外そういったひそひそ話の方が真実が含まれていたりするものだよ、表に出せない事実ってやつさね」

ともかく
キスメは仕切り直しをするように声を少しだけ大きくした

「そいつはどうやら尼さん、それも『有名な僧の親族』とか言うじゃないか」

ようやく私にも全体像が見えてきた
それまで見えてこなかった全貌が立った一言でまとまって行く様と言うのは何だか心地よいものだ。

「あいつら、その関係ね」
「ま、十中八九恐らくは封印されている奴の仲間だろう」
「そんでそいつの封印と一緒に叩き落されてきたって訳ね、可愛そうに」

口ではそう言っているが私らはさっきの奴らを少したりとも可愛そうなどとは思っていない。
だって仲間って事は自分が信じてた奴って事だし、叩き落されたもなにもそいつの仲間だったからだし、そんなのは同情の余地無しなのだ。
そんな話を酒場で酔ったついでにでも言ってみるがいい、恐らく運が良ければ馬鹿にされるだけで済むが悪ければ塵箱の中で体中ぐちゃぐちゃになって死んでるだろう。
この地底に居る奴らの中には自分は何もやってないのに巻き込まれたとか偶々悪い事が重なったとかそういった奴らも居る、そういった馬鹿話は奴らを大いに刺激するだろう事は間違えようは無い。

それにしても、だ

「面倒くさそうね、今度から話しかけない様にしよう」
「それがいいだろう、私もああいった奴らは苦手でね」

何かを信じて、何かを頼って地底に落ちてくる者にとって地底は限りなく適応しづらい環境だ、本来ならばそういった物は全て地上側の入り口で捨ててしまわなくてはならないのに捨てきれなかった愚か者なのだ。
「この門を潜るならば一切の希望を捨てよ」まさにその通り、図星な物言いではないか。

思わずさっき巨大な船が消えて行って場所を覗き込んでしまう。
あいつらは今旧都近くまで来ているだろう、これからどこに住むか、どう過ごすか、どんな目に合うのか、気になるはなるが別に見ようとは思わない。
ただ一つだけ私が確かに願っている事がある。
「どうかあいつらが私の日常に入って来ませんように」これに尽きた。


◆◇◆


まあ、見事に叶わなかったわけだが
溜息を吐きながら目の前の惨状をもう一度よくよく見てみる事にする
壁はぶち破られ辺りに破片が散乱している、窓ガラスは衝撃やら飛んで行った破片やらなんやらで全部砕け散りキラキラと輝いている、そんな中でさとりと二人組の内の片一方が口論している、間違いようも無くあの時落ちてきた奴らだ。

溜息がどんどん漏れ出してゆく
どうしてこうも厄介な奴らは私の周りに集まるのか
やっぱり呪われているのではなかろうか

「『私達を地上に出してくださいって!』ですか…残念ながらできませんね、私の権限だけではあの結界を開ける事はできません」

口論と言っても乱暴そうな方が何か口を開くたびにさとりが先回りして回答するといった感じだが。
さとりはよく分かっているのだ、こういった口論で優位に立つにはどういう演出をしたらいいか。
その中で一番重要な事は相手に声を出させないことに尽きるだろう、口論なんてものは所詮は口喧嘩、声が大きく沢山喋った者が勝利するようにできている、そう言う時にさとりの能力はフル活用されるという仕組みだ、口論に強いさとりが妬ましい。
すでに乱暴そうな方は気おされている感じだ、もう勝負はついたも同然と言っても良いだろう。

「でっ…」
「『でも地上の許可と合わせれば通行できるんでしょう』ですか、それも無理ですね、むこうとこっちは連絡不通ですよ」

ああ、恐らく此奴は事前にある程度情報収集してきたのだろう、行動に寄らず意外と慎重で賢明な判断をする、まあ恐らくはもう一方の頭巾をかぶっている奴の入れ知恵だろうが。
ともかく「地上と地底の責任者両者の許可があれば行き来が可能」と言う事をどこかで聞いたに違いない。
だがその決まりは皮肉なことにかつて地上の賢者がそう言う奴らを引っ掛ける為に作った決まりなのだ。
かつて地上と地底の間に封を施した時に地底と地上間を自由に行き来することを望んだ者はかなりの数存在した、妖怪の賢者は封印を施すとそれらが必ずよからぬことを引き起こす事を予測、結界を予定よりもさらに強化することを決意した。
だがこれには時間がかかり過ぎるという欠点があった、その間に術者を狙われれば幾ら強力な妖怪と言えどただでは済まないだろう。
そこで賢者はその間の時間稼ぎのためにこの決まりを作成した、例外があるならば反対派も大人しくしているし邪魔が入らなければ幾ら時間をかけて強力な結界を作成しても問題ないからだ。

結果としてこの策は見事に嵌り反対派が仕掛けに気が付いた時にはすでに封印が終了してしまった時だった。
仕掛けと言うのは簡単な話で『許可があれば通行可能だ、だが連絡が取れないので許可が取れない、従って通行は不可能である』まあこんな話である。
当時は暴動やら暴動に近い何かが起こったが通行は絶対に不可能であると分かると次第に下火になっていき数日経った後ではそんな事で暴動が起こるよりも酒を飲んで暴れている奴の方が数十倍は多いあたり流石は地底と言ったところか、そんな事に時間と体力を費やしているよりもいかに地底生活を楽しむ方へと完全にシフトしている辺りはよく分かっていると思う。
今まで散々暴れていた鬼が一斉に地霊殿に突入しているのを見た時には流石に肝が冷えたが『祝・地底独立記念』とか書かれた横断幕をいっぱいに広げて宴会を開催しては今までさんざ攻めたてていたさとりと肩を組んで吞んでいる時には呆れるやら感心するやら納得するやらしたものだ。


事情を理解した二人は落胆したような表情をしていた
まあ流石にこいつらに鬼の様な潔さを求める気はないがそれを差し引いてもなんか陰気な物を感じる。
生来の者なのだろうか、どことなく湿ったような雰囲気だ。

「うー…折角出れると思ったのに」
「諦めなさい、例えて言うのであれば初めて会った敵に『かりう』を喰らった時ぐらい諦めなさい」

かりうが如何なるものかはとんと理解できないがとりあえず無駄な希望を捨てる事から楽しい地底セカンドライフは始まる、何もかも捨てて初めて楽になれるというものだ。
どうせ上に戻れないなら戻れないで諦めて明日からどう過ごすのか考えた方が良いに決まっている。

「……分かったわ」

ははあ、諦める気無いな
私はこいつらの顔を見てそう判断した、さとりは恐らく心を読んだのだろう、まあそんな事せずとも分かりそうなものなのだが。
こいつらの顔は諦めた奴が浮かべる自嘲じみた表情では無かった、寧ろ目は爛々と輝きに満ち溢れているようだ。
思わず心の中で今日何度目かもしれない溜息を吐く、こいつらが諦めないという事はつまり私の前に何度も姿を現わすという事だろう、つまりそれはこの面倒くさそうな事極まりない奴らと知り合いになるという事で、それはつまりまたも面倒くさい事が増えるという事だ。

どうしてこうも世の中は私が願っている事の反対側に動くのかな、まあもう諦めたけど。









□■□




そんな事があったのがつい最近のように感じられるとこの前さとりに言ったら「パルスィ老けましたね」とか遠慮も躊躇も無くそんな事をぬかしおったのでついついラリアットを決めてしまった。
別に私は老けては無いし年を取っている訳でもない、若作りしてやいのやいの言っている様な趣味は無いが、他人の目を気にしない奴が妬ましい。

私は所用があって地霊殿に赴いている最中だ、最近キスメとヤマメが橋を見事に破壊したので修理費を要請したりついでに宿舎の方も新しいものにしてもらいたいと陳情しに行くのだ。
なにせ私の内は隙間風が厳しい、ただでさえ縦穴周辺は風がきついというのにあれではおちおち眠れはしない、どうにかしてもらわないと私の快適地底ライフが危ない。
そんな訳でしぶしぶ地霊殿に赴いている訳だが何も私があそこに行きたくなのはさとりが苦手だからという理由だけでは無い、むしろそれだけならばこちらとしてもまあまだ我慢ができる範囲内だ、だが今となってはまた別の、それもさとりよりも面倒なのがあそこに居付いてしまった。

ぎいい 地霊殿のドアが開く、見かけや重苦しい音とは引き換えに私一人でも空いてしまう、さとり曰く「重苦しい方が格好いいじゃありませんか」ってそう言う理由かい。
エントランスホールを抜け、恐らくはさとりが居るであろう部屋まで足を運ぶ、しかし本当に広い家だ、ああ妬ましい。
私が最初地霊殿に来たときはさとりが丁度エントランスホールの階段に居たからよかったものの二回目となると私は迷った、さとりのいる部屋なぞさっぱり分からないし理解できないし道は分からないしかといって帰り道すらわからない、ほぼ詰み状態で呆然としていたところをさとりに拾われた感じである。
あの時は大層頼もしく感じたが後々聞いてみた所「パルスィが迷うところをじっくりと観察していました」とかぬかしやがったもんだからやるせない気持ちでいっぱいになってしまった、私のあの感動を返してください。
まあ、ともかくそれから数十年もこの家に出たり入ったりを繰り返していれば嫌でも地形だの間取りだのなんなのはおおよそ掴めるものだ、しかしこれでもまだ行った事の無い場所やら部屋やらがあるからこの家は妬ましい事この上ない。
そう言えば地霊殿はさとりが来る前からあったと記憶している、そこに住んでちょいちょいと改修を施したのがさとりと聞いた、はたして元の家がこのような伏魔殿だったのかそれともさとりが魔改造を施したのか、普通に考えれば前者であるが私は後者であるとも踏んでいる。

延々と歩いて行くと恐らくさとりが居るであろう部屋に辿り着いた。
黙ってドアを開ける、誰がノックなぞするか。

「ああ、パルスィいらっしゃい」
「あ、橋姫だ」
「どうも、水橋さん…」

予想通りと言うべきか、さとりと一緒に居たのはあの時叩き落されてきた二人組だった。




まあ、あれから色々な事があった物だ
まず強がったは良い物のどうやってこれから暮らしていけばわからなかった二人を地霊殿に泊める事となった。
後になって思えばこれさえなければ村紗と私達との縁は切れていたのではないかと思う。
と、言うのもそれから村紗と一輪はすっかり地霊殿から出ていく気を失せさせてしまったらしくそこに居座るようになったからだ。
さとりもさとりで「まあ、地霊殿は広いですから」とか言うので結果的に黙認と言う形になり二人は楽しい地霊殿ライフを満喫する、と言えば聞こえがいいが身も蓋も無く言うと増長を許す羽目になった、呑気なさとりも妬ましいし図々しい性格も妬ましい、地底に合わないと思っていたがすっかり地底での生き方を学んでいた様だ。
結局この状況は横暴に堪えかねて遂に反乱を起こした胃を持つ火焔猫が我が家に漂流してくるとともに幕を下ろした。
しかしあの時は驚いた、朝起きて扉を開けると何か色々な体液だのなんだのでぐちゃぐちゃになった火焔猫がくたばっているのである。
随分と気色悪い見た目だったので触れずに動かすにはどうしたものかと考えていたところ火焔猫は突如として起き上がり喚くとも泣くとも似つかない大声をあげて抱きついてきた。
ぐちゃっとあまり聞きたくない音がして、じんわりと体中に嫌な感触がした、その時は自分の中で無かったことにしたが後々見てみると服がもう使えない程に汚されてしまっていた。
火焔猫から話を聞いた私は激怒した、ここ50年で考えられない程に激怒した。
野郎め、必ずやこの服の恨みは晴らしてくれる、こちとらそっちと違って金が無いしこの服はオーダー制なのだ、家に数十着はあるが。
私は家を飛びだした、火焔猫は寝ていた。

地霊殿に着いた私は取り敢えず玄関に居たさとりを掴んで村紗を探す事にした。
恐らくは食堂にでもいるのだろう、そう思って行ってみると具材を詰め込み過ぎて異様な見かけになっているカレーを作っていたのでさとりを投げつけた、気絶したので簀巻きにして川に流した、カレーは後で食べたが美味しかった。
一輪はジムでダンベルを持ち上げながらスクワットしていた、いい汗がとても妬ましかったのでさとりを投げつけて気絶させた後簀巻きにして川に流した。
アディオス服の仇、仇は打った
私はさとりを簀巻にしてかまどの上に吊るしてから家に帰った。


そんな事があってもまだこいつらは地霊殿の居心地の良さが忘れられないらしくいまだにここに来ている。
そして私も仕事上地霊殿に来る事がある、それも最近は結構な頻度で、なにせ最近私は金欠なので地霊殿から仕事を請け負っているのだ。
仕方ないじゃないか、最近は新しい甘味が次々と出てくるのだから。
そしてそれが意味する事は、必然的に私とこいつらの遭遇率を高めていると言う事になる。

「うーっす橋姫」
「その図々しさ、相変らず妬ましいわね」
「まあまあ、お茶でもどうです」

とぽとぽとカップに緋色の紅茶が注ぎ込まれる、やけに用意が良い

「まあ、今日はパルスィが来ると分かっていましたから」
「ああ、そうだったわね」

確かに、そう付け足して書類と地形の資料をさとりの前に放り投げる。
もうちょっと丁寧に扱ってほしいのですがと言うさとりの声は無視する。
村紗が興味深げな眼で資料を見ていた。

「しっかしまあ、こんなことさせてなんの得があるって言うのよ」
「折角の閉鎖された空間ですからね、知り過ぎると言うことは無いでしょう」

私が頼まれた事は地底の地質調査、それも下では無く上の方である
表面を削って階層ごとの脆い地層、強い地層を見てゆく、そしてそれを上限ぎりぎりまで続ける。
縦穴は旧都の方にまで及んでいるので地底中余すところなくやる、果てしなく面倒くさい作業なのだがその分報酬も旨い。
それに私には時間が掃いて捨てるほどあるのだから手間を除けば非常に美味しい仕事だと思っている。
村紗は興味部掛けに資料を眺めていた

「へー…これってパルパルが全部調査して作ったん?」
「そうよ、大変だったんだから」
「この暇人が」
「良し、手前表来い」
「やるか?私の碇は妖怪の頭蓋骨を叩き潰すよ?」
「鉄は脆いわ、おまけに細い、横からぶっ叩けばすぐに砕けそうね」

ぱちぱちと火花が散った
始めるのならば今ここでも良い、だがそうすると今までの苦労が水の泡、給料も当然貰えないだろう、そうなる事だけは何としても阻止したい、何があっても阻止したい。

「来いよ、地霊殿は壊したくない」
「そうだね、ここが壊れると私も厄介だし」

その時私と村紗は少なくとも地霊殿のエントランスから表に出ようとした
なぜならばそこから出る事が一般的な「表に出る」と言う事だからである。
幾ら馬鹿でもこの状況下で窓から飛び出ると言う事だけはしないだろう、それは本当の阿呆のやる事だ、戦闘馬鹿とか。

なぜ私がこんなことを言いだしたのか
それは今私が「阿呆のやる事」と言ったまさにそのままの事が起こったからである。
私は何が起こったか分からなかった
まずは状況を冷静に思い出して判断することにしよう
私と村紗は揃って地霊殿の一室にある絨毯の上を歩いていた
すると次の瞬間物凄い衝撃と共に私の体は投げ出され、そのまま窓を突き抜けて地面へと叩きつけられたのである、窓が閉められてなくてよかった。
隣を見ると村紗も叩きつけられた風だった、やはり目を白黒させている

「………ねぇ」
「うん?」
「これ、やったのあいつよね?」
「そだね」

地面に叩きつけられてから私と村紗は多少冷静になったらしい、犯人も目星を大体つけていた。
一輪だ
頭巾や羽織などで体つきが隠れている為普段は分からないが彼女の趣味の一つは体を鍛える事である。
なんでも彼女が「姐さん」と呼んでいる元人間…もとい現在絶賛封印中の尼さんの魔法で最も威力を発揮するのが体力強化の奴だったのだそうだ。
敵をその筋力で悉く捩じ伏せ、叩き伏せ、磨り潰してゆく様をみて感激し、それ以来筋力によって悪しきを打ち砕くべく日々鍛錬を繰り返しているそうだ…こいつらは確か殺生禁止なのではなかったか、殺してないからいいのか。
一輪が地霊殿に居付いたきっかけが地霊殿にあるジムである、これは昔鬼が地上に居た頃河童に頼んで(と言う名の脅しで道具を)作らせたはいいが「やっぱりこんなことするより体動かしてた方が良い」と言う事で破壊されかけたのをさとりが救出した物である、すべて木製だが中々面白いものが揃っているが生憎さとりは使っていない、じゃあ何で拾ったのかと言うと「面白そうでしたし」だそうで。
しかし鬼はあれで忘れっぽい一面があるからまた同じことをやりそうな気がする。
ともかくそんなものがあるなら鍛えなければと今は一輪が一人で使っている。

しかしあれだけ鍛えていれば否応なしにあのシルエットでは抑えられない気がするのだが、そんな事を聞いたところ「効率的、合理的に体を動かすのにはただ鍛えればいいという訳では無いの、筋肉を引き絞ったり、重要な所だけを重点的に鍛える事が必要ね、柔よく剛を制すよ」だそうだ。



「一輪!なにすんのさ!」
「そっちが出やすいように窓から放り投げてあげたのよ」
「投げ出すってよりあれは叩きだすと言った方が適切でしたね」

あそこでくたばっていても話は進まないので私と村紗は飛んで戻った、こういう時飛べると言うのは便利だ。
なんでもさとりから話があるとのことで

「それで、提案って何よ」
「ええ、ちょっくら皆さんで湖に行きませんかと」
「湖!?行く行く!」

即座に反応したのはやはりと言うべきか、村紗だった。

「しかし、何で今湖よ」
「最近行き詰っていたので気分転換です、それに村紗も行きたいだろうと思いまして」
「おっしゃ、今すぐ行こうや。一輪、いい加減雑誌読むの止めなよ」
「うーむ、良い筋肉ね、しなやかで弾性の高そうな…」
「一輪!」
「うぇ?何か言った?」







そんなこんなで私達は湖に来た、湖と言っても縦穴の一つに空いている横穴から入れる所にあるものだ。
上から滴り落ちる水のみで形成されたそれは常に強い冷気を放ち、湖の外側の方は既に氷となっている。
ここの氷を使えば生鮮類の鮮度は抜群そうだがここの存在を知っている者は私とさとりぐらいしかいなかった、と言うよりも私がさとりに教えたのだ。
「鮮度の高い食品があればうまいものが作れるのに」とかお燐が言うからそれなら此処が良いと教えた所なぜかさとりが食いついた。
こいつは好奇心を刺激されると珍しくやる気が出るタイプらしい、30秒で支度を終えたさとりは「さあ行きましょう、今すぐ行きましょう」と私を急かしたがその時の私は海老が釣れたと思っていたら何故かその湖に居ない筈の深海魚が食いついてきたような顔をしていたのだと思う。

そんな訳で初めて二人でここに来た訳だが辿り着いた瞬間「今気づきましたがこれってデートじゃないのでしょうか…」とかぬかしたさとりにチョップを決めて暫く私達はその場を散策していた。
その時にわかった事だがさとりは物静かに考えている時は中々様になっている
黙っていれば美人なのに、後でそう思った。





最初この湖を見つけた時にはこの事を話す者は誰も居ないと思っていた
さとりと一緒に来たときは自分とも話せる酔狂な奴が居たんだなと思った
そして今、誰も来ないと思っていたこの場所には四人も妖怪がいる
全くもって生きていると何が起きるか分からない





「わあ」
「おお、天然の氷ですか、珍しい」

村紗が感嘆の溜息を吐いた
一輪は実利主義者らしい考えをしている
予想通りの反応だが、まあ驚いてくれるのならばこちらとしても多少は誇らしい気分になる

「ここの氷を使ってかき氷をするのはどうでしょう、試食役はパルスィに一任しますよ」
「さとりに譲るわ、感謝しなさい」
「腹が痛くなるのは分かっているので遠慮しておきます」

いつも通りのさとりとの応酬
一輪と村紗はそれを釈然としない顔でじっと聞いていた

「ねぇ、二人とも」
「なによ」「なんでしょう」
「ちょっと二人が居ると散策の方に目がまわらなくて詰まらないからさ、二つに分かれて行動しつつ地底の事とか私達に教えてよ」

ははあ、確かに
さとりと私はいつも来るのでいつも通りにふるまっていたが今回はこいつらも居るのだ、それなりに目をまわさなくてはなるまい。

「じゃあ私と村紗が一緒に行くわ、左回りで」
「でしたら私は一輪と右回りで」

自然に組決めを終わらせた私達はそれぞれの方向へと歩き出した。









「わあ、魚までいるんだ、ここ」
「味は食えたもんじゃないですよ」
「……食ったの?」
「………と、お燐が言っていました」

言えない、まさか自分が取って食べたとは到底言えません
食ってから暫く腹壊したことは何が何でも隠さねば

「…で、私達を分断した意味は?」

聞くと一輪はいかにも「気付いてたんだ」と言う表情を浮かべた。
当然です、これぐらいの事に気が付けなければ地霊殿の主なんてやっていけません。

「あなたって橋姫の事をどう思ってるのかなと」
「…パルスィを?」
「そ、見ている限りじゃ仲悪そうに見えるのに長い期間つるんでるし、よく分からないのよ」
「ちょっと待ってください、長い間つるんでいるとは誰が」

私とパルスィの付き合いの長さを知っている者はこの地底には僅かしか存在しない筈だ
幾ら地霊殿に住んでいる時期があったとはいえそれを知っている筈は無い。
一輪はあー…とかぼやきながら「鬼よ」と簡潔に答えた。

「鬼?」
「四天王のひとりに聞いたんだけど、あなたと橋姫って昔一緒に暮らしてたんでしょ?」



◆◇◆



「…勇儀ね」
「ああそう、勇儀と言う鬼ね」
「全く余計な事しか教えないんだから」
「で?あんたとさとりってどんな関係なのさ、ってか本当に同棲してたの?」
「馬鹿言いなさい、同棲なんてするわきゃないでしょうが、私の種族を言ってみろ」
「ふーん、でも一緒に住んでたってのは正しいんだ」
「まあね、向こうが覚えてるのかは怪しいけど」
「なんでさ」
「だってあいつにとっての私はただの通過点だったんでしょうから」



◆◇◆



「パルスィにとっての私は恐らくごく一般的な侵入者に過ぎないでしょうね」
「“だから覚えてないだろう”って?」
「ま、当然の話ですが」

一輪は納得できない様で『その程度かなぁ』とか考えていたけれども私が言えることはそれぐらいしかないので放っておくことにした。
湖は相変らずしんとした空気を漂わせていた
ここまでの静けさと言うのは逆に狂気を帯び、それが他者に恐怖を抱かせる。
まるでこの湖にはヒュドラやダゴンが生息しているかのようだ。
一輪はしんとした空間を切り裂くかのように一輪は切りだす

「あなたとパルスィってどういう関係で知り合ったの?いったいどういう仲なの?」



◆◇◆



「どういう仲って?」
「いや、何かあるでしょ?友達とか…なんとか、あと接点の無さそうなあんたとさとりに何があったのさ、何で知り合ったのさ」

一瞬考える
私とさとりは一体どんな仲なのだろうか

「そうねぇ…腐れ縁?」
「ふぅん…」
「ああ、それと私とさとりが何で出会ったかと言うとね」


「私とパルスィが何故一緒に行動しているかと言いますとね」



「昔殺し合いをした仲だからよ」
「昔殺し合った事があるからですね」



村紗は暫く押し黙っていた

「やっぱり分からないわ」
「私も分からないわね、あんたがどうしてそんなに上に固執するのか」
「なにを」
「分かるのよ、あんたは今猛烈に嫉妬している、今現在のうのうと地上を闊歩する奴らにね、橋姫なめんじゃないわよ」

しばらく私と村紗の視線はかちあっていた
村紗はふいと横を向いて「分かった、幾らわけわかんないとはいえ橋姫は教えたんだ、私も教えるよ」と半ば呆れ気味な声を出した。

「地上に出て、聖を解放する為に仲間を集める」
「そんな奴ら居るの?」
「居るよ、策略優れた鼠の妖怪と、それと…」
「それと?」
「普段はおっちょこちょいだけどいざという時には頼りになる虎の妖怪が、私を待ってる」

しんとした湖を見つめる村紗の眼は、心なしか厳つく、まるで何かに喧嘩を売っている様だった。
妬ましいわね、そうとだけ私は呟いた。







□■□





なんだこりゃ
体中が痛む感覚で覚醒した私がまず思った事はそんな事だった

落ち着け私、まずは状況を整理しよう
まず、私はいつもの様に橋の上でぼーっとしていたわけだ
すると上の方から侵入者らしきものがやって来るのを感じた、偵察を送るとどうやら人間の様である、これが謎であった、なぜ上の方から人間がやって来れる?
取り敢えず侵入者は迎撃しないとならない為私はその場から飛び出して上へ上へと向かった。
侵入者と鉢合わせをしたのは地下666階だったか、ともかく意外に深い所まで来ていた。
ヤマメとキスメはやられたか、もしくはやられたように見せかけたのだろう。
しかし侵入者なぞ久しぶりだ、昔は人間となると加減を忘れて思わず殺してしまいかねなかった、最良のケースはひっ捕まえて地上に送り返すか地霊殿に送ることであるがそれができずに重傷を負わせたことなぞよくあった物だ。
最近は弾幕ごっこなる便利な物ができたのでそのリスクをほぼ無いと言っても良いだろう。
ともかくにもその侵入者を撃墜しないことには始まらないので早速弾幕を吹っ掛けたのだ。

「……その結果がこれね」

その結果として私は今縦穴の内の一つに空いた穴の中でぶっ倒れている。
これ以上無い程簡潔に言ってしまうと、向こうさんはもの凄く強かった。
そりゃもう妬ましさなんて起きない程度に強かった、スペルは余裕でかわされるし逆にこっちが避けられないような鬼畜弾幕打って来るし、あれって本当に人間と言えるのか。

しかし、あれの目的地はどう見ても地霊殿だろう
地底で『何かやらかしそうな所』と言えば旧都と地霊殿しかないが旧都はやると言っても宴会程度なので消去法で地霊殿だ、今度はさとりが何をやらかしたのか。
ともかく、さとりや火焔猫の無事が心配だ、バ鴉もだが、それに村紗と一輪はどうだろうか。
見に行きたいが生憎体が動かない、どうやら落ちる際に酷くどこかを打ち付けた様だ。
深い所まで落ちなかったことは幸いだがそれは恐らく

「あんたらの仕業よね」
「ばれたか」
「糸が見えたからね」

ヤマメとキスメが上から降って来た、案の定と言うべきか二人とも無傷である。
やはりと思ったが、やはりこいつら素通りさせやがったのか。

「いんや?てけとーに喧嘩吹っ掛けて相手が乗り気になったところで逃げてきた」
「これがやり逃げさ」
「キスメ、下ネタかますな」

ともかくこいつらに助けられたと言うのは事実だ、礼を言うのも癪だが言っておかねばなるまい。
だが口を開こうとした私をキスメが遮った

「いんや、礼の代わりに橋姫さんには地霊殿に行ってもらう」
「んぅ?いや、丁度行きたかった所だけどさ、何であんたが私を地霊殿に差し向けるのよ」
「面白い事が起こりそうな気がするから」

面白い事
やっぱりこいつは、こいつらはそれが目的か
禍の渦中にある地霊殿は当然混沌とした状況だろう、それを見てきて報告しろと言う事か。

「まあ、いいけど、でも私は今動けないわよ?」
「今すぐになんて誰が言ったよ、そうだな…あと三時間と言った所かね」
「丁度その頃になれば旧都も面白い事になっているだろうし」
「面白い事?」
「噂話と言う龍が者々の間をうねり這いずりまわるのさ」
「成程、それは面白いわね」

三時間か、その頃になれば動けるようになるだろう
それまで私は眠ることにした




◆◇◆




やはりと言うべきか 地霊殿は混沌の渦の真っ只中にあった
辺りに散乱する何かの破片
壁に突き刺さるさとり
床に突き刺さるバ鴉
天上に突き刺さる村紗
ソファで紅茶を飲みながら寛いでいる火焔猫
その隣で逆立ちしながら腕立て伏せをしている一輪
カオスの方向性が違った

「どういう事なの…」
「ああ、いらっしゃいパルスィ」
「うにゅ!お帰りなさい!」
「うーっす」
「ああ、橋姫のお姉さんじゃないか」
「1165…1166…あら、いらっしゃい」

なぜこんな狂気じみた状況下でそんな平然と返事が帰って来るのか、不気味極まりないから突き刺さったまま返事をするな。
異常な状況下では異常こそが正常と言うけれどこれは酷すぎやしないか。
しかしこの状況を作り出したのは一体何なのだろうか、侵入者か。

「いえ、これは暴走したお空があたり構わず殴り飛ばしたのでこうなったのです」
「それで、勢い余って床に突き刺さったと、どういう状況なのよ」
「おーう、この部屋の上ってさとりの執筆室なのね」
「えっ、ちょ、いけません、その部屋には見られたくない物が」
「…それがどんなものなのかは恐ろしいから聞かないでおくわ」
「ちょっくら昇って見て来よう」
「止めなさい、止めなさいって」
「あんたら本当にこの状況に順応しているな!」

適応能力高すぎだ
取り敢えず阿保共は話におえないので一番の常識人と認識している火焔猫に話を聞く事にする、もうこいつらの相手するのは疲れた。

「で、何があったのよ」
「簡単に言っちゃうと侵入者が来て力持ち過ぎて暴走してお空をとっちめたってだけさね」
「簡単な説明有難う、ところでなんであのバ鴉に力持たせたのさ、この世で一番危ない事ベストノミネートしそうな事じゃない」
「うーん…どうやら地上から神様が侵入したらしくてね」
「え?気付かなかったわよ?」
「多分お姉さんがあちこち調査をしてた頃だったと思うのさ、そいでそいつらがお空に火力与えちゃったから暴走してねー…」
「把握したわ」

神様ねぇ、私も便宜上は神だが
しかし封印を突破するとなると相当な力を持っていたのだろう
鉢合わせしなくてよかった、もしそうなれば私は地底の天井に突き刺さっていたかもしれん。

「うーっす、さとり居るか―?」

と思っていたら壁を突き破りながら勇儀が乱入、新たなカオス追加である。
これは修復が大変に違いない、閻魔の雷が飛ぶに違いないから私は隠れ家でも用意してようか。
勇儀は壁に突き刺さっていたさとりを引っこ抜くと手に持っていた紙を差し出した、どうやら状況適応能力は勇儀が一番らしい。

「これは?」
「いやー侵入者が強かったからもう一勝負と洒落込もうとしたわけさ、そしたらそいつが持ってた何かの中からこれが出てきてな、なんか『地霊殿の主に渡して欲しい』って」

勇儀が差し出したものをよく見てみると、よく見ないでもそれは手紙だった。
差出人の乱には八雲紫の文字が…って地上の方の賢者ではないか。
どうやらただの手紙では無い様なのでさとりも真剣な目をしている、さっきとの差が激しすぎる。

『拝啓 地霊殿主 古明地さとり様
   
地底は以前と何ら変わらないようで無い様で お久しぶりです
    前置きはさておき、このような事になってしまったからにはこちらとしても先手を打っておきたい所です。
    
    此方からはある程度の通行許可は出しておきます
    そちらが許可しない妖怪、及び添付した『特殊通行非許可罪人』のリストに載っていない妖怪の通行を許可します。

敬具』

最初その手紙が何を意味するのか分からなかった
もう一度読んでみるとその手紙はどうやら只ならぬものであるらしい事が分かった
更に一度読んでみるとそれがどうやら通行許可証だと言うのが分かった

「これは…面倒くさい事になったわね 私の仕事上」
「強固な封鎖を施すかこうなるかどちらかだと思っていましたが…流石は賢者ですね」
「ああ、多分これ以上封印を施しても無意味だと踏んだんだろうよ」

賢者の考えは読める
このまま封印を施しても地底の騒動は収まらないだろう、寧ろ通行を許可せよと言う動きが強まる可能性がある。
しかし今の混乱した状況下ではそれを抑えることは不可能に近い、ならば先手を取って許可してしまう事でそう言った暴動に近い動きを抑え、その間にゆっくりと状況を望む方向に動かすこと、賢者にとってそれしきの事なぞ容易に違いない、実に良く考えている。

問題はそうなる事で唯一の出入り口である縦穴の混乱及び私への被害(仕事が増える事)だが。
まあ手に負えない様だったらさとりのペットの内誰かに来てもらうのもありだろう。
さとりがペラと次の紙、と言うか紙の束を捲った
特殊通行非許可罪人、面倒くさい物言いだが要するに地上に出て欲しくない奴らだろう。
さとりはリストを最初から見ていくと言う事はしないでパラパラと捲りながら何かを探している。
しかし膨大な量だ、髪にして50枚はいっているのではないだろうか、あれを逐一一々確認せにゃあならんのか、面倒くさい。

「……ありました」

ぴたっとさとりの目を指が止まった、私も指さされた部分に目を当てる

No.13852 村紗水蜜
No.13853 雲井一輪 及び 雲山

概要理由:魔界幽閉中の罪人、聖白蓮<罪状:不当に妖怪の力を奪取した罪 妖怪退治を語りその実はその妖怪らを匿っていた詐欺の罪 その詐欺によって人々から金品などを搾取していた罪>を解放する可能性がある為。

「ああ、やっぱりね」

後ろにはいつの間にか一輪と村紗が立っていて自分の名前を確認していた。

「あんたら、地上に出すわけにはいかないわよ」
「わーってるわーってる、橋姫に迷惑かける訳に行かないからね」
「やけに素直じゃない」
「まあ、正面からかち合っても負けるって分かってるし」

村紗と一輪は部屋から出て行ってしまった。
さとりはふぅと溜息をつく

「罪人と言うのであれば、地底に住む我々は皆罪人だと言うのに」
「馬鹿ね、だから“特殊”罪人なんじゃない」

村紗と一輪のいなくなった部屋は不思議と寂しく感じた
恐らくあの二人はもう地霊殿には来ないだろう、私はそう思った、さとりも多分そう感じていた
どちらにせよ、私達には何の関係も無い事だった。







◆◇◆◇◆




「碇をあげろ、帆を満帆に張れ、地上の太陽はいつだって晴れだ」

がつん がつんと甲板を踏みしめると心地の良い音が耳に響いた

「そぅれ、総勢たった二人の船員よ、世界に喧嘩を売りにいくぞう」
「直に四人になるわ」
「そうね、まずは仲間を増やしましょう」
「見つかる手立てはあるの?」
「あるわよ、私達は繋がっているんだから」

ぐいと手を上に向かって突き出す
その上にはいまだ黒しか映らない
だが、私達はそこに蒼を映し出してやるのだ、それは何とも爽快ではないか

「行けよ、出でよ法力の船、青空と言う名の大海へと漕ぎ出せ」

ぎぎぎ ぎぎぎ 次第に船が岩盤に押されて軋みをあげてゆく
それでも船は上昇を止めない、私は此処が地底唯一のウィークポイントだと知っている。
きっかけは橋姫の調査資料だった、こっそり盗み見たそれには値千金は下る程の情報が書き込まれていた。
それがここだ、地底の岩盤に空いた穴の中でこの穴のみ柔らかくなっている。
船が数分でも耐えきれれば、私達は夢に見た地上へと漕ぎ出す事が出来るだろう。

「問題は、この船の耐久性ね」

一輪の額につぅと汗が流れた、当然だろう、ここが成功するか否かが作戦の成功か失敗かの最初の一歩となるのだから。
だが私は信じている、聖が私に託したこの船を。

「さあさあ、漕ぎ出すは今ぞ、命捨てがまるは、今ぞ」

みしみしみしみし ぎぎぎぎぎぎぎぎ
やがてその音がいよいよ大きさを増していき





青空が姿を現わした



◆◇◆◇◆


「……流石に驚いたわ」
「まさか本当に突破されることになるとは」

突如として地上に響き渡った轟音に休憩を取っていた私とさとりが外に出て行った時にはすでに船が岩盤を突破してしまった時だった。
あの船が通っていった縦穴は地底中で一番大きな縦穴だった、そしてそこの岩盤は普通のよりも柔らかい事も私が調べたうえで分かっていたところだ。

「だからって、本当にやっちまうとは」
「ああ、また私の仕事が増える」

穴からは僅かに光が差し込んできた、旧都の方は今頃えらい騒ぎだろう、どこかで苦労しているであろう勇儀にご苦労さんと心の中で言っておく。
さとりがいやぁなじとっとした目でこっちを見ていた様な気がしたが見なかったことにしておく。

「これから忙しくなりますね」
「私は暇になりそうだけど」

誰が明るくて広い通路を通るより恐ろしい番人の居る狭くて暗い通路を選ぶだろうか。
止めてもどうせ無駄だろう、あれ程の大きさの穴となると押さえつけるのは幾ら人員を配置して無駄に違いない。
寧ろ今の賢者の反応を見る限りではこの穴すら許容の範囲内と見なされそうだし。
横のさとりを見るとやはり同じ考えの様だった。

「ま、どうにかなるでしょ」

世の中のありとあらゆるものはそうできている
何もしなくても、何をしてもそこへ向かうように出来ていると考えている。
ならば憂うより楽しんだ方が良いのではないか。
横のさとりは早くも穴に対する興味を失ってしまったようで大欠伸をした後地霊殿へと戻って行った。

「パルスィ、速く来ないとお菓子も紅茶も私が飲んでしまいますよ」
「ちょっと待ちなさい、その中には私の飲みかけのもあるんだから」
「大丈夫です、問題ありません」

エントランスホールに駆けつけるのと同時に扉が閉まり始めた、私はふいと後ろを向く。
地上へと繋がる穴が、ぎぎぎと閉まるドアの隙間から見えた

やがて隙間は0となって、私の目の前にはただ大きなドアがあるのみとなった。

なぜ振り返ったのかは分からない
どうしてひかれたのかも分からない

ずきん

頭に痛みが走った気がした
どうせ気のせいだろう、それよりもお茶会に戻らないと。

私はかつかつとエントランスに背を向けて地霊殿の廊下を歩きだした。





















※ ※ ※



かつん かつん

私は縦穴の中にあるどことも分からない場所を歩いている
黄金の鍵を見つけるには協力者がどうしても必要だ、それも私と同じような傍観者が

かつん かつ

恐らく此処に居る妖怪がそれだ、傍観者にして稀代の道化師、他人を煙に巻く事にかけてはぴか一の傑物が居る

「居るんでしょう?そこに」
「やれやれ、古明地の妹君にかけてはかくれんぼも形無しか」

キスメ 彼女がのるかそるかで確率は大きく変動するだろう
のらなかったらその時はその時 そったらその時はその時だ

「ねえ、お願いがあるんだけど」
「断る」

ああ、やっぱりか

「私は誰にも縛られずに淡々と傍観していたいんだよ、誰かの言いなりになるのは御免だ」
「ふぅん…あの橋姫の事でも?」

ぴくんとキスメの眉が動いた
引っかかった 思わず頬が吊り上りそうになる、だがここで油断すれば元の木阿弥だ。
こいつは恐らくパルさんに何が起こっているのか分からない、何が起ころうとしているかもわからない、ただ『何かが起こる』と言う事だけは漠然と了解している。
教えてやるのだ、私の手駒になる事と引き換えに。

「…へぇ、やっぱりそうなのかい」
「橋姫には今後面白い事が起こる、それをお膳立てしたのは私、そこに誘導したのは私」
「正確には『追い込んだのは』だろう?」
「そうとも言う 簡潔に言っちゃうわね、キスメ、私の手駒になりなさい」
「要求は?」
「私の言った通りのタイミングにパルさんを吹っ掛ける」
「報酬は?」
「情報、そして…」

ぺろり
舌で口内を一撫でした

「面白いものが見れる」
「いいよ、乗った」

思わず笑いが込み上げてきた
乗らない筈が無いのだ、キスメは傍観者だ『その程度の事』で『それだけの物』が見れるならば喜んで手駒になるだろう。
なにせ彼女は臆病なくせに面白い事が大好きなのだから。
しかも勘が働く、恐らくはパルスィに何か『面白い事』が起きると感じたのだろう。

全てを話した後、キスメは不思議そうな顔をしていた

「しかし、何が目的だい?」
「ん?何が?」
「そんな事をして何になる?何が目的だ?」

キスメと私の違う所はそこだ、キスメは自分から動かない、私は動く この違い

「運命をぶっ潰す事 運命を創り上げる事」

我ながら面白いことを言ったものだ
予想通りキスメは不可思議そうな顔をしていた

「神様にでもなろうって事かい」
「ううん、違うよ?神様になるんじゃなくて    神様をぶっ殺すの」
「…………」
「それで私が作ってあげるの、私の望まないレールを壊して、私の望むレールを作るの」

キスメは不可思議そうなその顔から、僅かな嫌悪感と、僅かな切望感をかいま見せた
恐らく彼女は理解しているのだろう、私が行おうとしている所業の事を。

「運命を切り開くとは良いことを言った物だ、結局は足踏み空回り遠回りをして向かうべき場所に向かっているに過ぎない」

そこでキスメは深呼吸をし、次の言葉を深淵から探していた


「運命を創り上げるなんて事はそれぐらい馬鹿げた事なんだよ、途方も無い歳月と莫大な資金と圧倒的な手駒と入念さと例外を認めない程の綿密さを持ってしても”まだ全然足りない”程に、それをやろうというのかい、新しい女神様にでもなったつもりかい」
「できるよ、私は躊躇しない、躊躇しないのであれば、いかなる犠牲を払う事も厭わなければ、その扉は簡単に開いてしまう」
「本当に、できると思うのかい?」
「ううん、できるよ だって私は誰にも抑制できない、誰にも視覚出来ない、誰の眼にも滑稽極まりない錯覚に写る。」

法律なんて知りっこない
常識なんてくそ喰らえ
運命なんて投げ捨てる
宿命には目を瞑ろう



黄金の鍵を扉に差し込もう いかなる犠牲を払おうと
誰もが望まない 決められたバッドエンドを
私のエゴイズムに凝り固まったハッピーエンドに変えてやるのだ。



「まあ、見てなよ きっと面白い事になるから」

私はまた、にんまりと笑った









.を解放する可能性がある為。

「ああ、やっぱりね」

後ろにはいつの間にか一輪と村紗が立っていて自分の名前を確認していた。

「あんたら、地上に出すわけにはいかないわよ」
「わーってるわーってる、橋姫に迷惑かける訳に行かないからね」
「やけに素直じゃない」
「まあ、正面からかち合っても負けるって分かってるし」

村紗と一輪は部屋から出て行ってしまった。
さとりはふぅと溜息をつく

「罪人と言うのであれば、地底に住む我々は皆罪人だと言うのに」
「馬鹿ね、だから“特殊”罪人なんじゃない」

村紗と一輪のいなくなった部屋は不思議と寂しく感じた
恐らくあの二人はもう地霊殿には来ないだろう、私はそう思った、さとりも多分そう感じていた
どちらにせよ、私達には何の関係も無い事だった。







◆◇◆◇◆




「碇をあげろ、帆を満帆に張れ、地上の太陽はいつだって晴れだ」

がつん がつんと甲板を踏みしめると心地の良い音が耳に響いた

「そぅれ、総勢たった二人の船員よ、世界に喧嘩を売りにいくぞう」
「直に四人になるわ」
「そうね、まずは仲間を増やしましょう」
「見つかる手立てはあるの?」
「あるわよ、私達は繋がっているんだから」

ぐいと手を上に向かって突き出す
その上にはいまだ黒しか映らない
だが、私達はそこに蒼を映し出してやるのだ、それは何とも爽快ではないか

「行けよ、出でよ法力の船、青空と言う名の大海へと漕ぎ出せ」

ぎぎぎ ぎぎぎ 次第に船が岩盤に押されて軋みをあげてゆく
それでも船は上昇を止めない、私は此処が地底唯一のウィークポイントだと知っている。
きっかけは橋姫の調査資料だった、こっそり盗み見たそれには値千金は下る程の情報が書き込まれていた。
それがここだ、地底の岩盤に空いた穴の中でこの穴のみ柔らかくなっている。
船が数分でも耐えきれれば、私達は夢に見た地上へと漕ぎ出す事が出来るだろう。

「問題は、この船の耐久性ね」

一輪の額につぅと汗が流れた、当然だろう、ここが成功するか否かが作戦の成功か失敗かの最初の一歩となるのだから。
だが私は信じている、聖が私に託したこの船を。

「さあさあ、漕ぎ出すは今ぞ、命捨てがまるは、今ぞ」

みしみしみしみし ぎぎぎぎぎぎぎぎ
やがてその音がいよいよ大きさを増していき





青空が姿を現わした



◆◇◆◇◆


「……流石に驚いたわ」
「まさか本当に突破されることになるとは」

突如として地上に響き渡った轟音に休憩を取っていた私とさとりが外に出て行った時にはすでに船が岩盤を突破してしまった時だった。
あの船が通っていった縦穴は地底中で一番大きな縦穴だった、そしてそこの岩盤は普通のよりも柔らかい事も私が調べたうえで分かっていたところだ。

「だからって、本当にやっちまうとは」
「ああ、また私の仕事が増える」

穴からは僅かに光が差し込んできた、旧都の方は今頃えらい騒ぎだろう、どこかで苦労しているであろう勇儀にご苦労さんと心の中で言っておく。
さとりがいやぁなじとっとした目でこっちを見ていた様な気がしたが見なかったことにしておく。

「これから忙しくなりますね」
「私は暇になりそうだけど」

誰が明るくて広い通路を通るより恐ろしい番人の居る狭くて暗い通路を選ぶだろうか。
止めてもどうせ無駄だろう、あれ程の大きさの穴となると押さえつけるのは幾ら人員を配置して無駄に違いない。
寧ろ今の賢者の反応を見る限りではこの穴すら許容の範囲内と見なされそうだし。
横のさとりを見るとやはり同じ考えの様だった。

「ま、どうにかなるでしょ」

世の中のありとあらゆるものはそうできている
何もしなくても、何をしてもそこへ向かうように出来ていると考えている。
ならば憂うより楽しんだ方が良いのではないか。
横のさとりは早くも穴に対する興味を失ってしまったようで大欠伸をした後地霊殿へと戻って行った。

「パルスィ、速く来ないとお菓子も紅茶も私が飲んでしまいますよ」
「ちょっと待ちなさい、その中には私の飲みかけのもあるんだから」
「大丈夫です、問題ありません」

エントランスホールに駆けつけるのと同時に扉が閉まり始めた、私はふいと後ろを向く。
地上へと繋がる穴が、ぎぎぎと閉まるドアの隙間から見えた

やがて隙間は0となって、私の目の前にはただ大きなドアがあるのみとなった。

なぜ振り返ったのかは分からない
どうしてひかれたのかも分からない

ずきん

頭に痛みが走った気がした
どうせ気のせいだろう、それよりもお茶会に戻らないと。

私はかつかつとエントランスに背を向けて地霊殿の廊下を歩きだした。





















※ ※ ※



かつん かつん

私は縦穴の中にあるどことも分からない場所を歩いている
黄金の鍵を見つけるには協力者がどうしても必要だ、それも私と同じような傍観者が

かつん かつ

恐らく此処に居る妖怪がそれだ、傍観者にして稀代の道化師、他人を煙に巻く事にかけてはぴか一の傑物が居る

「居るんでしょう?そこに」
「やれやれ、古明地の妹君にかけてはかくれんぼも形無しか」

キスメ 彼女がのるかそるかで確率は大きく変動するだろう
のらなかったらその時はその時 そったらその時はその時だ

「ねえ、お願いがあるんだけど」
「断る」

ああ、やっぱりか

「私は誰にも縛られずに淡々と傍観していたいんだよ、誰かの言いなりになるのは御免だ」
「ふぅん…あの橋姫の事でも?」

ぴくんとキスメの眉が動いた
引っかかった 思わず頬が吊り上りそうになる、だがここで油断すれば元の木阿弥だ。
こいつは恐らくパルさんに何が起こっているのか分からない、何が起ころうとしているかもわからない、ただ『何かが起こる』と言う事だけは漠然と了解している。
教えてやるのだ、私の手駒になる事と引き換えに。

「…へぇ、やっぱりそうなのかい」
「橋姫には今後面白い事が起こる、それをお膳立てしたのは私、そこに誘導したのは私」
「正確には『追い込んだのは』だろう?」
「そうとも言う 簡潔に言っちゃうわね、キスメ、私の手駒になりなさい」
「要求は?」
「私の言った通りのタイミングにパルさんを吹っ掛ける」
「報酬は?」
「情報、そして…」

ぺろり
舌で口内を一撫でした

「面白いものが見れる」
「いいよ、乗った」

思わず笑いが込み上げてきた
乗らない筈が無いのだ、キスメは傍観者だ『その程度の事』で『それだけの物』が見れるならば喜んで手駒になるだろう。
なにせ彼女は臆病なくせに面白い事が大好きなのだから。
しかも勘が働く、恐らくはパルスィに何か『面白い事』が起きると感じたのだろう。

全てを話した後、キスメは不思議そうな顔をしていた

「しかし、何が目的だい?」
「ん?何が?」
「そんな事をして何になる?何が目的だ?」

キスメと私の違う所はそこだ、キスメは自分から動かない、私は動く この違い

「運命をぶっ潰す事 運命を創り上げる事」

我ながら面白いことを言ったものだ
予想通りキスメは不可思議そうな顔をしていた

「神様にでもなろうって事かい」
「ううん、違うよ?神様になるんじゃなくて    神様をぶっ殺すの」
「…………」
「それで私が作ってあげるの、私の望まないレールを壊して、私の望むレールを作るの」

キスメは不可思議そうなその顔から、僅かな嫌悪感と、僅かな切望感をかいま見せた
恐らく彼女は理解しているのだろう、私が行おうとしている所業の事を。

「運命を切り開くとは良いことを言った物だ、結局は足踏み空回り遠回りをして向かうべき場所に向かっているに過ぎない」

そこでキスメは深呼吸をし、次の言葉を深淵から探していた


「運命を創り上げるなんて事はそれぐらい馬鹿げた事なんだよ、途方も無い歳月と莫大な資金と圧倒的な手駒と入念さと例外を認めない程の綿密さを持ってしても”まだ全然足りない”程に、それをやろうというのかい、新しい女神様にでもなったつもりかい」
「できるよ、私は躊躇しない、躊躇しないのであれば、いかなる犠牲を払う事も厭わなければ、その扉は簡単に開いてしまう」
「本当に、できると思うのかい?」
「ううん、できるよ だって私は誰にも抑制できない、誰にも視覚出来ない、誰の眼にも滑稽極まりない錯覚に写る。」

法律なんて知りっこない
常識なんてくそ喰らえ
運命なんて投げ捨てる
宿命には目を瞑ろう



黄金の鍵を扉に差し込もう いかなる犠牲を払おうと
誰もが望まない 決められたバッドエンドを
私のエゴイズムに凝り固まったハッピーエンドに変えてやるのだ。



「まあ、見てなよ きっと面白い事になるから」

私はまた、にんまりと笑った









.
「月月火水木金金!地上の旨いカレーを探しに行くわよ!」
「ちょっと待ちなさい」






・さとり×パルスィのつもりだった
・今回は書くつもりだった
・村紗と一輪に出番粗方持ってかれた
・本編と関係ない話書こうと思ってたらいつの間にかフラグが建ちまくっていた
・止めにこいしちゃんがほのぼの成分持って行った
・勇儀姐さんが一番癒し成分なのではないかと思っている
・実は反省はしていない

次の話からいよいよギャグ成分が無くなって逝く為今回はギャグとほのぼのとさとパル書くよ!と思っていたのはもはや昔の話になってしまいました。
書きたい物の逆が出来上がる病気なのではないかと思っています。



>>奇声を発する程度の能力さん
ギャグ成分が無くなるんじゃなくシリアス成分が増えるんだよ!とか書きたかったけれども1 /3書き終わったら冗談じゃなくギャグが無くなってきました、どうする。
誤字修正しました、御報告ありがとうございます。

>>5さん
誤字、多すぎますね ええ
今回は多すぎたと反省しています、色々と緩んでました
面白いと言って頂いたので心に留めつつ次回からは引き締めていきたいです、精進

>>7さん
苦労人コンビです!
作者のさとりだとどうしてもこういう犠牲者が数人出てしまいます。
二人は裏で色々と愚痴りあってそうです。

>>8さん
作者の 誤字修正スキルは なまくらでござるな
「次こそは糖分増やす!」「次こそはさとパルにする!」とか意気込んでは失敗していつの間にかもう200kb越え、この話がさとパルになる日は来るのだろうか…
地霊組は少々荒っぽいのが良いと思うんです、穏やかな妖怪が封印なぞされる訳が無いと言うのが持論です

>>9さん
次回はもっと面白くなるよう精進です

>>12さん
致命的誤字に気が付いた時即座に頭を壁に叩きつけてしまいました、これは酷い
誤字修正しました、御報告ありがとうございます
キスメと村紗の口調、特にキスメは「こいつは絶対腹黒毒舌猫かぶりキャラだ」とか思っていました、でも腹黒キスメ少ないのね
ギャグになる事を作者は期待しているのですがそういう時に限ってえぐいのができてしまって毒抜きに手一杯になるんですよ、なぜでしょう

>>とーなすさん
あ、窓ガラスにさとりを差し込んだのは故意です、さりげない謎の不死身さを出そうと思いまして
しかし、確かに首回りは弱そうです、痛そうだし、少しフィクションが過ぎたかと反省し修正しました、アドバイスありがとうございます。
ムラいちは実の所パルスィに間接的超密接に関わってきます、なので別の所に出そうと思ったのですが出すところが見つからなかったので今回出しました。
全ては次回と次々回に回収予定です、お待ちください。

>>16さん
さとりは 踏ん張るを 使った!
もうすぐさとりが漲って来ますのでお待ちください。 

(2011/12/1 コメント返信)

>>フェッサーさん
一輪は聖の事を「姉御」と呼んで慕っている…つまり武闘派一輪もありだという事だ!え?駄目?
礼儀正しく相手をぶんなぐる一輪…良いと思いませんか?
パルスィとさとりの昔話についてはもうすぐ出せます




それでは

かしこ
芒野探険隊
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コメント



0.540簡易評価
4.90奇声を発する程度の能力削除
>髪にして50枚はいっている
紙?
次回からギャグ成分がなくなるのですか…
それでも、楽しみに待ってます
5.無評価名前が無い程度の能力削除
面白いんですよ。面白かったんですけど余りにも誤字が多すぎる。
ですんであえてフリーレスで。
7.100名前が無い程度の能力削除
地味にお燐とパルスィのコンビがいいな。
8.80名前が無い程度の能力削除
今回誤字多いですなw
もう完全にシリーズ物ですね。完結(?)目指してがんばって下さい。あなたの描く地霊'sが好きだ
9.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです
12.80名前が無い程度の能力削除
いやまて、シリアスになるって言うのは逆に、ギャグ成分に侵食されるフリなのでは……?
村紗達やキスメの味付けが独特でグットでした。
しかしながら、決めになる台詞で脱字ったのは大きい。
14.80とーなす削除
確かに誤字が多いですね。とりあえずさとりが刺さっているのは窓なのか壁なのか。
さすがに窓ガラスに刺さってたら妖怪と言えど、こう、破片がぐさーっと行きそうで怖いんですが。
面白かったですが、今回あんまり進展しなかったよーな……ムラいちコンビがどうメインストーリーに関係してくるのか分からなかった所為ですが。
パルスィに何が起こるのか気になるのにー。しょうがない、逆立ちしながら腕立てでもしながら気長に待ちます。
16.100名前が正体不明である程度の能力削除
さとり頑張れ。
18.100フェッサー削除
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『私の中の清楚なお姉さんキャラ・一輪さんが、いつの間にか脳筋キャラになっていた』。
な…何を言っているのかわからねーと思うが(ry)
とにかく、アタイの一輪さんを返して!!ハリィィィ!

しかし、殺しあうほど仲が良かったのに今は冷めて別居生活とか信じられません。いったい何があったというのか。
今回読んで分かった事といったら、現在のさとパルは倦怠期というやつうわなにをするやめ