Coolier - 新生・東方創想話

看病

2011/11/14 00:39:45
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「れいむ!れいむ!」
「う……うぅ……魔理沙…………」

私、博麗霊夢は風邪を引きました。

「さ、魔理沙ちゃん。霊夢ちゃんから離れなさい。」

布団で寝ている私にベソをかきながら縋り付いて大泣きする魔理沙。
これまた大きい声でわんわん泣いてるせいで熱でくらくらする頭に余計に響く。
町医者が魔理沙を宥めながら寝ている私から引き離そうとする。

「やだ!れいむがしんじゃう!!」

魔理沙は町医者に抱きかかえられながら物騒なことを叫ぶ
ただの風邪くらいで死んでたまるか

「おおげさよ……勝手に殺さないで……ごほっ……ごほっ」
「霊夢ちゃんは大丈夫だよ。ちゃんとお薬を飲んで、ぐっすり眠ればすぐに良くなるから」
「だって……だって……」
「いいから帰って魔理沙……あんたも、うつっちゃうわよ……」
「れいむ…………ぐすっ」

それから少し間を置いて、しぶしぶ魔理沙は部屋から出て行った。

「お薬は食後に三回。きちんと飲むんだよ。」
「ええ。ありがとう。先生。」
「それじゃ。お大事に。」

町医者が帰り、部屋には私一人が残される。
もらった薬を眺めながら溜息を一つついた。

「はぁ……食後ねぇ……」

町医者から渡された薬を見て思う。
熱で体もだるく食欲も沸かない。ご飯を作ろうという気力もない。
こういうときに独り暮らしの不便さというものを感じてしまう。

「さすがに寂しいとまでは思わないけどね。」

魔理沙を追い帰し、町医者も去った後のシンと静まり返る寝室で
まるで自分に言い聞かせるように一人ごちた。
寂しさを感じるほど自分は幼くはないつもりなのだが
体が弱っているためか、辺りの静けさが気になってしまう。

「少し眠ろう……。」

起きていてもこんな状態では何もできないし、したくない。
とりあえず目を瞑る。頭が痛い。そして周りの静けさに耳鳴りがする。
こんな日に限っていつもは騒がしい妖精達も今日に限っては神社の回りにはいないみたいだ。
いや、いたらいたでやっぱり迷惑なのだが。

「魔理沙が居てくれたらなぁ」

さっきの事をふと思う。泣きそうになりながら、心配そうに私に縋り付いてきた。
その時はうっとおしいと思ってしまったが、心の底ではやはり嬉しかったのだ。
寺子屋で知り合って、何かと浮きがちだった私に初めて声をかけてくれた女の子。

初めての私の友達。

本当は今日も寺小屋で授業があったのだ。
基本まじめな性格の魔理沙はさぼる癖なんて持ち合わせていない。
だけど慧音先生から私が風邪で休みだと聞いて、慌てて駆け付けてくれたのだ。

「ちょっと悪いことしちゃったかな…。」

せっかく心配で看に来てくれた彼女を追い帰してしまったことに少し負い目を感じる。

「でも、実際にうつっちゃったら不味いし……これでよかったのよ。」

私はそう自分に言い聞かせながらもう一度眠りにつこうとした。。
もし、風邪が治らなくて。魔理沙も、もう二度とお見舞いに来てくれなかったらどうしよう……
一瞬そんな不安がよぎった。

「まりさ……」

涙がこぼれ落ちた。それでも目を瞑り頭痛と正体不明の不安感と格闘しながら
私は眠りについた。







どのくらい眠っていたのだろう。
目が覚めると既に日は暮れていた。

「ん……。」

体を起こす。まだ、けだるさはあるものの、ピークのようなものは過ぎ去ったみたいだ。
枕を見ると、少し湿っていた。
泣いていたのか私は?

「おなかすいた……」

空腹を満たすためにも、薬を飲むためにもご飯の支度をしなければいけない。
重たい体を引きずるようにして台所に向かう。

と、そこで違和感を感じる。

だれかいる。

台所の方から気配。
ついでにいい匂いもしてくる。
誰かが台所で何かをしているようだ。
弱っているとは言え人様の家に踏み込んで好き勝手な事をする輩を許すわけにはいかない。
意を決して台所に踏み込む

「誰?!」

するとそこには見覚えのある少女の姿が。

「あ、霊夢。少しは良くなったか?」

黒白の魔女服を着た少女が台所に立っていた。

「何をしてるの……魔理沙。」
「なにって……おかゆを作ってあげようと。あ、味は保障するぜ。母さんの『じきでん』だからな。」

呆れてものも言えなかった。だって、うつるから帰れと言ったのに……言ったはずなのに

「材料は家から持ってきたから心配いらない……ぜ!?どうしたんだ霊夢?」
「なんで……きたのよ……」
「だって、心配だったから……わっ」

こうして魔理沙がまた来てくれたことが本当にうれしくて。
私は自分より一回り小さな魔理沙の体を抱きしめた。





「霊夢……くるしい……」
「あ、ごめん……」

あわてて魔理沙を離す。

「さみしかったのか?」
「え…………」

寂しい、そんな言葉。とっくに忘れたはずだったのに

「うん。」

口からこぼれたのは、きっと私の素直な気持ちだった。

「そっか……うれしいぜ。」

魔理沙が少し照れくさそうに私から視線を外した。

「たまごかゆ。一緒に食べよう。」
「うん。」

魔理沙のつくってくれた卵粥は本当に美味しくて。
私の心も体も温めてくれた。








「ねえ魔理沙。おうちの人には言ってきたの?」
「ああ、母さんには伝えてきたから大丈夫。」
「いや、お父さんよ。厳しいでしょあの人。」
「んー?なんとかなるって。」

私のお布団の横に魔理沙がお布団を敷いた。
今日は最初からお泊りコースだったみたいだ。

「ほんっとうにに風邪うつっても知らないわよ。」
「その時は霊夢に看病してもらうさ。」

ニコッといつものほほ笑みを返してくれる。

「しょうがないわね。」
「なぁ。もうちょっと近づいていいか。」
「…………いいわよ。」

魔理沙がもぞもぞと私の布団の中に侵入してくる。
これじゃ魔理沙側の布団を敷いた意味が無いような……

「霊夢が寒くちゃいけないから。わたしがあっためてあげるぜ。」

魔理沙がぴったりと私にくっついてくる。
少し恥ずかしい。でも

「あったかい……」

私は魔理沙のぬくもりを感じながら目を閉じた。








=================================================


「はっ!」

目が覚めると既に日は暮れていた。そうだ、私は風邪を引いて寝込んでたんだった……。
それにしても懐かしい夢を……

「よぉ、目は覚めたか!?」
「魔理沙?」
「ごはん出来てるぜ。卵粥。」

台所からおいしそうな匂いがしてくる。

「遊びに来たらおまえ寝込んでるし。顔熱いし。」
「しょうがないじゃない。風邪引いたんだから。あんたこそどうして……」

大きな声を出したら頭に響いてきた。

「ああもう、しょうがない奴だな。おとなしく寝てろよ」
「誰のせいよ……」

再び布団の中に潜る。魔理沙が鍋を持って私の寝室に入ってきた。

「ほらよ。熱いからフーフーして食べろよ」
「私は子供じゃないわよ……」

それは
あの時と変わらない味。
あの時と同じ温かさ。

「おいしいか?」
「うん」
「それは良かった。」

正直、少し寂しかったのだ。
でもあの時と同じ。魔理沙の顔が見れて安心した。
今日の夜、やっぱり一人で眠るのは嫌だと思っていたから。

私が食べ終わると魔理沙は腰を上げた。

「え……」
「じゃあな。薬ちゃんと飲めよ。」

予想外!
ちょっと待て……ここで帰るとか……

「ん?」

気が付いたら私は魔理沙の裾をつかんでいた。

「………………帰るの?」
「あ……ああ。」
「だめ。」

帰ると言い張る魔理沙を全力で制止する。

「は?」
「今日は泊まっていきなさい。」
「だって、おまえゆっくり休みたいだろ?」
「察しなさいよバカ!」

釈然としない。と顔で訴えながらしぶしぶ了解する魔理沙。
でも特に魔理沙に予定は無かったみたいで。
横になっている私といつものようにたわいも無い会話をしているうちに
夜が更けてしまった。





魔理沙は自分専用の布団を押入れから引っ張り出し
私の隣に並べた。

「それにしてもめずらしいじゃないか。
「なにが?」
「お前から泊まれなんて。」
「いいじゃない。私は風邪引いてるのよ。」
「そうだな。ん?なんでそんなにくっついてくるんだ?」

私は自分の布団を抜け出して魔理沙の寝ている方にもぐりこんだ。

「ちょっ……霊夢?」
「いいじゃない……今日くらい優しくしなさいよ……あの時みたいに。」
「……へんな奴だぜ。」

魔理沙の頬が少し赤く染まったように見えた。

「照れてるの?」
「ちっ……ちがうわい!」
「ふふふ。魔理沙かわいい。」


明かりを消してからも、私たちはお互いにちょっかいを出し合っていた。

それからしばらくして私たちはあの時と同じように
寄り添いあいながら眠りについた。
とにかく温かいレイマリが書きたかった。

それでは読んでくださった方。本当にありがとうございました。
SWI
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コメント



0.2150簡易評価
6.100名前が無い程度の能力削除
赤面した
7.100名前が無い程度の能力削除
いいね、レイマリ。あったかいね。
9.90奇声を発する程度の能力削除
読んでてほのぼのしました
10.100名前が無い程度の能力削除
寒いからね、あったまりたいね
18.100名前が無い程度の能力削除
ほんわか
19.100名前が無い程度の能力削除
ぬくいね
23.100名前が正体不明である程度の能力削除
魔理沙にはバットよりハッピーエンドが似合うと、最近よく思います。
29.100名前が無い程度の能力削除
二人とも可愛いなぁ
看病する魔理沙って良いですね。
34.90名前が無い程度の能力削除
読んでるこっちが恥ずかしい
38.90名無しな程度の能力削除
あぁ、暖かくなれたよ
48.100名前が無い程度の能力削除
最高
56.100非現実世界に棲む者削除
レイマリはいつだって暖かい愛に満ち溢れています。