Coolier - 新生・東方創想話

老いては子に従がわず『二夜』

2011/10/17 23:34:00
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注意!

この作品は 『老いては子に従がわず「一夜」』の連作になっております。
この作品は原作崩壊、捏造設定、キャラ崩壊などを多分に含みます。

コレをみて危機感を覚えた人は戻るをクリック。

*********************************



老いては子に従わず「二夜」






白玉楼の朝は早い。


やぁっ
ていっ


妖夢は、自分の活の入った声を響かせて、木剣を振るう。
ほかの幽霊たちはそれを合図に、主人の朝餉の趣向を考えたり、掃除を始めたりと、かいがいしく働き始める。



妖忌はその妖夢の声が上がる前から、朝はやく起床した。
退院を果たした妖忌は白玉楼についてから、自室に入り、白紙の巻物に、筆を走らせていたからだ。


    免許皆伝の書など見たこともないが


途中途中で孫に叩きのめされた腕やら頭やらが痛み、休み休みで書き続けた指南書がようやく完成した
もう一度、文章を読み直し、誤字が無いか確かめる。
自分の長年の、伝えたい経験に書き残しがないか、余分なものがないかもう一度吟味してみる。


「これで、良し」


後は愛孫にこのでっち上げた免許皆伝の書を渡すだけである。

実際、魂魄家に由緒代々の免許皆伝の書など存在しないが、
あの真面目で素直な妖夢はこの書をみれば、確実に自分の言葉を信じるだろう。

この免許皆伝の書は、由緒さえないものの、今までの自分の経験を注ぎ込んだ、指南書にはなっている。
きっと、これからの妖夢の助けになるだろう。


妖忌は墨を十分に乾かすために、書を自室に置き。
久しぶりの、これで最後になるだろう安寧の自宅を満喫することにした。




幽々子が自慢する、白磁の砂の庭。
そこの一端に陣取り、瞑想を始める。



   悟りは生きている間には開けまい


若い頃から、そう思っていた。


実際のところ、こうして座っているだけではそんなもの開けるわけが無いと解っているのだが、いまさら老いさらばえた体に鞭打って荒行などやろうものなら、悟りを通り越し、涅槃に入りそうなのでやめておくことにしていた。

この瞑想とやらも自分の自己満足で、結局はぼんやり日向ぼっこしているだけに過ぎない

そう本人だけは思い込んでいて、入滅するがごとく、その空間だけ切り取られたように張り詰めた気合がつり登っていく。
妖忌が日向ぼっこをはじめると、そわそわとほかの給仕の幽霊たちは「邪魔しないでおこう」とでもいいたげに彼の周囲から離れていった。

その日向ぼっこの中で、妖忌はひとつのことを繰り返し検討し始める。

一週間前の孫との立ち合いだ。

自分の突進、肩口を狙った剣、呼吸ともに、間違いなく妖夢の呼吸の隙をついたはず、
しかし、剣が接触する前に妖夢の剣が陽炎のように消え去り
気づけば華奢な孫の体は自分の剣の必殺の間合いを抜けて、突然現れた剣が鋭く自分の腕を撃った

妖忌はじっとつむっていた目を開いて、目の前の虚空に敵を創造した。

そして、今度は、老いて枯れ木のような体ではなく
もっとも気合、心身ともに充実していた自分を想像し、対峙した。
幾度か、状況を変えて敵と剣を交えるも、結果はどれも同じだった。



腕を切断され、その勢いで肋骨と腹を断ち割られて、無残な肉塊にされる。
そこで、死合いが終わる。

妖忌は考える。


    もしかすると、まともにいまの妖夢と戦えば、歴代魂魄家の嫡男ですら勝負にならないかもしれぬ



妖忌は、包帯だらけの自分の惨めな肉体を見下ろした。
噂では、博麗の巫女に負けたらしいが、にわかには信じがたい。
それだけでなく、森に棲むというただの半人前の魔法使いにすら遅れをとったという。


「時代は、変わったのだな」
もはや、幻想郷は昔のような悪しき魑魅魍魎の闊歩する世界ではない。


もう、必死をこいて命のやり取りをする必要はない


もう自分のような古臭い剣士など、外でも、幻想郷でも必要がなくなったのだ。
そこに安堵と、寂しさを覚えて、妖忌は考えることをやめた。


「あら、妖忌も日向ぼっこ?」
「これは、幽々子様。 はい、左様にございます」

あたりで、妖忌の様子を恐る恐る伺っていた幽霊どもを押しのけて、幽々子がひょいひょいと足取り軽く近寄っていく。
それに妖忌が頭を低くして、かしこまった姿勢をとる。

「となり、いいかしら?」
「は、どうぞ手前などおきになさらずくつろいで下さい」
「ふふ、あなたのことが気になるから、くつろぎにきたのよ」
「はぁ」

妖忌は、要領を得ない幽々子の返答に困惑して、気の利いた返事ができなかった。
幽々子は、猫のように妖忌のとなりに座って丸くなる。


「平和ね」
「そのようで」


幽々子は妖忌の隣で幽霊たちの視線も気にせず、自分の信頼と尊敬を預ける剣士に微笑みかける。

「修行の旅は終わったの?」
「はい、おそらくは」
「そ」

短い返事。
それから二人は押し黙った。

妖忌はそろそろ、書の墨が乾いたころだろうと思った。
あれをいつ、孫に渡そうか思案した。
早いほうが、良いだろう。

自分の心が、この平和な世界に惰性しないうちに

「ねぇ、妖忌」
「何でしょう、幽々子様」
幽々子がじっと妖忌の顔をじっと見つめながら、妖忌に問いかけた。


「ずっといるのよね」


幽々子は真摯な瞳を妖忌に向ける。
その言葉には、目の前の老いた剣士への情熱が宿っている。

「・・・・・」
「また、修行に出るなんて二言はなしよ」

妖忌は即答することに一時の戸惑いを覚えたが、まさか


   いえ、私はもうすぐいなくなります


などと、いえば主人の追及を逃れられないと思った。

「このヨボヨボの体です、行こうと思っても行けませぬわい」

妖忌は長年仕え、連れ添った少女を不安にさせまいとした。
その意味するところは、幽々子には妖忌の本心とは違った風に捉えられるだろうが、事実を言ったつもりだった。
幽々子はそれを言葉通りに捕らえ、嬉しそうに口元を緩ませる。

「そろそろ、夏の宴会の季節なのよ、もしかしたら白玉楼でするかもしれないの」
「ほう、それはいいですな」
「ちょっと前にね、桜見のときも宴会があったのよ」
「宴会ですか、桜が散ってしまう前に戻ってくればよかった」

桜が、散り始めもう、桜に残っている花は少なく、すっかり葉桜になってしまっている。

「かまわないわ、そのぐらい」
「むぅ、幽々子様はいいかもしれません、しかし手前は白玉楼の桜酒が気に入っておるのですが・・・」

「だってそうでしょ?」
「はぁ」


何故、そうなるのだろうか。
妖忌には理解しかねた。


幽々子がそっと妖忌の手をとる。

「一緒に桜を見ましょう、来年も、その次の年も」
白磁の庭に、ほのかに散った桜が舞っている。


「時間はたくさんあるのだから」


「・・・・」
「ね? だから来年は、私たちが一番乗りで桜酒を楽しみましょう」
「・・・ええ、そうですな、きっと楽しいでしょうな」


風に吹かれて、地面に落ちた桜の花が舞った。

「では、来年まで頑張って長生きしませんとな、老いぼれに来年がいつもあるとは限りませんので」
自虐の様であったが、少女にはただの冗談にしか聞こえなかったらしい

ぷぅ

と幽々子がふきだして、けたけたと腹を抱えて笑い始めた。


本心を悟られないようにと妖忌も朗らかに、老成した声で低く笑って答えた。

「お爺ちゃんですものね、けどそれでも大丈夫よ」
「死んだら、桜はみれませんぞ」
「私も毎年死んでるけど桜は毎年楽しみにしてるもの」


妖忌は、よくこの事実を忘れてしまう。
この少女は、良く食く寝もするが死んでいる。
明るく笑うこの少女はすでに死んでいた。



   なら、それも悪くないな



妖忌はそう感じた。


「これは、一本とられましたな」
「心配ないでしょ?」

二人は、またげらげらと笑い合った。
しばらく、また会話が途切れる。

何を思ったか、幽々子は妖忌の腕を自分のやわらかな胸に抱いた。

「・・・・」
妖忌が幽々子の方を向くと、幽々子がじっと妖忌の瞳を見つめていた。

妖忌はその感触に、昔を思い出す。

かつて、生まれたばかりの幼い息子と、その孫娘を手に抱いた記憶を呼び起こした。
あのころの自分は、できないことなどないと信じきっていた。

色あせない、自分のもはや過去になった人生を思い出す。
妖忌は、やはり自身が老兵なのだと思った。


    そういえば、妖夢はむかしよく夜泣きをした
    初めて、孫が剣を握ったときのことは、忘れもしない

    厳しくしかった
    怒鳴ったりもした
    時には木刀でやわい手を撃った

それでも孫は、健気に自分の教えを守り、そして、孫が自分の力を超えて、自分はもはや無用の存在になった。
後は、妖夢が   すべては斬ってから識るのみとなる。





一方、幽々子は妖忌の老人のような、といえば当たり前だが、この鈍い反応が気に食わない。

さっきは二人して、「爺、じじい」とさっきまで笑い合っていた。
しかし、それに反して妖忌の腕は幽々子にはずしりと重い。
相貌も、腑抜けてなどおらず、狼のように鋭く。
肩や首の太さは、自分の何倍にもなるのか見当もつかない。

肌も、妖夢や自分に比べれば、燃えるように熱い。
とても、隠居を宣言した老人とは信じがたかった。


自分の躯を妖忌に寄り添うように預けた。
妖忌は若干の居心地の悪さを覚えて、肩をゆらす。

「む・・」
「動かないで頂戴」
「わかりました」
「そうそう、よろしい」


幽々子がぐいっと、自分の頭を妖忌の肩に乗せる。



    やはり、しっかりしているようで、少女なのだなと



妖忌は「やれやれ」と、隣の少女のなすままにさせておいた。
冥界の白玉楼の主である彼女は、他の妖怪や神からも恐れられる存在だが、昔からこうして、年相応の少女のように自分に甘えた様な態度をとることがあった。

彼女が時よりこんな行動に出るのは、
彼女の生前の過酷な記憶からか、呪いのせいで忘れてしまった亡き父親の影を、大人の自分になんとなく追っているのだ。

妖忌はそう考える。


だから、妖忌はそんな幽々子の態度をたしなめることもせず、否定することもなかった。
そういうときは、ただ黙って、庭を一緒に眺めることにしていた。


家人によくからかわれ、わけもなく怒ったものだが、
今では、それすらも懐かしい。



「ねぇ、妖忌・・・」
「なんでしょう、幽々子様」
幽々子が指の一本一本にますます力を篭めて、熱い腕を抱え込む。


「爺様! 幽々子さま! こちらにいらっしゃいましたか!」
「む、妖夢、ずっと探しておったぞ」

妖夢の元気な、はきはきとした声が縁側に響き渡った。
少し、頬が上気しているのはさっきまでの剣の稽古を終えたばかりだからだろう。

「・・・・・」
幽々子はいかにもこの状況を「面白くない」といった憮然とした顔をしている。


  さて、渡すか


妖忌はわずかに腰を浮かして、妖夢のほうを向く。
幽々子の躯が、ぱっと、妖忌から引き離される。

「・・・・・」
「え? 私をですか?」
「うむ、実はお前に話があっての、重要なことじゃ、今から」
「妖夢、 私たちに一体何の用かしら? 早くいってしまいなさいな?」
幽々子が笑顔をはりつけて、にこりと微笑む。

妖夢は「はい」と短く頷いて、手にしていたお盆を床に置く。
「幽々子さま、こちら、紅魔館から分けてもらった、『ぶらってぃまんでー』というお茶葉でございます、それと『ちょこたると』もどうぞ」
と、いつもの様に主にお茶請けを手際よく並べる。

「ふーん、それだけ?」
「おい、妖夢。 ワシの分はどうしたのだ」
「ないです」
「なんじゃと?」

「お年の方には、こんな甘いものは体に毒かと思いましたので、厨房で切り分けるときに食ってしまいました」
「なぁあにぃ~?!」

普段から洒落っ気のない妖忌は、この洋菓子に興味があったのか妖夢の言葉を聞き、愕然とした声をうならせる。
妖夢がお盆から、紙包みを取り出し、妖忌にお茶を差し出す。

「爺様にはこれを」
「なんじゃこれは?」

明らかに、薬を包んだ紙にしか見えないので、妖忌が嫌な顔をする。

「・・・・・」
幽々子は渡された菓子と茶を一飲みにした。


「外の世界の薬、石田散薬という薬だそうです、なんでも打ち身、裂傷にきくとか」
「阿呆! そんな飲み薬があるか!」
「効くはずです! なんでも外の世界の人間達は気合とともにそれを飲み込んで傷を癒したそうです!」
「ぬぅ、そんなものが本当にあるのか?」
「よもや、爺様 気合なくしてこの薬が飲めないと申されるつもりですか」


妖夢が「いまの爺様にうってつけのお茶請けですよ」と嬉々とした笑顔と一緒に手渡す。
気合がないといわれると、飲まないわけにもいかなくなり、仕方なしと薬紙を開く。

    みょうなものをもってきてくれたわい

と妖夢を睨もうと顔を見上げたが、予想以上の笑顔で妖夢がいまかいまかと、薬を飲むのを瞳を輝かせて待っている。

どうやら、嫌がらせではなかったらしい。
嫌がらせにしては妙に手が込んでいるし、第一妖夢にそんな思考をすることはできないはずだ。

「さ、爺様、一飲みになさってください」
「むぅ」


孫と薬を交互に見比べると、孫の期待に胸を膨らませた顔がどうしても眩しい。


「しかたないのぉ」
「ささ、どうぞ!」
「・・・・」

孫の笑顔に断るすべもなく、頬を思いがけず緩ませてそれを飲み込もうとする。

「・・・・」
幽々子がそれを無言で奪い取って、飲み込んだ。

「え!?」
「ゆゆこさま!?」
「苦い」
ぽつりと、端的な感想をもらす。

「そりゃそうですよ! 薬ですから! というか、爺様に飲ませるために買ってきたのに!」

妖忌に飲ませようと、香霖堂がらわざわざ肉体労働をしてまで買ってきた薬が幽々子に喰われてしまい、流石に妖夢も驚きを隠せない。

「甘いものを食べたから、苦いものが食べたくなったのよ」
「なるほど!」
妖夢が拍手をうって、俄然納得がいったと頷いた。

主人の奇行に驚きながらも、いい話の区切りになったので、妖忌はひざを軽く立てる。

「・・・さて、では幽々子様。 手前は、妖夢に話がありますので、これにて失礼します。 来なさい、妖夢」
「はい!」

妖忌は重い腰をあげて、妖夢に手招きをした。それに素直についていく妖夢。

「あ、わたしも・・・」


と幽々子もそわそわと、腰を上げようとする。


「幽々子様には御耳を汚すことになりますので、申し訳ありません」
とさっぱり言い切って、その場を後にする。
「・・・・そう」
「では、幽々子さま失礼します!」


妖夢は家鴨の雛のように妖忌のうしろをついて行く。
妖忌もその様子にやや満足げにゆったりと遠ざかっていく。

「あ、妖夢? 私も後で話があるから、私の部屋にきてちょうだいな」
「はい、承知しました!」

一人残された幽々子は、二人の遠ざかっていく背中を見ながらどんな無理難題を押し付けて妖夢をいじめてやろうかと考え始めた。


*************************************




どんなお話をされるのだろう
幼いときにこの部屋に呼ばれたときはいつもお叱りを受けた
私は、爺様の背中を見ながら、緊張せざるをえない

「うむ」

私を部屋に招き入れると爺様は座布団を二つ敷いて、
「すわりなさい、妖夢」
と目の前を指差す


私は、小さいころに教えられた作法の通り、足を組み替えて座る
うまく淀みなく座れたのを確認するように、爺様が私をじっと厳しい目で見ておられた

私は、いつ怒声が響くのが気が気でない

「妖夢!」
「はい!」

きた
この怒鳴り声は、今でも怖い

また、作法を間違えてしまったのか
思わず、必要以上に大きな声を上げてしまう
それとも、なにか他のことだろうか
緊張で胸がはじけ飛びそうだった

爺様は響く声で
「長年のお庭番務め、ご苦労だった! これは、魂魄家に代々受け継がれる、免許皆伝の書だ! 是をよく納めよ!」
と一息でここまで言い切った

「はいィ!」

爺様が何をいっているのか、わからないので、とりあえず腹の底から力をこめて返事をしたが、変な具合に声が裏返った。


「免許皆伝の書だ! お前の腕前、もはや歴代の魂魄家嫡男に負けずとも劣らん、よくやった!」
「え?」

爺様の「よくやった」の言葉に思わず頬が緩む
爺様の破顔で自分がほめられているということを知り、どうしようもなくうきうきして、
そしてしばらく時間を置いて私が目の前に突き出された巻物を自分のものにしていいと理解した

「さっさと受け取らんか! 馬鹿もん!」
「は、はいぃ!」

あわてて、両手を差し出して、巻物を受け取った、が
受け取ったはいいが、何故もらうことになったのか、いまいち把握に苦しむ

    私はどうしてほめられているのだろうか?

「読め!」
「はい!」
爺様が読めと怒鳴るので、慌てて巻物の紐を解こうとする
慌てるあまり、少々てこずってしまい


「さっさとせんか!」
「申し訳ありません!」


なんでこんなにきつく紐が縛ってあるのかと紐を怨みながら、何とか紐を解くことに成功
中に書き連ねてある、文字を大きな声で読み上げる

「魂魄家、西行寺が御庭番頭、魂魄妖忌! 弟子魂魄妖夢の研鑽をここに認め! 次期御庭番頭として認める! 秘伝をここに納め、 其の方、是を良く識り、よく是を納めよ!」
「うむ!」
爺様が首を立てに振って笑った。

「・・・・えーと・・・・・これは・・・・」

私は、巻物を何度も、何度も読み返す
巻物の先頭には、免許皆伝の文字が燦然と輝いていた
そこから目が離せなくなった



「よくやった、妖夢」
「あ・・・」



爺様の大きな掌が、私の頭を包み込むように撫でてくれた
そこでようやく、私は永い研鑽の末に、爺様に認められたのだと知った

その途端、自分の中でよくわからないものが溢れてきて
それは、自分の目玉から溢れてくるのが良くわかった




「泣くな、馬鹿もん!」
「・・・・っう・・」




泣くなといわれても、嗚咽が喉でひっかかって
そのまま、しばらく両手で巻物を開いたままの姿勢で、ずっと私は鼻水が巻物にかからないかと心配になりながら、涙が収まるまでずっと両腕を上げ続けた

爺様が私が落ち着くのを待って、話をされる

「さて、妖夢、お前にもとうとう御庭番の務めについて話すときがやってきた」
「つとめ、ですか」
「そうだ、我々魂魄家が受け継いできた、大事な役目だ」

つとめ、といっても爺様が白玉楼をするにしていた間、私は白玉楼の警護をずっとやってきた
それ以外になにか、つとめがあるのだろうか

「そこだ、ワシが白玉楼に戻ってきたのは将にそこにある」
「といいますと?」
「西行妖と幽々子様との因縁、それはお前も知っておろう」
「いえ、知りません」

知らなかったので、私は正直に話すことにした
嘘をついても始まらないからだ

「馬鹿をこくでない! お前は以前の幽々子様の御乱心を止めたのであろうが! ワシが言いたいのはそのことだ!」
「はい! 申し訳ありません!」

訳がわからない
幽々子さまがいつ御乱心したのだろう
しかも私はそのご乱心を止めたらしい
自分の中で何とか爺様の言うことを整理してみる

御乱心というと、やはり以前の異変のことだろうか
しかし、春を集めるのを止めたのは、霊夢さんであって、私ではない
むしろ私は春を集めるのに幽々子様のお手伝いをした身であったはず
しかも、春を集めることのどこがご乱心なのだろう?

「うむ、お前にも話した通り、西行妖の封印が解ければ、幽々子様は魂を消滅させてしまう・・・」
「ええ!?」
「どうした、妖夢? そんな豆鉄砲を喰らったような顔をして」
「ええ!? そんな! 西行妖が咲くと幽々子様が消滅するのですか!」

どうやら、私は知らず知らずのうちに、幽々子さまの自殺の手伝いをしてしまったらしい

「だから、お前が止めたのだろうが! 何度も同じことを言わせるな!」
「はいぃ!」
「だが、安心せい、春を集めた程度では、西行妖は満開にはならぬわ」
「なんと! それは本当ですか!?」
「うむ」
爺様は腕を組んで、難しい、深刻な顔をして何度も頷づかれた

「ほっ・・・」
私は過去の行いにほっと安堵して、爺様の次の言葉を待つ

爺様が「それで、本題だが」と身を正され。私も本題に入ると言われ、背筋を伸ばす
「長年我ら魂魄家は西行妖のもとであの大妖が復活せぬように、眼を光らせてきたのだ、それが魂魄家の真の役目のひとつよ」
「ははぁ、なるほど、しかしあの木は春を集めても咲かぬとなれば、ほったらかしでも堂ということはないでしょう」
「その危険が再び出てきたのだ、ワシももうあの桜の満開を見ることはないと思っておったわ」

どうやら、かなり緊迫した事態なのかもしれない
爺様の表情はいつもより、かつての爺様の表情より苦しそうだ

「して、西行妖が復活する本当の手段はなんなのです」
「うむ、問題はそこだ」
「はい」


どうやら、なにか危険が迫っているらしい
爺様が難しい顔をなされたので、私も爺様と同じようにわざと難しい顔をしてみる

「西行妖は、人の無念、憎悪、負の感情を飲み込んで成長するのだ。だから、西行妖あるところに戦いは絶えぬ。我らは、敵が、西行妖にたどり着く前に敵を斃し、西行妖に血をすわせてはならないのだ」
「ふむふむ」
「その中でも、一番厄介なのが、西行妖と幽々子様の因縁を知りながらにして、幽々子様に恨みを抱いている連中じゃ、奴らは幽々子様に適わぬがゆえに、西行妖の復活をもってして、幽々子様を葬ろうとしている」

「・・・なんて卑怯な・・・」
自分の力が適わぬとふんで、そんな謀殺のような手をつかってくるとは、不意打ちのようなものだ
血が廻り、憤りが頭に上ってくる


「そして、ワシが白玉楼に帰ってきた理由は将にそれなのだ、ワシはそれらの事情を知る敵が幽々子様を狙っていると知り、急ぎ戻ってきたのだ」
「なんですって! こうしてはいられません! 一刻も早く幽々子さまをお守りしないと!」
私は慌てて廊下に飛び出そうと、座布団を蹴り飛ばす。

「馬鹿もの! 落ち着かんか!」
「った!?」
ぼかりと頭を殴られ、派手に畳に頭をぶつけてしまいまい、目の前に火花が飛び散る

私は、のろのろと座布団をもとの場所に戻して同じように正座した

「それでだ、ワシは老い、お前は強くなった」
「・・・・」

たしかに、爺様は昔に比べれば年をとられた
高齢の身だ、立会いはもうできないだろう


「もはやワシでは敵に十分に備えられんが、お前なら敵と対峙することができる」
「なるほど」


落ち着いて座布団に座りなおした私は、敵について、爺様に話を聞き始める
それと、爺様がいわれるには

この話を幽々子さまに話すのは、封印を緩めることになるかもしれない

と禁止される

無論、ほかの部外者に話すのは駄目、話すとしても、肝心の部分は伏せておくこととされた
天狗の記者になど話そうものなら、地獄が待っているといわれ、私は震え上がる


「敵は、満月の夜に、果し合いの場に現れる。 それを見事に斃してみせよ」
「敵は、どんなやつなのですか?」
「わからん、が」
「が?」


「敵は手段を選ばん、最近流行っている、正々堂々とスペルカード戦なるもので勝負をいどんだりはせんだろう、十分に気をつけるのだ」


私は、スペルカード戦では、魔法使いや、博麗に遅れをとってはいる
しかし直での、剣の勝負なら自分が遅れをとるはずがないと確固たる自信があった

「はい! お任せを!」
「うむ、・・・では、倉に武器がしまってある、それをよくよく考えて選んでおけ」

「え? 私にはもう差両がありますが・・・・」
腰のものをわずかに触って見せる

「たわけ! 白楼剣で人が斬れるか!」
「それは、そうです」



爺様の話は終わり、私は言いつけの通り幽々子さまの部屋に行く

食べたい珍味を所望のようで、それが海産物だったので、彼岸の小町のところまで採りに行くことになり
幾分骨が折れたが、今の私はそれを苦だと思わなかった


自分の部屋に戻り、巻物をもう一度読み直す


「爺様の字だ」


確かに、爺様の字で書かれたその文字は、


  魂魄妖夢に免許皆伝を許す


と私を褒めて、認める。



何度も何度も書を読み返した
爺様直筆の、書を読んでいると、思わずにやけた



  私はもはや半人前ではないのだ



決闘の前日まで、枕元において、何度も読み直した




もはや、私が名実ともに白玉楼の警護の要となり、館をまもる立場になったのだ
そして、今朝、爺様が私に、




「妖夢、決して負けるでない、負ければ我らに後はないのだ」



と決闘に出かける私を見送った




   この私が負けるはずがない
   爺様が認めた私が、そこらの賊に遅れを取るはずがない


****************************



妖夢は意気揚々と博麗神社を去っていった。

影が長くなり始め、紅い太陽は辺りを薄暗く照らし始めている。
博麗神社での、4人の少女たちの会話はすでに終わっていた。
その中の二人は、ぽつりぽつりと、永く会話を交わす。

「ねぇ、霊夢? さっきの話どう思うの?」
「どうも、私には関係ないわ」

魔理沙と、妖夢が立ち去った後だ。
魔理沙が「じゃあ、『やばくなったら』助太刀するぜ! そのときはいえよ!」とふんぞり返っていたのを思い出すと、霊夢が苦笑を漏らしたのを咲夜は見ていた。


  なにか、魔理沙は妙なことをいっただろうか?


「スペルカード提唱者の貴女らしからぬ、発言ね」
「稀には、そういうこともあるってだけよ、妖怪同士の決闘を完全に禁止することは、幻想郷の崩壊にもつながりかねない」
「へぇ」
「あんたも良く知ってることでしょ」


霊夢は苛々しているようだった。
咲夜はふだんとは、少し違う霊夢の様子に違和感を感じていた。
違和感というよりなにか、ぞっととするもっと違うもののようにも感じた。


「・・・・・」
「私のいないとこじゃ 他の妖怪や神だってなにをしてることやら・・・」
「素敵な地上最後の楽園、幻想郷、それは私が思うよりも物騒な世界なのかしら」
「なにを今更、つい前まで人間が妖怪にとって喰われることも稀じゃなかったのよ? そういう意味では、外の世界よりも刺激的だわ」

   たしかに、そうかもしれない。
   外の世界では、化け物に喰われて死ぬようなことはないだろう。


「あの子、今晩、帰ってこれるかしら?」
咲夜は自分が一番、気になっていることを聞くことにした。
おそらく、博麗の巫女はこの疑問に彼女の苛苛の理由になっているところを話してくれるだろうと思ったからだ。

   そろそろ、日が山の中に消える。
   そうすれば、月が上がる。
   決闘が始まるのだろう。

「さぁ? あの調子じゃ結構きわどいかもね」
「・・・」
「相手にもよるでしょうけど、もう止められないしね」
「助太刀は・・・」

咲夜は霊夢の反応を伺い声の調子を落とした。


霊夢がどういう考えかわからなかったからだ。
霊夢の反応は、咲夜が思う以上に、冷ややかだった。



「明日魔理沙が何か思いつくんじゃない? 結局のところは部外者だしね、そのときになったら考えるわ」



咲夜は霊夢の冷たい回答に「無頓着すぎるのでは?」と流石に思った。
確かに妖夢は腕は立つが、もしかしたら、本当に帰ってこないかもしれない。
咲夜はあの自分より幼げな、素直で真面目な少女の笑顔を思い浮かべた。

妖怪、人間、神、様々な存在と交友が広い博麗の巫女、博麗 霊夢。
誰も彼もの注意と、尊敬、親愛を集めてしまう。
いつも、ふと気づくと、集団の中心にいる彼女だが、



    その心は誰にも開かれず、誰にも頼らず
    自分しか信じず
    彼女はそういう孤独を愛しているのか



彼女にとっても、よく知った仲の人間が命の危機を抱えているのに、まったくそれに興味を示そうとしていないように見える。
普段、明るく笑う霊夢、その意外な心の二面性を垣間見る咲夜は、内心冷や汗をかく。
咲夜は、今夜の妖夢の決闘に助太刀するのか迷っていたが、霊夢の反応が自分が考えている以上に無慈悲なものだったので、さらに深く悩む羽目になった。


   妖夢がやられてしまうとは決まっていないが、このままでいいのだろうか?
   このまま、自分は妖夢を助けなくていいのだろうか?
   いや、もしかしたら、案外明日、けろっと戦果を聞かせてくれるかもしれない


「じゃあ、そろそろおいとまするわ」
「うん、じゃ、レミリアにもよろしくね、宴会の会場の件、考えてくれると嬉しいわ」

「・・・・伝えておくわ・・・・」






どんどんと、紅く染まった空に、咲夜の背中が消えていく。
その様子をぼんやりと眺めていた。

霊夢は昔の幻想郷を、妖怪と人間が本当の意味で共存していた時期を思い出した。
霊夢が、まだ本当の少女だったころの話だ。

妖怪からしてみれば、ほんのすこし前のことなのだろうが、
霊夢が妖怪たちに持ちかけられ、考案した、スペルカード戦は、幻想郷が続く限りずっと伝えられていくのだろう。

幻想郷の重大な欠陥を補間するための、戯れで作られた『決闘』の手段だが、今ではコレを知らずに幻想郷で暮らすものなどいない。

楽園と八雲紫が呼ぶ世界は、いわば外の世界から切り離された、出来損ないの世界。
それを欠陥のない理想郷に創り上げるのに、自分も関与しているのだと思うと
この自分の故郷であるこの地に貢献できたのだと、霊夢は誇りを感じる。

一方でスペルカード導入以前の幻想郷を熟知する彼女、
ある種では、幻想郷はスペルカード導入前までは文化の差こそあれ、
喰うか喰われるかの、外の世界と同じ殺伐とした世界だった。

前任の博麗達は、幻想郷の均衡を保とうと、妖怪を斃すことにあけくれたのだろう。

普段、決闘で敵を目前にしたときですら飄々とした態度を崩さない博麗霊夢。
それには、霊夢なりの理由がある。


   自分には、常に後がない。
   だから、本気は出さない。


矛盾しているようだが矛盾はしない。


『博麗を喰うことを禁止する』
という取り決めがある、
結界を崩さないためには必要な措置だ。

この一見、理不尽な取り決めが、幸いにもお互いに本気を出さないようにすませてくれる。


彼女の何代もまえの時代から、妖怪もその言いつけ通り、博麗を自発的に襲うことはほとんどなかったそうだ。
前任の博麗達が、しくじったのはそこだ。

『自分たちが、殺されることなどない』
そう思って、気合を充実させて『相手を斃す』つもりで戦いを仕掛けたのがまずかった。
殺されるとわかっていれば、馬鹿な畜生ですら、必死に抵抗してくるだろう。

賢い妖怪なら、更なる罠を張ってきてもまったく不思議ではない。
その妖怪の本気の拳骨をやわな人間が喰らえば無論ただではすまない。

そうやって、なんども博麗は世代交代を繰り返してきたのだ。

そうではなく、
『相手は、自分が殺されることなどないとタカをくくっている、決闘を舐めているからだ。だから相手は本気を出してこない』
妖怪にそう思わせなくてはいけない。
その上で、うまく本気を出させないように懲らしめる。

これが、難しかった。


霊夢は自分が天才ゆえの圧倒的強さを持つと理解するが故に、相手の必死さゆえの不測の動きに恐怖し、それ以上に、相手の繰り出される技よりも、命を賭けた眼差しに恐怖した。

無論、彼女に勝つ見込みのある妖怪などいない。
だが、後がない霊夢は、敵の精神状態に気を配りながら、慎重に戦った。

相手が逃げれば、適当に、慎重に追い詰めて、雰囲気のなかに緩さを漂わせて、悪さをしないと誓わせた。
だが、最初から必死の抵抗を見せる、決死の覚悟をもった強敵も数え切れないほどいた。



そういう相手は容赦せず、斃した。



相手が、自分の本気の気合を悟れば、お互いの後がなくなる。
後はお互いに死力を尽くすだけになる。
そのことに気づいたのは、つい最近。

だから、本気をお互いに出さないように、諭すように懲らしめるだけにすれば、それで済む。それが、一番善い。
そうして、ようやくのことで、この世界はスペルカード導入を終えて、一区切りの平和を得るにいたった。



    もう、必死をこいて命のやり取りをする必要はない



霊夢は冷たい麦茶をぐびりと飲み干す、紅い夕暮れがとてもきれいだと思った。


それ故に、先ほどの少女達の暢気さに、憤りにちかい不安をぶつけるかどうか迷っていた。

西行寺幽々子の起こした、西行妖の異変。
霊夢はとうとうその詳細を知ることはなかったが、
なんとなくの根拠のないところでは、あの西行妖の根元に何が埋まっているのか感づいていた。

おそらくはその詳細を知るだろう魂魄妖忌が、どんな気持ちでその桜を見続けていたのかと思うと、彼の人生をかけた決意、哀れな少女の魂と、家を守ろうとする老いた剣士の心が、かつて幻想郷の抑止力として戦った霊夢自身と重なり、ぐらぐらと、霊夢の気持ちを揺さぶった。

そして、あの浮かれている妖夢は、
妖忌が孫の決闘を前にして、どんな気持ちで妖夢に免許皆伝などという、紙切れを渡したのか、まったくわかっていないのだと思った。


「・・・・・だから、足元にもおよばないのよ・・・・」
そんなだからいつまでも半人前などと呼ばれるのだ。



場違いな勘違いをする連中は、誰であっても虫唾が走った。
追い込まれている状況がわかっているのか、と怒鳴りたかった。

妖夢の敵は、本気での戦いを望んでいるのだ。
すでにお互いに後はないはずなのに、あんなにへらへらしていた。

聞くだけの話だが、相手は、魂魄家や西行寺を怨んですらいるのだろう。

あの調子で死合いなどと馬鹿げている
妖夢を冷ややかに見たのは、その彼女の覚悟のなさと、場違いな感覚が気に入らなかったからだ。



酒の席が、葬式の席にならなければいいけど・・・・



霊夢はもう一度ゆっくり夕日を眺めることにして、茶をお椀に満たしに神社の中に入っていった。


**********************************



指定された、立会いの場所。
もう夏だというのに、夜が冬のように冷え込む。
夏といっても、桜が散り終わる程度の季節なのだが。

この森のなかは、特殊な環境にあるのだと妖夢は感じた。

妖夢は薄暗い森の中で、時間の前に場所につき、腹が冷えそうな中で相手を待った。
指定の時間のぎりぎりだ。
森の木々が天井のように張り巡らされていて、月光をさえぎっている。

手を口の前にあてて、「はぁー」と熱い息を送る。
「寒い・・・」


昼はあんなに暑かったのに・・・


腰の太刀を握って、具合を確かめた。
鯉口から「かちり」と音が鳴り、輝く刀身がみえる。
楔はしっかりしているようだ。

だが、少し、体の腱が固まっている気がする。
妖夢は巻物の中に

体を冷やせば動きが鈍る、是を避けよ

とあったことを思い出し、持参した着火の道具を使って、火種に火を付ける。
瞬く間に、辺りは明るくなり、体の凝り固まった筋肉がほぐれていく。
もともと、薄気味悪い森の雰囲気を嫌っていた妖夢は、辺りが明るくなったことにほっと安堵の息を漏らした。

「うーん、おそいなぁ」

焚き火を眺めながら、辺りを見渡した。
相手はこんな直前まで試合の場に来ないなんて、何を考えているのだろう?
森の中を、風が駆け抜けて、さらりと妖夢の髪を払った。

「ん?」
違和感を感じて、後ろを振り返った。

「あれ?」
だが、彼女の目には何も映らなかった。
暗い、ひび割れた森があるだけだ。

「・・・おそいなぁ・・・」
彼女は、もう一度、太刀の位置を正そうとした。
さらに、巻物の中にはこうも記されていた。


風上に立てば、敵に気配を悟られる、これを避けよ


*************



「・・・・・」
森の先に、明りが灯っている。
風下に回った剣士は、慎重に歩みを進めた。

落ち葉が音を立てているが、風のおかげで余程近くにいなければ悟られることはない。
柄鳴りがしないように、紐で縛りつけ、大樹を盾にしながら奇襲にそなえつつ暗闇を進んだ。


ふと、先にゆらめく影を見つけた、どうやら、敵は先に死合いの場所に来ていたようだ。
肌が黄金色につややかに光る、猛獣を思わせる、太くしなやかな腕を太刀に伸ばして、さらに接近する。

いた

死合いの相手を見つけた。
さらに歩みを進める。

「ん?」
「・・・・」
剣士からはその死合う敵の顔が視認できまでの距離まで接近していたが、
少女は剣士の存在に気がつかなかった。

暗い場所からは明るいところを見やすいが
明るいところからは、暗い場所がみにくい

経験として剣士はそれを識っていた。
加えて、風上から風下へ音は伝わりやすい。

そして、少女は視線を戻して、太刀の位置を確認し始める。
懐に入れておいた、焼け石はもはや必要ない。
体は温まっている。

どうやら、指定された時間を超えた。
死合いが始まった。

にも関わらず、相手はこちらに気づいていない。
敵は、助太刀を用意している風もない。
罠の気配はない。

これほど有利なことはない。

剣士は姿勢を低くして、脚に渾身の力を篭めた。
太腿が爆発的に肥大して、剣士の体を突き飛ばしたように移動させた。

鞘滑りをする剣は剣士の思う以上に素早く、少女の首へと迫っていく。




  ぴしり




飛んだ血の飛沫が枯葉にあたって、音を立てて弾けた。
作者のねおと申します。

というわけで、次回からバイオレンス。


捏造設定や、散文的な文章のせいで、大変読みにくいと思います。
それでも根気良く付き合ってくれた方、本当にありがとうございます。

この作品は、東方ではありえない、 命のやり取り を書いてみたくなっての投稿になりました。

人物の設定は捏造が入っているし、このキャラの性格が違いすぎるのもの重々承知ですが、
それでもなにか誤字脱字、 不適切な箇所など指摘してくださると幸いです。

あと、思い出したように修正するかもです。
ではノシ
ねお
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コメント



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4.80愚迂多良童子削除
超急展開だなあ。相手は誰だ?
5.無評価ねお削除
作者のねおです

文章の修正を行いました
夜にヒャッハーしてからの直の投稿は大変危険ですので
皆様も気をつけてください
少なくとも2、3晩の推敲の後が適切かと思われます。

文章のノリは古風な感じを心がけました。
6.100名前が無い程度の能力削除
良いですね。続きが気になります!