Coolier - 新生・東方創想話

天子のサクセス☆ストーリー ~幻想郷'Sドリームを掴み取れ!~

2011/10/05 22:00:34
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いろいろと酷いので不快感を覚えた人はブラウザバック推奨します。 




 あの異変をきっかけに私が地上に顔を出すようになってから数ヶ月。山の神社や地底、人里、竹林の屋敷などいろいろな場所を訪れてそれなりに知り合いも増えた。
だが最近になって気付いたことがある。そして酷く気に食わないことがある。それはあることで一部の連中から憐れみの目で見られたり、少々馬鹿にするような態度を取られたり、あるいは意味もなく勝ち誇られたりすることだ。
 小野塚小町、八坂神奈子、八意永琳、八雲紫、星熊勇儀……まあそういった手合いが私に対してそんなふうに振舞うことがある。
要するに乳房の大きさが奴らにとって個々の優劣を決める基準の一つになり得るらしい。
 馬鹿らしい。実に馬鹿らしい。そもそも私がこんな体型をしているのには理由があって、私が地上で生活していたころの乳房に対する価値観というのはまさにこの私の姿のような慎ましさこそ美徳であり、無駄な大きさなどただただはしたないものだったのだ。
 まあ人の世の価値観というものは時とともに移ろうものだし、私も長い間俗世に触れていなかったせいでそんな価値観の変遷に着いていけてなかったのも確か。
そこでだ。私は人間界に生きる雑多な人妖どもとは違い言わずとしれた天界に生きる天人でありいわゆる神格である。
 そんな高位な存在ともなればある程度己の思うように姿を変化させることなど造作もない。というか今の姿はそうしてなったものなのだから。
 天人である私がこのような瑣末なことで気を揉むなど本来なら甚だ不本意なことではあるのだがそれ以上に地上の連中から馬鹿にされるのも癪であるゆえ、背に腹は替えられないということでここは一つ乳房を大きくすることにしよう。
 まあ特別なことなど何もない。天人の身体は人間よりも遥かに霊質の割合が高いものだ。強く望めば在るように姿をなす。

(……C……C……C……いややっぱD……やっぱりもう少し足そう。E……E……でーもー、やっぱり奴らに対抗するためには……F……F……F……)

 精神を集中させ心の中で強く念じ続けると、やがて私の身体をぼんやりとした光が包む。
 ……はい完了。っつて、いたたたた!胸が苦しい!
 慌てて襟元のリボンとブラウスのボタンを外して胸元を緩めると、今まで見たことのない谷間がうつむいた視線の先に確かに存在している。触ってみると、確かに指に感じるむにむにとした柔らかい感触。ふむ、なるほどこれはこれでいいのかもしれない。
 にしても本当にこんなものになんの価値があるというのか。全く地上の生き物が考えることは理解できないが、ひとまずそれは置いておこう。ともあれこの体になったのだ。おりしも今日は博麗神社で宴会が催される。ちょうどいい機会だから皆に御披露目をしてやるとしよう。
 そういえば服はどうしようか。もう数百年もの間以前の姿でいたのでこの体形に合うものなど持っていない。今から用意するのは面倒だし、どうやらこのままで行くしかないようだ。こんなに胸を強調するのは抵抗があるがまあかえって見せるぶんには都合がいいかもしれない。
 にしてもこの重さは想定外だ。天人だから肩が凝るようなことはないにしても、弾幕勝負のときなど邪魔になるかもしれない。今までとバランスが違うからそれまでには少し体を動かして感覚を慣らしておいたほうがいいだろう。せっかく馬鹿にされる要素を排除したのに弾幕勝負で負けてしまっては何の意味もない。

 いろいろ考え事をしていると部屋のドアをノックする音がした。

「何かしら?」
「総領娘様、御客人がおいででございます」
「衣玖が来たのね。出ましょう」

 衣玖の奴、律義にもわざわざ私を呼びにきたらしい。 ドアを開け部屋の外に出ると侍女が私を、と言うより私の胸元を見て驚いたあと少し残念そうな顔をした。まあ言いたいことはわかる。なんでわざわざこんなはしたない姿になったのだ、ということだろう。こいつも私と同じで俗世のことを知らないからそう思うのも仕方ないので、ここは大目に見てやるとしよう。
 無駄に長い我が邸の廊下を歩いているとやたら胸の揺れを感じる。いっそのことサラシでも巻いておこうかと思ったが、それでは意味が無くなってしまうのでやめた。これにもやはり慣れるしかないのだろう。つくづく無駄なものだ。こんなものをありがたがる連中の気が知れない。

「御機嫌よう、衣玖」

 玄関の戸を開けて衣玖に声をかける。衣玖はいつも通り深々と頭を下げたまま私と挨拶を交わした。

「ご機嫌麗しゅうございます、総領娘様」
「わざわざお迎えご苦労様。じゃあ行きましょうかね」
「はい、では……っ!!!!!」

 ようやく顔を上げた衣玖は私を見て大きく口を開けたまま固まってしまった。

「衣玖、どうしたの?」
「けしからん……けしからんですぞ総領娘様……」
「はぁ?」

 こいつ、肩がプルプル震えてやがる。しかも目が据わってて恐いし、帽子の触角がすっげえこっち向いてる。
 ここは先手必勝とばかりに手にした緋想の剣を振り上げたその瞬間。

「総領娘様にはしたない谷間がブバァー!!!」

 なぜか大量の鼻血を大放出してぶっ倒れてしまった。このまま止めを刺しておこうかと少し迷ったが一発だけなら誤射かもしれないし、せっかくのこの日にケチがついてしまいそうなので寛大な心で放置してあげることにした。
 それにしても幸せそうな顔をして寝てやがる。 まあとっとと神社に行くとしよう。

 天界の縁から身を投げ出し、しばらく降下すると玄雲海に飛び込む。雲の中なので当然のごとくあちらこちら水びたしで、天人たる私の体は濡れないものの服はそうはいかない。
 足から降下しているので否が応でも胸が目に入るわけだが服が濡れてみるみる透けてきた。さすがにこの状態で誰かには会いたくないものだ。
 しっかし以前まではこうして降りながら下を向いていたらブーツの爪先が見えていたものだけど、今は胸しか見えないわ。なんかね、これちょっと危なくないか。いや私は体が頑丈だから何にぶつかっても平気だけどぶつかられた方は……まあぶつかって即死する奴なんてそうそういないからいいか。こんな状況で私にぶつかったのならそいつは永遠亭に行く前に富くじでも買ったらいいだろう。

 と考え事をしているうちに玄雲海通過。開けた視界の先に夕日に染まる幻想郷のパノラマが広がる。朝昼晩、そして春夏秋冬。私はこの移ろい変わりゆく景色が大好きだ。変化の無い天界では味わえないものがここにある。これだけで地上に降りるようになって良かったと思えるのだ。
 ここで要石を出して腰掛け、服を乾かしながら景色を楽しむ。山はまだ紅葉には早いがもうこの時間だと空気はかなり涼しくて、確かに季節が変わりゆくことを感じさせる。夕暮れ時に晴れて風が無いのはまさに秋の天気だ。
 真下を見れば今までならもうもうと煙を吐く妖怪の山が見えていたのだが、今は別な二つの山が見える。まあだいぶそれにも慣れてはきたかな。
 服ももう透けない程度には乾いたことだし、ぼちぼち神社に向かうとしよう。

「おーい、天子じゃないか」

 背後から聞こえたその声は魔理沙か。返事をすべく要石を回して向き合うと、魔理沙の表示が驚愕で覆い尽くされたのがわかった。そう、私の胸を見た途端に。

「ててて天子……お前一体どうしちまったんだ?」
「あらあら、私は天人よ?このくらいは造作もないことなの。そうだ。ねえ、今の私のことどう思う?」
「……裏切り者……」
「は?」
「私はお前のことを仲間だと思ってたのに。何てこった、ちくしょう!自分だけ抜け駆けしやがって。くそっ、こうしちゃいられないぜ。早く霊夢に知らせなきゃ!」
「あ、ちょっと……」

 行ってしまった。しかも少し泣いていた。どうして下界の連中はこんなにも胸に対する執着心が強いのだろうか。と言うか魔理沙って年齢を考えるとまだまだこれからなんじゃないかも思うのだが。若い頃からそんなことに捕らわれてるとろくなことにならない気がする。何となく。
 ま、さっさと神社に向かうとするか。魔理沙が霊夢に余計なことを言ってなければいいんだけど、まあ何かあったらその時はその時でどうにかすればいいだけの話だ。

 せっかく要石を出したのでそれに乗りながら空を飛ぶ。ひんやりした風が気持ちいい。遠くに見えていた赤い鳥居がみるみるうちに大きくなり、神社到着。
 境内に向けて高度を落とし、地面に着く直前て要石を消したところで自分の浮力で減速。そのままスカートの両端を軽くつまんで優雅に着地。
 それと同時に霊夢が歩み寄ってきて、私の胸元を怪訝な顔でジロジロと見つめる。

「魔理沙が言ってたのは本当だったのね。なんなのその乳は。反則もいいところじゃない」
「そうよ。これでもう貴方達地上の連中にバカにされることもないわ」
「なんてことなの!あんたの唯一の欠点が無くなってしまったじゃない。文武両道に秀でて育ちも良くて実家お金持ちだし歌や踊りも超上手くて囲碁将棋なんてものすごく強いし孫子とか論語とかの古典や文学にも精通してるしその上超がつくほど美少女なあんたが、絶壁ってことだけが私達が劣等感を抱かずに済むたった一つのポイントだったのに……。こんな完璧な存在が私の目の前に現れるだなんて。ああ、完敗だわ。何もかも」

 ひとしきりわめき散らした後霊夢は私の前に崩れ落ちてしまった。私のことをそんなふうに思っていたなんて、さすが博麗の巫女と言うべきだろう。まあ本当ならもっと早くにそれを受け入れているべきなのだが、胸の大きさ一つでそれに気付けたあたりやはり私が見込んだだけのことはある。

「頭を上げなさい霊夢、貴方は何も恥じることはないわ」

 霊夢にそう声をかけるために膝を屈めると、ちょうど頭を上げた霊夢の目線が私の胸と同じ高さになった。自らの目の前にあるたわわな胸を見るや否や彼女は突然ポロポロと涙をこぼし始めた。

「ありがたや……ありがたや……」

 巫女のくせにこの台詞はシュールすぎるだろ。
 そうこうしているうちにいろんな奴らが私の周りに集まってきた。 いや正確に言うと、私の周りに集まってきた連中と境内の奥に引っ込んだ連中の二つに別れたようだ。
 奥にいる連中で主だった奴は……吸血鬼、そのメイド、庭師、魔理沙、人形遣い、祟り神、さとり妖怪といったところか。
 逆にこっち側にいるのはスキマ、軍神、医者、船頭、妖狐、亡霊姫、尼僧。
 ……と、何とまあわかりやすい分け方か。そして奥にいる連中の絶望感に溢れた顔ったらもう、ね。現実とはかくも残酷なものだったのか。彼女らはきっと今私への嫉妬と自らの限界を嫌というほど感じていることだろう。おそらく厄神も吸い取るのに苦労するほどの厄を発生させながら。
 ああ、こんな気持ちを味わえるのなら異変を起こした時点でこの姿になっておくべきだったか。

「ようこそ、“こちら側”へ!」
「私達は貴方を歓迎いたしますわ」
「今まで馬鹿にして悪かったねぇ。これからは仲良くしようじゃないか」
「それにしても何という神々しくも凛々しいお姿でしょうか。まさに上に立つ者に相応しいではございませんか」
「本当にもうむしゃぶりつきたいくらい立派になっちゃって」

 何だこの展開は。本当は夢ではなかろうか。胸が大きくなっただけでここまで待遇が変わるものなのか。

「さあ天子様、今宵は皆で飲み明かしましょう」

 妖狐が私に杯を手渡してなみなみと酒を注ぐ。それを一気に飲み干すと、大きな歓声と拍手が上がった。

「ちょっと待てやぁ!」

 唐突に奥から怒声が聞こえてきた。

「中身を松茸にしてこいや!」

 普通の魔法使い『白黒』こと霧雨魔理沙が宴会一年分酒樽を豪快に突き倒した。
 さらに洩矢諏訪子に向かって「このヒール祟り神!」と自分の事を棚に上げながら張り手で轟沈させる魔理沙。
 騒然とする境内。
 震える七色の人形遣い。
 白玉楼の庭師は涙目。
 突然スキマの淵に座る八雲紫が立ち上がり賽銭箱の上へ……。
 そしておもむろに道士衣装を脱ぐと 衣装の下からは数億歳の年齢を感じさせない筋骨隆々の肉体が……。
 止めようとする聖白蓮を一瞥して呪文を唱えると瞬く間に蝋人形と化す聖白蓮。
 この事が原因で後日白蓮は寺子屋に飾られてしまった。
 そのまま境内で四股を踏み右手を着く八雲紫。

「お前も蝋人形にしてやろうか!霧雨魔理沙!フヘハハハハ」

 薄笑いを浮かべながら対峙する魔理沙が一言

「このスキマババア!」

 境内総立ち。
 ミスティア・ローレライが歌う。
 犬走椛が尻振る。
 メディスン・メランコリーがぎこちなく踊る。
 拝殿の影ではチルノと大妖精が抱き合ってる。
 魔理沙コール、紫コールで博麗神社が揺れる。
 文々。新聞は号外でこの世紀の一番の報道を決定。


……


……


……


……


……


……


……



「あーっ、さとり様、せっかく天子が遊びに来たって聞いたから来たのに寝ちゃってるんですか」
「そ、そうよ。ね、ほらこんなにぐっすり寝てるから起こしちゃダメ。特にお空、貴方はいけないわ」
「うにゅ?」
「いや、あんまり気にしないで。ほらあっちに行ってなさい」
「はーい。残念だなぁ」

(何て歪んだコンプレックスなの……これは迂闊に突ついちゃ危険ね……)


おわり
てんこの日なので乗らなきゃ、このビッグウェーブに。

でーもー、私は絶壁な天子が好きです。
大事なことなので二回言います。私は絶壁な天子が好きです。
GH3
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コメント



0.600簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
手塚先生が禁じたあれですね
3.100名前が無い程度の能力削除
ところがどっこいっ…!現実では胸の大きさは変えれませんっ…!現実ですっ…!これが現実っ…!
6.90奇声を発する程度の能力削除
何だかとても面白かったですw
9.80とーなす削除
まあ、そういうオチだとは思ってたがw
やっぱりてんこは絶壁だよね!
10.80名前が無い程度の能力削除
幻想郷ドSドリーム
に見えた時点で負けを認めざるをえない

まあ絶壁ペロペロしたいよね
12.80コチドリ削除
やめろって。おいやめろよ。やめろ、盛るのやめろ。盛るな。盛るな。
おまえ何してんだよ。盛るとか盛らないとかの話じゃなくて何やってんだって。
おい、ほんとなにしてんだよ、盛り切れてないって。汚いって。
もうやめろよ。やめろよ。やーめーろーよ。

みたいな感じ。
てんこ盛りは身体に負担がかかるよ、それが飯であれπであれね。
無為自然が一番ざますよ、天子ちゃん。
16.80名前が無い程度の能力削除
夢の中にまでコンプレックスが反映されるってどんだけなんだよ....どんだけなんだよ...!!くっ...
17.80名前が無い程度の能力削除
もはや心を読むなんてレベルに留まらないさとりの能力に乾杯
19.無評価GH3削除
>2様
非想天則でも使われたのでもはや公式!

>3様
舐めてなどいない…熟知しているだけだ…天子の絶壁について…!

>奇声を発する程度の能力様
ありがとうございます!投稿して良かった。

>9様
もはや隠す気もありませんでした。むしろ気付いた早さを競うゲーム的な。

>10様
ドSな天子もアリだと思うんですよ。むしろそっちが本来の性格かも。
もちろん絶壁は鉄板ですが。

>コチドリ様
天子はありのままが一番です。
胸なんて飾り(ry

>16様
そもそものスタンスが歪んだコンプレックスを表現しているという…。
まあ霊夢のセリフとかも歪み切ってます。実際の天子は気にしてないと思いますがw

>17様
夢ってある意味むき出しの心なので読みやすいのではないかと思った次第です。

皆様コメント、点数、そして何よりお読みいただきありがとうございました。
これを励みに次回も頑張ります。