Coolier - 新生・東方創想話

SO-NANOKA-2

2011/10/01 01:25:51
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 前作、SO-NANOKA-の続編です。個人設定が濃い為、読んでない方には、わかりにくいと思います。
 できれば、前作をお読みください。

 SO-NANOKA-(作品集152

 ごめんなさい。リンクの仕方がわからないので、場所を載せるだけで許して下さい……。わかり次第やってみます。

追記。ようやくわかりました。






 夜の紅魔株式会社。明りはついてなく、普段なら誰もいないはずだ。けれど、三階には不穏な影が蠢いていた。社長室に備え付けられた給湯室。三体の影は、チルノ、ルーミア、咲夜だった。月の光のみが部屋の赤い装飾品を浮かび上がらせている。血のような赤のせいか、気味が悪い。チルノは、ルーミアの存在を確認せずにはいられなかった。黒縁眼鏡の奥にある瞳は、真っ直ぐとドアを見据えている。
「ねぇ、るーみゃ。来るのかな?」
 ルーミアは、頷きもしなければ、首を横に振る事もしなかった。
 連日に渡り、紅魔株式会社からある資料が盗まれた。失くした、ではなく、人為的に盗まれたとわかったのは、少しずつ物の配置が変わっていたからだ。一回目は、不覚にも見逃していたのだが。
「チルノ。静かに」
 咲夜は、静寂に包まれていなければ聞こえないような音量で注意した。
 キィ……。
 ドアの開く音。緊張の糸がチルノを引っ張った。自然にドアに視線が向かう。
 あれ?
「むぐぅ」
 言葉が跳び出る前にルーミアに口をふさがれた。ドアの向こうに誰もいないのだ。
 息の詰まるような数秒の間の後、巨大な氷を落としたような音が響き渡る。
「今よ」
「そーなのかー」
 咲夜の指が電灯のスイッチを押す。思いの外暗闇に目が慣れていたらしく、コンマ数秒目を瞑ってしまった。次に目を開けた時には咲夜はドアの前に仁王立ちしていた。ルーミアが動いたので、チルノもそれに続く。入り口で前のめりになっている人物を挟み込む。
「迂闊だったわ」
 悔しげにそうつぶやくと、こけた事を無かった物にするかのように立ちあがった。
「あなたは、古明地こいしね」
 古明地こいし。EX会社の情報課を担当していると聞く。無意識を操る能力を駆使し、小さな情報から企業秘密まで幅広く情報を集めているようだ。
「そうよ」
 こいしは、黒い毛糸で織り込まれた帽子を拾い上げ、ついてもいない埃をはらった。
「あなたが、資料を盗んだのね」
 咲夜は有無を言わさぬ口調で問い詰める。
「違うわよ」
 明らかに嘘と言っているような調子でこいしは返す。 
 「資料」とは、スペルカードの契約書形式が載せられている資料だ。盗まれるという事は、料理人がレシピを盗まれるようなもの。一度他の人の手に渡れば偽物が出回ってしまうだ。
「何でこんなことするのよ」
 今度は、ほとんど独り言のように咲夜は呟く。
「フランのお返しよ。特にあなた!」
 こいしの指がルーミアをさす。
「そーなのかー」
 こいしの発言は、「やりました」と言っているようなものだが……。チルノにもわかる。当然、咲夜もわかっているようだ。
「……拘束するわ」
「嫌に決まってるわ」
 声と共に、こいしの姿が消え去った。能力を行使したのだろう。
「勿論、逃がさないわ」
 応答するように咲夜の目が赤く光る。
 あ、まずい。止めなきゃ。
「まぁ、待て咲夜」
 ふいに、入口から手がのび、咲夜の肩を掴んだ。チルノの代わりに、咲夜を止めてくれたのだ。誰だか判別するのはたやすかった。社長のレミリアだ。
「社長、なぜここに?」
 咲夜が動揺するのは当たり前だった。今回の件はレミリアには知らせていない。レミリアは、特に珍しい事でもないかの様に言った。
「お前達がこそこそ密談してたのが聞こえたからだ。とりあえず中には入れ」
 小柄なこいしは、既に咲夜の脇元をくぐり抜けて逃げてしまっただろう。レミリアは、ドアの前で一度跳ねる。チルノを含めた三人の顔を一回ずつ見回した。
「やっていた事は大体わかるが……。どうして相談しなかったんだ?」
 咲夜の答えは、お手をわずらわせたくなかったから。だった。
 予想通り、とでも言いたそうな表情でレミリアは苦笑する。
「気遣いはありがたいが、相談してくれ。こんな物があったらたまらんからな」
 レミリアは、ドアに張られた縄をさす。こいしが引っ掛かった単純な罠だ。
「申し訳ありません。けれど、何故こいしを逃がしたのですか?」
「念の為だ。咲夜はナイフを当てる気はないだろう。けど、たまたまこいしに当たるかもしれんだろう? あいつの能力は厄介だ。それに、手段のあるうちは、言葉と知恵で勝負をするんだ」
「おっしゃる通りで」
 咲夜はバツが悪そうに頬を掻いた。完璧に見える秘書にでも、抜けている所はあるようだ。
「レミリア、資料どうするの?」
「社長と呼べ、社長と。それは勿論返してもらう」
 そう言うが、無意識を操る能力を使っている状態のこいしを見つけるのは難しい。携帯の番号でも持っていれば話は別なのだが、持っているはずない。けれど、流石社長と言うべきか、それらを考慮したうえで、既に作戦を練っていたようだ。
「目には目を、妹には姉を、だ」





 こいしの姉に当たる人物は、古明地さとり。彼女は旅館を運営していた。その名は地霊館。上質な温泉が売りだ。さとりに会いに、チルノとルーミアは地霊館を訪れていたのだ。けれど、彼女は多忙らしく面会するまでに時間がかかるようだ。その間、温泉に入る事にした。
「あぁ……いい湯だねぇ」
 もうもうと湯立つ温泉は、地霊館の自慢の湯だった。とは言っても熱い温泉は見るだけだ。本当にお湯につかっては溶けてしまう。チルノは、冷水に身を沈めているのだ。冷水にも、原水を冷ましたものが使われているらしい。紅魔株式会社から、徒歩十五分足らず行き来できる場所だ。またお風呂に入りに来ようかな。と、思えるほど身に染み渡る気持ちの良い冷水だ。
 一畳ほどのスペースで思い切り足をひろげる。
 こんな事をしていたら、今日の仕事を忘れてしまいそうだ。前回の、EX株式会社の取引と比べれば、はるかに楽なものだった。こいしの姉であり、地霊館の主でもある、さとりにお願いするだけなのだ。こいしを止めてくれ、と。
 本来はそれだけだ。けれど、実は他にチルノ個人で思案している事があった。さとりは、スペルカード業界から注目を浴びている。だから、友好な関係を築いておこうと、思っているのだ。彼女が注目されるのは能力ゆえの事だ。販売用スペルカードを作るのに必要なものは、契約書形式、それと魔力をあらかじめ込めておかねばならない。これらは、絶対に必要なものだ。そして、必要というわけではないのだが、あったに越したことはないものがもう一つある。感情だ。感情が上手く噛み合えば、スペルがより強力になる。本来、作った時の感情は本人にしかわかり得ない物。しかし、さとりにはわかるのだ。スペルカードを完全に模写できる。これが、さとりの注目される理由だ。少しでもいいから友好な関係を築いておきたい。
 一人、そんなことを夢想するのだった。
 どれくらい時間が経っただろうか。そろそろ、約束の時間が近づいてきたのではなかろうか。限られた視界の中で、ルーミアの姿を探した。EX商談以降、久しぶりにルーミアと組めたのだ。嬉しいのは言うまでもない。
視界の中にルーミアは見つからなかった。もう少しゆっくりしようかな。そう思い直し、あくびを一つ洩らした。




 ……寝てしまった。
 気が付けば約束の時間をとうに過ぎている。風呂から出たチルノは、まだ水気を含む体のまま廊下を疾走した。綺麗にワックスがけされた床に滑りそうになりながらも、「さとり」のネームプレートが張られた部屋に飛び込んだ。紅魔株式会社では遅刻常習犯で通っている。しかし、出張で遅れたことはなかった。EXとの商談で身に染みているからだ。
 その筈だったのに。
 二人の視線が突き刺さる。ルーミアとさとりだ。沈黙での出迎えだった。いっそのこと怒られた方が楽だ。
「ごめん、遅れちゃった」
 畳と平行になるように、頭を下げた。
「そーなのかー」
「別に良いわよ。そこに座って」
 ルーミアもさとりは特に気にする様子もない。さとりは、座布団を指差した。拍子抜けしてしまった。チルノは畳に手をつき、正座で座る。安堵しても良いのだろうか。深呼吸を一回した。線香の臭いが鼻孔をくすぐる。落ち着きを取り戻し、部屋を見渡す。和で統一されたこざっぱりとした部屋だ。机もタンスもなく、本来の広さよりも広く感じる。
「さて、揃ったようね。何の用かしら?」
 さとりが言葉を言い終わると同時にルーミアが肩をつついてきた。何? と、訪ねると指がドアの方を指す。開きっぱなしになっていた。閉め忘れてたか。
「あ、閉めなくても良いわよ」
「そーなのかー」
 気遣いは有難い。けれど、さとりからすれば出鼻を挫かれた形になる。
「何の用かしら?」
 さとりは全く気にしていなかった。あらかじめ聞いていた通り、寛容な人のようだ。
「頼み事があってきたの。こいしから資料を取り戻してほしいの」
 できれば、地霊館またはさとりと友好な関係を築いておきたい。頼み事をする上で、前持って言っておくべきかどうか悩んだが言っておくことにした。
「後、地霊館と友好な関係を持つために」
 さとりの口角が僅かに上がる。
「素直でよろしい」
 そうだった。さとりは心が読めるんだった。
 言った後に思いだす。行動が思考の先を行くのは、どうも治らないらしい。それでも選択ミスは避けれたようだ。安堵と共に一寸の違和感がチルノを襲った。違和感の正体は良くわからない。
「で、こいしが何をしたの?」
「ええと……」
 昨夜の出来事を自分なりにまとめ、話した。紅魔株式会社に居るはずのないこいしが姿を現したこと。資料を盗んだのを思わせるような言葉を放った事。
「こんな感じかな」
 さとりはチルノの話を反芻しているようだった。物分かりのいい人だとも聞いていたし、問題無く受け入れてくれるだろう。
「こいしが資料を盗んだって言うのね」
 さとりは鼻で軽く笑わった。
「こいしがそんな事するはず無いじゃないの」
「え?」
 想定外の言葉に戸惑いが隠せなかった。予想が大幅に外れたのだ。わかってくれると思っていた。
「本当だって」
 冷たい手がチルノの首筋をなでた。
「こいしはそんな事しないわ」
 姉が妹を庇いたくなるのはわかる。
 事実は事実。けど、「見た」と言えるだけで、証拠を提示しろ。と言われても出来ない。次の一手を失ってしまったチルノは黙するしかなかった。自分でも情けなくなるが、ルーミアに援護を求める視線を送った。それを察してくれたようでルーミアの手が動く。さとりの元に二つの透明なビニール袋が投げられる。さとりは、それを拾い上げるとまじまじと眺めた。
「これは……、こいしの髪の毛と帽子の毛糸?」
 ルーミアは、基本そーなのかーしか話さない。故に、答える事はしなかった。EX株式会社の時はなぜか通常の言葉を発したのだが。
「これが社長室にあったという証拠はないわ」
 今度はルーミアが目で合図を伝えてきた。何か代弁を求めているようだ。証拠があるのだ。さとりは後一押しで落ちる。証拠を否定するなら、調べてもらえばいい。
「なら、それを警察に調べてもらえばいいよ」
 言いはなった後に、ため息が漏れそうになる。この時点で、友好的関係を築くのは諦めた。あまりにも毒気の強い言葉を吐いてしまった。さとりからの嫌悪の視線がチルノに突き刺さる。
「わかった。そこまで言うなら信じるわ。こいしに言うわよ。でも、そちらの手違いだった時は……」
「わ、わかってるよ」
 これでも、気を強く保っているつもりだ。人から嫌われるのは慣れようがない。ねっとりとした視線がチルノを捉え続ける。
「電話、かけてくる」
 ぶっきらぼうにそう言うと、さとりは立ち上がり、部屋を後にした。背中には、少なからず怒気が感じられた。
「ねぇ、るーみゃ。本当にこれでよかったの?」
 表情を変えずにルーミアは頷く。どうしても、心にわだかまりが残ってしまう。そんな心に反応するかのように風に揺らされたドアが音を立てた。
 さとりとは、良い関係を持てると思ってたのになぁ。でも、会社の為なら仕方ないのかな?
 巡り続ける思考は止まる事を知らなかった。
 五分程経っただろうか。さとりは、お茶と菓子を持って帰ってきた。
「どうぞ。こいしが出なかったのでもう少し待って頂戴」
「そーなのかー」
 もう少しってどの位だろう。茶が出されたものの、早くここから去りたい気持ちでいっぱいでとても飲む気にはなれなかった。沈黙の幕が下りる。さとりに目をむけられない。
 無限に続かと思われた沈黙は、三分足らずで破れた。それを破ったのは、携帯のコール音だ。ルーミアは、さとりの居る手前にも関わらずポケットから携帯を取り出し耳にあてる。
「ルーミアだな?」
 レミリアの声だ。携帯から発せられる声は、チルノにまで聞こえる。恐らく、さとりにも聞こえている。
「返事がないという事はルーミアだな。今回の件は、こちらの手違いだったようだ。資料は引き出しの中に入っていた」
「そーなのかー」
 半ば面白がるようなレミリアの話し方。
 チルノの頭の中は真っ白になった。
 どうして?
 口の中がどうしようもなく乾く。
「それだけだ。今回の件は無事終了だ」
「そーなのかー」
 そこで電話が切れた。
 無事? 何処が無事なの?
 この惨状。大失敗に決まっている。
 この間違えは取り戻せるの? 
「さとり。ごめん……。あたい達の間違えだったよ」
 一層目をむけれなくなった。こいしは、ただ居ただけとでも言うのか。拭えきれない疑いを押し殺し、もう一度謝る。大切な妹を侮辱してしまったのだ。どんな罵声を浴びてもいいと思っていた。
「謝るのは私の方よ」
「え?」
 とっさに言葉の意味が呑み込めなかった。
「こいしは本当に過ちを犯したわ。資料を盗んだ。心が読めてしまう私には、わかってしまうの。あなた達が嘘をついていない事位は」
 さとりの表情が辛そうにゆがむ。
「だから、ルーミアさんと芝居を取らせてもらったわ」
 芝居。何の意味が? 自分を騙すために? 
「こいしにあなた達がどれだけ困っているかを聞かせるためよ。さっきまでこいしがいたのよ。あなた達をつけてきたの」
 さとりは、チルノの心を読み問いに答えてくれたようだ。
 チルノの中で筋が通った。心当たりがある。さとりの言葉に違和感があったのだ。心を読める彼女が何故わざわざ確認するような作業をしたのか。それに、こいしはルーミアに最も執着していた。着いて来たというのもそれなら頷ける。
「ドアも開けっ放しになってたでしょう。あれは、こいしのせいよ」
 話さないルーミアとの相談も、さとりの能力を持ってすれば可能だ。
 温泉で寝ててもルーミアが起こしてくれなかったのも相談するためだったのだろう。けど、どうして自分も芝居に誘ってくれなかったのか。いや。思い直す。打ち合わせをしたところで演技ができるほど器用ではない。
「どうやら、こいしは自分で道を正してくれたようね」
 悲しみを上回る喜びが声から感じ取れた。
「やっぱり私の妹だったわ」
 チルノは、脳内で流れていく言葉を整理する事に追われていた。意味をすべて呑み込めたとき、安堵感がチルノを包み込んだ。
「それなら、良かった……」
 二つの意味での良かっただった。まず、さとりの嫌悪が芝居だった事。それと、こいしが自分で間違えを直した事だ。冗談抜きで、警察沙汰にならずに済んでよかった。
 ふいに、さとりの表情が真剣になる。
「今回の件は、申し訳ありませんでした。お詫びにならないかもしれませんが、チルノさん。あなたの望んでいた紅魔株式会社との連携、取らせて頂きます。頼み事がある時は言って下さい。お力添えします」
「本当!?」
 言い終えた後に気付く。喜んでいい雰囲気ではないと。また思考より行動の方が先に出てしまう。
「ごめんね」
「いいわよ。あなたの素直なところが気に入ったのもあるんだから」
 そう言い、さとりに握手を求められた。チルノは、快くそれに応じた。





 紅魔株式会社に戻ったチルノとルーミアは、休む間も無く社長室に向かった。夜は不気味に光っていた赤だが、今は生き生きとした力強さで部屋を埋めている。レミリアはと言うと、社長専用の椅子に座り紅茶をたしなんでいた。
「良くやったな。ルーミア。そして、チルノ」
 レミリアは、引き出しの中から資料を取りだし、ルーミアに差し出した。ルーミアは、受け取ると、何となくと言った感じで眺める。特に入念にチェックした様子もなく、チルノに回ってきた。
 機械的な文字ばかりが並んでいるものと思っていたが、隅っこの方に、手書きの文字が書かれていた。遠慮がちに「ごめんなさい」と書かれている。丸みを帯びた文字だ。
「レミリア、これって」
「良い姉には、良い妹がいるってもんだ」
 レミリアは多大な感動と、少しのいやらしさの混じった笑みを浮かべる。
 フラン、こいし。EX株式会社には利益最優先の冷血の集まりだと思っていたが、案外そうでないのかもしれない。
 そう思った矢先だ。
 レミリアの表情が急にけわしいものにかわった。
「ところで……そんなところで何をしているんだ。八雲紫」
「こんにちは。お邪魔してますわ」
 三人しか居るはずの無い部屋。背後からの声。ブリキ人形のようなぎこちなさで首を回す。三日月状の隙間から、八雲紫が身を乗り出していた。
「調子はどう? ルーミア」
 紫の手がルーミアにのびると同時に空気が揺れ動いた。ルーミアの頭上すれすれを赤い閃光が駆け抜ける。閃光の後には、何も残っていなかった。
「うちの社員に触るな」
「危ないわねぇ」
 刹那的時間で紫はソファに移動していた。焦る様子もなく口元を扇で覆う。
「手を出すのは禁忌じゃなかったかしら。ねぇ、ルーミア」
 ルーミアの瞳には戦慄の光が宿っていた。
 手段のある内は、言葉と知恵で勝負する。人に言っておいて、自分は徹底しないレミリアではない。意味する事。それは緊急事態だ。脳にそう言い聞かすものの、体はそれに順応してくれない。結局は指ひとつ動かすこともかなわない。
「何をしに来たの。EX株式会社社長兼警察庁総務官さん。社長はあなたに当てる気なんてないわよ」
 ルーミアは皮肉のニュアンスをたっぷり盛った言葉を放つ。けれど本来の力強さが見えない。レミリア自ら手を出してしまったのだから。
「あらら、リボン外れちゃったのね」
「お陰さまでね」
 リボンのなくなった髪を撫でる。
 そういえば、ルーミアが話している。麻痺しかけている脳内がようやくそれのみを感知した。
「とにかく、帰って頂戴。あなたはお呼びじゃないのよ」
 異常なほどルーミアは攻撃的だ。
「そうしたいのは山々だけど、用事があるのよ」
 対する紫は、全く動じる様子がない。ルーミアが言葉を展開する前に紫自身の言葉でルーミアをねじ伏せた。
「率直に言うとあなた達は最近、力を付けすぎているわ。このままでは、経済界のバランスが崩れるの。成長を抑えるためにうちの子会社になりなさい」
 レミリアに対する言葉だった。
「嫌だね。成長しない会社に意味はない」
 即答する。
「入らなければ、紅魔を潰すわ」
 紅魔を潰す? 本気で言っているの?
 紫の目は、冗談を言っているようには到底見えない。ドスの利いた言葉は、チルノを貫いた。レミリアも、唖然とした様子だ。
「ま、今すぐには無理だけど。後、ルーミア、EX会社本社で働きなさい。あなたは、本来、EXに居るべき者よ」
 鈍器で頭を殴られたかのようにルーミアの体がゆらいだ。チルノも、同等か、それ以上の衝撃を受けた。紫の言った二つの言葉はあまりにも現実感がなく、重い。
「渡すわけ無い」
 復帰したレミリアは、吐き捨てる。
「じゃあそれも、潰してからにしましょう」
 会社がつぶれ、ルーミアが居なくなってしまう。最悪の将来が脳内をよぎった。
 あたいの中の最強が居なくなる。絶対に嫌だ。
「紅魔は……、潰れないよ」
 やっと出たチルノの声はほとんど掠れてしまう。
「そうよ。あなたが、紅魔を潰してからと言うのなら、絶対止めて見せる。私はここに居たいの」
 ルーミアは、紫を真正面から睨む。紫は、おびえむ様子は見せない。
「ま、今回は戦線布告ってところね」
「帰れ」
「わかったわ。リボン、置いとくわよ」
 テーブルにルーミアが着けているリボンを置き、紫は隙間に消えていった。
 最強は、その場に棒立ちになったまま偽空を見つめていた。
 部屋には紫の置いて行ったリボンと、嫌な予感だけが残っていた。
読んで下さり有難うございます。
世界を広げたくなりました。SO-NANOKA-は、連載の形を取らせて頂きます。
晴れ空
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コメント



0.430簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
今後の展開がどうなるか楽しみ
4.90名前が無い程度の能力削除
おお、まさか続編が来るとは。
前作から楽しませていただいていました。
タイトルはルーミアを表しているのに、チルノ視点なのがいい。
これからどうなるのかに期待。
5.90名前が無い程度の能力削除
そーなのかー。
何だか読んでいたくなりますね、このシリーズは。
6.80名前が無い程度の能力削除
チルノが森田っぽくて好きだ
7.90名前が無い程度の能力削除
続けろよ?

絶対続けてくれ!!
12.80Dark+削除
こういう特殊な作品は大好きです。
頑張ってくださいなー。
14.90愚迂多良童子削除
おお、このルーミアにはちょっと痺れる。
17.100ルミ海苔削除
EX化の塩梅、癖になりそうです。