Coolier - 新生・東方創想話

     Call of Destiny        ~War of Memories~ (Ⅰ)

2011/09/10 12:37:55
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 天蓋窓から差し込む光の先で、幼い女の子がベッドの上に腰掛けている。

「運命は人を翻弄するわ。けれどそれはとても素敵なことよ。だって、運命によって出会いを得ることが出来るのだから」

 女の子はそう言うと綺麗な顔に笑みを浮かべた。姿は幼いのにその声色は上品で落ち着いて、まるでお姫様のようだった。清潔な白いシャツから伸びる手足は白磁のように白く滑らかで、紅い瞳はルビーのような澄んだ魅力的な輝きを湛えている。
 女の子は人差し指を立て、ウィンクするように片眼を閉じる。

「それは貴女も私も一緒なの」

 囁くように女の子は言う。
 それから女の子はベッドの上に身を横たえると、穏やかな眼差しでこちらを見詰める。

「……ねえ、貴女は自分がお好き? 」

 すると女の子はポツリと聞いて、また私を見詰める。やがてその薄紅色の唇に笑みが浮かび、口元に手を添えると女の子はクスクスと笑いを漏らした。

「私は好きよ。……貴女の事がね」

 口元から手を離してそう言うと、女の子はニッコリと笑った。その笑顔はとても優しくて、温かだった。





『当機はまもなく南ベトナム、サイゴン国際空港に到着致します。現地時間は2月3日です。なお現地では現在北ベトナム軍による攻勢が行われており、現地では細心の注意を払って行動して下さい。繰り返しお伝えします。当機はこれより……』

 機内アナウンスで私は目覚めた。すると同時に目頭から涙の雫が頬を伝い落ちて、私はそれを指先で拭うと溜息を漏らした。
 あの夢を見る度にコレだ、訳が分からない。あの夢と、あの子は一体なんなのだろう。私はあの子を知らないし、生まれてからずっと戦闘技能だけを埋め込まれ殺戮者として生きて来た私にあんな安らいだ時間はなかった。だと言うのに、あの夢を見る度に言いようがないほど悲しくそして懐かしくなるのは何故なのだろう。
 
 ……いけない。今はそんなことに心を割いてる時ではない。これから教会の任務なのだ。気分転換した方が良いだろう。

 茶革の手提げ鞄を手に取って私は席を立ち、機内トイレへ向かう。「もうすぐ着陸になりますのでご遠慮下さい」と言う客室乗務員の声を無視してトイレに入ると、中から鍵をして鞄を床に置く。そして洗面台の蛇口を捻り、出て来た水を手で掬って何度も顔を洗った。そうすると幾分気分がサッパリした。
 何気なく鏡を見る。そこに写る水滴をまぶした自分の顔はやつれて蒼白で、その奥で蒼眼がギラギラと気味の悪い光を湛えていて、銀髪はぐしゃぐしゃで跳ねるに任せていた。ここのところ教会の任務で休む暇なく世界中を飛び回り、おまけに荒事ばかりこなしていたからだろう。まあ、私のような人間にとって疲労はさしたる問題では無いのだけれど。

 ああ、そうだ。
 私は鞄から一枚の資料を取り出した。それは今回の任務の指令書で、現地に着く前に破棄を命じられていたモノだった。考え事が多過ぎてすっかり忘れていた。でも折角だし捨てる前に一応再確認しておくか。


『題名:教会の最討滅対象である吸血鬼レミリア・スカーレットの情報を保持する人物の保護

   1968年 ヴァチカンローマ 作戦統合局

 我が教会が追い続け、近年その消息を断ち続けていた吸血鬼レミリア・スカーレットの情報を持った人物がベトナムに潜伏していると言う情報を、現地に潜伏する我が教会の諜報員がMACV-SOG※1の協力筋から得た。そのため討滅機関員である貴公、オリヴィア代行者に以下の指令を下す。

1、現地に着き次第、サイゴンに潜伏中の我がローマ教会の諜報員と接触せよ。彼が作戦への準備を整えている。 

2、レミリア・スカーレットの情報を持った人物の保護。

3、保護が完了次第、国外から連れ出しローマへ連行せよ。
  尚、その人物に不測の事態があった場合でも、レミリア・スカーレットに関する最低限の情報を持ち帰ることが望まれる。

 以上である。尚、この書類は機密保持のために現地に着く前に必ず破棄するように。

 ※1 MACV-SOG(南ベトナム軍事援助司令部 特殊作戦部隊)』


 目を通すと私はそれをビリビリに引き裂いて便器の中に放り込み、レバーを引くと凄まじい騒音と共に指令書は吸い込まれて消える。

 するとトイレのドアがノックされて、外から客室乗務員の声が聞こえた。

「お客様。用は済まされましたか? 」




 諜報員が待っているバーを目指して私はサイゴンの街を歩いていた。
 私は深緑色のカーゴパンツと黒のノースリーブという姿だった。2月でもサイゴンは暑いと思っていたからだったが、実際街を歩いていると街路樹達の影が歩道を途切れることなく覆っており、さほど暑さは感じない。街並みはフランス植民地時代の影響を色濃く残したお洒落なルネッサンス調の建物ばかりで、周りを歩くベトナム人達の皆が清潔な服装に身を包んでいる。その一方で道路をアメリカの大型車がエンジンを唸らせながら走り抜けていく。初めてベトナムに来たが、とても欧米っぽい街だ。
 やがて待ち合わせのバーの前に辿り着く。諜報員はこの中だろう。ドアを押せば軋む音を立ててそれは開き、私はバーの中へと踏み入る。
 薄暗く埃っぽい店内は閑散としており、カウンター前の椅子に背を向けて座っている男以外に人影はない。その男は黒いフードを被り黒革のコートと黒いスラックスを身に纏っている。
 あの男が諜報員だな。そう本能的に悟った私は隣の席に腰を降ろす。フードを深く被って俯いているために彼の表情は窺えず、私が隣に腰掛けても無言のまま微動だにしかった。

「Lam hang?(ご注文は?)」

 座ると奥から小太りのバーテンダーがやって来て言う。

「Tea.Duong vao nhieu.(紅茶を。砂糖たっぷりで)」

 バーテンダーは顔をしかめるが、「Toi da hieu roi...(分かりました)」と言って奥に消えたので出来ないことはないらしい。

「……クラークだ」

 しゃがれた声だった。

「オリヴィアよ。ここは大丈夫でしょ? 」
「ああ。米軍のMPもここには踏み込まない。……初めてのサイゴンはどうだ? 」

 流石は諜報員だけあって、私が初めてベトナムに来たと言うことを知っているようだ。

「パリとロサンゼルスを混ぜた感じね。それで情報保持者の居場所は? 」

 クラークがコートのポケットに突っこんでいた手を出す。その手は折り畳まれた地図を持っていて、彼はテーブルの上にその地図を広げた。地図上に描かれた南ベトナムのところどころが、北ベトナム軍とベトコンを示すであろう赤に塗られている。

「調べたところ……情報提供者は、国境付近の都市『フエ』の市庁舎にいる……」

 彼の指先が『フエ』の黒点を指差した。その黒点は真っ赤に塗り囲まれている。

「その情報は確かなの? 」
「あぁ……。俺のような人間には少なからず『その手のルートと調査方法』がある。そしてそれは、この上なく信憑性の高い情報をもたらしてくれる……」

 つまり仕事のやり方と協力筋の詳細は私には秘密で、与える情報は黙って信じろと言う訳か。彼の様な機密性の高い仕事を受け持つ人間なら、そうなるのも当然かもしれない。ならば黙ってその情報を信じてあげる他になさそうだ。

「現地の状況は? 」
「北ベトナム軍のテト攻勢に連動して動きだした南ベトナム民族解放戦線が、市内の大半を占拠している……。そして南ベトナム人やアメリカ人達の逃げ込んだ市庁舎を包囲しており、現在その市庁舎にて……米軍と南ベトナム軍による救出作戦が行われている……。その情報保持者が生きてるなら、市庁舎で救出を待ってる筈だ」

 バーテンダーが奥から出て来て、コーヒーカップに煎れられた紅茶を私の前に置く。その紅茶からは湯気が立っていなかったので、早速私はカップを手に取り一口含むが期待したほど甘くはなかった。なのでカップをカウンターに置いて手を離したら、バーテンダーはあからさまに嫌そうな顔をしてまた奥に消える。
 彼はポケットから手を出して地図を畳むとしまった。

「現地は戦闘地域なので念の為にSOGの協力を取り付けた……。あんたのことも話してある。あんたはまず米軍のケサン飛行場に行き、そこから米軍のヘリに乗ってフエに向かってもらう。武装もあっちが用意してくれる……」

 随分と米軍のバックアップがなされるようだ。ここまで協力してくれるなら、いっそ米軍に情報提供者の保護を頼んでも良かったのに。
 まあヴァチカンには自分達の仕事の領域に他者が踏み込むのを極度に嫌がる傾向があるから無理な話だろうけれど。私はどっちでも構いやしない。

「まぁ……あんたなら一人でも大丈夫そうだがな……」 

 どうやら私の経歴までも調査済みのようで。

「買い被り過ぎよ」
「……ベトコン共は所詮素人だ。あんたの敵じゃないのは事実だろう」
「仕事を完遂出来るならなんでもいいわ」

 さて、雑談になり掛けてるのでもう話は終わりだろう。私は席を立つ。

「もうじき店の前にSOGの連中が来るだろう。彼らがあんたをケサン飛行場まで送ってくれる……」
「分かったわ、待ってる。話は以上? 」
「ああ」
「そう」

 私はカーゴパンツのポケットから、くしゃくしゃの一ドル紙幣を取り出す。それを四つ折りにするとコーヒー代としてカウンターの上に放り投げて私は店を出た。

 さて、仕事の時間だ。




 ケサン飛行場にはヘリのローター音が絶え間なく響き渡っている。
 薄暗い天幕の中には私以外に誰もいない。迷彩服に着替えた私は古錆びたパイプ椅子に背を持たれながら手にした拳銃マガジンの中に9mm弾を押し込んでいる。目の前の木製机の上には、2丁のFNハイパワーが置かれており片方はマガジンが挿入済みだ。その傍らには塗装のはげた四角い真空管ラジオが置かれ、そのラジオからはクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「Fortunate Son」が流れている。
 天幕の中に米兵が入って来る。彼は背筋を正すと私に敬礼した。

「Msオリヴィア。合流予定のSOG隊員が間もなく到着します」
 
 さて行こうか。
 私は机の上のFNハイパワーを手に取ると弾込めを終えたマガジンを挿入し、スライドを引いて初弾を薬室に送り込む。そしてもう片方も拾い上げると椅子から立ち上がり、両脇に吊るした茶革のショルダーホルスターに二丁をそれぞれ収める。
 天幕の外に出ると強い硝煙の臭いが鼻をついた。周囲では土煙を巻き上げながらヘリがいくつも離発着を繰り返し、忙しなく米兵が行き交っている。
 澄んだ蒼空には黒煙が立ち上がり、ケサンを包囲する北ベトナム軍の対空砲の曳光弾が散発的に撃ち上がるのも見えた。そんな空を黒いUH-1が雲霞のごとく飛び交っている。
 すると一機のUH-1が高度を降ろしながらこちらに接近してくるのが見えた。やがてそれは私の近くの地上スレスレでホバリングし、その機体から一人の米兵が飛び降りるとすぐにヘリは高度を上げて飛び去って行く。
 飛び降りた米兵は私の元に歩み寄って来る。彼は黒髪の白人で、素肌の上に直接コンバットジャケットを纏っている。その身体は泥と汗に塗れ体中至るところに返り血を浴びており、両手はそれぞれM16A1を掴んでいた。

「ようこそベトナムへ。ニック・パターソン曹長だ」

 そう言って彼は口元に笑みを浮かべる。

「オリヴィアよ。酷い格好ね」
「チャーリとの楽しい遠足帰りだからな。ココはホントにクソみてぇなところだよ」

 彼はそう言うと片方のM16A1を差し出し、私はそれを受け取ると追い紐を肩に掛けて背負う。渡されることは前もって知っていたのでM16用の5.56mmNATO弾は既に持っていた。

「俺と、今はいないが俺の部下があんたがフエで人探しをする間の護衛をする。まあ、あんたのお守<おもり>なら護衛というより共闘になりそうだがな」
 
 彼も私の経歴を知っているのか。あの諜報員から教えて貰ったのだろうが、経歴は少し教え過ぎだ。
 するとパターソンの目が私の両脇のショルダーホルスターに収められた二丁のFNハイパワーに行く。

「……トゥーハンドよ。普通の人間が使ったら的に当てるどころか自分の頭をふっ飛ばしかねないけれど、生憎私は普通の人間ではないからね 」

 気になるご様子なので教えてあげた。するとパターソンは顔に苦笑を湛えて肩を竦める。

「まあいいさ。だがこれだけは忘れるな。これから戦うチャーリー共はあんたが思ってるほど甘くは無い。しっかりと訓練され、武装を整えた人間達だ。油断は禁物だぞ」
「構いやしないわ。私は仕事をこなして帰るだけ」

 戦いもそのための手段でしかないし、故に恐れも躊躇も無い。仕事のためには容赦もしない。
 それが私のスタンスだ。
 するとパターソンが複雑そうな目つきで私を見る。一体どうしたと言うのだろう。

「なに? 」
「いや……。気にするな。独善めいたことを言っても仕方ないしな」

 そう言うとパターソンが目をそらした。ますます訳が分からない。
 近くにUH-1が着地する。中には4名の隊員が載っており、パターソンはそのヘリを指差した。

「あれが俺らをフエのポットラックパーティーに連れて行ってくれる。ああ、あとそれから」

 パターソンはそう言うと腰のポーチに手を突っ込み中をまさぐる。そしてインカムとイヤホンマイクを中から取り出すと私に差し出した。

「迷子にならないように、コレだけは絶対に付けておきな。近くの部隊やヘリと連絡が取り合える」

 私はイヤホンマイクをインカムと繋いで耳に挿す。そしてパターソンと共にヘリに歩み寄るとハッチの開け放たれた機内に乗り込む。

『ホテル2、発進する』

 インカムからヘリパイロットの疲れた声が聞こえ、押し付けられる感覚と共にヘリは地面から離れた。






『大通りを大勢のベトコン共が行進してくる!! 座標12,46への航空支援はまだか?! このままじゃ脱出用ヘリの降下ポイントを確保するどころか敵の包囲すら突破出来ないぞ!! 』

 米兵の切羽詰まった叫び声が耳に挿したイヤホンから聞こえる。
 ハッチを開け放った機内からは眼下のフエが見渡せる。街中至るところから火焔と黒煙が立ち昇り、その数と勢いは市の中心に向かうにつれて増して行く。街を燃やす火焔は曇り空を赤黒く染め、その光景はまるで火焔地獄のようだ。私達は機内で身を寄せ合うようにして座っている。

「こちらSOG、第3偵察部隊。現在ヘリにて市庁舎に向かっている。市庁舎の状況はどうなっている? 」

 パターソンがイヤホンのマイクに言う。

『こちら市庁舎のB中隊! 北棟と中庭はなんとか確保しているが、南棟がチャーリー共に占拠された! それと市庁舎中にベトコン共が浸透している! 絶対に市庁舎の空き地にヘリを着陸させるなよ! 駐車場や屋上は奴らだらけだ! 』

 吠えるような声が銃撃音や爆音と共にイヤホンから聞こえる。

「了解。では中庭に降下する。我々の到着まで中庭を死守してくれ」
『言われなくてもやってるよ!! クソッタレ!! 』

 私も保護対象の人間について聞いておこうか。彼らが保護していれば現地で探しまわる手間が省けるかもしれないし。私はイヤホンのマイクに手を添える。

「ちょっと聞きたいのだけれど、貴方達は民間人を保護している? 」
『いいや!! もう保護した民間人の避難は完了してる、後は撤退するだけだ!! 」
「そう。分かったわ」

 どうやら私の憶測は甘かったようだ。

「……いるとしたら、チャーリー共のいる南棟か」

 パターソンが私を見ながら呟いた。

「そうね。楽しめる」 

 私はラペリング降下の為に、ワイヤーのスリングを床の金具に括りつける。
 
 ――――その時だ。

「敵の対空砲火だ! 」

 パイロットが叫ぶとヘリが右側に傾斜し、急速に速度を上げながら急上昇する。私の身体が機体の中で転げ回り、床と身体を繋ぐ命綱が私を引き止める。ひっくり返ったまま開け放たれたハッチから空を眺めると、機体を掠める対空砲の極太い曳光弾が眩しく、遠くで別のUH-1が撃ち上げられる曳光弾にその身を貫かれて火を噴きながら墜落して行くのが見えた。機内を見渡せば皆も私のようにひっくり返っている。

「ファッキンチャーリー共が……。対空砲なんかいつの間に持ち込んでいやがったんだ? 」

 パターソンは起き上がると憎々しげに言う。
 パイロットは私達へ振り返ると口から唾を飛ばして言う。

「悪いが降下はしばらく待っててくれ!! 降下の為にホバリングしてたらあの対空砲の良い的だ!! 爆撃であの対空砲を潰してもらう!! 降下はその後だ!! 」

 それは困る。一刻も早く私は市庁舎に行かねばならないのだ。状況提供者がベトコンの占拠している南棟に潜伏しているかもしれないし、もし敵に発見された場合ベトコン達が身の安全が保障してくれるとは限らない。
 
 しょうがないから飛び降りようか。 
 私はのっそりと起き上がると操縦席に歩み寄り、シートに掴まる。

「ねえ、パイロットさん。ちょっと市庁舎の状況を自分の目で確かめたいから近付いてもらえないかしら? 」
「あ?! ……あ、ああ、別に構わないが。動きまわってれば対空砲も当たらないだろうしな」

 そしてヘリは高速のまま旋回する。
 やがてフロントガラス越しに市庁舎が見えて来た。南北棟のあちこちが炎上して空高く火の粉を巻き上げており、時折小爆発が起きている。南棟には広い屋上があり、そこでベトコン達が鉄柵前に張り付いて北棟や中庭の米軍に向けて発砲しているのが見える。

「あ、もうちょっと近付いて」
「あいよ。……にしても、随分と落ち着いてるな。肝のふってぇ女だぜ」
「仕事だからね」

 機体は高度を落としてさらに接近し、屋上はどんどん大きく広くなって行く。ベトコン達がヘリに向かって銃を構えている様子も見えて来る。そろそろ良いだろう。

 私は右手にワイヤーを巻き付けると、とんっと軽く床を蹴ってヘリから飛び出す。

『わ、WHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAT?! 』

 落下する中、イヤホンからパターソンの絶叫が聞こえた。
 だが間もなく右手に握ったワイヤーが張って私は空中で宙ぶらりんになる。そしてヘリの速度によって慣性の力が働き、私の身体はヘリの後ろへと大きく引かれる。屋上はもうすぐそこ。手を離すと慣性の力が私を勢いよく前に押し出した。耳元で風が唸り、私は左右のショルダーホルスターからFNハイパワーを抜き取ると、撃鉄を両親指で起こす。屋上でマズルフラッシュが次々と光り、ベトコン達の撃ち上げた弾が辺りを飛び抜ける。私は滑空しながらそのマズルフラッシュ達へサイトを重ねる。引き金を引いて行くと、排莢された薬莢が次々と頬を掠めていき、マズルフラッシュはその数を減らして行く。

 屋上に着地すると私は両足を前後に広げてのけ反り、埃と蒸気を巻き上げて滑走する。ベトコン達がめげずにばらまく弾は当たらないが、私が滑走しながら行う偏差射撃によって飛び出す弾は、ベトコン達に次々と吸い込まれて行く。
 
「Tai sao,kiep nu?! (なんだあの女は?!)」

 そう叫んだベトコンの右の眼球を私の放った弾が抉り、彼の頭が顎にアッパーを受けたかのように後ろに跳ねると倒れる。そして私の動きが止まった頃、屋上にはベトコンの死体が転がっていた。

『ネコかお前……。死ぬなよ』

 イヤホンからパターソンの溜息交じりの声が聞こえた。
 屋上小屋のドアを蹴り開けると中へ入る。すると階段を駆け上がって来た3人のベトコンと鉢合わせ、私は咄嗟にぎょっと目を見開いていた先頭のベトコンを蹴り飛ばす。
 3人は将棋倒しになると階段を転げ落ち、私はハイパワーの全弾を彼らに叩き込む。両方のハイパワーが同時にホールドオープンし、すぐさまマガジンリリース。予備マガジンを叩きこみ、スライドストップを指で押し上げてリロードを完了する。

「Cai gi ?!(何があった?!)」

 階段下の廊下からベトコン達がこちらに駆けて来る足音がした。なので私は階段の踊り場から廊下に飛び降りると両側にハイパワーを向ける。廊下の両側からベトコン達がやって来て、彼らは私を見るなり慌てて私に銃口を向ける。
 が、彼らは撃てなかった。両側に味方がいる以上、外しても、私を撃ち抜いても流れ弾が味方を死傷する恐れがあるからだ。
 初老のベトコンが狼狽した。その瞬間、私は銃を両側に向けて乱射する。次々とベトコン達が倒れて行く中、右側にいた一人のベトコンがAKMを乱射し私は素早く仰向けに倒れる。それにより彼の放った弾は全て外れ、その弾を受けて左側のベトコン達が血飛沫を巻き上げながら跳ね飛ぶ。私は伏せたままM16に持ち変えると右側のベトコン達に向かって構え、フルオートで横になぐ。ベトコン達は5.56mm弾にその身を貫かれてバタバタと倒れた。
 私は立ち上がると二丁のハイパワーを拾い上げてリロードする。そして再びそれを両手に握って廊下を突き進み、曲がり角から飛び出した二人のベトコンを撃ち抜く。

 刹那、背後から『感じた』。

 咄嗟に振り返ると、背後で少年兵がAKMを振りかざしている。私は屈み込んで振り下ろされた銃床を回避し、そのまま彼の脚部に身を当てる。少年兵は転倒し、その手からAKMが落ちる。彼はそれに気付くと床に這ったままAKMに手を伸ばしたので、私はそれを蹴って少年兵から離すとブローイングを彼の脳天に向けて――――

 いや、待てよ。
 私を見上げる少年兵の目は恐怖に見開き、顔はこわばっている。こんな少年兵なら尋問し易いだろう。情報保持者の居場所を知らないか聞いてみよう。

「Cho con ngoi dan su?(ここに民間人は残ってる? )」

 答えない。大至急で吐かせたいから太ももを撃ち抜く。少年が甲高い叫び声を上げて必死に首を振る。太ももからダクダクと血液が流れ出て床の上を赤く染める。

「Cac ban moi giet?dan su.(貴方達は殺したの? 民間人を)」
「Xin loi,Xin loi,xin nho anh.khong giet.....(ごめんなさい、ごめんなさい。お願いです、殺さないで……)」

 うわごとばかり喚いて話にならないので片方の足も撃ち抜いた。彼は悲鳴を上げると身体をのけ反らせて、床の上を跳ねまわる。

「Di nghe.Vietcong moi giet dan su?(聞いているの。ベトコンは殺したの?)」
「Toi moi giet......! Noi...ly do chu nghia tu ban nguoi. t,Tuy nhien! Toi khong giet......! Quoc ngu,khong giet!! 」
(殺しました……! 資本主義者だからと言って……。で、でも! 僕は殺してない……! だから殺さないで! )

 ……見付かっていれば、情報提供者の生存は絶望的と言うことか。

「Duoc,Su phuu nhan.Cho dan giet? (ええ、殺さないわ。どこで殺したの? )」
「……SafeHouse(……セーフハウスで)」

 顔中に油汗を浮かべながら少年兵は言う。
 この市庁舎の地図は前もって覚えて来た。確かこの階にはフエに配備されたMACV-SOGの要員が使用していたセーフハウスがあった。一応行っておこう。何か手土産になるモノくらいは探さないと。

「Cam on.bye.(ありがとう。それじゃ)」

 その一言を聞いてか、少年兵は安堵の息を吐く。
 私は少年兵の頭に銃口を向け、目を見開いて唖然とした彼の頭を撃ち抜く。これで安心。足が無くても獣は噛みつこうとするものだ。
 途中、敵を駆逐しながらセーフハウスを目指して進み、やがてそのセーフハウスの前に辿り着いた。ドアは開け放たれ、ドアから見える室内は荒らされていた。FNハイパワーを構えて、ドアの中にゆっくりと足を踏み入れた途端に血生臭さが鼻を付く。広い室内の床を大勢の南ベトナム人の死体が覆い、その死体を流れ出た血液が浸している。部屋の壁の至るところが血に塗れ、弾痕が付いていた。死体の隙間を縫うように歩くと、血液が跳ねてぴちゃぴちゃと水音がした。
 ……この中に情報提供者がいないか確かめるのか。溜息が漏れた。ベトコン達は実に手間のかかる作業を生んでくれたものだ。
 何かそれっぽい人物はいないかと死体を見渡していると、その死体の中に白人が混じっていることに気付いた。その死体は大柄で、茶髪の碧眼だった。

 ……こいつは、ロシア人だ。珍しいから彼から探索してみよう。私は彼の死体を爪先で蹴りあげひっくり返す。すると尻の下に血に塗れた鞄があった。鞄を拾い上げて中を開ける。そして逆さにして中身を死体の上にぶちまける。

 すると小道具や紙切れと共に、一冊のファイルが鞄の中から落ちて来た。
 『亡命の手土産 情報』そんなメモが糊で貼り付けてある。間違いない。彼が情報提供者だ。ドンピシャとはなんと運が良いのだろう。「レミリアスカーレットの情報を保持している」と言うことはつまり、この資料のことに違いない。ファイルを広げると『レミリア・スカーレットの特性、弱点、伝話から見るその特異性』と言うタイトルが英語で書かれていた。本文はキリル文字で、つまりこれは論文か何かだろう。
 神よ感謝します。手ぶらで帰る羽目にならなくて済んだ。仕事で失敗はしたくないものだから。

「気が利いてるわね。自分が死んでも情報は渡るようにしてくれるだなんて」

 ロシア人の死体に言った。
 彼は同業者、つまりロシア正教会の人間なのだろうか? ロシア正教会はソ連から抑圧されている。だからロシア正教会の人間であれば吸血鬼に関する情報を持ってて、なおかつそれを手土産に亡命することは有り得なくはない。まあ、あくまで仮定の話だが。私にはそれを結論付けることはできないから。

 ページをぱらぱらと捲る。
 細胞強度、蘇生速度……彼女の巡った世界中の都市や史跡の数々? ほう……どうやらレミリア・スカーレットは旅行がお好きらしい。アウトドアな吸血鬼とは珍しいな。 
 そして最後の殺風景なページに辿り着いた時だった。

 ふと、どう言う訳かそのページの隅に書かれた小文字に目が吸い寄せられた。

 ――――この論文は、ニコライ・ヴィノグラードフ博士による【祖国を守る槍作戦】の研究資料を元に作成された。

 祖国を守る槍作戦。その字を見た瞬間、私の身体の中で何かが壊れる感じがした。
 不意に耳の奥でノイズが蠢き、視界の中へ砂嵐が割り込んでくる。なんなの、コレ? 訳が分からなかった。けれどそれはどんどん肥大化して視界を覆って行き、やがて「ぼっ」と紅い光がフラッシュして視界を真っ赤に染めて、「祖国を守る槍作戦」と言うキリル文字や、うねうねとした真紅の線が赤の中を走り回ったかと思ったら、また視界で白いフラッシュが起こって目の前が真っ白になる。
 だがその白も段々と引いて行き、最後はレースのように視界を薄っすらと覆うだけになった。そして見えて来た場所はセーフハウスではなかった。

 あの夢の場所だった。

「――――え? 」

 夢の中の女の子がいる。目の前でベットに腰掛けている。その背後には白い光が後光のようにさしていて――――

 ばさり、と。
 その小さな身体から、翼が生えると羽ばたいた。小さな身体には大き過ぎるその翼はまるで蝙蝠のようで、悪魔のソレだった。
 なのに女の子は優しく微笑んでいる。だけど、だけど、その口元から鋭い牙が覗いていて。……そう、女の子は吸血鬼だった。

「う、ぁ」

 その光景がぐるぐると巻き戻され、かちゃっとフィルムが置き換えられるように光景が変わった。今度はその子と、少女がベットの上で一緒に腰掛けていた。その少女の髪は銀髪で、ああ、なんで、これは「私」―――――

[約束するわ。私が見て来た世界を、今度は咲夜と一緒に旅しましょう]

 女の子はそう言うと私の手を握る。ああ、逃げろ、逃げろ私! そいつは吸血鬼だ! なのに私は瞳を輝かせて歓喜すると女の子に抱きつく。何をしてるの?! そして女の子も嬉しそうに私を抱きしめ返す。そして私は満面の笑みで言う―――――

[約束だよ! 大好き、レミリアさん!! ]

 ――――夢の女の子は、レミリア・スカーレットだった。

 一気にその光景が遠ざかると視界がセーフハイスに戻った。けれど身体の奥から渇望、そうレミリアへの渇望だ、が急速に湧き上がって来てそれは体の皮膚の裏側を掻きむしる様な興奮と衝動を私にもたらして、私は耐え切れず吠えた。

「あ、あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 私は肉と血の海に倒れ伏せると転げ回る。
 渇望する!!! レミリアを!!! 私の全細胞が!!!!
 会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたいよぉ。
 ところでどうしてレミリアに会いたいんだ?! 知らない、どうでも良い!! とにかく会いたい!!!!!!!
 まるで1000年間思い続けてきたような焦がれは全身の熱となって彼女の滑らかな肌や綺麗な瞳への肉体的欲求にすら為る。その肌の感触すら私はしっていた、まるで中国の手工芸で作られた最高級白磁器のような手触りだったし、抱きしめられた時は余りに心地よくて薔薇のような香りがして、あああ、ソレを渇望する。
 レミリア、好き、好きだ。はあ、うゥ。会いたい、甘えたい、その為なら3000里も歩けるほどに。興奮する。体中がビリビリして貴女を求めてる。

「Ai? (誰だ?)」

 跳ね起きると四足で獣のようにドアの外に飛び出し、ハイパワーを構える。そして相変わらずウスノロなベトコン共の脳天に弾をぶち込んで行く。ベトコン共は銃を構えることも出来ずにバタバタ倒れていく。この殺戮はマスターベーション。渇望がどうしようもなくてそのはけ口だった。残った二人のベトコンは逃げ出す。ニガサナイヨ、もっと実感の出来る殺し方をしよう。追いすがり、一人に飛び掛かって押し倒すと喚く彼の延髄にナイフを突き立てて横に掻っ切る。ゴリッと脊髄が砕ける感覚がして、ぱっくりと開いた首筋から生温かい血が噴き出す。私はもう一人に追いすがるとその手を掴み、背後に引き倒す。悲鳴を上げながら銃を振り回す彼に馬乗りになると胴体にナイフを何度も何度も何度も何度も突き立てる。まるで耕すみたいに。腹部がぐちゃぐちゃになって脂肪や内蔵片が辺りに飛び散って、ナイフの柄を握る掌がねっとりとした血にぬめる。やがて彼は口から血を噴き出してこと切れる―――――。

 辺りは血塗れで、私も真っ赤だった。そして、私は我に返った。

「あ」

 私はベトコンの死体から慌てて飛びずさり、足をもつれさせて背後に尻もちを付く。そして、荒い息をしながら宙を仰いだ。

 今のは一体、なんだったのだ?
 私はレミリアを知っているのか?
 どうして私は彼女を求めたのだ? あの衝動は一体何だったのだろうか……。
 咲夜とは私のこと?
 
 また視界を砂嵐がうっすらと覆いレミリアの顔が砂嵐の中に映って、私は頭を押さえて呻く。
 全細胞が脈打ち、私の中のナニカが訴える。レミリアと私の関係を……知りたい。知りたくてならない。知らねばならない。って!!
 ――――そうだ!! 私は知るべきだ! 知るための鍵と手掛かりはある!!
 
≪ニコライ・ヴィノグラードフ博士≫と≪祖国を守る槍作戦≫だ!!

 これが全てを導く鍵だ!! 私は知っている!!――――――――

『オリヴィア! 空爆で市庁舎付近の対空砲が破壊出来たので今から中庭に降下するぞ! 生きてるか?! 』

 インカムからパターソンの叫び声が聞こえ、私はまた我に返った。体中が震え、お腹の奥底が脈打って熱かった。そして震える手でイヤホンのボタンを押す。

『おい! 生きてるのか?! 』
「……生きてるわよ」
『大丈夫か?! 怪我は? 』
「……今から中庭に向かうわ」

 私は壁に手を付いて立ち上がると、よろよろと歩いてセーフハウスの中に入る。そしてロシア人の死体の上に落ちていたファイルを拾い上げると、背中のリュックサックに押し込んだ。早く行こう。とにかく今はフエから脱出しないと。でないとそれらを知ることすらままならない。
 





「市庁舎は破棄しろー! 総員、付近の公園を確保するために大通りへ集結せよ! 」

 中庭に出るとそんな声が辺りに響き渡っていた。コンクリートの残骸が転がり穴ぼこだらけの中庭を米兵達が慌てた様子で駆け抜けていく。
 頭上でローター音がして風が巻き上げられる。見上げればUH-1が中庭の上でホバリングしており、機内からワイヤーが垂らされ、そのワイヤーを伝ってパターソンやSOG隊員達が降下する。そしてパターソンは降下するなり私の元へ駆け寄った。

「血塗れじゃないか……。怪我は?! 」
「無いわ」
「全く……。もうあんな無茶はするなよ……。とにかくここから脱出しよう。これからB中隊が突破作戦をやるらしいからそれに参加するぞ」
「ええ」

 正門を出ると街並みは燃え盛り、炎が辺りを赤く照らしている。周囲には火の粉が飛び散り吸い込む空気は熱かった。大通りのど真ん中にM551シェリダン空挺戦車が停車しており、その周囲の土嚢や車の陰に米兵達が隠れている。

「米兵の諸君! 諸君は我が民族解放戦線が完全に包囲した! 降伏せよ! さすれば危害は加えない! 我々は君達と戦う為では無く、このフエとそこに暮らす同胞諸君を資本主義の抑圧から解放するためにやって来たのだ! 」

 拡声器の声とBGMのインターナショナルが辺りに反響する。前方に大量の人影が見え、それらは大通りを埋め尽くしている。ベトコン達の大群だ。
 土嚢の陰で中隊長が無線機に向かって吠えている。パターソン達がそんな彼の方へ駆け寄ったので、私も続く。

「SOG第3偵察部隊のニック・パターソン曹長だ! あんたらの作戦を援護する! 」

 中隊長は無線機から手を離した。

「SOGだって! こりゃあ助かる! 今から我が中隊は、あのチャーリー共を突破してヘリの着陸地点の確保のためにこの先の公園を制圧しに行く! あんたらには期待してるぞ! 」
「ああ! だがどうやってあの大群を抜けるんだ?! 」
「まあ待て、もうすぐだ!!」

 空を切るような轟音がしたかと思うと頭上をF4ファントムが飛び抜け、前方を練り歩くベトコンの大群がナパームの摂氏1300度の火球に呑まれる。その途端、辺りに反響していたインターナショナルの音楽が途絶える。

「良いぞ!! チャーリー共は丸焼けだ!! 中隊前進、GOGOGO!! 」

 中隊長が嬉々とした表情で無線機に吠える。M551シェリダン空挺戦車が地響きを立てながらゆっくりと前進を始め、米兵達も干戈の声を上げながら大通りを駆け出した。
 そろそろコイツの方が良いだろう。私はM16に持ち返ると新たなマガジンを叩き込み、チャージングハンドルを引くと「カチャ」と言う音がして初弾が装填される。

「行くぞ! オリヴィアもだ! 空挺戦車を弾避けに使え! 」

 パターソン達が遮蔽物から飛び出す。私も土嚢の陰から出ると大通りを小走りで駆ける。
 前方で、爆撃で撃ち漏らしたベトコン達が発砲して来る。私は中腰の姿勢になるとベトコン達の方に向かってフルオートでM16を連射する。周りの米兵達も同じように応戦し、激しい銃弾の応酬が始まった。
 するとUH-1がやって来て、私達の頭上の超低空でホバリングをする。そして胴体に装着されたミニガンが回転を始め、その排熱音のような音がしばし流れた後にベトコンに対して派手にロケット弾とミニガンをぶちまける。炸裂するロケット弾やミニガンの弾を喰らって彼らの身体は千切れ、吹き飛ぶ。ロケット弾を連続で射出する音や、電動ノコギリのようなミニガンの射撃音、ロケット弾が炸裂する地響きもあってか、まるでその光景はショーのよう。
 UH-1が高度を上げて飛び去った後、ベトコン達のいたところに足を踏み入れると生肉の焼ける香ばしい匂いがして、辺りには黒焦げの死体や血肉が散乱していた。
 その直後、私の前で米兵達が薙ぎ倒されて肉片と血飛沫が辺りに飛び散り、外れた弾が道路にめり込んでコンクリート片を撒き散らす。

「敵のDShK重機関砲だ!! 」

 遠方左側にあるバーの二階から大きなマズルフラッシュが炸裂している。3人の米兵が果敢に応戦したが、12.7mm弾に肢体を吹き飛ばされて絶命した。米兵達がちりじりに辺りへ散開し、私も黒焦げの廃車の陰を目指して駆け出す。重機関砲の12.7mm弾が衝撃波を巻き起こしながら身体を掠め、周囲の舗装にめり込んで土煙を舞い上げる。私は黒こげの廃車の影に滑り込むと地面を這い、エンジンのあるフロント横に身を押し付ける。
 M16のマガジンを引き抜き、新しいマガジンを叩きこむ。ボルトリリースレバーを押し、遊底がカチャッと音を立て前進。そして顔を出すと機関砲に向けて撃つ。だが2、3発撃ったところで動きが止まる。排莢不良だ。頭を引っ込めるとチャージングハンドルを引いて銃を横に倒して揺する。すると黄金色の薬莢が排莢孔から落ちて地面で跳ねる。

『中隊長より空挺戦車へ! 大至急あのバーの二階にHEATを叩きこんでくれ!! 』
『了解。衝撃に注意せよ』

 後ろに控える空挺戦車が戦車砲を撃ち、その衝撃波と共に轟音が轟いた直後バーの二階が粉砕される。

『いいぞ! 進め進め! 』

 曲がり角に到達する。前方の建物の窓でマズルフラッシュがいくつも光り、米兵達が一斉にその窓達に向かって発砲する。空挺戦車の戦車砲も炸裂し、前方の建物の二階と屋上が吹き飛ぶ。
 その時、戦車の左側の建物の屋根の上にベトコン達が現れた。そのうち一人のベトコンはRPG-7を肩に駆けており、彼はRPG-7を空挺戦車に向けて構える。味方は誰も気付いていない――――

 反射的にM16の照準をそのベトコンに合わせると指きりで撃つ。ベトコンの身体が後ろに跳ね、その手のRPG-7が発射される。その弾道は戦車を逸れて私の方に飛来し、あ、不味いと思って伏せた直後に弾頭が後ろの壁にめり込んで炸裂する。身体が浮遊する感覚がしたと思ったら、背中に衝撃を感じてぐわんぐわんと視界が揺れた。酷い空の色だ。
 
「左側の建物にチャーリー! RPGを持っていやがる! 」

 米兵達が屋上のベトコンに気付いたのか、辺りでパラパラとした射撃音が聞こえた。

「オリヴィア! オリヴィアー! 大丈夫か!! おい?! 」

 またまたパターソンが駆け寄ってきて私の身体を揺する。だが今度は顔が真っ蒼だった。
 肘を付いて上半身を起こすと口の中で土と血の味がしたので、唾を吐くと口元を腕で拭う。けど痛みはないし、身体もいつもと同じ感じだった。うん大丈夫そうだ。一応人間だけれど身体の耐久力はその辺の人間より遥かにあるし、弾頭が成形炸薬弾なのも運が良かった。爆風は殆ど内側に行くから。まあ格好は酷いことになってそうだけれど。

「ええ。今、泥まみれ? 」

 その一言にパターソンはきょとんとしたが、やがてくっくっくと笑うと縦に首を振った。

「あぁ、美人が台無しだよ。全く……。ホント、イカれた女だぜ!! うちの女房程じゃないがな!! 」
『ベトコンの追撃が迫ってる! 急げ、公園はこの先だ! 』
「行くぞ! 立てるか?! 」
「ええ」

 立ち上がると「行くぞ」とパターソンが言い、私とパターソンは曲がり角の手前の、建物の壁を目指して走る。そして壁に張り付くとSOG達もやって来る。パターソンが恐る恐るその影から顔を出すと壁に敵の弾が当たって弾け、素早くパターソンは顔を引っ込める。
 
「コンタァクト! 金具屋二階にいる! 」

 パターソンが叫ぶと、一人のSOG隊員が背中に下げていたM79グレネードランチャーを手に構え、素早く壁から半身を出しグレネード弾を発射する。爆音と共に悲鳴が聞こえ、私達は壁の陰から飛び出す。爆風で二階から吹き飛ばされたベトコンが道路に横たわっており、私達を目にすると慌てて立ち上がる。パターソンが彼に対しM16を構え発砲し、その弾を喰らってベトコンは再び地面に横たわる。
 右側の建物のドアが蹴り開けられ、数人のベトコンが中から出て来た。私は素早くそのうちの一人に照準を合わせると引き金を引く。周りのSOGも発砲し、ベトコン達は折り重なるようにして倒れる。

「グレネードを投擲する! 」

 彼らが出て来たドアの中へ、パターソンが手榴弾を放り込む。するとドアの中からベトコン達が飛び出して来て、私達に撃たれてバタバタと倒れていく。その直後、中で手榴弾が爆発しベトコンの悲鳴があがった。

『中隊長から戦車へ。我々の先頭に立ってくれ』
『了解。前進する』

 地響きを立てて戦車が私達の前を駆け抜け、その後ろを米兵達がダッシュで付いて行く。私達も最後尾を進む。時折ベトコンとの接触があるが、その度に米兵達は銃を乱射することで彼らの頭を押さえその隙に突破していく。時間が無く、後少しで脱出できるから強引になっているのだろう。
 やがてT字路が見えて来た。戦車がそのど真ん中で停車すると砲塔を右側に向ける。

『こちら空挺戦車。T字路の右側より大量のベトコンが迫ってきている』
『了解! 公園はそのT字路を左側に行った先にある。抑えてくれ! 』
『了解。急いだ方が良い』
『そうするよ。総員急げ! 』

 T字路に出て右側を見れば、遠くから大量のベトコン達が迫って来るのが見えた。空挺戦車の戦車砲が火を噴き榴弾が着弾してベトコン達を吹き飛ばすが、彼らは止まらない。多数のローター音が聞こえ、空を見れば超低高度でCH-47とUH-1の編隊が頭上を飛び抜けていく。

「何をぼーっとしてる! 走れオリヴィア! 公園はこのまま真っ直ぐだ! 」

 パターソンの怒鳴り声が聞こえ、私は再び駆け出した。背後で激しい銃撃音が響き、私の周囲を無数の弾が掠める。隣で走っていた米兵を弾が貫通し、彼はもんどり打つと膝を付いて前に倒れた。背後で次々と爆音がし、最後に雷鳴のような爆音が轟き衝撃波が私の背中を圧す。振り返ると空挺戦車が黒煙を巻き上げながら激しく燃えている。ベトコンの対戦車兵器を喰らったのだ。 
 ひゅーんと何かが落下してくる音が聞こえて来る。そして私の前方で爆発が起きる。迫撃砲だ。ベトコン達は私達を何としても全滅させるつもりなのだ。落下音が連続し次々と道路の上で爆発が起きる。周りで米兵達の悲鳴が起こり私は着弾の衝撃に思わず顔を腕で覆う。

 ドン!!!
 目の前で爆発が起きて、私の身体が後ろへ吹き飛ばされた。
 やられた。見上げる空が霞掛かって見える。身体が動かない。周りの音がくぐもって聞こえる。まるで水の中から音を聴いているみたいに。頭もぼーっとして考えが回らない。流石に死にそうなのかな?
 するとぼんやりとした視界の中に二人の影が入って来た。彼らは大声で何かを言っていて、私の肩をがっちりホールドすると引き摺り始める。私が向いている道路の先には人の波が見え、それはどんどんこっちに迫って来ている。
 次第に視界の霞が晴れて来て、両側を見ればパターソンと中隊長が私の肩に両腕を回して引き摺っていた。そして前を見るとベトコンの大群が迫り来ている。

「ヘリまで後少しだ! 頑張れ! 」

 パターソンの声が耳にスロー掛かって聞こえる。

「これを撃て! 」

 中隊長の手が私の胸にM3グリースガンを押し付ける。私は力を振り絞ってそのグリップを握るとコッキングレバーを引き、迫りくるベトコン達の波にサイトを重ねると何度も連射する。先頭のベトコン達がバタバタと倒れるも、その波は減らない。グリーズガンの弾が切れると地面に投げ捨て、ショルダーホルスターからFNハイパワーを抜き取って撃鉄を起こすと、よろよろと前に突き出しベトコン達に向かって撃ちまくる。だが彼らの勢いは止まらない。
 両方のハイパワーがホールドオープンすると私は周りを見渡した。何か撃つ物はないか――――
 迫るベトコン達が次々と撃ち抜かれて倒れる。見れば隣でパターソンが私を引き摺りながらM16を片手で単射している。だがパターソンのM16もすぐに弾を切らし、パターソンはM16を二度見すると「Fuck! 」と吐き捨てる。
 遮るものが失われ、ベトコン達が雪崩を打って駆け寄って来る。駆け寄るベトコン達の表情が見えて来た。彼らは皆、私のことを憎悪の篭った目つきで睨んでいた。それでも撃たないのはきっと……私を嬲り殺す気だからだ。
 目の前にベトコン達が肉薄してくる。そして彼らは走りながらAKを振りかざす。
 ……私はもうここで終りなのか? レミリアと、私は会えないのか……? いやだ、そんなの、嫌―――――――

 
 目の前のベトコン達が血飛沫を上げながらバタバタと倒れ、無数の曳光弾が地面で跳ねて火花を撒き散らす。
 二機のリトルバードが目の前に現れてホバリングする。そして機体に備え付けられたミニガンをベトコンに向けてぶっ放す。回転するミニガン銃身が雷光のように輝き、無数の空薬莢がばらばらと周りに散らばり、その先でベトコンの人の波が薙ぎ払われるのが見えた。私はその光景をぼーっと眺めながら、希望は失わなかったことをぼんやりとだが実感した。
 私の身体が持ち上げられ、UH-1の機内に横たえられる。そしてヘリは急速に地面を離れていく。大通りの上空を飛び抜けるF-5の編隊から航空爆弾が次々と投下され、大通りとベトコン達を吹き飛ばす。

「大丈夫か? 」

 隣に座るパターソンがそう言ったので頷くと、パターソンは笑った。

「んな訳あるか。基地に帰ったらきっちり検査を受けてもらうからな」

 すると私のお腹を指差した。

「だが探し物は無事だったようだな。すごく大切そうだから良かったよ」

 見れば、私の両腕がレミリアの資料の入ったバックを強く抱きしめていた。いつの間に。でも、無事手に入れられて良かった。

「えぇ。想い人への鍵だから」

 安心したら瞼が重くなって来た。
 ヴァチカンに帰還したら、知り合いの情報屋に調べさせよう。ニコライ・ヴィノグラードフ博士と、祖国を守る槍作戦について。
 ああ、生きてるって素晴らしい――――…………
 やがて私の意識は静かに眠りの中へ落ちた。

 




 …

 ……

 ………

 ――――ふとレミリアさんの笑い声が止まり、その可愛らしい笑顔も引いて行く。さぁっと、まるで潮の満ち引きみたいに。そして彼女の綺麗な瞳が不安そうにきょどきょどと動いた。近くに居るからその息遣いが激しくなっているのも感じる。そんなレミリアさんの姿も可愛かったけれど、同時に彼女が心配でその不安の理由が気掛かりになる。いつもは優雅で落ち着いているこの人が、急に不安そうにし出したのだから。

「ねえ、どうしたの? レミリアさん。不安があるなら私に話して」
「いえ、大丈夫よ。大丈夫……ええ、大丈夫だから」

 呟く言葉はまるで自分に語り掛けているようだった。私はそんなレミリアさんを見たらますます彼女が心配でならなくなってしまった。 

「全然大丈夫そうじゃない。私のせい? 」

 レミリアさんがふるふると首を振る。そしていつもの笑顔を繕ったけれど、私には無理矢理笑っていることがバレバレだった。

「そんなこと無いわよ。……さぁ、さっきの話の続きをしましょ。確か、イスタンブルの怪しげな呪い師の話だったかしら」

 違う。さっきまで話してたのはモスクワの人形師の話だった。やっぱりおかしい、動揺してる。だっていつも完璧で非の打ちどころのないレミリアさんが、自分の話していた内容を間違うだなんて有り得ないもの。

「ねえ、レミリアさん――――……」

 カチャリとドアに鍵が差し込まれる音がして、レミリアさんの肩がビクリと震えた。そしてその音のした方へ恐る恐る首を向ける。その顔は怯えていて、紅い瞳は恐怖に揺れている。レミリアさんの綺麗な薄紅色の唇がふるふると震えている。ねえ、どうしたの? どうしてレミリアさんは怯えているの?! 教えてよ!
 そしてドアが開くと、床を靴が叩く音がした。

「――――レミリア。やっぱりここか。お前はホントにその少女が好きなんだな」

 男の人の声がした。私はその声の主を見ようとして、レミリアさんが私の背中に華奢な腕を回して強く抱きしめる。……その身体は震えていた。

「母親にでもなったつもりか? 」

 ……レミリアさんが恐怖している。この男性に。私の中からふつふつと怒りとその男に対する憎悪が湧き上がってくる。この男はレミリアさんに恐怖を与えさせている。だからきっと彼女に悪いことをしているクズだ! この野郎! レミリアさんを虐めるヤツは許さない! 止めろ、レミリアさんを虐めるな――――!


 私はその男を睨みつけた――――…………






 目覚めると、教会の鐘が鳴り響いているのが聞こえた。カーテンを閉め切った自室は薄暗い。ベッドの上に横たわる身体は鉛のように重く、けれど意識は抜け殻のような気分で、天井でひんひゅんと回転するシーリングファンを私はぼーっと眺めた。
 最近になって夢の内容が変わった。殆どがレミリアと私が旅行の約束をすると言うモノで、偶にレミリアが怯える夢――――そう。私がさっきまで見ていた夢を見るようになった。
 レミリアの不安がる夢を見るようになったからか、ますます彼女の事が気になって仕方がなくなっていた。フエの時のような発作は無いけれど、普通にしている時も何か別な事をやってる時も常に意識はレミリアに向いている。レミリアを求めている。私の中は会ったかすら分からないレミリアを想って止まない。
 だからだろうか。レミリアの夢を見るからだろうか。身体が休まらなくて精神は疲弊していた。レミリアへの想いと言う活動を身体が自動的に続けているから身体が休まらないのかな、と思う。 

 枕元に転がっていたファイルを手に取って顔の上で見開く。
 それは私がフエで入手した論文の写しだった。提出する前にこっそりコピーを取っておいたのだ。バレたら大変なことになるのは分かっていたけれど、私はどうしてもレミリアと私の関係の足がかりになるこの資料を手放したくなかった。とっても大切な私とレミリアの繋がりだ。

 ページを捲る。そしてそこに書かれた彼女の旅行先の一覧を、私は指先で撫でる、なぞる。
 夢など幻想なのかも知れない。私は何かの病気なのかも知れない。けど。
 私は口元を緩める。

「私は約束したのよね、レミリアと。いつか一緒に世界中を旅するって」

 そのことはあまりに嬉しくて、私を幸せにするのだ。
 この幸福が初めてではありませんように。そう願うほどに。

 黒電話のベルがけたたましく鳴る。私はベッドから跳ね起き、転げ落ち、よろよろと立ち上がりながら黒電話の受話器を取ると床に崩れ落ちる。
 情報屋からの電話に違いない! きっと、ニコライ・ヴィノグラードフ博士と、祖国を守る槍作戦についての情報を持って来たんだ!!

「もしもし? 」
『私だよ。ルネ・ベロッキオだ』

 思わず溜息を吐いてしまった。相手は私の属する討滅機関の局長で、吸血鬼退治の第一人者と言う大物なのに。……まあいいや。期待を裏切る彼の方が悪い。受話器から彼のしゃがれた笑い声が聞こえた。

『溜息とは酷いな。随分と部下に嫌われたもんだ』
「用件はなに? 」
『ああ。君がベトナムでの任務を終えてヴァチカンに戻ってきてから、ずっと労いの言葉を掛けるのを忘れていてね。お詫びに食事でも一緒にどうかと思って電話したんだ』

 また食事の誘いか。いい加減、面倒くさい。

「結構よ」
『ハハハ。まあそう言うな。労う為だけじゃない。私はお気に入りの君と食事したいんだ。それに君みたいな美人と食事すれば、教会内でのポイントも稼げるだろう? 教皇になるためのね』

 またべロッキオは笑った。ああ、そう言えば教皇職候補の一人でもあったっけ。

『まあ気が向いたら来たまえ。ローマ市内のカフェ、ジュンキッリャに私はいる』
「ええ」

 立ち上がって受話器を置くと、私はベッドの上に腰を降ろして溜息を吐いた。何が「気に入ってる」だ。放っておいて欲しい。私みたいな人間は他人との距離感を求めるのだから。そんな私の心情を知っているのに、どう言う訳かお構いなしに気に入っているからと言ってどんどん踏み込んで来るあの男を、私は本当に苦手だった。
 私が人間離れした素質を持ってなければ、きっと彼は私に目もくれてなかっただろう。
 まあ、いいや。どうせ行かないから。今日もいつものようにぼーっとして過ごして疲れを癒そう。そう決めた時だった。

「オリヴィア! 一体いつまで部屋に引き籠ってるつもりだい?! 部屋の掃除が出来ないじゃないか! いい加減、たまには外に出な! 」

 ドアが激しくノックされ、シスター・スコパリウスの野太い怒鳴り声がドア越しに響いた。
 はあ……。今日は厄日だ。最悪だ。私は溜息を吐くとベッドから降りる。そして論文の写しを金庫にしまい鍵を掛け、コート掛けから黒いトレンチコートを手に取ると擦り切れたシャツの上から羽織って部屋を出た。
 


 
  
 
「失礼。ルネ・ベロッキオ氏の席は? 」

 カフェの店内に入ると受付のボーイに聞いた。するとボーイは爽やかな笑顔を浮かべる。

「ようこそ。ベロッキオ様は一番奥の個室席にいらっしゃいます。ご案内致しましょうか? 」
「ええ。お願い」
「ではこちらへどうぞ」

 歩き出したボーイの後ろに付いて行く。カジノを彷彿とさせる豪華な店内では、着飾った貴婦人や紳士たちが上品な笑みを浮かべながら話しをしている。そして室内オーケストラが演奏するステージの横を通り抜けて廊下に入ると、ボーイが一番奥のドアをノックする。
 
「どうぞ」

 中から声がしてボーイがドアを開ける。お洒落な室内でベロッキオが席に腰掛けながらワイングラスを傾けていた。白髪をしっかり整え髭も綺麗に剃り、スマートな身体に黒のカジュアルスーツを着込んだその姿は老紳士と言うのに相応しい。中身は紳士とは程遠いと思ってるけども。

「おお。良く来たね」

 ベロッキオは私を見るなり顔を綻ばせて言う。

「シスター・スコパリウスが掃除をするから外に出ろって言うからね。掃除が終わるまでの暇潰しよ」

 私はコートを脱ぐと壁のフックに掛ける。するとベロッキオは笑う。

「ハハハッ。彼女も変わってないなあ。私が君と同じ代行者だった頃は、いかに彼女の目を誤魔化すか仲間の代行者たちと腐心したものだったよ。例えば、夜遊びをしたことをどうすれば彼女から気付かれずに済むか、とかね。まあ、あの頃の彼女は今と違って若くて美しかったものだが」
「そう。あぁ、紅茶を。砂糖たっぷりで」

 そう言ってチップをボーイに手渡すと、彼は「畏まりました。すぐにお持ちいたします」と言って部屋を出て静かにドアを閉じる。私はベロッキオの向かい側の席に腰を降ろした。

「ベトナムの件は見事だった。流石は我が機関の最エリートだ。素質は抜きんでていて、仕事は常に完璧で非の打ちどころが無い。ベトナムでの任務で入手したレミリアの論文を見せてもらったよ。実に良くやった。彼女のデータは他の吸血鬼退治にも役立つだろう」
「私が帰ってきたのに気付かなくても、提出した資料はちゃんと読んだのね」
「ああ。仕事だからね」

 ベロッキオは頷くとそう言った。

「今日は私の奢りだ。遠慮はしなくていいからね」
「結構よ。食欲ないし」

 私はくしゃくしゃの髪を掻き上げながら言った。眠いし調子は悪いし、たまに意識がぼーっとするわで食欲なんて湧く訳が無い。
 するとベロッキオはワイングラスをテーブルの上に置き、テーブルに両腕を載せて前屈みになる。そして潤みを湛えた瞳で私の顔を覗き込んで来る。

「……大丈夫かい? どうして食欲が無いんだい? 」
「大丈夫よ。寝てるのに身体が休まらないだけ」
「顔がやつれてるのもそのせいかい? 」
「まあそうだけど、やつれてるのはいつものことよ」
「悩みがあるから身体が休まらないとか? 」
「そうね」

 間違ってはいない。

「何に悩んでるんだい? 深刻なことかい? 」
「深刻ではないけれど、重要なことね」
 
 吸血鬼退治の第一人者の前で、吸血鬼に恋や愛に似た渇望を抱いてるなんて言えるわけがない。

「そうか……。後で良いカウンセラーを紹介しよう」
「ありがと。気が向いたら行くわ」
「ああ、そうしてくれ」

 するとベロッキオは顎の前で手を組み、真面目な顔つきになる。

「……ところで、話があるのだが」
「なに? 」
「君に教会の特命任務を任せたいのだ」

 特命任務? なんだそれは。

「どんな任務なの? 」
「我々が今追っているアルジェリアの吸血鬼王、ブライム・カミュの追跡任務を君に任せたいのだ」

 追跡任務。そんな地味な仕事は私の本分では無い。私は荒事専門だ。そのことは上司である彼が一番理解している筈だが。

「ああ、勿論君の言いたい事は分かる。この仕事は君の本分じゃないからね。だが信頼できる君だからこそ任せられる最重要任務なのだ」
「そう。では任務の詳細を教えて。でないと何とも言えないわ」
 
 ドアがノックされて若娘のウェイターが紅茶を持ってきて私の前に置くと横に立つ。ん? あぁ、チップを要求してるのか。新人ね、きっと。初めてのチップって感じで期待してるのだろう。私がポケットに手を突っ込んだ時だった。

「今仕事の話をしてるんだ。さっさと行ってくれないかね? 」

 ベロッキオはウェイターを見据えると低い声で言う。

「も、申し訳ありません」

 するとウェイターは慌てて頭を下げて部屋を出ていく。ベロッキオを伏し目で見る。驚いた。まるで脅している様だった。彼もそんな物言いをするのね。私の視線に気付いたのか彼は肩を竦めて笑いを漏らした。

「全く。高級店に良くあんな教養の無い娘が働けるものだよ」

 はぐらかすベロッキオ。思わず素が出たのだろう。本来の彼には割とシビアな面もあるようだ。
 私はティーカップを手に取って中の紅茶を口に含む。悪くはない味だ。だがやっぱり甘さが足りない。ベロッキオは椅子に背を持たれるとお腹の上で手を組んだ。

「任務の詳細だが――――……まず任務期間中、君には完全に姿を消してもらう。電話、手紙、電報など他者との連絡を取る一切の手段を全て遮断してもらうんだ。こちらからの指令を除いてね。また潜伏中は勝手に動きまわってはならない。何故ならその吸血鬼はアルジェリアだけではなく、各地に情報網を構築しているからだ。彼に気付かれたら任務は失敗だからね」

 あぁ、無理だ。そんなずっと一人で束縛され続けるなんて耐えられない。何よりも、一切のメディアツールを封鎖されたらどうやってレミリアに関する情報を探索すると言うのだ。それに勝手に動けないのも致命的だ。調べる上では直接出向く必要性も出るだろう。この任務は今の私には到底受け入れられない。

「期間は長いが、この任務が成功すれば君はきっと君の経歴は――――」
「お断り。出世なんて興味無いわ」

 出世や仕事より、今はレミリアの方が大事だ。
 ふむ、とベロッキオは唸る。そして私を見つめる。

「君が仕事を断るなんて、驚くよ。出来ない理由でもあるのかい? 」

 まるで腹を探る様な、気持ち悪い目付きだった。きっと私が初めて任務を拒否したから怪しんでいるのだろう。その通り。私はレミリアを追わねばならないから無理なのだ。それが私の使命なのだ。

「そんなじっと待ち続ける任務、耐えられないわ。私はずっと派手にドンパチし続けて来た人間だもの」

 ベロッキオは悩ましげに唸りながら首を振る。

「仕事に自分を挟まないのが君では無かったのかい? 」

 グサリ。しまった。私としたことが、らしくないことを言ってしまった。でも私の内面変化は事実であり、いずれは彼も気付くことになるだろう。この際開き直ってしまおう。

「”人は変わるものよ”良くも、悪くもね」

 そうだ。今は仕事だけが私を構成している訳ではないのだ。私の中にはレミリアと言うモノが存在しているのだ。

「君に一体何があったのか、実に気になるところだね」

 そう言うとベロッキオは私を見ながらワイングラスを手に取り揺らす。ここまで勘繰るか。私が拒んだのがよっぽど気掛かりらしい。
 ベロッキオはグラスに口を付けて中の赤ワインを口に含む。

「君がそこまで拒否するならこの任務は別の者に任せよう。でもね。その変化が悪い方向に転ばないように祈るよ。あまりにも目に余る時は、機関のトップとして放っておけないからね」

 釘を刺された。けれど、私は歩むのを止める気はさらさらない。すでにあの資料を読んだ時から心は決めている。

「ええ。迷惑は掛けないわ」

 さて、帰ろう。もうここにいる意味はないし、そろそろ部屋の掃除も終わったころだろう。
 私は立ち上がり、壁のフックからコートを手に取ると袖を通した。

「私を失望させないでくれよ」

 ドアノブに手を掛けた時、背中から声がした。しつこい男ね。

「その点に関しては何とも言えないわね。私、貴方の事が苦手だし。でも紅茶はありがと」

 そう言うと私は部屋から出た。  






「オリヴィア! 待ちなさいオリヴィア! 」

 自室を目指して紅い絨毯の敷き詰められたバロック調の廊下を歩いていると、後ろからシスター・スコパリウスの野太い声がした。
 振り返ればでっぷり太った彼女がノシノシとこちらにやって来て、私に大根の様な腕を突き出す。その指は一枚のメモを摘んでいる。今度はなによ。

「掃除中、エドマンド運送ってところから電話が来たから受けといてあげたわよ。折り返し電話させるってね」

 エドマンド運送!! 情報屋の偽名だ。調査結果の電話がやってきたのだ!!――――……
 私は飛び上がりたい高揚感を抑えながらメモを引ったくりコートのポケットに滑り込ませる。そして彼女に背を向けると速足で歩き出す。

「ちょっと! お礼も無しかい?! 」

 背後で掃除女の怒鳴り声が聞こえたが無視する。お前への礼などどうでもいい。一秒でも早く情報屋から調査の首尾を聞くことの方が遥かに重要だ。
 自室に入るとドアに鍵を掛け、黒電話の受話器を手に取ってダイヤルを回す。そしてしばらく呼び出し音が続いた後に、向こうが受ける音がした。

「こちらエドマンド運送だ。何の用かな」
「私よ、ダニエル。依頼してた調査の首尾は? 」
「ああオリヴィアか! 全く、さっきは違う女性が出たから驚いたよ。あんたと違ってやたら野太い声だったね」
「ちょっと出掛けててね」

 電話口で紙をまさぐる音がする。

「ではお伝えしよう。とその前に。良いニュースと悪いニュースがあるんだが、どっちを先に聞く? 」

 少し身構えたが大丈夫だと自分を宥める。彼の情報収集能力は一流だ。きっと何かしらの情報は掴んでいる筈だ。最近の私はかなりポジティブだ。

「じゃあ、悪いニュースから聞こうかしら」
「分かった」

 すると電話越しに紙を捲る音がした。

「まず祖国を守る槍作戦なのだが。この作戦に関する情報は一切手に入らなかった。手がかりもゼロと言って良い」

 高揚感から一転、一気に脱力感と共にガクッと肩が重くなる気がした。これは悪いニュースにしてもあんまりだ。レミリアに関する手掛かりの半分が、これで消えてしまったのだ。

「けどこれからも調査は継続する。これはあくまで中間報告だから気に病む必要は――――」
「ホントに、ホントになにもないの? 」

 私は受話器を握りしめる。諦められない。何かひとつくらいは手掛かりはないのか?!

「……すまないが、そうだ。私の手に入る範囲では何の情報も存在しなかった。頼みのCIA幹部のお仲間も初耳だと言ってたし、東側の情報にもその作戦の記述は存在しなかった。けど焦るな。まだ無いと決まった訳じゃない。それにここまで手がかりが無いと言うことは返って怪しさを感じるよ」
「どういうこと? 」
「つまりこの作戦に関するありとあらゆる情報を消せるだけの『大きな力が働いている』とも考えられるからさ」

 ああ。確かにそう言われれば納得だ。レミリアのことに頭が行き過ぎて、冷静な判断が出来なくなっているようだ。
 だとすると、私とレミリアの関係には何らかの大きな存在が関わっていると言うことか? 論文の元になっているのだから作戦が実在するのは間違いないのだろう。あくまで憶測の域を出ないが、なんだか私とレミリアだけの話ではない気がした。

「とにかくそう焦るな。まだ調査を始めたばかりなんだから。それに良いニュースもある」
「ええ、そうね」

 確かに良いニュースもあるんだ。今は焦ってはいけない。

「良いニュースは? 」
「ニコライ・ヴィノグラードフ博士と言う人物の詳細が分かった。ニューヨークタイムズに載っていたよ。彼はソビエド連邦の生物兵器の開発者で、カスピ海研究所の所長をやっている。だが彼の詳しい経歴は明らかにはされていない」
「ちょっと待ってよ」

 それだけで良いニュースなのか? たかが新聞程度の情報など私でも調べられる。自称アメリカ一の情報屋の癖にその程度のことしかわからないのか?

「まあ落ち着いて。それだけじゃない。その彼の元で働いていた元亡命ソ連研究者との接触に成功したんだ。名前はイーゴリ・イワノフ。今は生物兵器専門の研究者だった頃の経験を活かして非合法に開発、研究した生物兵器を第三世界向けの闇市場で売って荒稼ぎをしてる。博士の部下であった彼なら、本人について何か知っているかも知れない。いや私が地味に調べるより、君が直接彼に会って聞いた方が早いし効率的だと思う」

 ほう……。筋金入りのワルと言う訳か。これは『当たってみる』上でこの上なく好都合な相手かも知れない。

「そうね。そう言う裏世界の人間なら、私が彼から情報を聞き出す上で『何をしても表沙汰にはならない』」

 コイツを当たってみるか。
 ダニエルは苦笑する。

「そう言うことだ」

 希望が見えて来たお陰か、お腹の奥が脈打つのを感じた。ふふふ……レミリアを求める私の身体も確かに喜んでいるようだ。

「その人間の居場所は? 」
「ああ、えっとね」

 そして彼は言った。

「――――イギリス領 香港にある九龍城だ」

 バカンス先が決まった。
咲夜さんは武器が一番似合います。

彼女がレミリアと出会う経緯の考察が纏まったので連作にした次第。

このストーリーに興味を持って頂いた方、是非これからもこのシリーズをよろしくお願いします。
読んで頂いて感謝感謝

ちなみにこの作品は、Call of Duty:Black Opsのオマージュでもあります。

※9月12日 誤字、改行の指摘とグロ注意の指摘、ありがとうございます。訂正しました。
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コメント



0.670簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
これは期待。
新しい切り口からの展開、ハードボイルドな文章。
次回も楽しみにしています。
2.90奇声を発する程度の能力削除
ゴツイ感じが堪らない
3.10名前が無い程度の能力削除
東方でやる意味……
4.100名前が無い程度の能力削除
やべぇ、こういうのを待っていた。
ただ一つ、ナムのM16にA1はいらないぜブラザー。
しかし最近の武装化は中東ばっかで気が滅入りそうになっていたところでこれがきた、感謝するぜ。
5.無評価名前が無い程度の能力削除
ラーメン屋にラーメンを食べに来たらカレーが出てきたでござるの巻。
しかも隣の客がこういうのを待ってたとか言ってるの…だったらカレー屋行けよ、どこにあるか知らないけどさ。
7.無評価名前が無い程度の能力削除
ココイチか……
8.無評価名前が無い程度の能力削除
なぜここでやった
9.80名前が無い程度の能力削除
東方武装化SS、新鮮で面白かったです。
続き待ってますね。

メニューを見てから店に入りましょう。何が出るのか分かるはずですよ。
10.90名前が無い程度の能力削除
上等の内容と興味深いプロローグに満点。
過去話とはいえ「東方成分」とでも名付ければいいものか、まあとにかく、それが不足しているのでマイナス10ポイント。
結論としては続きに期待します。
11.80名前が無い程度の能力削除
内容としては興味深いのですが『東方』って感じはしないですね。
続きに期待します。
12.10ひまこ削除
どっちつかず
書いたことだけ評価
13.100名前が無い程度の能力削除
こういうノリは好きです。
15.90ほっしー削除
殺すことに躊躇しないオリヴィア…
九龍城は行ったことありますけどすごかったですねー、主に建築物の構造が。
16.90名前が無い程度の能力削除
東方成分?必要なのは外面ではなく中身である。
非常に楽しめました。が、一点。レポート発見から暫くの下りが浮き足立っているように感じました。そこだけでマイナス三十点行くような。感覚的なものですが。
しかし世界観の重厚な構築具合。そしてそこから漂う全体としての雰囲気など特筆すべき点は多く、個人的にはとても好みです。
なのでこの点数で。次回、期待しています。
18.100愚迂多良童子削除
まるで洋画を見ているような気分だ。
一応、グロ注意くらいはタグにいれといた方がいいかも。
続きも期待してますよ。

>>温かかだった
温かかった 温かだった
>>M3グリーズガン
グリースガン
あと、改行がおかしいところが2箇所ほどあったように思います。
21.100名前が無い程度の能力削除
これは続きが読みたい。期待してます
23.無評価名前が無い程度の能力削除
読みものとしては悪くないのかもしれんけど、今のとこ東方キャラの名前出てるだけだよなぁ

今後どう結んで行くか次第だけど…
25.100名前が無い程度の能力削除
俺はこういうの結構好きだぜ
CoDも大好きだしね
26.無評価カミソリの作者削除
たくさんのコメント、ありがとうございます。一つ一つ噛み締めて読ませて頂きました。

>>1
期待して頂いて嬉しいです。続編はいつ投稿できるか分かりませんが、なるべく待たせ過ぎないよう頑張ります。
>>2
ごっついです。兵器や銃のごっつい感じが堪りませんよね。私はスマートなフォルムも好きですが。
>>3
そんなことはありません。こうして色んな人が楽しみにして下さっている以上、この作品を書いた意味と価値はあると思っています。
>>4
あらら、そうでしたか……。
武装化を好んでいる方は絶対いると確信していただけに、そう言って頂けるととても安心します。
次回作頑張ります。
>>5
申し訳ありませんが、タグに武装化と書いておきました。それでも不足でありましたら、次回作では本編前に注意書きを書きますので、何卒ご容赦下さい。
>>7
ファブリック・ナショナル社です。
>>8
ここが一番最適だと思ったので。
>>9
新鮮だなんて照れます(照)
>>10
そう言われると励みになります。ありがとう。
東方成分ですか……。
>>11
ありがとうございます。東方武装化です
>>12
どっちつかずとはどういう意味なのでしょうか…。
評価、ありがとうございます。
>>13
様々な映画を参考にしました。戦争映画、戦争ゲームは好みなので、そのオマージュですね。
>>15
おおー!クーロン城に行かれた方ですか!
すごかったそうですね。衛生面も酷かったそうですし。もし残ってたら是非訪れたかったものです。
>>15
雰囲気の再現に重点を置いていたので、そう言われると嬉しいです。
改善指摘、ありがとう…!次に活かします。
>>18
映画的な演出は好きです。これからも上手く組み込んで行きたいですね。
指摘と期待、ありがとうございます。
>>21
頑張ります!
>>23
結ぶのは頑張りますが、東方成分を満足いくほど増やすのは、ちょっと厳しいモノがあります。善処はしますが。
>>25
おおー。嬉しいです。
CODは4で金十字になるまでやり込みましたが、最近はあまりやってないので全く勝てないでしょうね。

たくさんのコメント、ありがとうございました。
28.100名前が無い程度の能力削除
ブラックオプスだ
まとめ方うまいし、面白いです
次回にも期待
29.100名前が無い程度の能力削除
codと東方が好きな自分には堪らないです。
続きに期待して待ってます。読んでいてレミリアとレズノフが重なってしょうがないです
30.100名前が無い程度の能力削除
某投稿サイトで東方武装化の絵を描いているものです。

まさか創想話にもこのような作品が投稿されようとは!
続きを心待にしております
31.無評価カミソリの作者削除
>>28
ありがとうございます。上手く纏まってて安心です。
>>29
レズノフはCOD作品の中で屈指のお気に入りですね。上司にはしたくないですがwww
>>30
おお、同志の方でしたか。
創想話にも武装化の輪が広がると良いですね。この作品がその始まりになればいいのですが。共に武装化を広めていくインターナショナル革命同志として、頑張って行こうではありませんか。同志殿。
34.80名前が無い程度の能力削除
東方武装化につられて見ました。
とても面白そうで、これからの続きが気になる作品です。
人を選ぶと思いますが、頑張ってください!
39.90名前が無い程度の能力削除
ミリタリー的な知識は殆どないのですが、こんな深夜まで読んでいるという点から引き込まれた事を汲み取って頂ければ幸いである候……と図々しいお願いをします。w
なんと言いますか、この臨場感がたまらないですね。続きの気になる終わり方に、続編も期待しております。
40.無評価名前が無い程度の能力削除
今更だけど
>>一気にその光景が遠ざかると視界がセーフハイスに戻った。
セーフハウス